27 / 82
3章:学校生活
3:ガレットの魔法
しおりを挟む
俺は、しばらく目の前の光景を眺めていた。部屋はほとんど変わらない。大きく変わったのは瓶の中の液体とガレットだった。随分と貯まっていた、と思った液体は、今底が見えるほどではないけれど、瓶の5分の1くらいの量まで減っている。大きく魔力を消費したのだろう。そして、一番の変化はガレットの姿だった。
「なっ……えっ……!?」
俺の口から驚きの余り、間の抜けた声しか出てこなくなってしまった。目の前に、ガレットが立っていた。いや、ガレットが立っているのは当たり前ではあるけれど、その姿が見慣れた姿とは違った姿になっていたから。
目の前にいたのは、俺の学校の制服を着た、男子高校生姿のガレットだった。
ここ数週間で見慣れた姿とはかなり違う姿になっていたから、ひどく混乱してしまった。
腰まである長い金髪は、肩に届くかとどかないかくらいの一つ結びにされていた。背の高さはそこまで変わらないけれど、さっきまで俺より年上の、20代くらいだった外見年齢は俺とあまり変わらないくらいになっている。顔立ちも彼の外見の美しさをそのまま残しつつ元の顔から感じるあどけなさを強めにしたような感じ。ただそれでいて、どこか大人びた美しさがある。一瞬俺の制服を着たのかと思ったけれど、着た形跡が一切ない、真新しい制服だったから、多分魔法で作り出したんだと思う。
「どうだい? この姿は? 章太郎の学校の制服、似合っているかい?」
ガレットはくるくると回り、変身後の姿を俺に見せている。
「あ、ああ…………い、いいと、思う……」
見慣れない姿だけれど、この姿もやはり美青年そのものであった。ただ、いつもの姿から、突然この姿になっていたから、混乱の方が大きくて、上手く返せない。
「ど、どうして、突然この姿に……?」
「魔力が貯まったらずっとこうしたいと思っていたんだ。この姿になって、朝と夜だけではなく、学校生活も一緒に過ごしたいと思ったんだ」
一瞬、ガレットが言ったことが飲み込めなかった。ガレットは俺と一緒に学校に行こうとしているって事か……? 漫画やアニメでよくある「突然主人公のクラスの転校生になる」という状況みたいに。
「……つ、つまり、それは……俺と、一緒に、学校に行って、学校生活を送る、ってことか……?」
「そうだよ。明日からワタシは章太郎のクラスメイトさ」
「……だ、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。学校に受け入れてもらう準備も魔法でしっかりと整えてあるし、学校のことも大まかには把握してあるよ。キミに迷惑をかけるようなことはもちろんしないよ」
にこり、とガレットは笑う。多分、ガレットは、俺の問いかけた「大丈夫」というのは「突然転校生になって、不都合がないか」とか、「何か俺自身に迷惑がかかるのではないか」といったようなことを問いかけているのだと思っている。
「ワタシと一緒に学校に行くのは嫌かい? 嫌だったらまた元の姿に戻って……」
「い、嫌では……ないし、一緒に、行けるのは、嬉しいんだけれど……」
嫌ではない。一緒に過ごせるのも、楽しみではある。
けれど、それよりも、不安感が大きかった。
どちらかというと、俺が不安視しているのは、ガレットと俺が学校で一緒にいて、悪評がたてられないかということだった。学校での俺はこの見た目とか物言いで避けられてしまっている。変な噂も随分と立っているから、それが掘り起こされてガレットにも悪影響が出てしまうのかもしれない。
それに、これは、本当に俺のひとりよがりな不安だけれど、学校で一人の俺を見たらガレットに、幻滅されてしまうんじゃないか、っていう不安が強かった。
浮かない俺を見たガレットは俺に目線を合わせてにこりと微笑む。
「ワタシは、章太郎と一緒に過ごせる時間を、楽しみにしているよ」
「…………ああ」
その言葉で、ほんの少し、不安感が解ける。
「それじゃあ、明日に向けて今日は早く休むとしよう」
「分かった……」
「弁当の準備は何か必要かい? もしよかったら手伝うよ」
「……ありがとう」
少し不安感を残しながらも、いつも通りのゆったりとした夜が過ぎていった。
「なっ……えっ……!?」
俺の口から驚きの余り、間の抜けた声しか出てこなくなってしまった。目の前に、ガレットが立っていた。いや、ガレットが立っているのは当たり前ではあるけれど、その姿が見慣れた姿とは違った姿になっていたから。
目の前にいたのは、俺の学校の制服を着た、男子高校生姿のガレットだった。
ここ数週間で見慣れた姿とはかなり違う姿になっていたから、ひどく混乱してしまった。
腰まである長い金髪は、肩に届くかとどかないかくらいの一つ結びにされていた。背の高さはそこまで変わらないけれど、さっきまで俺より年上の、20代くらいだった外見年齢は俺とあまり変わらないくらいになっている。顔立ちも彼の外見の美しさをそのまま残しつつ元の顔から感じるあどけなさを強めにしたような感じ。ただそれでいて、どこか大人びた美しさがある。一瞬俺の制服を着たのかと思ったけれど、着た形跡が一切ない、真新しい制服だったから、多分魔法で作り出したんだと思う。
「どうだい? この姿は? 章太郎の学校の制服、似合っているかい?」
ガレットはくるくると回り、変身後の姿を俺に見せている。
「あ、ああ…………い、いいと、思う……」
見慣れない姿だけれど、この姿もやはり美青年そのものであった。ただ、いつもの姿から、突然この姿になっていたから、混乱の方が大きくて、上手く返せない。
「ど、どうして、突然この姿に……?」
「魔力が貯まったらずっとこうしたいと思っていたんだ。この姿になって、朝と夜だけではなく、学校生活も一緒に過ごしたいと思ったんだ」
一瞬、ガレットが言ったことが飲み込めなかった。ガレットは俺と一緒に学校に行こうとしているって事か……? 漫画やアニメでよくある「突然主人公のクラスの転校生になる」という状況みたいに。
「……つ、つまり、それは……俺と、一緒に、学校に行って、学校生活を送る、ってことか……?」
「そうだよ。明日からワタシは章太郎のクラスメイトさ」
「……だ、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。学校に受け入れてもらう準備も魔法でしっかりと整えてあるし、学校のことも大まかには把握してあるよ。キミに迷惑をかけるようなことはもちろんしないよ」
にこり、とガレットは笑う。多分、ガレットは、俺の問いかけた「大丈夫」というのは「突然転校生になって、不都合がないか」とか、「何か俺自身に迷惑がかかるのではないか」といったようなことを問いかけているのだと思っている。
「ワタシと一緒に学校に行くのは嫌かい? 嫌だったらまた元の姿に戻って……」
「い、嫌では……ないし、一緒に、行けるのは、嬉しいんだけれど……」
嫌ではない。一緒に過ごせるのも、楽しみではある。
けれど、それよりも、不安感が大きかった。
どちらかというと、俺が不安視しているのは、ガレットと俺が学校で一緒にいて、悪評がたてられないかということだった。学校での俺はこの見た目とか物言いで避けられてしまっている。変な噂も随分と立っているから、それが掘り起こされてガレットにも悪影響が出てしまうのかもしれない。
それに、これは、本当に俺のひとりよがりな不安だけれど、学校で一人の俺を見たらガレットに、幻滅されてしまうんじゃないか、っていう不安が強かった。
浮かない俺を見たガレットは俺に目線を合わせてにこりと微笑む。
「ワタシは、章太郎と一緒に過ごせる時間を、楽しみにしているよ」
「…………ああ」
その言葉で、ほんの少し、不安感が解ける。
「それじゃあ、明日に向けて今日は早く休むとしよう」
「分かった……」
「弁当の準備は何か必要かい? もしよかったら手伝うよ」
「……ありがとう」
少し不安感を残しながらも、いつも通りのゆったりとした夜が過ぎていった。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
55
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる