追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

湊一桜

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49. 彼の弱点は私のようです

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 このまま、私はこの騎士に連れられて騎士団本部に入った。前にも入ったことはあるが、あの時はジョーと塔に上っただけだった。
 初めて入る騎士団本部は、それは広くて豪華で、多くの騎士が私を見て頭を下げる。しかも、なんと私のことを知っているのだ。

「こんにちは、アン様」

「アン様、これからもよろしくお願いします」

 こちらこそお願いしますと頭を下げながらも、この騎士たちに散々世話になったことも思い出した。黒い騎士が現れた時、ずっと護衛をしてくれていたし……私とヘンリーお兄様が襲われた時も、助けに来てくれた。

「あの……いつも色々と、ありがとうございます」

 おずおずと告げたら、彼らはさらっとした笑顔で答えるのだ。

「ジョセフ団長の命令なら、私たちは喜んで従いますから。
 その前に、ジョセフ団長がアン様を酷く好いていらっしゃるので、私たちは何でも協力したいと思うのです」

 私の予想以上にジョセフ団長は騎士たちに好かれているらしい。こんな様子を見て、私まで嬉しくなってしまうのだった。



 騎士は私を大きな建物の前に案内した。そして、石で出来た立派なその門をくぐる。そうしている間にも、建物の中からは剣を打ち付け合うような乾いた男と、男性の声が聞こえてくるのだった。それを聞き、騎士たちがここで訓練していることを悟る。

 建物の前にいる騎士たちも私に頭を下げ、私も同様に頭を下げる。なかにはやはり、治療院で見たことのある人だっているのだ。

 そして……階段を上った先で、急に視界が開けた。目下には広大な闘技場が広がり、騎士たちが剣を振るって訓練をしていた。そしてこんなに騎士がいるとジョーを見つけるのが難しいと思ったが……ジョーは意外とすぐに見つかった。

 騎士団長であるジョーは、もちろん部下を従え指導する立場なのだろう。打ち合いをする騎士のもとを歩き回り、何か教えているようだ。そんないつもと違う真剣なジョーを見ると、不覚にもときめいてしまう。

「ジョセフ団長は、幼い時から剣に生きてこられました。幼いジョセフ団長が次々に現役の騎士を打ち負かしていくので、騎士たちも負けてはいられないと訓練を頑張ったものです。
そしてジョセフ団長は問答無用の強さで団長に就任しましたが……この前の黒い騎士との戦いで、精神的ダメージを負ったようです。
ジョセフ様は自分がやられてしまったことにショックを受けたみたいですが、ジョセフ様でなかったら確実に死んでいたでしょう」

「そうなんですね……」

 ジョーは自分に厳しく、まさに騎士の鏡だろう。そして、黒い騎士との顛末にショックを受けるのもおかしい。だって、あの時はポーレット領騎士団はかなりの劣勢だったし、ジョーは一人で百人近くを相手にしてすごいと思う。
 むしろ反省しないといけないのは、ジョーを危険に晒した私だろう。

 打ち合いが終わり、ジョーが騎士たちの中心で話をしている。時々剣を振るったり、構えたりしながら。だが、遠くにいるため何を言っているのか分からなかった。
 騎士たちは、そんなジョーの話を真剣な面持ちで頷きながら聞いている。

 こうやって、騎士たちをまとめているジョーを見て、改めてすごいと思った。そして、かっこいいとも思う。もちろん外見もかっこいいのだが、内面もすごくかっこいい……


 ジョーの号令で、再び騎士たちは打ち合いを始める。今度は四人ほどの騎士がジョーに向かって飛びかかるが……
 ジョーは表情一つ変えず、その四人を一瞬で打ち負かしてしまった。あまりに冷静で華麗なジョーの動きから、目が離せない。胸がドキドキする。
 オストワル辺境伯領騎士団は、もちろん弱いわけではない。むしろ、王宮騎士団よりも強いと噂されている。その最強騎士団の中でも最強の、第一騎士団の騎士を、こうも簡単に打ち負かしてしまうなんて。

 そうこうしているうちにも騎士が次々飛びかかるが、やはりジョーに勝てる人なんていない。真剣な顔のジョーに釘付けだ。ジョーって、戦っている姿もイケメンだ……

 不意に顔を上げたジョーと視線がぶつかった。ジョーは驚いたように私を見て、私はぼっと顔に血が上る。その瞬間……カキーン!!大きな音を立てて、部下の騎士の剣がジョーの腕に当たった。あまりの衝撃に顔を歪めるジョーに、

「団長!!」

剣を投げ捨てて駆け寄る騎士たち。そんな様子を見ながら、酷くドキドキしてしまった。ジョーはかっこよかったけど、私のせいだ。私のせいで、ジョーの注意が逸れてしまったのだ。

 私を案内してくれた騎士が、額に手を当ててはぁーっとため息をつく。

「ジョセフ団長は最強ですが、アン様が弱点ですからね……」

 もう、訓練は見ないでおこうと心に誓った。
 

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