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第6章 超神話級ガチャ

第85話 音楽家と小説家

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 音楽家ジージージの役割は戦う事では無かったはずだった。
 他の仲間達がジスタラン王国のオリハルコン城壁の外側で支離滅裂戦争をしている中。
 沢山のジスタラン王国の住民は不安にさいなまれていたはずであった。
 だが音楽家ジージージの【スキル:演奏演舞】の力により音楽家ジージージの気持ちしだいで周りの気持ちを操作出来る。
 さらに【スキル:幻覚演奏】で演奏を聞く者に見た事も無い光景を見させる事が出来る。

 いまだかつてあっただろうか戦争中なのにジスタラン王国の住民はお祭り騒ぎで喜んでいるのだから。

 辺りには1人の音楽家ジージージが曲を奏でる。
 バイオリンを弾いたりピアノを弾いたりアコースティックギターを弾いたりトランペットを吹いたり。

 音楽家ジージージは遠隔操作であらゆる楽器を操作していた。

 その時だった。
 1人の老婆が不気味な笑みを浮かべながら1冊の本を開きつつ歩いてやってきた。
 音楽家ジージージは指揮棒で挨拶して見せると。

「これはマダム、ここは音楽の舞台ですぞ」

「そのサングラスと緑の丸い鼻いかしてるねー」

「それは有難うございます。子供の頃に事故で目と鼻を失ってしまいましてね、音の力で方向を定め、人の心を見る事から音響殺戮機なんて呼ばれてましたよ15将の小説家マハイさん、その心の中には夢想無限の世界が広がっている。このわたくしの力では底までは覗く事が出来ないようですねぇ」
「ふぁっふぁっふぁ、あたしの心を覗くだって。そりゃー無理なもんだい。あたしの心の中には無数の世界が広がっている。あたしは心の中に世界を構築する小説家だからねぇ」

「そうでした。あなたは小説家ですねマダムマハイさん」

「さて、この音楽をやめて貰ってもよかろうかねぇ、この国の住民にはパニックになってもらいたいんだがねぇ」
「はてさて、そんな事は出来ませんねぇ」

「じゃが、お主、住民の心を操るかあたしの心を操るか選択は2つに1つじゃないかねぇ? ふぁっふあぁふぁ」

「まったく、残念ながら戦いようはいくらでもあるんですよ、音響殺戮機を舐めないでもらいたい。デュエットと行きましょう」

 すると楽器たちが演奏を繰り広げている最中。
 音楽家ジージージは右手と左手に指揮棒を握りしめだした。
 左手が住民を操る演奏なら、右手は小説家マハイを操る演奏だ。

「残念だがあたしはそう簡単には操る事はできないんだよ」

 小説家マハイはにんまりと微笑んで見せた。

====小説家マハイ====

 子供の頃から物語を書く事が大好きであった。
 いつしか小説家になる事が夢であった。
 夢の果てに小説家になったがそれは少し違っていた。
 彼女の心の中では無数の世界、つまり小説世界が構築された。
 そこにいる想像上の住民達と幻想的な世界は現実世界に出す事が出来るが、制約があった。
 読んだ小説の記憶が1時間出し続ける事により1冊分消滅するという事だった。

 彼女が今までに読んだ小説の本数は13290万冊とされ、力の行使の連打により現在は残り100冊までの分しか使用できない。

 小説を読めば更新できるが。現在彼女は老眼になり小説を読むのもままならない。
 読破した全ての小説の記憶が消滅するという事は彼女自身の消滅を意味する。

 その力に目覚めた時、ファイガスタ帝国の帝王に認められた。
 多くの国を滅ぼして来た。
 
「回想は終了で、これから面白い小説演劇を見せてあげようじゃないさね」

 老婆はゆっくりと前を向いた。
 音楽家ジージージの黒いサングラスと緑の鼻を見てくっくと笑い。
 本を開いた瞬間。
 世界が構築された。

====音楽家ジージージ====

 音楽とは曲であり詩であるとかつての師が言っていたような気がする。
 小説の物語は曲になりえるし詩になりえるだろう。
 だが今目の前を覆いつくしている光景は絶景のエメラルドグリーンの森となっている。
 今、現在進行形でジスタラン王国は森に変貌している。

 それが小説家マハイの心の小説世界の現実化を意味する事だと理解した。
 
「少し演奏を変えますかね」

 さすがにジスタラン王国の住民達は城の中が森へと変貌した事によりパニック寸前に陥っている。
 だが音楽家ジージージの左手の指揮棒演奏により皆お祭り騒ぎを再開した。

「さぁ、行きなさい精霊の物語。シルフィードは踊る天国までさね」

 突如巻き起こる突風。
 突風は鋭い刃物のように音楽家ジージージをかすめようとする。
 だが音楽家ジージージは右手の指揮棒を巧みに演奏させる。
 小説家マハイの気持ちを操作する事は出来ない。
 幻想を見せる事だって出来ない。
 なぜなら彼女自身が作る者なのだから。
 ならどうする方が良いかと言うと。
 音楽家ジージージの結論は最初っから出ていた。

「ハイになりましょうか」

 右手の指揮棒を操り、別な箇所の楽器たちを操作する。
 エレキギターを操作している。
 これはカイル様のガチャ品の不必要な物だったものを倉庫から引張だしたもの。
 演奏のコツは音と電気を介して理解したつもりだ。

 心の底から響き渡るロックンロールが流れる。
 音楽家ジージージは自らの気持ちを操作していた。

 それは。

「滅茶苦茶ハイになりましょう」

 心がどんどん上がっていく。心臓がばくばくしていく。
 踊りたくて仕方ない。
 音響殺戮機の所以。
 それは自らを音楽でハイにさせ最強になる事。
  
 彼の右手の指揮棒でシルフィード達を一閃してしまう。

「ふぁふぁふぁ面白いねぇ、あんた」

「それほどまででもありませんよ?」

 音楽家ジージージ―は思いっ切り地面を蹴り上げた。
 空高く舞い上がり。

「ひゃっはー」

 と叫んだのであった。

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