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先生は同性愛者
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これが異性だったなら、相手のことを好きでなくてもこうはならなかった。そう思えてならなかった。だからと言って旭は女性に生まれたかったと思ったこともない。
男性であることは受け入れられているし、疑問もない。男性として生きることに抵抗もない。ただ、自分の気持ちを否定されたことだけは受け入れられそうになかった。
多くの人間は、人とは違うものに敏感で、敬遠したがる。好奇の目に晒され、軽蔑されることに慣れ始めると、随分と気持ちは楽になったが、いつまで経っても満たされることはない。
いつの間にか、理解されないことが普通として生きてきた。だから、夕映の「諦めない」、「可能性はゼロじゃない」は衝撃的な言葉だった。
「先生は……今までお付き合いされた方はいますか?」
「……いるよ」
「男性……」
「もちろん」
「女性とは」
「ないってば」
「……どちらですか?」
「どちらというと?」
「その、大人の事情は……」
「中々、不躾な質問だね」
お互い真顔でやり取りするが、旭の方が先に呆れたように顔をしかめた。
「その……大事な情報でして。受け入れる方しか無理な場合とそうでない場合、確率に変動が……」
「ああ、確かに」
旭は妙に納得してしまった。まさか9つも年下の、しかも自分の患者とこんな話をするとは思ってもみなかった。ただ、男性を好きでいることを前提として真剣に向き合っている夕映の姿勢に悪い気はしなかった。
「期待させるつもりは全くないんだけど、結論からいうとどちらでも可能」
「なんと!」
夕映はずいっと顔を寄せた。怪訝な顔をする旭は「あくまでも、可能なだけで恋愛対象は」と夕映を遮断しようとするが「大丈夫です。それを聞けただけで御の字です」と言葉を被せられた。
男性であることは受け入れられているし、疑問もない。男性として生きることに抵抗もない。ただ、自分の気持ちを否定されたことだけは受け入れられそうになかった。
多くの人間は、人とは違うものに敏感で、敬遠したがる。好奇の目に晒され、軽蔑されることに慣れ始めると、随分と気持ちは楽になったが、いつまで経っても満たされることはない。
いつの間にか、理解されないことが普通として生きてきた。だから、夕映の「諦めない」、「可能性はゼロじゃない」は衝撃的な言葉だった。
「先生は……今までお付き合いされた方はいますか?」
「……いるよ」
「男性……」
「もちろん」
「女性とは」
「ないってば」
「……どちらですか?」
「どちらというと?」
「その、大人の事情は……」
「中々、不躾な質問だね」
お互い真顔でやり取りするが、旭の方が先に呆れたように顔をしかめた。
「その……大事な情報でして。受け入れる方しか無理な場合とそうでない場合、確率に変動が……」
「ああ、確かに」
旭は妙に納得してしまった。まさか9つも年下の、しかも自分の患者とこんな話をするとは思ってもみなかった。ただ、男性を好きでいることを前提として真剣に向き合っている夕映の姿勢に悪い気はしなかった。
「期待させるつもりは全くないんだけど、結論からいうとどちらでも可能」
「なんと!」
夕映はずいっと顔を寄せた。怪訝な顔をする旭は「あくまでも、可能なだけで恋愛対象は」と夕映を遮断しようとするが「大丈夫です。それを聞けただけで御の字です」と言葉を被せられた。
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