Bグループの少年

櫻井春輝

文字の大きさ
上 下
137 / 147
第三章 Bグループの少年と藤本家

第二十八話 その瞳に映るものは……

しおりを挟む
 
 
 
「わっ――!? ひゃああああ!?」
 叫び声を山中に木霊させながら、恵梨花は慌てて亮にしがみつく。
 落下が終わったと思ったら亮は恵梨花を背負ってるにも関わらず、まるで重さを感じさせないようにストンと着地し、何事もなかったようにそのまま駆け出す。
「うわっ――!?」
 そのスピードがまたとにかく速く、今度はまた違う方向に体が置いてかれそうな力を受けて、また腕に力を入れ直す。
 必然的に恵梨花と亮はもう一分の隙間もないほどにくっついて――いや、恵梨花がしがみついている。
 そうして恵梨花の態勢が落ち着いたと亮も感じ取ったのか、更にスピードが上がる。だけでなく、右に左と飛び跳ねる。
 恵梨花に暗くてはまるで見えないが、そうやって障害物を避けて走っているのだろう。
「だ、大丈夫なの、亮くん!? こ、こんな風に走って――!?」
 恵梨花が亮の耳元に向かって声を張り上げると、亮は少しくすぐったそうに身をよじらせてから、落ち着いた口調で答えた。
「ああ、大丈夫。これでも抑えて走ってるしな。それよか驚かせたみたいだな、悪い」
「えっと――お、驚いたのは確かだけど……」
 これでも抑えてるのかと恵梨花は気が遠くなりかけた。
「なんなら目瞑ってしがみつくのに集中した方が楽かもしれねえぞ」
「……じゃ、じゃあ、亮くんの言う通りに……」
 亮の声を聞いたからか自分でも驚くほど落ち着けてきた恵梨花は、亮の言う通りに目を閉じて改めて亮へしがみついた。
 考えてみれば、亮が自分を背負って危ない真似などするはずもないという当たり前の事実に、改めて思い直せてきたのだ。特に今は泉座でギャングに追われてるような緊急事態でもないというのもある。
 なので今のプチジェットコースターを思わせるスピードと挙動は亮にとっては何でもないことなのだとわかり、恵梨花に余裕が戻ってきて、次第に体の力が緩んでくる。
「――よし、その調子で掴まってな。すぐ着くから」
「う、うん……」
 恵梨花が返事するや否や亮は更にスピードを上げたのである。
「――飛ぶ」
 その声が聞こえたと同時に、亮の体にグッと力が入るのを恵梨花は体で感じた。
 そして跳ねるように体が浮き上がったかと思えば、落下感を覚えることなくどこかに亮の足が接地した――と思ったら踏んだ場所がまるでバネのように跳ねて、亮は更にジャンプした。
 そのようなことが二度、三度と連続したところで、段々とジェットコースター気分を味わえてきた恵梨花はふと思った。
(……もしかして、木の枝から木の枝に飛んでない、これ……?)
 そのまさかで亮は恵梨花を背負ったまま、時に木の枝や幹を蹴り、地面に着くことなく三角飛びを連続させて移動していたのだ。
(あ、は、ははは……)
 思わず内心で乾いた笑い声をあげる恵梨花であった。
(……咲も言ってたけど――)
「忍者みたい……」
 恵梨花がボソッと呟くと、それが聞こえていたようで亮の肩がピクッと反応する。
「……別に忍者じゃなくてもこれぐらい出来るだろ……」
 どこか焦ったような声で、恵梨花は内心で首を傾げた。
(……? どうしたんだろ?)



「恵梨花、目開けてるか?」
 数分も走ったり飛び跳ねたりした頃か、おとなしくしがみついていた恵梨花に亮が聞いてきた。
「え? ううん、目閉じてたらなんか楽しくなってきて、そのまま……」
「そうか、じゃあ、ちょうどいいから、そのまま俺が言うまで閉じとけよ」
「? うん、わかった」
「よし、もうそろそろ着くからな」
「はーい」
 そう恵梨花が返事してからか、どうやら目的地に近づいて来たようで、スピードが落ち始めた。
「確かこの辺……ああ、あそこか――よかった、まだいてくれたか」
 そう言って方向を変えて、少し走ったところで亮は走るのをやめてゆっくり歩き始めた。
 走るのをやめたからか目を閉じてる恵梨花の耳には、少しずつ周囲の音が聴こえてきた。
 一番耳に入ってくるのは、虫の音か。この季節で、山の中だからか、色んな虫がわんさかと鳴いている。そこから耳を澄ませば、虫の音の中に川のせせらぎの音のような、水が流れる音も聞こえてきた。
 肌には夜の山中特有の湿っていて、それでいて緑を思わせる風が感じる。
 そんな静寂の中で砂利を踏む亮の足音と、水の音と、虫の音がリンリンと響く。
 亮の背中に揺られてそれらを心地よく感じていると、亮が周囲の空気を壊さないようなそっとした声を出した。
「……まだ、目開けてないな、恵梨花?」
「う、うん……もう開けていいの?」
「いや、まだ――ここで降ろすけど、いいって言うまで目開けるなよ?」
 何が待っているのか、亮の思わせぶりで恵梨花のリアクションを楽しみしてるのがわかる声を聞いて、恵梨花は期待に胸を膨らませながら頷いた。
「わ、わかった」
 亮がそっと膝を折ると恵梨花の足が地面に届く。
 踏みしめようとしたところで、未だ目を閉じたままだったために、バランスを取り損ねてしまう。
「わっ――」
 そんな声を上げるもすかさず力強い手で肩を支えられ、恵梨花は両の足で地面を踏みなおした。
「あ、ありがと」
 亮の腕に掴まりながら言うと、反対の手でそっと肩を叩かれる。
「いや――目、開けていいぞ」
「うん」
 ゆっくり目を開けると位置的に当然か、正面に立っているどこか面白がってる亮の顔が見え、クイっと顎で示された方へ視線を向けると、何か小さな光がチラホラ見えた。
「……?」
 パッと見た時は何かのイルミネーションかと思ったが、違った。
 その光は瞬いていて、それでいてゆっくり空中を動いている。
 そこまで認識してから恵梨花はハッとした。
「! もしかして、蛍――!?」
 恵梨花が興奮の面持ちで顔を上げると、亮は悪戯が成功したような顔つきで頷いた。
「正解」
「わあっ――!?」
 雰囲気のせいもあるが、この場の空気を壊したくないと無意識で思っているためだろう、抑えた声で恵梨花は歓声を上げる。
 ずっと目を閉じていたことから暗闇に慣れていた目がすぐ周りを鮮明に映し出す。
 足場が安定していることを確認してから恵梨花は思わず駆け出した。
 この場は山中にある川の傍のようで、その川に流れるように蛍が宙を泳いでいる。
 蛍に一層近づいたところで、恵梨花は足を止める。
「うわあ……」
 蛍はチラホラという数ではない、数え切れないほどいて、自然を謳歌するように光を瞬かせている。
 無警戒に恵梨花に近づいて来るのもいて、つい目で追ってしまう。
 もう少しで恵梨花に接触するかと思った蛍は、されどカーブして光のカーブを描いてまた川へと戻っていく。そこには仲間達がいて、一緒に踊り始める。オレンジがかった光だと思えば、黄色に近いもの、青っぽいような緑っぽいような光を灯らせる蛍がいる。
 そうやって宙に描かれる自然のイルミネーションに、恵梨花は知らずの内に両手を組み、言葉も無くして見入った。
「……七月の半ばも過ぎたところだったからな、もしかしたら遅くなったかもとは思ってたんだが――」
 後ろから砂利石を踏む音を響かせながら、そんなどこかホッとしたような声が近づいて来て、恵梨花はハッとして振り返る。
「どうやら間に合ったみたいだな。ここまで連れてきて空振りだったらどうしようかと思ってヒヤヒヤしたぜ」
 蛍へ向けていた目を、恵梨花に合わせた亮は安堵の笑みを浮かべながら片頬を吊り上げる。
「そうだったんだ……」
 どこか夢見心地で恵梨花がそれだけ返すと、亮は隣に並んでからかうような目を向けて来た。
「どうだ、気に入ったか、ここ?」
 夢見心地でどこか頭が回っていなかった恵梨花は、その言葉でハッとして亮を見上げた。
 そう、ここは亮が連れて行きたいところがあるなと言ってから連れてきてくれたとこなのだと、恵梨花は今更ながらのことを思い出したのだ。
 そのことを改めて認識してから、恵梨花の胸中が溢れんばかりの喜びと感謝、亮への愛情に満たされていく。
「うん――! ……亮くんっ――!!」
 感極まった恵梨花は衝動に突き動かされるままに、亮へ飛びつくように抱きつくと、歯がぶつかりかねない勢いで唇を重ねた。
「んぷ――!?」
 突然のそれを亮は目を白黒させながら受け止めた。
 首へ手を回しギューッと抱きつきながら熱烈なキスをした恵梨花はそれで治まらず、雨あられとばかりに亮の顔中の至るところへキスの雨を降らせた。
 そしてひとまず気が済んだ恵梨花は、一歩後ろに退がると手を広げ満面の笑みで声を張り上げた。
「大好き――!」
 魂が出かかってるような亮はその声にハッとして、頬を引き攣らせながら頷いた。
「き、気に入ってもらえたようで、よかったぜ……」
「うん、とっても――!!」
 そして恵梨花は振り返ってから、先ほど目を向けていたところとは違う場へ駆けた。
「……昇天するかと思ったぜ……」
 ため息と共に吐き出されたそんな疲れたような声を置き去りにして――



「ねえ、どうしてこんな――変わった場所知ってるの?」
 亮と手を繋ぎながら恵梨花が尋ねた。
「恵梨花、濁さなくてもいいんだぜ。こんな変なところってな」
「あ、はは……」
 あちこち動き回り鑑賞して、恵梨花がほどほどに落ち着いたところで、二人は川沿いをゆっくり歩きながら蛍を眺めていた。
「ねえ、どうして?」
 再度聞いてみると、亮はどこか懐かしむように言った。
「そうさな――ここ、親父が見つけたところでな」
「亮くんのお父さんが? そうなんだ」
「ああ、なんでも適当にブラついてたらたまたまここに辿り着いたらしい」
「へえー……――え?」
 感心した声から疑問形になると、亮はよくわかると言わんばかりに頷いている。
「ああ、そうなるよな。どうやったら適当にブラつけばこんなところに辿り着くんだって話だよな」
「う、うん……」
 正にそのままの疑問を抱いたので恵梨花は控えめに頷いた。
「俺もその辺突っ込んでみたんだが、親父が言うには急に山に入りたくなったとかそんな訳のわからん答えしか返ってこなくてな」
「そ――そうなんだ」
 どうやら亮の父親は話に聞いていた以上にワイルドのようだ。
「しかも、その辿り着いた時が今みたいに夜でこの季節で、蛍が山ほどいたってタイミングだったんだと」
「……それってすごい偶然だよね」
「ああ。呆れるほどにな」
 言葉にしている通りに亮の顔に呆れの色が浮かんでいる。
「ふふっ、じゃあ、お義父さんからここ教えてもらったの? 亮くんは」
 当然の帰結として、そう聞いてみると亮は首を横に振った。
「いいや。親父はいちいち俺をこんなとこに連れてくるほど情緒あるっていうか、気の利いた人間じゃねえし」
「そ、そうなんだ……?」
 なんとも返事に困った恵梨花であった。
「じゃあ、誰が亮くんをここへ……?」
 そう聞くと、亮はとある川縁の一点へ、そこに誰かがいるかのように懐かしむように目を凝らした。
「――母さんだ」
 つられて同じ方向へ目を向けていた恵梨花は、亮の返事を耳にした途端、そこに亮の母がいたのだと直感的にわかった。
「……そっか」
 同時に亮の母は亮の父に連れられたのだろうことがわかる。
 恵梨花の声に亮は頷き、そして肩を震わせ笑い始めた。
「ははっ――まあ、わかると思うが、母さんは親父にここへ連れてきてもらった訳だが、その経緯もまた面白くてな」
「え、どんな?」
「ああ。さっきも言った通り、親父は色々気のきかねえやつでな、母さんと結婚してからでも、なんというか……女性が喜ぶような場所に母さんを連れてくなんてこともなかなか無かったらしい。それで拗ねた母さんが、親父の食事を飯と梅干しだけにして数日、堪え兼ねた親父が母さんの怒りを解くために頭を捻って思いついて連れて行ったのが――」
「――ここ?」
 続く言葉を思わず恵梨花が先に言うと、亮は頷いた。
「ああ――まあ、その時の季節も幸いしたんだろう。そのおかげで親父は母さんから許しを得て、次の日からまともな食事にありつけるようになった」
「ふっ、ふふっ……」
 思わず笑ってしまった恵梨花に、亮も合わせて声を立てて笑い声を上げた。 
「ははっ……それからは親父も流石に学習したらしくてな、時折どこか一緒に出かけるようになって――その中でも、ここへは毎年来るようになったらしい」
 それはそうなるだろうと恵梨花は無言で頷いた。
 何せ、この季節、その中でも限られた期間でしか見られない上に、他に来る人もいない穴場で特別な場所だ。
 季節が来れば毎年来たくなるのも無理はない。
「でも、俺が……確か中学二年の時だったか? 親父が仕事が忙しくてここへ来るのが難しいって話になって――母さんは代わりに俺をここへ連れてきた」
「そっか……? その時が初めてなの? それまでに連れてもらえなかったのは何か理由があるの?」
 思いついた疑問をそのまま口にすると、亮はニヤニヤとした笑みを浮かべる。
「それはな、親父が恥ずかしかったらしい。こんな――なんだ、親父らしくない繊細で綺麗な場所へ母さんとデートしてたなんて俺に知られたくなかったらしい」
「まあ。ふふっ――お義父さんって、シャイなんだね」
「シャイ……なんか親父には似合わねえ言葉だな」
 首を捻る亮に、恵梨花は微笑む。
「ふふ、亮くんはお義父さんのピンチヒッターで行ったんだね。どうだった? お義母さんとのデートは?」
 からかい混じりに言うと、亮は気を悪くしたように眉をひそめた。
「いや、デートって……それはちげえだろ」
「ふーん? そう?」
 尚もからかいの笑みを向ける恵梨花に、亮はガシガシと頭を掻いた。
「まあ、なんだ。母さんも夜目はきくほうだけど、俺や親父ほどじゃないらしくてな。だからここへは俺で目と足を代用したところが強い」
「ふー……ん? 足もって、じゃあ、私連れてきたみたいに亮くんがお義母さんをここまでおぶってきたの?」
「ああ。明るければ母さん一人でも大丈夫だが、あそこまで暗いとダメらしい。それと、流石にここまでの道を一人で走る気にはなれねえって」
「そ、そうなんだ……」
 亮の母だけあって、暗くさえなければここへ自力で来るのは問題無いらしい。
「だから、初めて来た時は母さんおぶって、母さんの指示通りに走ってだな……けっこう苦労したぜ」
 思い出したのか、少しげんなりした風な亮に恵梨花は微笑む。
「でもその苦労した甲斐はあったんじゃない? こんなに綺麗な場所を見れて」
「……まあ、そうだな。母さんも嬉しそうだったし――っ」
 そこまで言って亮は慌てて自分の口を手で塞いだ。
 まるで余計なことを言ってしまったといわんばかりに。
 小中学生でも無いのだから、そこを恥ずかしがらなくてもと恵梨花は内心で苦笑するに留めた。
「そっか、お義母さん喜んでくれたのならよかったね」
 何の気もないように言うと、亮は口数少なく頷いた。
「そう、だな……」
 それから二人は暫し黙って、蛍が描く天然のイルミネーションを静かに楽しんだ。
「……そろそろ帰るか。あんまり遅くなると親父さんや兄さんにドヤされちまいそうだしな」
 程なくして亮がそう言うと、恵梨花は少しばかり名残惜しく感じながらも頷いた。
 そんな恵梨花の内心を読んだように亮は明るく笑って言った。
「なに、来年また連れてきてやるよ」
 恵梨花の顔がパアッと輝く。
「本当!?」
「ああ、来年だけでなくそれから何回でも、な」
 亮がそう考えて言ったかは不明だが、それは何年先でも一緒にいようという意思表示と違わない。
「! うんっ――!」
 嬉しくなって恵梨花は繋いでる手から腕へ抱きついた。
 すると亮はピクッと肩を揺らすも、咳払いをしてからゆっくり帰り道へと足を向けた。
「――ねえ、聞いてもいい?」
 恵梨花は亮の腕を抱えるようにくっつきながら口を開いた。
「なんだ?」
「どうして、ここへ連れて来てくれたの?」
 ここは亮にとって思い出深い、更に言うなら強く亡き家族を思い出す場所だろう。
 恵梨花がいくら亮と付き合っているからと、そう気軽に連れて来る気にはなかなかなれない場所ではと恵梨花は疑問に思ったのだ。
 すると亮はどう言ったものかと頬を掻き、そして悩んだ末に意を決したように言った。
「母さんとここに来た時にな、言われたんだ」
「なんて――?」
「ああ……」
 そこで少しまごついたようになった亮だが、苦笑を浮かべてから言ったのである。
「『亮にも大切な女性ひとが出来たら、ここに連れてきてあげるのよ』――ってな」
 そして照れたように宙へ目を逸らす亮に、恵梨花の胸にこれでもかと愛おしさが満ち溢れる。
「亮くんっ――!!」
 衝動のままに恵梨花は亮の胸へと抱きついた。
「おお!?――っと……ははっ、素直に母さんの言うこと聞いてみるもんだな」
 茶化すように言う亮を、恵梨花は更に力を込めて抱きしめる。
 そんな恵梨花の頭を亮はポンポンと触れ、そして抱きしめ返してくる。
「亮くん、なんかズルくない……?」
「……うん? 何がだ?」
 抱きしめ合いながら二人は言葉を交わす。
「何がって……どれだけ、私に亮くんのこと好きにさせる気なの? もういっぱいいっぱいだと思ってたのに、もっともっと好きになっちゃう……」
 その気持ちを表すように恵梨花の手に力がギュッと入っていく。
「ははっ、何かと思えばそいつはこっちの台詞だぜ。妙に口に合う弁当だなって思って食ってたら、もう食えないと思ってた正に母さんの味だった訳だし――それに、暖かく楽しい家族に会わせてくれて、な。だけでなく、毎日見てて飽きないほど、恵梨花はその――か、可愛いし、な。毎日のように魅了されるこっちの身にもなれよ」
 恵梨花は自分の首や耳が赤くなっていくのを自覚した。
 何とも思ってない男から聞き飽きるほど聞かされた言葉が、亮からだとまったく違う効果を恵梨花にもたらす。その度合いはそのまま恵梨花の亮に対する気持ちの強さなのだとわからされてしまう。
「うう……」
 抱きしめる手に更に力が入りながら恵梨花が思わず唸ると、反対に亮は体の力を緩めるようにし、そして回していた手を片方、恵梨花の頭に伸ばして優しく撫でた。そしてその手が恵梨花の頬へ向かうと、恵梨花も体から力を抜いて亮の手の動きに逆らわないよう顔を上向けた。
「俺がどれだけ感謝してるかわからねえだろ――?」
 至近距離で少しだけニヒルに微笑む亮に見蕩れそうになった恵梨花に、亮は続けて言った。
「好きだぜ――恵梨花」
「! 私も――っ」
 普段は照れてるからか、付き合ってから初めて亮からその言葉を聞けたと感極まった恵梨花が同じように返そうとした言葉は、されど放たれることは無く口内に溶けていった。
 何故なら、恵梨花の唇が亮のそれに塞がれたからだ。
 同時に強く抱きしめられ、恵梨花も同じように抱きしめ返す。
 虫の奏でるオーケストラを耳に、他に誰もいない蛍が灯らせ彩る夜空の下で、亮と恵梨花の二人は互いの気持ちの深さを確かめ合うかのようなキスに没頭したのであった。



◇◆◇◆◇◆◇



「なあ、本当に来るのか、桜木のやつ……?」
 同じ剣道部員で同学年の野村が、疑わしげな目を将志へ向ける。
「来るって言ったんなら亮は来るよ」
 多分、と将志は心の中で付け加えると、野村は眉を寄せた。
「まあ、同中のお前がそう言うなら……しかし、あいつ本当に俺達に稽古つけれるのか?」
「大丈夫だって。実体験した俺が保証する。何より亮は家の道場で普段から稽古つける側だし」
「でも、それって、あいつの家の武道であって、剣道じゃないんだろ?」
 自分達の会話に周囲が耳を澄ませているのを意識しながら、将志は苦笑する。
「そこは、ほら。あれから急成長した主将を見てたからわかるだろ? あと、あの張り切って元気いっぱいな感じの今の主将の姿も」
 目を向ければ、ソワソワとこれから始まる合宿に気合い十分と入れ込み気味の郷田がいて、周囲にいる者が揃って苦笑を浮かべる。
 そう、彼らの主将は、あの日に件の亮から稽古を受けてスランプを抜けると、これまでの鬱憤を晴らすように練習に打ち込み、それに比例して腕を上げていき、結果、こないだの県大会では圧倒的な実力を見せつけて優勝したのである。
 だが、全国大会で勝ち抜くかについては今一つ自信が持て無いようで、より一層練習に励むようになった。が、実力が伸びすぎた弊害がここで出る。他の部員ではもはや、満足に彼の相手を出来なくなったのだ。
 そうして物足りなさそうに練習を過ごす中で、郷田は将志と千秋の、亮から稽古を受けるという話を耳にしてしまい、亮へ直談判をした。
 結果、どう亮を説き伏せたのか知らないが亮はこの度の合宿に参加することになったのだ――それも彼女恵梨花同伴で、だ。
「……主将はどちらかというと、乱取りが目的なんだろうけど」
「まあ、確かに」
 野村の言葉に、将志は同意する。
「でも、主将あれからすげえ強くなっただろ? あの日でもいい勝負してて、竹刀じゃ防げなかったからって最後に蹴りを出してた桜木に、強くなった主将の相手が務まるのかよ?」
「それは……」
 将志は言い淀んだ。
 確かにその可能性はある。傍目からはそうは見えないが、亮がやっていた剣術の練習量というのは亮本来の拳法に比べると圧倒的に少ないのは確かで、あれから剣の腕を上げてるかは定かではない――どころかその可能性は低いだろう。
 だが、そういった懸念を常に吹き飛ばしてくるのが将志の知る亮で、その辺りのことをどう言葉にしたものかと悩んでいると、すぐ近くで女友達と話していた千秋が「ちっち」と指を振りながら話に入ってきた。
「ダメダメ、亮をそんな普通な物差しで計ってちゃダメだよ。いつもこっちの想定していることを鼻で笑い飛ばして突き抜けてくるのが亮なんだよ? そんな心配なんてするだけ無駄だって」
 明るく笑い飛ばすような千秋に、野村は怯んだ。
「いや、成瀬、その言い分ってどうなんだよ……」
「んー? あははっ、まあ、始まればわかるって! それに、あの日、亮と主将との乱取りだけど、亮は確かに本気――出してたのかな? まあ、いっか。本気出してたとしても、全力は出してないよ」
「……そうなのか? いや、それどいうい意味だ……?」
 疑わしげな野村に対して、将志には千秋のその言葉はストンと腑に落ちた。
「ああ、うん。俺もそう思う……なんとなくだけど」
「ふーん? 将志にはあの乱取りでそれしかわからなかった?」
 千秋のからかうような言葉に、将志は苦笑する。
「俺にわかるのは、亮はあんなもんじゃないってことぐらいかな」
 ぎょっとする周囲に対し、千秋はうんうんと頷く。
「ま、そうだけど……それしかわからないって亮が知ったらどう思うだろうね……?」
 それを聞いて、将志の背に冷たい感覚が走る。
「ちょ、ちょっと待てよ、千秋。亮に余計なこと言うなよ!?」
「えー、どうしよっかなー?」
「おい、千秋ってば!」
「あっははは」
 焦る将志を翻弄する千秋、周囲からしたら見慣れたものである。が――
「はいはい、ナチュラルにイチャつくんじゃねえよ。これから合宿――ってか、まだ始まってすらないってのに」
 そう言ってげんなりしているのは野村だけでなく、近くにいた男子部員達もである。
「いや、別にイチャついてなんか……お前たちは亮の容赦なさを知らないからそんな暢気でいられるんだ!」
「……あいつってそんなに容赦ない感じなのか?」
 近くで話を聞いていた男子部員に聞かれて、将志はひどく真面目な顔で頷いた。
「男には特に」
「あ、あー……」
 と、口々に言いながらその場にいた部員達が振り返った先には、あの日、不幸にもとばっちりのように亮に蹴られた田中がいる。
「桜木のやつ、あの時、碌に振り返りもせずに田中のやつ蹴っ飛ばしたよな」
「生まれたての小鹿のようだったな」
「てか、野村はよく生きてたよな」
「あれはマジで死んだかと思った」
「人って飛べるんだなってあの時知ったわ」
「う、うっせえな! 思い出させんなよ!!」
 口々に友人先輩に言われて、野村が顔を赤くして言い返す。
 そう、この野村は、あの日に無謀にも亮へ試合を挑んだ、亮いわく「剣道野郎」である――というか、ここにいる男は全員「剣道野郎」になるのだが。
「――それで? その桜木はいつになったら来るんだ?」
 副将の柳生がため息と共に言うと、将志は周囲を見渡した。
「……特に時間にルーズなやつじゃないんですけどね? 集合時間までまだ少しあるから、もう来るかと思いますけど」
「……まあ、遅刻でないのならいいが」
 今は早朝で、場所はこの一帯では一番大きな駅で、その駅前の広場を集合場所として、部員二十余名は集まっている。合宿場所へは、電車で向かうからだ。
「俺、桜木が来るより藤本さんがこの合宿に参加するのがすげえ嬉しい……」
「俺も。私服姿がまたいいんだよなー」
「そうそう。いやあ、楽しみだな」
「認めたくないが、桜木と付き合ってから日に日に可愛くなってるよな、藤本さん」
「確かに……何で、あんなに可愛いんだろうな」
「それは藤本さんだからだろ」
 恵梨花を楽しみにしている男子達へと向かう女子達の視線はなかなかに冷たい。
 巻き込まれない位置で将志が苦笑していると、彼らの眼前に一台の軽自動車が停まる。
 すぐそばのことだったので、当然のように視線が集まる中、車の後部座席が開かれる。
「遅くなって、ごめんなさい――!」
 現れたのは彼らの学校の中でも知らぬ者などいない学校のアイドル、藤本恵梨花である。
 彼女の普段の制服姿と違う、私服姿を拝めた男子連中が一斉にはしゃぎ出す。
「来たー!」
「おお……やっぱり私服姿最高」
「早朝から目にすると一段と眩しく見えるぜ……!」
「うむ、もう満足だ」
 集合時間前だというのにもう一仕事終えたような男子部員達をやり過ごして、恵梨花は郷田へ声をかけた。
「ごめんね、タケちゃん。遅くなっちゃって――あ、おはよう」
「ああ、おはよう。いや、まだ集合時間前だから問題ない」
「そっか、よかったー」
 安堵の息を吐く恵梨花を前に、郷田は落ち着かなさげにソワソワしている。
「それで、その――」
 郷田がチラチラと車を視線を送っていると、恵梨花が降りたドアから続いて誰かが出てくる。
「――皆さん、おはようございます。この合宿に参加させていただくことになりました。ハナの――恵梨花の姉の藤本雪奈です。部外者にも関わらず私のわがままを受け入れてくれたと聞けて感謝に堪えません。合宿中では自分のことだけでなく、色々お手伝いも頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします」
 車を降りて部員達を目にするなり、礼儀正しく深々と頭を下げた彼女は、顔を上げてニッコリとする。
 途端、男子部員のいる場所を中心にどよめきが起こる。
「お、おお――! 藤本さんのお姉さんだって聞いてたから絶対美人だと思ってたけど……!」
「あ、ああ。とんでもねー美人だ」
「美女だ。まごう事なき美女がいる」
「てか、藤本さんそっくりだな――!?」
「いや、藤本さんがそっくりなんだろう」
「うわ、なんて美人姉妹……」
「うわー、肌綺麗……髪も綺麗……」
「ねえ、後で化粧品とか聞いてみようよ」
「あ、そうね!」
「はー……綺麗で可愛くて……あんなお姉さん欲しかった……」
 雪奈の持つホワンとした雰囲気のせいか、女子部員からも好印象を受けたようだ。
 彼らの反応に困ったように微笑んで髪をかき上げる雪奈のその様になる仕草にまたどよめきが起こる。
「お、おはようございます、ユキさん」
 郷田が若干の緊張を浮かべながら、雪奈に話しかける。
「あ、おはよう。つよしくん。今日は受け入れてくれてありがとう」
「ああ、いえ。桜木の話ももっともだと思ったし、それを話したら皆も納得してくれたので」
「そっか、よかったわ。ふふ――」
 微笑を浮かべる雪奈に、郷田が照れたように頬を染める。
 そんな二人を遠巻きに見ていた部員達は――
「藤本さんと幼馴染だから、お姉さんとも幼馴染ってか……主将、羨ましすぎね?」
「ああ――てか、なんだ、主将わかりやすいな」
「初恋相手だろうな、恐らく。知らねーぞ。古橋さんと付き合ってるのに……」
「……古橋さんのあの無言の笑顔がすげえ怖い……」
「まあ、あんな美女に目の前で微笑まれたら彼女持ちでもああなるのはわかるけど」
「てか、妹もいるんじゃなかったか? 藤本さん」
「そういや、三人姉妹だって聞いたな」
「長女と次女があれだと、三女も必然的に――ってか?」
「だろうな……」
「てか、藤本さんとお姉さん並んでるの絵になり過ぎだろ……」
「なあ、あれはやべえ……」
 ヒソヒソを部員達が話す中、車の運転席がバタンと開かれる。
「おう――おはよう、タケ」
 そう郷田へ声をかけた男に、今度は女子部員を中心にどよめきにも似た歓声が上がった。
「な、なに、あの人!?」
「すっごい、イケメン……」
「イケメンよ、イケメンだわ、イケメンがいるわ」
「はあ……映画の中の人みたい」
「もしかして恵梨花ちゃんのお兄さん……?」
「兄妹揃って全員美形……?」
「超がつく、ね。どうなってるの、藤本家の遺伝子……」
 ざわめく女子部員と目が合った恵梨花の兄は、ニッと笑みを浮かべた。
「やあ、今日から妹達が世話になるね。どうかよろしく頼むよ」
 爽やかに言われた女子部員達は、殆どが照れたように顔を真っ赤にして、中には卒倒しかけてる者がいるほどだった。
 対して兄はそんな反応は見慣れてると言わんばかりに気にした様子もなく、車のトランクを開けて三つほど鞄を引っ張り出すと郷田へ声をかけた。
「よ――っと。じゃあ、タケ、ユキとハナを頼んだぞ」
「あ、はい」
 郷田が畏まって頷くと、兄は郷田の肩にガシッと両手を置いて、真剣な面持ちで言ったのである。
「くれぐれも、くれぐれも――頼んだぞ。ユキとハナに不埒なことを働こうとするやつがいたら……俺が許す――殺れ」
 そんなことをどこまでも真面目な瞳と共に告げられた郷田は頬を引き攣らせている。
「あ、は、はい――」
「わかってるな? 俺のこの世界一可愛い妹達を――」
 更に言い募ろうとしたところで、兄の後頭部がスパパーン! と二連打ではたかれる。
「もう! お兄ちゃん、余計なこと言わないって言うから送られてきたのに!!」
「お兄ちゃん――存在が恥ずかしいから早く帰ってくれる?」
 恥ずかしそうに顔を赤くした恵梨花と雪奈である。
「そ、そんな――!? ユキ、ハナ、俺はお前達のことを心配してだな――!?」
「いいから! 大体、亮くんがいるんだからそんな心配いらないでしょ!?」
「いやいや、ハナ! その亮くんだって、男なんだぞ!? タケ、いいか、亮くんとハナを決して二人っきりになど――」
「もう――!! 早く帰って、お兄ちゃん――!!」
 突然始まった藤本兄妹の寸劇を目にした部員達がヒソヒソ話し出す。
「シスコンだな」
「ああ、どうしようもないほどのシスコンだな」
「もう手遅れの域だな」
「あれだけイケメンなのになんて残念な……」
「てか、あんな可愛い二人が妹だったらシスコンになるのも無理ないんじゃ……?」
「……それは言えてるな」
「てか、なんだ? 桜木のやつ、藤本さんの兄妹とも親しくしてんのか? あの兄さんから桜木の名前が普通に出てくるってことは」
「みたいなだ。すげえな、家族ぐるみとか」
「……んで、その桜木はいつになったら来るんだよ?」
 その声が聞こえたのか、兄の背中を車へ向けて押している恵梨花と雪奈が小首を傾げた。
「あれ、ねえ、亮くんは?」
「もしかして……?」
「ああ、シートベルトの調子が悪くてなかなか外れなくてな……」
 兄の言葉に、雪奈が「やっぱり」と息を吐いた。
 その会話を耳にした部員達は「え?」と車へ目を向ける。
 あの兄妹と一緒に車に乗って来てたのかという驚きだ。
 今は早朝なのだ、いくら付き合ってるとは言え、彼女の家族とこんな時間から車で一緒に来るなんてと、高校生としてはなかなかに信じがたいことであった。
(流石、亮……父ちゃん、母ちゃんからも気に入られるの早かったしな……)
 意外と年上から気に入られやすい友人に対して将志が苦笑していると、亮が乗ってるだろう助手席が開かれた。
「はー、やっと外れたぜ……」
 億劫そうな表情で顔中に苦々しいものを貼り付けた亮が降りて来た。
(ん……? なんか違和感……ともあれ、やっと登場か……)
 微妙に首を傾げつつも、ちゃんと来てくれたかと将志が安堵の息を零していると、周囲が静まり返っているのに気付いた。
 見れば誰も彼もポカンとしている――藤本兄妹とあと一人を除いて。
「……?」
「へー? 亮、もうここでは隠さないんだ」
 将志が首を傾げていると、例外の一人である千秋が面白そうに呟くのを耳にして、将志は「あー」と納得の声を上げた。
(そうだ、今目にしているのは俺達が知る、中学の時の亮じゃないか)
 もう開き直ったのだろうかと将志が考えていると、恵梨花の兄が亮へ叫んだ。
「いいか、亮くん! くれぐれもハメを外さんようにな!」
「あー、はい」
「くれぐれも、くれぐれも!! ハナと二人っきりになどならんようにな!!」
「……」
「お、おい目を逸らすな――!? ちゃんと返事をしないか!!」
「もう!! お兄ちゃん!! 合宿から帰ったら夏休み中、口きかないからね!?」
「そ、そんな――!?」
「さっさと帰って!!」
 顔を真っ赤にした恵梨花に怒鳴られ兄が情けない顔になっているのを横目に、亮は自分の荷物だろう鞄を一つ拾い上げて気楽な様子で郷田へ声をかけた。
「おう、おっさん。遅くなって悪かったな」
「あ、ああ……? 桜木か……?」
「? ああ、どうしたよ、おっさん?」
「いや、その、お前――眼鏡は? 髪型も……、随分と印象が変わったが……いや、似合ってると思うが」
 そう、亮は高校に入ってから学校では頑なにやっていた地味スタイルの擬態をしていないのだ。なので、中学の時と同じく伊達眼鏡をかけてなければ、似合ってない髪型もしていない。
(まあ、合宿中ずっとあの姿するのも面倒だろうし、開き直ってそうするのも無理ないか)
 などと将志がそのように「うんうん」と納得していたが――
「は……? ――っ!」
 何のことかと訝しげだった亮は突然ハッとして、顔を、正確には目の辺りに手をやった後、ババっと自分の頭を――髪にも触れ、それから忙しなく慌てたように再び目元へ触れて眼鏡がないことを確認してから愕然とした。
「――わ、忘れてた……!」
 忘れてたんかい、と将志と千秋はガクッとズッコけてしまった。
 そこでようやくか、郷田と話している男が亮だと理解に至った部員達は一斉に叫んだのである。
「ええええええ――!? 桜木だってー――!?」
 
 
 
************************************************
これにて第三章 Bグループの少年と藤本家は終わりです。
キャラが動くに任せたら、想定してない糖度が出てきて私自信も戸惑いました。

励みになるので、感想いただけると嬉しいです!!

そしてこの話の途中から
第四章 Bグループの少年と夏休み
が始まっております。
これからもどうぞ、よろしくお願いします。


↓こちらの作品も是非↓

『社畜男はB人お姉さんに助けられて――』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/249048187/870310808

おまけツイートとか流してるので、興味ある方は是非↓のツイッターまで
https://twitter.com/sakuharu03
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:202,026pt お気に入り:12,086

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:17,318pt お気に入り:7,453

竹刀三本、心は二つ、勝負は一本

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:0

【完結】私がいなくなれば、あなたにも わかるでしょう

nao
恋愛 / 完結 24h.ポイント:15,511pt お気に入り:937

12勇士戦国絵巻

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:327pt お気に入り:0

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:136,279pt お気に入り:2,008

わたしを追い出した人達が、今更何の御用ですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:1,199

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。