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冒険の旅

港町の聖女2

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「失礼いたします、神父様はおいででしょうか?
 私は各地を旅して周り布教をして居る者です。」
 聖堂の戸を開いて声を掛けると、丁度祈りを捧げている所だったシスターが振り返る。
 そのシスターは、私を見るや、小走りに近寄って来た。
「お待ち申し上げておりました、聖女様。」
 ん?どゆこと? まるで私が来るのを知って居たような口ぶりじゃ無いか。
「貴女は?」
「私は、貴方様に教えを乞うようにとこちらの世界へと呼ばれた者です、前世では医療従事者でした。」
 成程、要するにこいつにナノマシンを寄生させて回復魔法を使えるようにしてやれって事か。
 あの糞ジジイにしてはちゃんと仕事してやがるって所か?
 でも待てよ?あのポンコツ糞ジジイにしては用意周到過ぎる。
「判りました、ですが、その前に一つお聞かせ下さい、貴方を転生させた神の名は?」
「はい、私を転生させて下さった神は、伊弉諾尊様です。」
 何だってぇ?!この間私が祝詞唱えたからってリアルタイム過ぎるだろ?
 っつーかこっちの神、あの糞ジジイは何やってんだよ!
 しかもこのシスター、クリスより年上にしか見えん、つまり18年以上前にこっちで生まれている事になる訳だろ?
 神には時間の感覚ってあんまし無いのか?
「判りました、御神託を頂いているなら話は早いので、医療魔法を使えるように祝福をお授け致しましょう。
 ですが、この教会の牧師様は居られるのでしょうか?」
「今現在、自室に籠られて居ります、何故か聖女様とお会いになりたくないとの事で・・・」
 どゆ事??? 意味が解らん。
「構いません、ですが寧ろ私の一存で勝手をするのは本意では有りませんので、意地でも牧師様には目通り頂きます。」
 ここは押し負ける訳には行かないな、何で会いたくないのかも気になるので私は維持で会う!
「仕方ありません、一応お伝えします、少しお待ちになって頂けますか?」
「待つのは構いませんが、そう簡単に曲げてお会いになれるとも思えませんので、ご一緒させて頂きます。」
 ごり押しで会う、何か此処の牧師は何かあると思う。
 それに、何故このシスターが転生者にしてあの糞ジジイではなく伊弉諾尊に転生させて貰ったのかも、ここの牧師に会えば解るんじゃ無いかと思う。
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「失礼致します、アスム牧師、聖女様がどうしてもお会いになりたいとの事なのですが。」
 ・・・名前も胡散クセエな、私の予想通りならば尚更会っておかなければ。
「イヤですっ! 聖女とは絶対に会いたくない!」
「へぇ~、可笑しいじゃん、聖女と会いたくない牧師だって?
 はッはぁ~ん、私アンタの正体判った気がするんだけど?
 あ・す・む・さん。
 お前落とされたか!アスモデウス!」
 シスターの背後に付いて行って正解だった!
「くっ! ついて来てたのかっ!何と卑怯な奴よ! エリーよ!
 貴様さては俺様を笑いに来たなっ!?」
「え?え?えぇ~?」
「アハハハハハ!やっぱそうだったんだ! ばっかでぇ~!
 世界の管理も碌に出来ねぇんで八百万の神々の末席から引き釣り降ろされてやんの~!
 私とかこの子らに丸投げばっかしてるから駄目なんだってば~!
 ぎゃははははははははは!!
 あー可笑しい、お腹いてぇ~。」
「くぅっ! 覚えて居れよ! 天へと戻った暁には貴様に天罰を下してやる!」
「もしかしてアホの子なの?
 あんた未だ天に帰れるとか本気で思ってんの?
 んな訳ねぇじゃ~ん。 くっくっくっく。」
 マジでわき腹痛てぇ、笑い過ぎた。
「え、何で? 馬鹿なっ! え?帰れない? 何で??」
「お、お願い、これ以上笑わせないで、マジで腹いてぇ・・・クククク・・・、あ、あのさ、世界一つダメにし掛けて神に戻れるとでも?」
「え? ・・・マジで?」
「くくくく・・・お、お腹痛い、お願い笑わせないで、マジだよ!」
 ショックを受けるアスモデウスこと、アスム。
 あ、待てよ? アスモデウスがこっちに落とされたって事は?今この世界に神は不在?
 いや、シスターは伊弉諾尊に連れて来て貰ったっつってたな、てことは、日本の神々がこの世界の管理を代行して居ると言う事だろう。
 いい気味だよねぇ、丸投げするのも大概にしろってのよ全く。
「で? あんたは何か言われて落とされたんじゃ無いの?」
「貴様の手伝いをしながら、世界の育て方を学べと言われたのだ、何故私が、最強の人物とは言え人如きに学ばねば成らんのだ。」
「アホの子だから?」
「アホの子言うな!」
「だってアホの子じゃん、与えられた権能何一つ生かされもせずに荒れ放題の世界にしてからに困ったら地球の人間引っ張って来て丸投げなんて都合も調子も良すぎるっしょ?
 大人しく私のやること見てろよお前。」
 もう一度会ったら蹴飛ばしたかった衝動にはやはり抗えずに思いっきり蹴飛ばしてやった。
 こいつを仲間にするのは不本意だが、まぁさんざ笑って留飲下がったから良いか・・・?
 いや、許しては居ない、だから一緒に行動なんかしたくねぇ。
「ただし、余計な手出しは要らん、見てるだけにしといてくれ、邪魔だから。」
「どうしろと言うんだ?着いて来るなと言う事か? だったらどうして見て居れば良いと?」
「ふん、そんなの、お前元神なんだから持ってるだろ、千里眼くらい。
 ここで大人しく牧師しながら見てろよ、精々私が成す奇跡や聖遺物とお仕置きの飴と鞭の人心掌握を見て学ぶが良いさ。」
 手始めにここのシスターに医療魔法と、ポーションが作れるように闇魔法の全てを、その為の電脳化だな。
 今の私で臨床実験済みの、電脳化手術の要らない電脳ナノマシンで電脳化して、元々知っているであろう医療技術に更なる追加情報と魔法をインストールする事にした。
 ちなみにアスモデウスには何もしてやらん、っつーか自分の権能いくつもあるんだからそれで自分で奇跡でも何でも起こせば宜しい。
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「では早速、私はエリー・ナカムラ、元マッドサイエンティストだ、貴女は何年の地球圏から来た?」
「やっぱり、エリー師匠でしたか。
 私は、宇宙歴42年です。」
「なんと、では電脳化手術に関しての知識もある?」
「はい、電脳化はエリー師匠から直々に習いました。」
「え? もしかして、貴方は・・・」
「はい、覚えてらっしゃいますか? 前世では男性でした、以前の名はマイルス・スベンソンです。
 今はアリエッタです、アリスと呼んで下さい。」
 覚えている、あの子も私の子孫だった。
 まさかこんな所で再開するとは。
 あの子は特に優秀で、私の全身義体のメンテナンスを20年くらいやってくれていたっけ。
「勿論覚えてるとも、そしてすまなかった、君には伝えてあげられなかったが、実は君は私の子孫に当たるんだよ。」
「知ってました、実は、趣味で自分のルーツを辿ると言う調査を、調査機関に依頼して居たので。」
「良くそれで辿れたものだ、私の記録は有る時を境に完全に途切れた筈なのに。」
「ええ、途切れたそこまでしか辿れなかったので、ある事件の都市を境にして居たので多分そう言う事なのだと思って居たのです、そして私の先祖に当たる人々は皆貴女と関りが何かしらあったので、後は予測ですが。」
「そうか、君は特に優秀だったからな、再会出来て嬉しい、電脳化をさせてくれ、手術は要らない事になってる。」
 と言いながら彼女の体に電脳化とメンテナンス用のナノマシンを寄生させていく。
「要らないんですか? 師匠は何処まで行く気です?」
「さぁね、ただ、この世界の神が今のアイツだと考えたら、代行して管理している日本の神々は私を神にでもする気なんじゃ無いかと勘ぐってしまうけどね。
 でも私は簡単に寿命を全うする気は無いよ、前世のようにね。」
「師匠らしいです、こっちではどんな事してるんです?」
「義体を作って、後は、魔法を作ってるな。」
「え?魔法作っちゃったんですか?
 相変わらず出鱈目なんですね、凄いです。」
「君には医療技術を生かして、医療魔法と、こっちに来て完成した新型義体のノウハウをインストール、闇属性創成魔法による義体の合成を出来るようになって貰う。」
「新型? こっちに来て出来たんです?」
「ああ、私と一緒に来た夫婦冒険者、あの二人も全身義体だぞ。」
「本当ですか?全然義体に見えなかった。」
「こっちで見つけた金属が無いと完成しなかったよ。」
「やっぱりこっちにしか無い金属って幾つかあるんですね。」
「うん、まぁね、何種かは見つけてるよ、あ、それと、ソロソロ電脳の接続が終わる頃だから今の内に言っとくね、闇魔法を一通りインストールしてあるから、医療魔法と創成魔法が使えるようになってるからね。」
「それは、もしかして。」
「そう、闇魔法クリエイトで全身義体も作れるって事、それと闇魔法として次元収納が使えるから、今私が持ってる材料の半分を置いて行くからとっときなさい。」
「この世界に義体を広めちゃっていいって事ですか、やり過ぎじゃ無いですか?」
「私も初めはやり過ぎかとも思ったんだけどね、モンスターが居て大怪我をする可能性が高いこの世界でこそ必要だと思う、だから気にすんな?」
「でも、あんまりやり過ぎると・・・」
「大丈夫、この世界の神はアンタの隣で今しょぼくれてるおっさんだから。
 天罰も無いし、むしろ教会でそんなことが出来るなら聖遺物とか、神々の奇跡とか言ったりして信仰の対象になると思うよ、じゃんじゃんやっとけ?」
「はぁ・・・わかりました。」
「あ、それと、こいつもう神の座を追われてるんだから信仰対象勝手に変えて良いぞ、伊弉諾様でも何でもな。」
 こうして、この港街に聖女が誕生したのであった。
 そして、何故か信仰対象が、神の御使いで初代聖女とされ、私の像が建ってしまう事を、私はこの時、未だ知らなかった。
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