その傷を舐めさせて

雪村こはる

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パーティーでは淑女を演じさせていただきます

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 まるで子供の喧嘩を見ているようだと目を離せないでいる夕映は、保の言葉にこれがいつもなのか……と唖然とする。

「あれで30歳だよ? 年だけ重ねても子供だよねー」

 指を差す保は、ははっと笑うと「人間、年齢だけじゃ大人も子供も測れないから。年の差なんて気にしなくていいよ」と優しく夕映に目を向けた。

「……え?」

「9個離れてたら色々言われるだろうけど、正直25過ぎたら何個離れていようと同じようなもんだから。ある時から何も言われなくなるよ」

 その言葉に夕映は瞳を揺らした。保は、夕映が昴に子供だと言われた時、辛そうに顔を歪めたのを見逃さなかった。社会人ばかりが集まる中、まだ学生の夕映がどんな気持ちでいるのか考えたら、たどり着いたのは子供扱いしないことだった。

 夕映は、とくんっと胸が1つ鳴ったのに気付いた。

 この人が、荻乃先生の好きな人……。そっか、先生はやっぱり見た目だけで好きになったわけじゃないんだな……。

 初対面の自分にまで優しい言葉をくれる保の存在に、夕映は心が温まるようだった。嫉妬も劣等感も何も湧かない。この人には人として敵わない。素直にそう思えてしまった。

「それより食べなくていいの? もう冷めちゃってるんじゃない?」

 いつまでも皿を抱えている夕映の姿にそっと微笑む保は、テーブルに置いてあったフォークを掴んで差し出した。

「あ、ありがとうございます……」

「うん。腹減ったねぇ。どんどん追加の料理出てきてるし。俺、今日は食うために来てるからさ」

 また物色を始める保だが、その向こう側では未だに昴と和泉が言い争っていた。2人とも容姿は申し分ないのに、なぜかその魅力を半減させているような気がして夕映は思わずクスクスと笑った。

「お、初めて笑ったね」

「え?」

「緊張してた?」

 保に顔を覗き込まれ、こくこくと激しく頷く。ふわりと笑った保は「緊張しなくていいよ。旭もいるし」と言って皿を取る。それから「旭は食わないの?」と2枚取った内の1枚を顔の横に掲げた。
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