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きゃんぷ、にじゅうさん
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浴場を出て自分の胸を軽く摩る。雪兎の太腿に顔を押し付けるつもりだったのに躱され、床に胸を打ち付けたのだ。その上雪兎に足蹴にされてしまった。
「……胸が痛いですね、二重の意味で」
「ポチが変態なのが悪いんだよ」
「俺を変態にしたのは誰でしょう」
前を歩いていた雪兎は振り返ってキッと俺を睨みつける。
「ポチってば記憶力低いんだね、僕のとこに来てすぐのこと思い出してみなよ」
大企業の社長の養子になれると聞いてホイホイ着いていき、到着したらペットになるんだと説明されて首輪をはめられて──
「首輪、もっと嫌がるかと思ってたよ、僕は。それなのにポチったらすんなりつけてくれたよね、最初は落ち着かないみたいだったけど」
「……断れる立場じゃありませんし」
「お腹ちょっと撫でてあげただけで感じてたし」
「…………いや、それは」
「そもそもさ、ポチって元からショタコンってやつだったよね?」
じっと見つめてくる赤紫の瞳から逃れるため天井を見る。木目が顔に見える。
「断れる立場じゃないーとか言い訳しておいて、しゃぶってって言ったらすんなりしてくれたよね。ポチ、君は生まれつき変態で、犬になる素質もあったんだよ」
俺を言い負かして満足した雪兎は再び歩き出す。俺も天井から雪兎の背に視線を移し、歩き出す。
「ポチ、お座り」
廊下に屈む。
「犬は後ろ足だけで歩かないから、そこのところ注意してよね」
「はい」
「あれ? 今僕喋ってないのに人間の言葉が聞こえたような……おかしいなぁ」
「……わん」
下手くそな鳴き真似をすると雪兎は満足げに微笑み、今度こそ振り返らず寝室に向かった。ベッドに寝転がった雪風はノートパソコンで何か動画を見ているようだ、ヘッドホンまでつけているから俺達が戻ってきたのに気付いていない。
「……雪風、気付いてないね、後ろからこっそり近付いておどかしちゃお」
「わん」
「喋っていいよ」
「是非やりましょう」
喋るなだとか喋っていいだとか、自分勝手な飼い主だ。犬扱いをするなら犬らしくさせて欲しい。
「……っ、ん……」
俺は四つん這いになってベッドの影に隠れ、雪風の様子を見て雪兎が飛びかかるタイミングを測る役。雪兎が気付かれずにベッドに乗れるかが関門だ。
ベッドの影から顔を出して雪風の様子を見ると、ちょうど服をズラして性器を露出させていた。頬を紅潮させてノートパソコンの画面をじっと見つめ、自分を焦らしながら陰茎を扱き始めた。
「……ポチ、どう? まだ?」
雪兎はいつの間にかベッドに乗っていた、後ろからでは雪風が自慰を始めたなんて分からないだろう。
さっきしたばかりなのに自慰をするなんて、俺とのセックスに満足していない証拠だ。AVでも見ているのか? 嫉妬してしまうな、どんな女優だ? 男優か?
「行っちゃってください」
雪兎に飛びかかられて舌でも噛めばいい。
「よーし……雪風ぇーっ!」
雪兎はマットの高反発を利用して跳躍し、雪風の背中に着地した。十点をあげたい。
「ぅぐっ……な、なんだよ、ユキか……子供みたいな真似するな」
「子供だもーん……何見て、る……の…………一人で何してるのさ雪風のえっち!」
雪兎は顔を隠して照れたフリをして雪風の背から勢いよく飛び降りた。
「お、お前……今更父親のソロプレイを見ただけでその反応はおかしいだろ!」
「二人プレイも見てるもんな……セックスって対戦と協力どっちだと思う?」
「知らねぇよゲーオタぁ!」
俺はオタク扱いされるほどじゃない、せめてゲーム好きと言うべきだ。
「対戦じゃないかなぁ」
「勝ち負けあります?」
「失神した方が負けだよね」
分かりやすいが、普通は失神するまでヤらないと思う。
「共同作業とも言うだろ、協力プレイだ」
「協力プレイだと3Pで一人を責め立ててる気がする」
「知らねぇしどうでもいいよもう……」
雪風はヘッドホンを片付け、ノートパソコンも閉じようとする。
「待て雪風! 浮気相手の女優もしくは男優の顔を見せてもらおうか!」
ノートパソコンを取り上げて雪風が経った今まで見ていた動画を再生する。映っていたのは雪風だ。
「自分のハメ撮りで抜くとかレベル高過ぎて引くわ」
相手の顔は見切れてしまって見えないな。雪風は心底気持ちよさそうに顔を蕩けさせている、相手を本当に愛しているかのような表情だ、ムカつく。
「まさかガチ浮気とはな……まぁ、昔のやつの可能性もあるけど。で? この色黒野郎誰だよ、バカみてぇに鍛えやがってさ」
「は……? それお前だぞ、こないだ撮ったやつだよ。編集終わったから確認で見てたんだ」
動画を早送りしてみると相手の顔が見えた、確かに俺だ。
「バカみたいって……ふふっ、自分なのに、はははっ」
「見せてー……わぁ、ポチって抱く方に回るとかなり力強いね……ワイルドだぁ、カッコイイ」
雪風は腹を抱えて笑い、ベッドをぼふぼふと叩いている。雪兎は動画を見て目を輝かせている。
恥ずかしくなった俺は無言で部屋の隅に移動し、蹲った。
「……胸が痛いですね、二重の意味で」
「ポチが変態なのが悪いんだよ」
「俺を変態にしたのは誰でしょう」
前を歩いていた雪兎は振り返ってキッと俺を睨みつける。
「ポチってば記憶力低いんだね、僕のとこに来てすぐのこと思い出してみなよ」
大企業の社長の養子になれると聞いてホイホイ着いていき、到着したらペットになるんだと説明されて首輪をはめられて──
「首輪、もっと嫌がるかと思ってたよ、僕は。それなのにポチったらすんなりつけてくれたよね、最初は落ち着かないみたいだったけど」
「……断れる立場じゃありませんし」
「お腹ちょっと撫でてあげただけで感じてたし」
「…………いや、それは」
「そもそもさ、ポチって元からショタコンってやつだったよね?」
じっと見つめてくる赤紫の瞳から逃れるため天井を見る。木目が顔に見える。
「断れる立場じゃないーとか言い訳しておいて、しゃぶってって言ったらすんなりしてくれたよね。ポチ、君は生まれつき変態で、犬になる素質もあったんだよ」
俺を言い負かして満足した雪兎は再び歩き出す。俺も天井から雪兎の背に視線を移し、歩き出す。
「ポチ、お座り」
廊下に屈む。
「犬は後ろ足だけで歩かないから、そこのところ注意してよね」
「はい」
「あれ? 今僕喋ってないのに人間の言葉が聞こえたような……おかしいなぁ」
「……わん」
下手くそな鳴き真似をすると雪兎は満足げに微笑み、今度こそ振り返らず寝室に向かった。ベッドに寝転がった雪風はノートパソコンで何か動画を見ているようだ、ヘッドホンまでつけているから俺達が戻ってきたのに気付いていない。
「……雪風、気付いてないね、後ろからこっそり近付いておどかしちゃお」
「わん」
「喋っていいよ」
「是非やりましょう」
喋るなだとか喋っていいだとか、自分勝手な飼い主だ。犬扱いをするなら犬らしくさせて欲しい。
「……っ、ん……」
俺は四つん這いになってベッドの影に隠れ、雪風の様子を見て雪兎が飛びかかるタイミングを測る役。雪兎が気付かれずにベッドに乗れるかが関門だ。
ベッドの影から顔を出して雪風の様子を見ると、ちょうど服をズラして性器を露出させていた。頬を紅潮させてノートパソコンの画面をじっと見つめ、自分を焦らしながら陰茎を扱き始めた。
「……ポチ、どう? まだ?」
雪兎はいつの間にかベッドに乗っていた、後ろからでは雪風が自慰を始めたなんて分からないだろう。
さっきしたばかりなのに自慰をするなんて、俺とのセックスに満足していない証拠だ。AVでも見ているのか? 嫉妬してしまうな、どんな女優だ? 男優か?
「行っちゃってください」
雪兎に飛びかかられて舌でも噛めばいい。
「よーし……雪風ぇーっ!」
雪兎はマットの高反発を利用して跳躍し、雪風の背中に着地した。十点をあげたい。
「ぅぐっ……な、なんだよ、ユキか……子供みたいな真似するな」
「子供だもーん……何見て、る……の…………一人で何してるのさ雪風のえっち!」
雪兎は顔を隠して照れたフリをして雪風の背から勢いよく飛び降りた。
「お、お前……今更父親のソロプレイを見ただけでその反応はおかしいだろ!」
「二人プレイも見てるもんな……セックスって対戦と協力どっちだと思う?」
「知らねぇよゲーオタぁ!」
俺はオタク扱いされるほどじゃない、せめてゲーム好きと言うべきだ。
「対戦じゃないかなぁ」
「勝ち負けあります?」
「失神した方が負けだよね」
分かりやすいが、普通は失神するまでヤらないと思う。
「共同作業とも言うだろ、協力プレイだ」
「協力プレイだと3Pで一人を責め立ててる気がする」
「知らねぇしどうでもいいよもう……」
雪風はヘッドホンを片付け、ノートパソコンも閉じようとする。
「待て雪風! 浮気相手の女優もしくは男優の顔を見せてもらおうか!」
ノートパソコンを取り上げて雪風が経った今まで見ていた動画を再生する。映っていたのは雪風だ。
「自分のハメ撮りで抜くとかレベル高過ぎて引くわ」
相手の顔は見切れてしまって見えないな。雪風は心底気持ちよさそうに顔を蕩けさせている、相手を本当に愛しているかのような表情だ、ムカつく。
「まさかガチ浮気とはな……まぁ、昔のやつの可能性もあるけど。で? この色黒野郎誰だよ、バカみてぇに鍛えやがってさ」
「は……? それお前だぞ、こないだ撮ったやつだよ。編集終わったから確認で見てたんだ」
動画を早送りしてみると相手の顔が見えた、確かに俺だ。
「バカみたいって……ふふっ、自分なのに、はははっ」
「見せてー……わぁ、ポチって抱く方に回るとかなり力強いね……ワイルドだぁ、カッコイイ」
雪風は腹を抱えて笑い、ベッドをぼふぼふと叩いている。雪兎は動画を見て目を輝かせている。
恥ずかしくなった俺は無言で部屋の隅に移動し、蹲った。
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