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24.好きだと気づいていたのに

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「ココ…無事でいてくれ‥‥。」

ステフは銀色の鍵を両手で包んで、額に当てた。

ココが城を出てから、数時間が経っている。指名手配犯ルカ・ザイラスとココが一緒に歩いていたという情報はステフの元に入っていた。それから、今日、ボストール家が人身取引をするという情報も…。

―――なぜ僕は…無理やりにでもココを止めなかったんだ

ステフがボストール家を捕まえるまで、本当に後少しだった。証拠はそろい、ボストール家を捕まえるための国王の信任は得ている。

”ココに何も知らせずに、すべてを終わらせたい”

それがステフの想いだった。好きな男が自分を裏切っていたと知ったならば、どれほどココが苦しむだろうかと考えると、ステフは真実を告げることができなかった。

「ステフ様。準備が整いました。参りましょう。」

ミラント国軍の騎士が、ステフに声をかける。

「ああ。」

ミラント医療学院の学院長に忠告されてから、ステフは寝る間を惜しんでボストール家の闇取引の証拠を集めてきた。ルカ・ザイラスがココを騙していることは明白だ。

”ルカ・ザイラスと行くのか?”

”ちがうわ”

あの時、ココの嘘をなぜ見抜けなかったのか。

―――ココの涙の意味は?

10年間、いや、もっと前からステフはココを愛していた。

”好きな人ができたら、婚約破棄”

なぜあれほど馬鹿げた約束ができたんだろう。

―――俺は卑怯だった

10年前のあの日、ココにはステフ以外頼れる人がいなかった。だから…幼いステフは無意識にその状況を利用していたのだ。

次、ココに会った時、ステフは自分の気持ちを正直に伝えると決めていた。

―――何としてもココを助けなくては

ステフは父親である国王から、ボストール家を捕まえるための指揮権を預かっている。ステフはまだ20歳であるが、優秀であり国王からの信頼は厚い。

「ルカ・ザイラスについて情報は入ったか?」

「それが…ボストール家のアリア嬢が、ルカ・ザイラスに命令をしていたようでして…。」

「アリアが…。すぐにボストール家に向かう。」

ボストール家が闇取引をしているという噂はずっと前から聞いていた。だが、アリアはそれに関係ないと信じていたのだが‥‥

―――アリアとルカが繋がっていた‥‥?

ココに好きな人がいるとステフに教えたのはアリア。そして、その相手としてアリアがステフに紹介したのがルカ・ザイラスだった。

”私がルカを好きだったら、どう思う?”

ココを助けることに集中しなくてはいけないのに、次から次へと彼女の言葉が頭の中に浮かんでくる。

―――君がいれば他に何もいらないから…無事でいてくれ、ココ…



     ◇◇◇
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