『ルームメイトの服を着てナニしているのを見られちゃいました。』他、見られちゃった短編集

『同級生に女装コスプレしてたのを見られちゃいました。』

【閑話】とあるコスプレイヤーたちの会話(姉side)

とあるコスプレイヤーside

 

私は宮本京子。
生粋のコスプレイヤーにして、生粋の腐女子である。

私は今、とても真剣な話し合いをしている。

ここは私の自室。部屋には私以外に３人の女性がいて、ローテーブルを囲いながら皆が真剣な表情をしていた。

 
「……私、前から思ってることがあって…。」

私の同級生で親友でもあるリカが、緊張した面持ちで話し始めた。私たちも固唾を飲んむ。


「於菟くん、『ルナ』にすごく似てない？」

『ルナ』とは、今人気爆発中のアニメに出てくる、美少女キャラだ。魔法学園に仲間と一緒に通う魔女っ娘で、恥ずかしがりやな美少女。

 皆が一斉にリカを見て、首を縦に大きく振る。


「っ！それ！私も思ってた！！」

美人サバサバ女子のミコトが、テーブルに身を乗り出して興奮気味に叫んだ。
 

「あの、恥ずかしそうで控えめな様子とか、マジでドンピシャだと思うの。」

 ミコトは、力がこもった声で力説した。興奮しているのか、鼻息が荒い。


「だから、於菟くんにどうにかして、次のイベントに参加してもらえないかな？」

チラリとこちらを伺うようにリカが見てくる。

リカは昔から弟の弟を可愛がっていた。
黙っていれば女の子に見えてしまう我が弟。線も細くて美少年だ。

我が弟の姿を見ると、リカは創作活動がメチャメチャ捗るらしい。
 

「う～ん。子供のときに女装して一緒に出掛けたことはあるし、コスプレに抵抗はないと思うけど……。さすがに高校生だしな～。引き受けてもらえるような理由がないとね……。」

男子高校生は思春期真っ只中だ。
普通の姉弟よりは、仲が良いと思うものの、さすがに趣味に付き合ってコスプレまでしてくれるだろうか？


「コスプレ仲間が、急遽仕事でイベントに来れなくなった事にしたら？直前であれば、於菟くんも仕方なく手伝ってっくれるかも……。最悪、於菟が出なくても、背格好の似ている私が出ればいいし……。」

腐女子２号、おっとり系社会人のホノカがマイペースに提案する。

口調はおっとりだが、言っていることは結構強引だ。於菟にコスプレさせる気満々である。


「ていうか、男の娘というパワーワードがすごいわ。もう、フラグとしか思えない。」

 リカ、少し頭の中をBがLすることから離れなさい。


「コスプレで女装しているのがバレて、脅されてえちえち展開とか萌えるよねー。」

腐女子３号の社会人、美人サバサバ女子ことミコトがうっとりとした様子で語る。


ミコトは弟に初めて会ったときに、雷に打たれたような衝撃を受けたらしい。

『なんて可愛いの！私の弟になって！』と於莵に迫っていた。

於莵の素直な美少年っぷりに、骨抜きにされている。
ショタとかが好物の少し変態さんだ。
この人が一番、於莵にとっては危険かもしれない。


「於菟くんに、めちゃくちゃ似合う。可哀そ可愛い的な感じ。」

うんうんっと、ミコトの言葉にリカが同意している。


あー。分かるわー。
涙目で戸惑いながらも、流されちゃう可愛い男の娘。


「年上のイケメンコスプレイヤーに、女の子と勘違いされて口説かれてー。あれよあれよと連れ込まれて、男の娘だとバレる？みたいな？」

 おっとりとした口調だけど、言ってることは中々にハードだ。ホノカもやはり生粋の腐女子である。

ちなみに、ホノカが一番好きなのはハード系。
無理矢理とかが大好き。


「……なんか、創作意欲がめちゃくちゃ沸いてきた！！」

生粋の腐女子４号、同級生のリカがメモを取り出して何か書き始めた。次の新作のネタかな。

最新作が完成したら私にも見せてほしい。


「そうと決まれば、衣装のデザインを決めないとね！やっぱり王道の制服でしょ！学園修行編のこの衣装にしない？」

 それは激しく同意だ。あの制服は絶対に外せない。


「あのセピア色のセーラー服とか、於菟くん絶対似合う。」

 考えたら鼻血でそう、とショタ好きミコトはにへらっと笑った。美人が台無しだよ。


「もちろん、原作を忠実に再現するよ。ブカブカのコートに萌え袖。帽子も被らないとね。」

 ホノカは全体の衣装監督。もちろん、私たちも自分達で衣装を作る。だけど、今回はグループだから全体の雰囲気とかが大事になるのだ。


「男の娘の萌え袖……。ああ、なんていい響き…。」

想像しているのだろう。ミコトはうっとりとした様子だった。

 
「絶対、於菟くんなら美少女じゃん。もう、変なおじさんとかに写真パシャパシャ撮られるかもよ？」

 写真をいっぱい撮られて、恥ずかしそうにしている於莵の姿が目に浮かぶ。

萌え袖コートにセピア色のセーラー服。
羞恥で少し赤らんだ頬。銀髪の美少女。

うん。とっても可愛い。


「……知らない人に、鬼畜攻め…。」

不穏な言葉がリカから聞こえてけど、創作意欲が湧き上がっていて何よりだ。


それから、私たちは衣装作りで忙しい日々を過ごすことになった。


後日、弟の於菟から、『友人に頼まれて、彼女のフリをすることになった。女装を手伝ってほしい。』と言われたとき、私は「あっ、やっぱりフラグだったわ。」と思った。

 
そして、なんだかムフフな展開になりそうと狂喜乱舞したのだった。

 
ちなみに、美味しいお話は皆で共有するのが私たちのポリシー。

於菟の『友人の彼女のフリ』話をしたところ、腐女子仲間はキラキラと目が輝いた。

ある者は於菟の女装姿の写真を見て鼻血を出し。
ある者は「最高のネタ、ありがとうございます！」とペンを走らせて。
ある者は「あらあら。……食べられちゃう？」と呑気に宣った。


今日も、乙女たちは元気に生きている。