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1 君のことを愛するつもりは無かった
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アトラス国東宮殿のバルコニー。
サイモン家の貴族メル・サイモンが婚約者として宮殿に入ったちょうどその日に、俺はメルに言った。
「メル。俺は君を愛するつもりはないし、婚約者として扱うつもりもありません。」
俺はナミル国の第二王子アレックスだ。ナミル国、騎士団の副団長をしている。表向きは多くの国民から慕われているが、そんな立派な人間ではないことを俺が一番よく知っていた。
「はあ。」
俺の言葉を聞いて、メルは戸惑った声を出した。勿論、それは当然だ。水色の綺麗な髪に翠色の目。何処からどう見ても美少女の誰からも愛されてきた貴族の令嬢が認められる条件ではないはずだ。
「もしも、それが嫌ならすぐにでも婚約破棄して、この宮殿を出ていってくれて構いません。もしも必要ならば、メルさんの新しい婚約者探しをお手伝いします。」
元からこの美しい令嬢を、自分の婚約者として留めておくつもりは無かった。早く俺のもとから去って、新しい婚約者を見つけてくれ。
「うーん。」
メルはきょとんとした顔で首をかしげた
俺は東宮殿に一人、愛人を囲っている。愛人の名前はリーシャという。彼女は俺の世話をしてくれていたメイドの娘で、幼い頃はよく一緒に遊んでいた。
リーシャはただの友人で、恋愛感情は無かった。だが、ある事故が俺たちの関係を変えた。
(俺は誰のことも愛さないし、誰と結婚するつもりもない。)
俺は本当は婚約など誰ともするつもりは無かったが、あまりにも両親が貴族の娘と結婚することを望むので仕方なく婚約したのだ。
愛人のリーシャは、足が動かない。10年前、倒れてきた大木から俺を守って、大怪我を負ってしまったのだ。
お前のせいだ。
心を病んだリーシャは、俺が会いに行くと必ずそう言った。本当は、俺の身代わりになったリーシャを愛するべきなのかもしれないが、俺は彼女を愛せない。
だがリーシャを守ることが俺の人生に課せられた責任に思えた。俺だけは、自分の罪を忘れてはいけない。
そんな俺の心持ちも知らずメルはにっこりと笑って俺に尋ねた。
「朝昼晩、ご飯はちゃんと食べれますか?一日一回シャワーを浴びられますか?」
「え、ええ。それは勿論、、、。」
メルは何を言っているんだ、、、?
「それならば素晴らしい取り決めですね。出ていくなんてとんでもない。ここで王子の婚約者としてのんびりさせてもらいますよ。」
ここにいる、だと、、、?!なぜ、、、?
「え、、、っと、、、。俺はメルさんを愛しませんし、婚約者として扱わないのですが、それでもいいんですか、、、?」
わけがわからなくて、俺はメルに尋ねた。
「愛がない方が良いんですよ。」
なぜ、メルがそう言ったのかその時の俺は知らなかった。まさか、愛されることを拒絶している彼女から目が離せなくなるなんて、予想もしていなかったのだ。
◇◇◇
サイモン家の貴族メル・サイモンが婚約者として宮殿に入ったちょうどその日に、俺はメルに言った。
「メル。俺は君を愛するつもりはないし、婚約者として扱うつもりもありません。」
俺はナミル国の第二王子アレックスだ。ナミル国、騎士団の副団長をしている。表向きは多くの国民から慕われているが、そんな立派な人間ではないことを俺が一番よく知っていた。
「はあ。」
俺の言葉を聞いて、メルは戸惑った声を出した。勿論、それは当然だ。水色の綺麗な髪に翠色の目。何処からどう見ても美少女の誰からも愛されてきた貴族の令嬢が認められる条件ではないはずだ。
「もしも、それが嫌ならすぐにでも婚約破棄して、この宮殿を出ていってくれて構いません。もしも必要ならば、メルさんの新しい婚約者探しをお手伝いします。」
元からこの美しい令嬢を、自分の婚約者として留めておくつもりは無かった。早く俺のもとから去って、新しい婚約者を見つけてくれ。
「うーん。」
メルはきょとんとした顔で首をかしげた
俺は東宮殿に一人、愛人を囲っている。愛人の名前はリーシャという。彼女は俺の世話をしてくれていたメイドの娘で、幼い頃はよく一緒に遊んでいた。
リーシャはただの友人で、恋愛感情は無かった。だが、ある事故が俺たちの関係を変えた。
(俺は誰のことも愛さないし、誰と結婚するつもりもない。)
俺は本当は婚約など誰ともするつもりは無かったが、あまりにも両親が貴族の娘と結婚することを望むので仕方なく婚約したのだ。
愛人のリーシャは、足が動かない。10年前、倒れてきた大木から俺を守って、大怪我を負ってしまったのだ。
お前のせいだ。
心を病んだリーシャは、俺が会いに行くと必ずそう言った。本当は、俺の身代わりになったリーシャを愛するべきなのかもしれないが、俺は彼女を愛せない。
だがリーシャを守ることが俺の人生に課せられた責任に思えた。俺だけは、自分の罪を忘れてはいけない。
そんな俺の心持ちも知らずメルはにっこりと笑って俺に尋ねた。
「朝昼晩、ご飯はちゃんと食べれますか?一日一回シャワーを浴びられますか?」
「え、ええ。それは勿論、、、。」
メルは何を言っているんだ、、、?
「それならば素晴らしい取り決めですね。出ていくなんてとんでもない。ここで王子の婚約者としてのんびりさせてもらいますよ。」
ここにいる、だと、、、?!なぜ、、、?
「え、、、っと、、、。俺はメルさんを愛しませんし、婚約者として扱わないのですが、それでもいいんですか、、、?」
わけがわからなくて、俺はメルに尋ねた。
「愛がない方が良いんですよ。」
なぜ、メルがそう言ったのかその時の俺は知らなかった。まさか、愛されることを拒絶している彼女から目が離せなくなるなんて、予想もしていなかったのだ。
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