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第五話 「おまえも我慢しろ」※
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「咥えろ」
乱暴に命じられ、アンニーナはまつげを震わせた。長い髪を耳にかけ、突き出されたものをそっと舌ですくいあげる。
「んん……っ」
皴のたるんだ生温かいモノに懸命に舌を絡めて、屹立を促す。勃ってもいない性器をしゃぶらされるのにも、二年もたてば慣れてくる。裏筋やカリ首に入念に舌を這わせ、竿を唇で吸いながら頭を上下させた。
ラウリは遅漏で、あともう少しのところでなかなかイケない。生ぬるい刺激に嫌気がさしたのだろうか、アンニーナの頭を両手で掴むと喉奥まで突っ込んでくる。
「……ぐぅっ、う……っ」
口での奉仕のなかで、この過程が一番苦しい。ジュルッ、ジュルッと唾液と先走りが、口の中で撹拌された。
「はぁっ、……ゴホッ」
唇から乱暴に勃起した雄茎を引き抜かれ、せき込む。思わず浮かんだ生理的な涙を袖口で拭った。
「相変わらず、人形みたいな女だな」
肩を掴まれ、寝台に押さえつけられる。シーツに顔を着けた彼女はめくれ上がった夜着を整えようと後ろ手を伸ばす。だが、夫はアンニーナの尻を掴んで、怒張した己を無造作に押しあてた。
――怖いっ!
昼間、ゴロツキにされたことを思い出す。反射的に後ろ手で夫の腕を押し返していた。
「いや、やめて……っ」
頬を上気させていたラウリが、眉間をしかめる。
「あん? 今更何言ってんだ、子どもが要るだろ? ……何のために結婚したと思ってるんだ。おまえも我慢しろ」
――おまえも我慢しろ? あなたは『我慢して』わたしを抱いているというの……?
アンニーナの顔から血の気が引いたが、それをラウリに告げる勇気はない。
「なんだよ、早く済ませたいんだろ? いつもみたいに大人しくしてればいいんだよ」
「んんん……っ!」
か細く苦し気な声が、寝室にこぼれる。だが所詮ラウリしか知らない、彼が二年かけて仕込んだ身体だ。身体は主人に従おうと、すぐに締めつける。シーツを掴んで声を押し殺して、屈辱的な快楽に耐えて 。そんなことを何百回と繰り返している。
「……はっ、あ……ああっ!」
ラウリは無言で、ガコンッガコンッと腰を打ち付けた。徐々に濡れそぼり水音を立てる膣を暴力的な男根が出入りし、ずるっと引き抜かれたと思いきや勢いよく押しこまれる。ラウリの引き締まった下腹がアンニーナの柔らかな尻肉を潰しては弾ませる。
「……うっ、……はぅっ」
時を追って苛烈さを増してくる情動が、アンニーナの内心を無視して身体の奥までえぐってきた。
――どうして? いつもならもう終わってるはずなのに。
しつこいぐらいの突き挿しに、耐え切れず嬌声をこぼす。
「ああっ、ああああ、あうん……っ」
叩きつけられた熱い白濁が身体の隅々まで浸食していくのを感じながら、アンニーナは涙を流す。オルガニズムに達した彼女は二、三度痙攣すると、尻を突き出したままぐったりと布団に頬をつけた。欲望に散らされた身体が熱い。だが、心は異常なほど冷えていた。愛情がなければ、毎夜の蜜事もただの暴力だ。
「は……っ」
ラウリは余韻もなく妻から引き抜くと、身にまとっていたバスローブで下肢を拭った。サイドテーブルにおかれた水差しを直に仰ぐが、妻のことは一顧だにしない。いつものことだ。
アンニーナはのろのろと身体を起こした。股の間がぬるりとして気持ち悪い。夫が放ったバスローブを拾いあげ、洗面所のドアを開ける。
薄暗い照明の下、バスタブの湯は温くなっていた。身体をうずめると、目の前のお湯を掬って顔にかける。
「うぅ……っ」
声を押し殺すと、余計に涙がこぼれた。
――どうしてかしら? いつもと同じことをしているのに。
念入りに身体を洗い、アンニーナは惨めったらしい思いで、とっくに眠りについた夫の隣に身を横たえた。眠気はいつまでたっても訪れず、窓から差し込む月の光がラウリの端正な寝顔を照らしていた。
乱暴に命じられ、アンニーナはまつげを震わせた。長い髪を耳にかけ、突き出されたものをそっと舌ですくいあげる。
「んん……っ」
皴のたるんだ生温かいモノに懸命に舌を絡めて、屹立を促す。勃ってもいない性器をしゃぶらされるのにも、二年もたてば慣れてくる。裏筋やカリ首に入念に舌を這わせ、竿を唇で吸いながら頭を上下させた。
ラウリは遅漏で、あともう少しのところでなかなかイケない。生ぬるい刺激に嫌気がさしたのだろうか、アンニーナの頭を両手で掴むと喉奥まで突っ込んでくる。
「……ぐぅっ、う……っ」
口での奉仕のなかで、この過程が一番苦しい。ジュルッ、ジュルッと唾液と先走りが、口の中で撹拌された。
「はぁっ、……ゴホッ」
唇から乱暴に勃起した雄茎を引き抜かれ、せき込む。思わず浮かんだ生理的な涙を袖口で拭った。
「相変わらず、人形みたいな女だな」
肩を掴まれ、寝台に押さえつけられる。シーツに顔を着けた彼女はめくれ上がった夜着を整えようと後ろ手を伸ばす。だが、夫はアンニーナの尻を掴んで、怒張した己を無造作に押しあてた。
――怖いっ!
昼間、ゴロツキにされたことを思い出す。反射的に後ろ手で夫の腕を押し返していた。
「いや、やめて……っ」
頬を上気させていたラウリが、眉間をしかめる。
「あん? 今更何言ってんだ、子どもが要るだろ? ……何のために結婚したと思ってるんだ。おまえも我慢しろ」
――おまえも我慢しろ? あなたは『我慢して』わたしを抱いているというの……?
アンニーナの顔から血の気が引いたが、それをラウリに告げる勇気はない。
「なんだよ、早く済ませたいんだろ? いつもみたいに大人しくしてればいいんだよ」
「んんん……っ!」
か細く苦し気な声が、寝室にこぼれる。だが所詮ラウリしか知らない、彼が二年かけて仕込んだ身体だ。身体は主人に従おうと、すぐに締めつける。シーツを掴んで声を押し殺して、屈辱的な快楽に耐えて 。そんなことを何百回と繰り返している。
「……はっ、あ……ああっ!」
ラウリは無言で、ガコンッガコンッと腰を打ち付けた。徐々に濡れそぼり水音を立てる膣を暴力的な男根が出入りし、ずるっと引き抜かれたと思いきや勢いよく押しこまれる。ラウリの引き締まった下腹がアンニーナの柔らかな尻肉を潰しては弾ませる。
「……うっ、……はぅっ」
時を追って苛烈さを増してくる情動が、アンニーナの内心を無視して身体の奥までえぐってきた。
――どうして? いつもならもう終わってるはずなのに。
しつこいぐらいの突き挿しに、耐え切れず嬌声をこぼす。
「ああっ、ああああ、あうん……っ」
叩きつけられた熱い白濁が身体の隅々まで浸食していくのを感じながら、アンニーナは涙を流す。オルガニズムに達した彼女は二、三度痙攣すると、尻を突き出したままぐったりと布団に頬をつけた。欲望に散らされた身体が熱い。だが、心は異常なほど冷えていた。愛情がなければ、毎夜の蜜事もただの暴力だ。
「は……っ」
ラウリは余韻もなく妻から引き抜くと、身にまとっていたバスローブで下肢を拭った。サイドテーブルにおかれた水差しを直に仰ぐが、妻のことは一顧だにしない。いつものことだ。
アンニーナはのろのろと身体を起こした。股の間がぬるりとして気持ち悪い。夫が放ったバスローブを拾いあげ、洗面所のドアを開ける。
薄暗い照明の下、バスタブの湯は温くなっていた。身体をうずめると、目の前のお湯を掬って顔にかける。
「うぅ……っ」
声を押し殺すと、余計に涙がこぼれた。
――どうしてかしら? いつもと同じことをしているのに。
念入りに身体を洗い、アンニーナは惨めったらしい思いで、とっくに眠りについた夫の隣に身を横たえた。眠気はいつまでたっても訪れず、窓から差し込む月の光がラウリの端正な寝顔を照らしていた。
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