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一章 ベロリン王国編
出発
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なし崩し的に一緒に旅をする事になったけど、それからの俺達の行動は早かった。一刻も早くこの国を出たいのに2日もロスしてしまったからな。急いで出発する必要があったんだけど、旅の支度なんてやった事がないから何から手をつけていいかわからなくて戸惑った。そんな俺を助けてくれたのがリューネさんだ。
「わかった。私に任せておけ」
彼女は旅に必要な物資や食糧などを的確に集め、旅程や馬車の手配などあっという間に済ませてくれた。そして、ドーナさんも協力してくれたお陰で、なんと明日にはこの国を出る事が出来るようになった。リューネさん、ドーナさん、ありがとう!
「そういえば、セイゴはなんでウィダーに行きたいんだ?」
荷造りを終えてベットで寛いでいたリューネさんがいきなり聞かれたくない質問をしてきた。この子はなんでこう核心をズバズバ突いてくるんだろうね。
「ベロリン王国は確かに糞だけど、マルタン王国と戦争中で、戦場は手柄を立てるのに最も適した環境だ。お前のあの力ならどちらに付いてもいい金を出すと思うぞ? 上手く功績を立てれば、貴族の家臣に取り立ててもらえるかもしれない」
立身出世ねぇ。
興味がないと言えば嘘になるけど、地位が高くなればなるほど大きな責任が伴ってくる。そして、それが前世の俺をどれほど苦しめた事か。
『お前がやれ』
『お前の担当だろ』
『お前の責任だからな』
本当にうんざりだったよ。だから、この世界で俺は出世するつもりはない。
雲心月性とまではいかなくても、欲に囚われず、ただ生きたい様に生きて満足したら野垂れ死ぬ。そんな生活がしたいんだ。
「リューネさん、俺は……」
「おい! セイゴ! 私はリューネだ! リューネサンじゃない! 私達は相棒だろ!?」
「あ、あぁ。すまない。リュ、リューネ。悪いけど、俺は出世するつもりはないんだ。ただ世界を旅して周って、色んな物を見てみたいんだけなんだよ」
「色んな物を見てみたい?」
「ああ、そうだ。誰も知らない土地を探索したり、誰も知らない物を発見したり。そういう冒険ってやつをしてみたいんだ」
「それって、世界の未知を冒険するって事か?」
世界の未知を冒険? いいなぁ、それ。
波瀾万丈の人生こそ、冒険だよな!
「正にそんな感じだ。リューネは嫌か?」
既に銀級冒険者としての地位があるリューネにとってはつまらないかな?
「いい! いい! それいいぞ! まさに冒険者って感じだ! 私もそういう冒険をやってみたかったんだよ! 私は大賛成だ!」
お、おおお……ベットをそんなにバンバン叩いて、めっちゃテンション上がってるな。瞳が子どもみたいにキラキラしてるぞ。
「で、でも地味な旅になるし、今の生活とはガラッと変わる。それに栄光とは無縁になるぞ?」
「何を言ってるんだ? 未知を冒険するなんてワクワクするじゃないか! それに栄光なんてものは後から勝手についてくるもんで自分から望むもんじゃないんだよ」
ふ、深い事を言うなぁ。この子は本当に純粋で芯が強い。俺には勿体無いくらい良い子だよ。
「な、なぁ? それって急ぐ旅なのか?」
「え? いや、急ぎはしないけど、できればこの国はすぐにでも出たいかな」
「そうか。わかった! じゃあ予定通り、明日ウィダーに向けて出発しよう! それでウィダーに着いたらちょっとだけ寄り道してもいいか?」
「寄り道?」
「ああ、ウィダーに行ったら寄りたい所があるんだ。すぐに済むから」
リューネはウィダー出身だし、親元とか友達のところとか行きたいところはたくさんあるんだろう。俺と違って友達も多そうだしなぁ。
「アテのない旅だし時間はたっぷりある。ゆっくりすればいいよ。それに先ずは金を稼がないといけないしね」
森狼の素材を売った金は滞在費やこれからの旅の支度で殆ど使ってしまって、かなり財布が厳しい状態になってる。おまけにもう売る物はない。ウィダーに行ったら、とりあえず仕事をしないとね。
「私の金も使っていいんだぞ?」
リューネが差し出した袋には見た事もない硬貨がたくさん入っていた。さすがは銀級冒険者、しっかり稼いでおられる。だけど、それに手をつけるほど俺は落ちぶれちゃいない。
「それはリューネのお金だからリューネが使うべきだよ。俺は俺の稼いだお金でやっていくから心配しなくていい」
「ふーん。まぁ、セイゴがそう言うならそれで良いが、冒険者間での金の分配は揉め事の種だ。きっちり決めておく方がいい。そうだな。今後は二人で稼いだ金は三等分にしよう。セイゴと私、それとチームとしての金だ。宿泊費や旅費はチームの金から出すって事でどうだ?」
経費は別にしておくわけか。それは悪くない考えかもしれない。散財してチームとしての行動に支障をきたす事のないように、お金の管理はしっかりしておいた方がいいからな。やっぱりリューネは頼りになる。
「それでいこう。本当、リューネがいてくれて助かったよ。これからもよろしくな」
「な、なんだよ! 急に改まって……わ、私はもうお前のモノだから、よろしく言われなくてもよろしくするっての!」
照れるリューネは一段と可愛い。口に出したらまた大変だから言わないけど。さぁ、明日はウィダー王国だ! 今日は早めに寝て、明日に備えるぞ! だから、リューネ。こっちのベットに入ってこなくていいからね? おじさん、我慢できなくなっちゃうから。
翌朝、何も無かった俺とリューネはドーナさんに別れを告げて、手配しておいた馬車で国境の砦へと向かった。やっと嫌な思い出しかないベロリン王国とお別れだ!
今日からが俺の第二の新しい人生の始まりだ! 楽しんで行くぞ!
「わかった。私に任せておけ」
彼女は旅に必要な物資や食糧などを的確に集め、旅程や馬車の手配などあっという間に済ませてくれた。そして、ドーナさんも協力してくれたお陰で、なんと明日にはこの国を出る事が出来るようになった。リューネさん、ドーナさん、ありがとう!
「そういえば、セイゴはなんでウィダーに行きたいんだ?」
荷造りを終えてベットで寛いでいたリューネさんがいきなり聞かれたくない質問をしてきた。この子はなんでこう核心をズバズバ突いてくるんだろうね。
「ベロリン王国は確かに糞だけど、マルタン王国と戦争中で、戦場は手柄を立てるのに最も適した環境だ。お前のあの力ならどちらに付いてもいい金を出すと思うぞ? 上手く功績を立てれば、貴族の家臣に取り立ててもらえるかもしれない」
立身出世ねぇ。
興味がないと言えば嘘になるけど、地位が高くなればなるほど大きな責任が伴ってくる。そして、それが前世の俺をどれほど苦しめた事か。
『お前がやれ』
『お前の担当だろ』
『お前の責任だからな』
本当にうんざりだったよ。だから、この世界で俺は出世するつもりはない。
雲心月性とまではいかなくても、欲に囚われず、ただ生きたい様に生きて満足したら野垂れ死ぬ。そんな生活がしたいんだ。
「リューネさん、俺は……」
「おい! セイゴ! 私はリューネだ! リューネサンじゃない! 私達は相棒だろ!?」
「あ、あぁ。すまない。リュ、リューネ。悪いけど、俺は出世するつもりはないんだ。ただ世界を旅して周って、色んな物を見てみたいんだけなんだよ」
「色んな物を見てみたい?」
「ああ、そうだ。誰も知らない土地を探索したり、誰も知らない物を発見したり。そういう冒険ってやつをしてみたいんだ」
「それって、世界の未知を冒険するって事か?」
世界の未知を冒険? いいなぁ、それ。
波瀾万丈の人生こそ、冒険だよな!
「正にそんな感じだ。リューネは嫌か?」
既に銀級冒険者としての地位があるリューネにとってはつまらないかな?
「いい! いい! それいいぞ! まさに冒険者って感じだ! 私もそういう冒険をやってみたかったんだよ! 私は大賛成だ!」
お、おおお……ベットをそんなにバンバン叩いて、めっちゃテンション上がってるな。瞳が子どもみたいにキラキラしてるぞ。
「で、でも地味な旅になるし、今の生活とはガラッと変わる。それに栄光とは無縁になるぞ?」
「何を言ってるんだ? 未知を冒険するなんてワクワクするじゃないか! それに栄光なんてものは後から勝手についてくるもんで自分から望むもんじゃないんだよ」
ふ、深い事を言うなぁ。この子は本当に純粋で芯が強い。俺には勿体無いくらい良い子だよ。
「な、なぁ? それって急ぐ旅なのか?」
「え? いや、急ぎはしないけど、できればこの国はすぐにでも出たいかな」
「そうか。わかった! じゃあ予定通り、明日ウィダーに向けて出発しよう! それでウィダーに着いたらちょっとだけ寄り道してもいいか?」
「寄り道?」
「ああ、ウィダーに行ったら寄りたい所があるんだ。すぐに済むから」
リューネはウィダー出身だし、親元とか友達のところとか行きたいところはたくさんあるんだろう。俺と違って友達も多そうだしなぁ。
「アテのない旅だし時間はたっぷりある。ゆっくりすればいいよ。それに先ずは金を稼がないといけないしね」
森狼の素材を売った金は滞在費やこれからの旅の支度で殆ど使ってしまって、かなり財布が厳しい状態になってる。おまけにもう売る物はない。ウィダーに行ったら、とりあえず仕事をしないとね。
「私の金も使っていいんだぞ?」
リューネが差し出した袋には見た事もない硬貨がたくさん入っていた。さすがは銀級冒険者、しっかり稼いでおられる。だけど、それに手をつけるほど俺は落ちぶれちゃいない。
「それはリューネのお金だからリューネが使うべきだよ。俺は俺の稼いだお金でやっていくから心配しなくていい」
「ふーん。まぁ、セイゴがそう言うならそれで良いが、冒険者間での金の分配は揉め事の種だ。きっちり決めておく方がいい。そうだな。今後は二人で稼いだ金は三等分にしよう。セイゴと私、それとチームとしての金だ。宿泊費や旅費はチームの金から出すって事でどうだ?」
経費は別にしておくわけか。それは悪くない考えかもしれない。散財してチームとしての行動に支障をきたす事のないように、お金の管理はしっかりしておいた方がいいからな。やっぱりリューネは頼りになる。
「それでいこう。本当、リューネがいてくれて助かったよ。これからもよろしくな」
「な、なんだよ! 急に改まって……わ、私はもうお前のモノだから、よろしく言われなくてもよろしくするっての!」
照れるリューネは一段と可愛い。口に出したらまた大変だから言わないけど。さぁ、明日はウィダー王国だ! 今日は早めに寝て、明日に備えるぞ! だから、リューネ。こっちのベットに入ってこなくていいからね? おじさん、我慢できなくなっちゃうから。
翌朝、何も無かった俺とリューネはドーナさんに別れを告げて、手配しておいた馬車で国境の砦へと向かった。やっと嫌な思い出しかないベロリン王国とお別れだ!
今日からが俺の第二の新しい人生の始まりだ! 楽しんで行くぞ!
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