Deity

谷山佳与

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第2章 目覚めと、自覚と、狙う者編

お迎え 春宮side

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時平が、妃捺という名の姫だと発覚した時、私はどうしようもないほど、歓喜に震えた。
表面上は変化は無かっただろうが、母上あたりが今の俺を見ればすぐ分かるだろう。
と、同時に彼女の傍に居る者達へ対しての嫉妬と言う醜い感情を自覚してしまった。
彼らが彼女へ向けるのは、親愛。敬愛。
彼らが仕える主に対して、甘過ぎるほどの愛。
そして、それを普通に受け取っている彼女は、慣れている。
恐らく、いや確実にその環境下で育って来たのだろう。

先程父、今上帝によばれ、私室を尋ねれば母が傍に座っていた。
体調が、最近は良くなってるという。
特にひと月ほど前から。

ひと月前というと、彼女が結界を張り梨壺を浄化してくれた辺りだ。
その後も、内裏内で結界を強化していたり、承香殿で舞を舞っていたりそういった姿を見てきた。
そして、呼び出された内容というのが、五節舞の当日安倍邸へ彼女を迎えに行くというものだった。

「時、彼女は、来るのですか?」
「先程了承の文が届いた。としての参内となる。私の客として呼ぶから、春宮が迎えに行くのが妥当だろう。母后と彼女へ贈る品を選んでやってくれ。」
「贈り物てますか?」
「かの姫は、我らと、同じ血を宿しておる。かの姫が本来いる時代、帝の姪に当たると、本人からきている。それなりの物を選ばねばな。」
「皇族の血を引いている…。しかし、彼女は晴明と同じだと。」
「かの姫は、父を安倍家直系の陰陽師、母を直系皇族の内親王との間に産まれた姫だと聞いている。なにより、皇族の宮を婚約者として、大事に育てられてきた。本人は、あまり、興味が無いようだがな。母后と、一緒に選ぶがよい。私は晴明と話さねばならぬ事があるのでな。」

父が衝撃的な言葉を残し、室を出た後、女房達が様々な物を俺と母の前に並べると、母が人払いを命じた。

「春宮は、かの姫が好きなのかしら?」
「え?」
主上あの方が、発する言葉に一喜一憂しているのですもの。私は会った事はないけれど、私の回復にはその姫が関わっていると、あの方にも晴明にも言われたわ。だから、姫の後見を名乗り出たの。血筋的には、どの姫君達よりも貴方にふさわしいわ。婚約者がいらっしゃるのは残念だけど。それでもここにいる間は母替わりに近いものを感じてくれれば嬉しく思うわ。」

俺しか子が居らぬ、母は嬉しそうに品物を眺め、私や父、晴明から聞いた人柄で選んでいるのだろう。
気に入ってくれればいいと選んだのは、菊を模した髪飾り。
当日彼女が付けてくれることを願い、自身の色である黄丹の房を忍ばせた。




当日安倍邸へ迎えに行った俺は、着飾った彼女にめをうばわれた。凛とした彼女はどの姫君達よりも美しく、気品に溢れていた。

"菊華"という名に驚いてはいるものの、素直に受け取り牛車に乗り込んだ。
途中体調悪いことが見抜かれ、そのまま膝の上に頭を乗せられた。
しばらくすると、落ち着いたのかそのまま久しぶりに眠りについた。
やはり、彼女のそばは落ち着く。
是非、私の妃にしたいと、願いながら。
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