過労死で異世界転生したのですがサキュバス好きを神様に勘違いされ総受けインキュバスにされてしまいました

ムーン

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おたから発掘

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俺とアルマの留守中、ネメシス主導で城の再建計画が立てられたらしい。今現在形を保っている部分にもヒビなどが入り、また老朽化も進んでいたので一度壊して作り直すことにしたらしい。

「で、ネメシスは城の造り調べてる。設計図書く参考にするんだってさ」

「ふぅん……ネメシス、そういう技術あるのか? そもそも俺らだけで建築出来るかな……六人だけで城建築って……何年かかるんだよ」

「ネメシスに設計出来んのかは知らねぇけど、解体とかは順調だし大丈夫だろ」

カタラは王城の倒壊している部分を指す。そこではドラゴン達が瓦礫を片付けていた。建材の種類ごとに分け、家具なども見つけ次第取り除き、ネメスィの子であるスライム状のドラゴンが細かい貴重品などを拾い、一定量溜まるとこちらに渡しに来る。

「そりゃ解体は得意だろうけどさ、建築は無理だろ」

鋭い鉤爪が生えた大きな手でそぉっと瓦礫を掴み、ゆっくりと持ち上げ、そろそろと運ぶ。恐る恐るの解体作業は遠巻きに見ても癒される。

「…………可愛いな。あいつら……デカいのに言動がガキなんだよな、可愛いなぁ……」

瓦礫の下から回収された物品から使えそうなものをより分けているのだが、思わずその作業の手を止めて見入ってしまう。

「見過ぎだぜサク、気持ちは分かるけど……おっ、この時計まだ動くぞ」

「でも鳥さんが取れてます」

「鳥? あぁ……時間になったら飛び出すやつか、別にいいだろんなもんなくても。時間さえ分かればそれでいい」

「最低限の時計ならもう少し状態がいいものがありますよ。それは鳥さんが大事なんです」

鳩時計って異世界にもあるんだなぁ、っていうか飾りの鳥にまでさん付けするシャル可愛いなぁ。

「おぉ……! 素晴らしい! 見てごらんサク、この宝石に火の光を当てるだろう……そして、カタラの術の光に……ほら! 色が変わるんだ!」

アレキサンドライトだっけ? 異世界にもあるんだな。

「この石はとても高価なんだ、この大きさと変色の振れ幅、そしてこのカットの素晴らしさ……! 二千、いや話術次第では三千を狙えるか……!」

日常生活に使えそうなもの──服や食器、その他家具などを物色する作業なのだが、査定士は貴重品の査定に夢中だ。人の居なくなった街で誰が金を出すと言うのか……まぁ、趣味でもあるんだろうな。

「おっさんアクセ後にしろよ、それより俺洗濯に使えるもんが欲しい。物干し竿が折れちまったんだよ」

「城の部屋から見つかるわけないじゃん……その辺の家から取ってくれば?」

「というかカタラさん、棒や紐くらいなら魔力で作ったらどうですか?」

「シャルは……それ、何してるんだ?」

「これを組み替えると熊さんの形になりそうなんです、さっきは鳥さんだったんですよ」

シャルは立体パズルのような寄木細工に夢中だ。自室の片付け中にアルバムなどを見つけてしまい片付けが進まない──なんてあるあるだけれど、他人の物でもなるんだな。

「はぁ……あれ、そういやネメスィは?」

「ネメスィはドラゴン共の監督だ、流石にアイツらに全任せは無理だぜ。つーかお前こそ旦那はどこ行ったんだよ」

「アルマまだご飯食べてなかったから……」

「ヤってて飯忘れるとか……結構、あるよな。ははっ」

性交と食事が同義であるインキュバスには分からない話だ。

「お前ら順調か? 追加だぞ」

黒い袋状のスライムから原型を保った家具や日用品などが零れる。

「サク、戻ってたのか。一度こいつらに顔を見せてやってくれ、何か見つける度に「これママ使うかな」なんて言ってるんだ」

「後で行くー」

ドラゴンの尻尾が変形したものらしい袋状のスライムを誘導し、ネメスィがドラゴン達の元へ戻っていく。

「また増えたな……お? なんだこりゃ、ぬいぐるみか。クマ……かな? 汚れてるなー」

「見せてください……わ、五体満足な人形は初ですね。もらっていいですか?」

「おー……お前そういうの興味あったんだな」

「兄さんが一緒に寝てくれない日に兄さんの服着せて一緒に寝るんです」

「……うん、お前はそういうやつだよ」

シャルとカタラはかなり仲良くなっているな、兄として嬉しい限りだ。

「おぉっ!? このネックレスはまさかあの偉大な職人の……ぁあっ!? 石が割れて……!?」

査定士が熱くなっているのは初めて見たかもな──いや、俺を売った時はこれ以上の大声を出していたな。お前なんかに売るかって……あの時は絶望を感じていたけれど、今思えば査定士のあの反応は嬉しかったな。

「……ふふ」

そっと査定士の隣に座り、肩に頭を預ける。

「すまない後にしてくれ」

「ご、ごめんなさい……」

興味のあるものだけ見ている査定士、ぬいぐるみのほつれを修理し始めたシャル、縫い方を教えるカタラ──こいつらの中で一人、真面目に作業を続けるのも馬鹿らしいな。

「俺ちょっと子供ら見てくるよ、出来ればネメスィと交代する」

返ってきた生返事二つを背にドラゴン達の元へと駆けた。一番に俺を見つけたのは俺の子である黒いドラゴンだ、みんな俺に懐いてくれているが、やはり一番俺に懐いているのはこの子だな。

「ぴぃ! ぴゅうぅっ、ママ! ママ、おかえリなさい」

「あぁ、ただいま。いい子にしてたんだな。よし……撫でてやる、そこを動くなよ」

「ぴぅ……? ぴ! 動カない」

ピタッと動きを止めた黒いドラゴンを見上げ、意識を集中させる。満腹の今なら魔力は十分なはずだ、あとは空を飛ぶイメージで頭をいっぱいにするだけだ。

「……っ、浮いた……よし」

身体が浮いたのを確認して頭羽と腰羽を無意味に揺らし、ゆっくりと上昇して黒いドラゴンの頭を目指す。

「ぴぃぃぃ……!」

黒いドラゴンの瞳の輝きが増しているのは錯覚ではないはずだ。

「よっ……と、着いた着いた」

黒いドラゴンの額に着地。そこに屈み、ひとまず安堵。

「ぴぃ! ママすごイ、飛ンだ!」

「ありがとな。もう動いていいぞ。よしよし……いい子いい子」

硬い鱗を撫でながら思う、こんなに硬い鱗に触られて何か感じるのだろうか……と。俺が全力で殴ったって何も感じなさそうな気がするが、ドラゴンは撫でてやると気持ちよさそうに鳴く。

「ぴぅるるるる……」

まるでトンビの鳴き声だ。撫でていると分かっているからこんな声を出しているわけじゃないよな? 一旦手を止めてみよう。

「るる……ぴっ? ぴぅ、ママ、いーこいーこ、終わリ?」

額の様子が見えるわけはない、触覚はかなり鋭いようだ。

「あぁ、終わりじゃないよ。いい子いい子」

俺の手の感触がしっかりと伝わっているなら何も言うことはない。撫でがいがある、もっと頻繁に長時間撫でてやらないとな。

「いい子、いい子……痛っ」

手のひらに痛みを感じて見てみれば、ぱっくりと皮膚が裂けていた。鱗の端で切ってしまったようだ、撫でる場所には気を配らないと危ないな。

「ぴぅ? ママ? ぴぃぃ……どーか、しタ?」

「ぁ、あぁ、いや、なんでもないよ。ありがとうな、いい子だなぁ」

鱗を汚した血をドレスの裾で拭き、不意に思う。なんでカタラもネメスィも査定士も、俺のドレス姿に何も言わなかったんだろう……と。

「……なぁ、お母さん今ちょっといつもと違う服着てるんだけど、どう思う?」

コツを掴んだ浮遊の術で黒いドラゴンの顔の前に浮かび、くるりと一回転して裾をふわりと広げる。

「ぴぃ……? トリの、お尻みたイ」

「鳥の尻? あぁ、スカートが尾羽っぽいってことか? なるほどなぁ、子供の発想力ってすげぇわ」

ドラゴン達は人間社会のことなんて一切知らない、俺が着ている服は基本的に女性が着るものということも──そもそも雌雄の概念はあるのだろうか、この場にいる者は全員男だ。しかも俺は男でありながら母親だ、あるわけがない。

「ひらひら、して、キレイ! ママ、きれい!」

「……ひらひらしたもん好きか? そっか……お前が気に入ったんならこのドレス私服にしようかな」

ひらひらが鬱陶しくてさっさと脱ぎたく思っていたが、子供が喜んでくれるなら着ていよう。子供に女装を見せるのは抵抗があるが、雌雄の概念すらまだ持っていない上に全裸が基本のドラゴン達に毛のない猿が身に纏う布の形がどうだなんてバカな話だ。

「ぴぅ……?」

「いつもの服よりこっちが好きなんだろ? 明日も着とくよ」

「ぴぃ! ママ、ひらひらキレイ。ぴっ、ひらひらだト、ママ見つけヤすい」

「見つけやすい……? 俺、そんな景色に紛れるか?」

そりゃ他の奴らと違って派手な髪色はしていないけれど。

「ぴ。ママ……ママ、もうドコか、行かないで欲しイ。ドコか行っても、見つけやすイように、ひらひら着てて」

「…………もう、もう二度とどこへも行かないよ、もう……二度と可愛い我が子と離れるもんか!」

黒いドラゴンの鼻先に抱きついて涙を誤魔化して笑う。
ドラゴンが喜んでくれたのも、ドラゴンがくしゃみをしたのも、それで俺が吹っ飛ばされたのも──言うまでもない話だ。
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