きっと私は悪役令嬢

麻生空

文字の大きさ
上 下
9 / 97

9

しおりを挟む
30分はとうに経過したのに未だに帰る気配のないルドルフ様。

けど、ここで「いつ帰りますか?」なんて聞けない。
時間は11時と、そろそろ昼食も視野に入れなければならない時間帯に入ってしまっていた。

ここで問題だ。

私は何と彼に問うべきか?

ここは直球に「今日は何時に帰りますか?」と聞くべきか。

それとも「そろそろお昼だからお帰りになりませんか?」と提案するべきか。

それとも「お昼は如何なさいますか?」と遠回しに言うべきか。

バッドエンド回避する為には、ここは最後のセリフが一番良いだろう。

どう考えても初めの二つは気分を害する恐れがある。

それに、どうせ嫌いな婚約者の家だ。

長居はしないだろう。

故に

「お昼は如何なさいますか?」

と丁寧に聞いて見た。

すると、彼は満面の笑みで
「では、お言葉に甘えて」
と言って来た。





私は「お昼は如何なさいますか?」と聞いたのだ。
「食べて行きますか?」なんて聞いていない。
普通ならここは「お気遣いなく。そろそろ帰りますので」が正しいだろう?

「……」

呆然とする私に、出来る家の執事が「ではお二人の昼食を準備致します」と私に言うと一礼して部屋を後にした。

『ごめん。私がいらない事を言ってしまって』
思わず去り行く執事の背中をみてしまった。


「で、エドは午後から何をする予定?」

突然の質問に現実に引き戻された私は

「読書でしょうか」

と何も考えずに本音を言ってしまった。

後から思うに「本日は予定が入っていて、出掛ける用事がある」とでも言っておけば良かったのだ。
そうすれば昼食後に帰ってくれたかもしれないのに。

それは返事をしてから気付いた事で全ては後の祭りだった。
「そうですか。読書は良いですよね」
と笑顔のルドルフ様。

「いや……家の書庫にある本はマニアックな物が多くって……」
何とか興味を外そうと試みるも
「マニアックとは希少な本があると言う事ですね。ますます楽しみだ」
怪しい眼差しで私を見るルドルフ様に、自身の失態振りに頭が更に白くなってしまった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

だって、コンプレックスなんですっ!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:851

尽くすことに疲れた結果

BL / 完結 24h.ポイント:298pt お気に入り:3,013

可笑しなお菓子屋、灯屋(あかしや)

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:1

百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:707

【R18】高飛車王女様はガチムチ聖騎士に娶られたい!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:251

いつか愛してると言える日まで

BL / 連載中 24h.ポイント:163pt お気に入り:413

【R18】花嫁引渡しの儀

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:89

セヴンス・ヘヴン

BL / 連載中 24h.ポイント:555pt お気に入り:6

処理中です...