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俺、こんな風に好きな相手とデートするのって、初めてなんだ

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「・・・まあ、こうなるよな」
俺が上のTシャツを脱いで絞りながら言うと、

「ああ・・・ま、暑いしすぐ乾くだろ」
堀越がシャツの前を開けて、海風で乾きやすいようにしながら言った。

「けどお前もこんな子供みたいなこと、すんだな。そんなイメージじゃなかったわ」
砂浜に寝っ転がりながら言うと、堀越が「ええ?」と声を上げた。

「何だよ、俺のことどんなやつだと思ってんの?」
「んー、なんかいつでもエロいことしてて、裸のままベッドで気だるげにワインとか飲んでてー、周りにはエロい男がいっぱいいて奉仕されてそうな感じ」

何となく持ってたイメージを話すと、堀越が噴き出した。

「ははっ、何だそれ。どこの黒幕だよ」
「えー?でも似合うぜ。ほら、世良さまぁ、僕にもご褒美ちょうだいよぉ、とか絡みつかれて、そんなに欲しいのかよとか言いながらフェラさせてそー」

ふざけてついそんなことを言ったら、笑っていた堀越の顔が引き攣った。

あれ?やべぇ、調子に乗って下ネタがキツ過ぎたか、なんて思っていたら、堀越は遠くを見つめながら「3.141592・・・」なんてブツブツ呟き始めた。

「なんで円周率!?」
「6535897932384・・・」
「つか、よく覚えてんな!?」

こいつ、アレだ。また勃ったのか。
けど、まあ無理もないよな。それまであんなにヤってたのに、もう10日もキスも何もしてないんだし。

「お前、自分でしてねーの?」

思わず聞いてしまったら、堀越は「ああ~、璃央やめろってそれ系の話題!」とか呟いて頭を抱えていた。

うーん、辛そう。まあ俺も辛くないかって言われたら、まあ、それなりに・・・けっこう、かなり・・・辛くはあるけど。

「あのさぁ・・・その、セックスは禁止だけど、その手前までならちょっとはいいかなーって思ったんだけどさ。だって、手前までいって最後やらない、って方が、忍耐力試されるだろ?それでも我慢するって相当好きじゃないと出来ないだろうし・・・だから、触ったりするのは良くね?」

良くね?って何だよ。
大体セックス禁止とか言い出したの、誰だよ!?

自分でもむちゃくちゃなこと言ってると思ったし、前の堀越ならそう言ったら、すぐさま押し倒して来ただろう。
けど、堀越は「うぐぐ・・・」と唸りながらも、首を振った。

「いや、ダメだ。そんななし崩しにするのは。俺はお前に信じて貰う為に、ちゃんと約束は守る。だから、ごめん・・・どうしても勃ったりはするかもしんねぇけど、最後までやり遂げるから・・・」

そう言われて俺はちょっと感動した。あんなクソクズだったのに、こんな辛そうなのに、こいつ、ちゃんと約束守ろうとしてる。
なんかちょっと嬉しい。

「分かったよ、俺も頑張る。エロいことも言わねーようにするわ」
そう言ったら、堀越は

「じゃあ早速で悪いけど、シャツ着て?それ、刺激強すぎてヤバい」
と、顔を逸らしながら言った。

「あ、ああ、そっか」

上半身裸だった。
もともと男に興味があったわけじゃないから、先輩や堀越とセックスするようになってからも、男同士で上脱いでてもそれがエロいって発想に繋がらなかったな。

でも・・・
堀越のはだけたシャツからのぞく裸の胸を見ると、俺の上で気持ちいい顔してるこいつのことや、ヤってる時のこと思い出した。

・・・確かに、エロいかもな。

だ、ダメだこれ。やめやめ!ほーら璃央!空は青いし海は広いぞー、ヤドカリもいるぞー!
俺は慌ててTシャツを着込んで意識を散らした。
はは、これ、先は長いぞ・・・どうしよ。



そのあとは服も乾いたし腹も減ったから、飯食って、ドライブして、観光名所の小さい島の灯台に行った。

もう夕暮れ時でオレンジに染まった空と海が綺麗で、なんというか雰囲気がある。
いかにもデートスポットって感じで、他にも何人かカップルっぽい人間がいた。まあみんな男女の組み合わせだったけどな。

「めちゃくちゃデートって感じするな」
そう言ったら堀越は笑って「だってデートだし」と言った。

夕陽に照らされて笑ってる堀越は、ただでさえイケメンなのに、300%くらいましましになってんじゃねーか、って感じで心臓がヤバかった。

「あー、璃央可愛いな。キスしたいけど・・・1ヶ月後の楽しみにしとくな」
「う、うん・・・」

キスくらいいいじゃん・・・と思ったけど、黙っておく。

せっかく俺のために我慢してくれてんだから、俺が率先してそれ破るなんてやっぱり、ダメだ。

「空、綺麗だな」
気を取り直して、手すりにもたれかかりながらそう言った。

「そうだな」
段々オレンジ色が消えて、暗くなっていく空を見つめながらしばらく黙っていたけど、堀越がぽつりと言った。

「俺、こんな風に好きな相手とデートするのって、初めてなんだよ」
「え、そうなんだ?」

そういえば、最初に家に行く時の車の中で、お前くらいイケメンだったら誰とでも付き合えるだろ、って言ったら、不貞腐れてたっけ。

「今まで俺が好きになったやつって、みんな普通に女が好きなやつばっかりでさ。勇気出して告ったこともあるけど、やっぱり無理で。そんなことばっかの繰り返しで、いい加減嫌になって、手軽に体だけの関係に走ってたとこある」
「そうか・・・」

こいつがこんな風に自分のこと話すのなんて、初めてじゃねーか?
でもやっぱり、失恋ばっかりしてたんだな。そりゃ、不貞腐れたくもなるよな・・・
好きな相手に振り向いてもらえなかった堀越の辛さを思うと、胸がずきんとした。

「お前、辛かったよな・・・」
そう言うと、堀越は柔らかく笑った。

「まあ、その時はな。けど今は、すごい幸せだなって思ってる。まだ返事は貰えてないけど、お前と一緒にいられて、俺、幸せだよ」
「ほ、堀越・・・」

俺は胸がぎゅっと締め付けられて、思わず堀越を抱き締めた。っつっても、俺の方が背、低いし、単に俺が抱きついただけになってるけど。

「お、おい、璃央」
「誰も見てないよ・・・」

もう薄暗いし、もし誰かに見られてても別にいい。

「そっか・・・」

少し戸惑ってた堀越も、俺の背中に手を回して抱き締め返して来た。
いつもの、こいつの匂い。これ嗅ぐと安心する・・・

「俺、お前のこの匂い、好きだよ」
「璃央、俺もお前の匂い好きだ。璃央の全部、好きだよ」

俺たちは、他のカップルがみんないなくなって、俺たち二人だけになるまで、ずっとそこで抱き締めあってた。
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