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1、『ブックカフェ ラーシャ』
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「先生! なんで言ってくれなかったんですか!」
「普段の様子をみようと思って。それにいつ気がつくか試してた」
「じゃあ、初めて会った日からわかってたんですか?」
「そうだ。それに、あの時私はサラーシャ様とは言ってもソシリス王国の姫とは言ってないぞ。あまりパーティーにも出てないから、名はそこまで知られてないはずだ。もっと考えてから言い訳しろ」
そうだったんだ……。先生から真相を聞いて一気に気が抜けた。あんなに頑張っていたのに、無意味だったとは。
王女のことを話す時は声を小さくしてくれるけど、ここだと聞かれそうで怖いな。別のところで話したいと思っていると、カイルさんが不思議そうに聞いてきた。
「すまんが、お互い知り合いだったのか?」
「あ、カイルさん。はい、私の家庭教師だったテナード先生です。今まで気づかなかったんですが、かなりお世話になった方でして……」
「サラの家庭教師だったテナードだ」
「しばらくの間、ここで護衛をしているカイルだ」
2人が挨拶をしている。先生と色々話をしたいけど、誰にも話を聞かれない場所といえば……
「先生! お話があるので、営業時間後に私の部屋に来てくれませんか?」
「わかった」
「部屋!?」
なぜかカイルさんが驚いている。別に数年前までは私の部屋で授業受けてたし。
「ヒナも行きたい!」
「あ、ごめんねヒナ。2人だけでするお話があるんだ。また今度先生と一緒にお話しようね」
ヒナも来たがったが、これは誰かに聞かれてはいけない。私がいなくなった後はどうなっているのか知りたい。そして、捜索隊がどうなっているのかも。
「別に店内でもいいんじゃないか?」
「でも、あまり聞かれたくないことだから……」
わざわざ部屋に行く必要はないとカイルさんが提案してくる。だが、店内だと誰かがきたら知られてしまうため断った。先生はこの様子をみてクッと笑っている。
カイルは納得しなかったようだけど、ここでの話は終わらせ業務に戻った。私たちが話している間、テルが頑張ってくれたらしい。
お客さんも帰り際は災難だったね、などこちら側に好意的な言葉をかけてくれた。
そうしているうちに、最後のお客さんが帰った。一旦外へ出ていた先生も、ついさっき戻ってきている。
「お待たせしました、先生。こっちに部屋があります」
片付けを3人に頼んで、先生を自室へ連れて行く。軽く椅子とテーブルをきれいにしてから向き合った。
「早速なんですが、私が国を出た後のことをききたいんです」
「わかった。しかし私も今はここにいるから、最近の様子はわからないがいいな?」
「はい」
頷くと、私が城を出た後について教えてくれた。
「最初は誘拐の疑いがあったが、何も身代金などの要求がないこと、お前の部屋から本や宝石類がなくなっていたことから自分で脱走したと結論が出された。そして、もちろん捜索隊も出動している。けれど、国内を探しているだけだ。それに王妃の指示かはわからないが、あまり本気で探しているようには見えない」
「そうですか……」
ひとまずは見つからなそうだと安心した。そして、続きをうながす。
「とりあえず知っているのはこれだけだ。それでもう1つ言いたいことがある。さっき、ここに置いてある本が貴重だと言ったよな。お前、あれは城に置いてあった本だろう」
「え、そうですけど……。部屋に置いてあったものを持ってきました」
「つまり、お前の部屋にあったということは城の中から持ってきたってことだ。城の貴重な書物をこんな雑に扱っているとは……。もし盗まれたら大変なことだぞ。今日みたいな奴に渡すなんてもってのほかだ。必ず守りきれ」
先生の言葉は目から鱗だった。そうだ。私の部屋にあったとしても、元はお城にあった本だ。貴重なものに決まっている。
もしかして、ずっと本を読みにくるお客さんってそれを知ってきてる人が大半なのかな……? 持って行かれなくて本当に良かったと心から思う。
「そういえば、先生はなぜこの国に?」
「教え子が城を抜け出して1人で暮らせているのか探しにきただけだ」
「でもどうやって?」
「私くらいの魔法士になると、人の魔力をたどれる。お前の魔力は今まで散々見てきたからすぐにわかった」
「え、すごいですね! 魔力ってたどれるんですか! あ、あと私がここにいることを国に報告しますか……?」
魔力をたどれるということに驚いたが、それよりも大事な質問をする。今までは黙っていてくれたけど、先生はソシリス王国に仕える魔法士だ。優秀で、かなり若い時からお城に出入りをしていた。それがきっかけで、私の家庭教師もすることになったのだ。
「ふん、今更だ。報告はしないから安心しろ」
「ありがとうございます!」
やっぱり優しい。口は悪いけど、本当に困った時はちゃんと助けてくれる。子供の頃に、いじめられて倉庫に閉じ込められていた時も見つけてくれた。先生は信頼できる。
それを可能にする技術も凄いけど、わざわざ隣国まで私がしっかり生活できてるか確認しに来てくれる程だもんね。
嬉しくなって、ニコニコしながら先生を見る。目線に気づくとフイッと横を向いてしまったけどツンデレなのわかってるんだからね。
頭の中が読めるのか、ツンデレだとニヤニヤしていたらデコピンをされた。
「普段の様子をみようと思って。それにいつ気がつくか試してた」
「じゃあ、初めて会った日からわかってたんですか?」
「そうだ。それに、あの時私はサラーシャ様とは言ってもソシリス王国の姫とは言ってないぞ。あまりパーティーにも出てないから、名はそこまで知られてないはずだ。もっと考えてから言い訳しろ」
そうだったんだ……。先生から真相を聞いて一気に気が抜けた。あんなに頑張っていたのに、無意味だったとは。
王女のことを話す時は声を小さくしてくれるけど、ここだと聞かれそうで怖いな。別のところで話したいと思っていると、カイルさんが不思議そうに聞いてきた。
「すまんが、お互い知り合いだったのか?」
「あ、カイルさん。はい、私の家庭教師だったテナード先生です。今まで気づかなかったんですが、かなりお世話になった方でして……」
「サラの家庭教師だったテナードだ」
「しばらくの間、ここで護衛をしているカイルだ」
2人が挨拶をしている。先生と色々話をしたいけど、誰にも話を聞かれない場所といえば……
「先生! お話があるので、営業時間後に私の部屋に来てくれませんか?」
「わかった」
「部屋!?」
なぜかカイルさんが驚いている。別に数年前までは私の部屋で授業受けてたし。
「ヒナも行きたい!」
「あ、ごめんねヒナ。2人だけでするお話があるんだ。また今度先生と一緒にお話しようね」
ヒナも来たがったが、これは誰かに聞かれてはいけない。私がいなくなった後はどうなっているのか知りたい。そして、捜索隊がどうなっているのかも。
「別に店内でもいいんじゃないか?」
「でも、あまり聞かれたくないことだから……」
わざわざ部屋に行く必要はないとカイルさんが提案してくる。だが、店内だと誰かがきたら知られてしまうため断った。先生はこの様子をみてクッと笑っている。
カイルは納得しなかったようだけど、ここでの話は終わらせ業務に戻った。私たちが話している間、テルが頑張ってくれたらしい。
お客さんも帰り際は災難だったね、などこちら側に好意的な言葉をかけてくれた。
そうしているうちに、最後のお客さんが帰った。一旦外へ出ていた先生も、ついさっき戻ってきている。
「お待たせしました、先生。こっちに部屋があります」
片付けを3人に頼んで、先生を自室へ連れて行く。軽く椅子とテーブルをきれいにしてから向き合った。
「早速なんですが、私が国を出た後のことをききたいんです」
「わかった。しかし私も今はここにいるから、最近の様子はわからないがいいな?」
「はい」
頷くと、私が城を出た後について教えてくれた。
「最初は誘拐の疑いがあったが、何も身代金などの要求がないこと、お前の部屋から本や宝石類がなくなっていたことから自分で脱走したと結論が出された。そして、もちろん捜索隊も出動している。けれど、国内を探しているだけだ。それに王妃の指示かはわからないが、あまり本気で探しているようには見えない」
「そうですか……」
ひとまずは見つからなそうだと安心した。そして、続きをうながす。
「とりあえず知っているのはこれだけだ。それでもう1つ言いたいことがある。さっき、ここに置いてある本が貴重だと言ったよな。お前、あれは城に置いてあった本だろう」
「え、そうですけど……。部屋に置いてあったものを持ってきました」
「つまり、お前の部屋にあったということは城の中から持ってきたってことだ。城の貴重な書物をこんな雑に扱っているとは……。もし盗まれたら大変なことだぞ。今日みたいな奴に渡すなんてもってのほかだ。必ず守りきれ」
先生の言葉は目から鱗だった。そうだ。私の部屋にあったとしても、元はお城にあった本だ。貴重なものに決まっている。
もしかして、ずっと本を読みにくるお客さんってそれを知ってきてる人が大半なのかな……? 持って行かれなくて本当に良かったと心から思う。
「そういえば、先生はなぜこの国に?」
「教え子が城を抜け出して1人で暮らせているのか探しにきただけだ」
「でもどうやって?」
「私くらいの魔法士になると、人の魔力をたどれる。お前の魔力は今まで散々見てきたからすぐにわかった」
「え、すごいですね! 魔力ってたどれるんですか! あ、あと私がここにいることを国に報告しますか……?」
魔力をたどれるということに驚いたが、それよりも大事な質問をする。今までは黙っていてくれたけど、先生はソシリス王国に仕える魔法士だ。優秀で、かなり若い時からお城に出入りをしていた。それがきっかけで、私の家庭教師もすることになったのだ。
「ふん、今更だ。報告はしないから安心しろ」
「ありがとうございます!」
やっぱり優しい。口は悪いけど、本当に困った時はちゃんと助けてくれる。子供の頃に、いじめられて倉庫に閉じ込められていた時も見つけてくれた。先生は信頼できる。
それを可能にする技術も凄いけど、わざわざ隣国まで私がしっかり生活できてるか確認しに来てくれる程だもんね。
嬉しくなって、ニコニコしながら先生を見る。目線に気づくとフイッと横を向いてしまったけどツンデレなのわかってるんだからね。
頭の中が読めるのか、ツンデレだとニヤニヤしていたらデコピンをされた。
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