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第十五話:二人の出会い
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セラはキラキラと輝く指輪を見つめてながら、ユリウスと初めて出会った日のことを思い出していた。
(ね、ユリウス。あなたを助けられたのは、私の人生でもっとも素晴らしい出来事だわ。)
指輪を手に取ると、ひんやりと冷たい。
セラとユリウスが初めて出会ったのは、ロマリア城の裏にある森の中だった。
◇◇◇
『待つんじゃ、セラ!城に行っても何もわからんじょ!』
『そんなことないもん!お師匠は秘密ばっかりで、お母さんのことなんにも教えてくれないもん!』
『セラがもう少し大きくなったら教えてあげるじょ。だから城に行くのはやめなさい!』
『嫌だ!セラはなんでお母さんがいないか知りたいんだもん‼』
当時6歳だったセラはどうしても両親について知りたかった。だがら、覚えたての瞬間移動魔法を使って、ロマリア城まで行ったのだ。
『待つんじゃ、セラ!』
ロージィには止められたけれど、どうしても知りたかった。今より大きな魔力を持つセラの元には連日魔物が襲い掛かってきていて、神殿から出ることがかなわない。歳の近い友達はおらず、セラは寂しかった。
(お城に行けば、きっとセラのお母さんについて知っている人がいるはずだもん!)
ロージィはセラの両親は病気で亡くなったと言っていたが、セラは信じなかった。きっと、どこかに両親は生きていて、ロージィが隠しているに違いない。ロマリア城についたセラは、あちこち歩き回り、城の人々に両親について尋ねて回った。
『わたしはセラ・スチュワート。わたしのお母さんとお父さんについて教えてほしいの。』
『まあ……お嬢ちゃんは、スチュワート家の子なのか……。えっと……私にはわからないな。』
『そうなの。誰が知っているかしら?』
『そうだねぇ、うーん……みんな知らないんじゃないかな。』
『諦めないもんっ。誰かは知ってるもん!』
そう言ってまた違う人に質問して回るセラを大人たちは同情を込めて見つめる。
『やめておいた方がいいのに……。』
まだスチュワート家の悲劇から7年しか経っていなかったので、多くの人がそのことを覚えている。だがスチュワート家の悲劇について幼い少女に教えてくれる者はなかなか現れなかった。幼子に伝えるにはあまりにも酷な内容だからだ。
『わたしのお母さんについて教えてほしいの……。誰か知らない……?』
それでも必死で聞きまわる中、ついにセラに真実を教えてくれる者が現れる。
『そんなに聞きたいなら教えてあげるよ。スチュワート家の悲劇についてね。』
『ありがとう、おじちゃん!』
セラに真実を教えた男が、親切心からではなかっただろう。
そこでセラはついに自分の出生の秘密を知る。6歳の少女が知るにはあまりにも残酷すぎる事実だった。
『そんなのヤダ……ヤダよ……。』
知りたかったのは、悲しい真実ではない。セラは絶望していた。
(なんでセラは生まれてきたのかな……?)
セラは泣きながら城を出て、森の中に入っていった。
『会いたいよ、お母さん!お父さん!』
木の陰で膝を丸めて、セラは泣いていた。長い間、泣いていたと思う。目は真っ赤になり、セラは少しずつ眠くなってきた。
あたりは真っ暗だ。
(お家に帰らなきゃ……。)
あまり遅くなると、師匠に心配をかけてしまう。涙をこすってセラが立ち上がった時。
『うわああああっ!』
森の中から誰かの悲鳴と魔物の動く音が聞こえた。
(どうして?)
ロマリア城の森の中は結界が張られているため、魔物が入ってくることができない。普段、神殿から一歩外に出ると、魔物に襲われてしまうセラが無事なのはそのためだ。だが、結界を突破して、魔物が入ってきたようだ。
(助けなきゃ!)
セラは走り出した。魔物に対する恐れはなかった。セラは死を恐れていない。
『ねえ!大丈夫?目を開けて‼』
悲鳴の先に歩いていくと、一人の少年が倒れていた。彼は魔物に襲われ、魔力を奪われて動かなくなっている。少年の魔力をうばって満足したのか、魔物はどこかにいなくなっていた。
”魔力が無くなったら、魔法使いは生きていけないのじゃ。他人が分け与えてあげることはできん。だから、魔力は大切にするんじゃぞ。”
小さい頃から、セラがロージィに何度も教えられていたことだ。
『ねえ、お兄さん。いなくならないで!セラが助けてあげるから!』
倒れている少年の姿が、見たことのない両親の姿に重なる。
(セラの魔力はなくなってもいいからこの人を助けたい……!)
『お願い!この人に……私の魔力を……‼』
セラは少年を抱きしめて、必死で祈った。
(ねえ、お願い。みんなを不幸にするわたしの魔力で……この人を助けたいの……!)
すると、繋いだ手がぽーっと明るく光った。
『うっ。』
少年の体がピクリと動き、少年の体に温かみが戻ってくる。
(お願い……!)
セラの祈りが届いたのだろうか。少年はゆっくりと目を覚ました。緑色の綺麗な瞳が、セラを見つめる。
『なぜ……?僕は魔物に全ての魔力を奪われて死んだはずじゃ……?』
『大丈夫なの!セラの魔力を分けてあげたの!』
セラは満面の笑みを浮かべて、少年を抱きしめる。両親を死に追いやったセラの魔力が、少年を救ったのだから。
『助かってくれて、ありがとう!』
と、セラは少年を強く抱きしめて言った。青い瞳からはぽろぽろと涙がこぼれていた。
『お礼を言うのは僕の方だ。』
『良いの!うれしいの!名前を教えて?』
『ユリウスだ。君の名前は?』
『私はセラ!ユリウスっていうのね!絶対に忘れないわ!』
『僕も、忘れられるわけないよ、セラ。』
ユリウスはセラの涙を優しく拭いた。
『なんて優しくて勇敢な子なんだろう。助けてくれてありがとう。次は僕が、セラを守れるようになりたいな。君が泣いている時は、いつでもそばにいたいんだ。』
それが、ユリウスとセラの出会いである。
(ね、ユリウス。あなたを助けられたのは、私の人生でもっとも素晴らしい出来事だわ。)
指輪を手に取ると、ひんやりと冷たい。
セラとユリウスが初めて出会ったのは、ロマリア城の裏にある森の中だった。
◇◇◇
『待つんじゃ、セラ!城に行っても何もわからんじょ!』
『そんなことないもん!お師匠は秘密ばっかりで、お母さんのことなんにも教えてくれないもん!』
『セラがもう少し大きくなったら教えてあげるじょ。だから城に行くのはやめなさい!』
『嫌だ!セラはなんでお母さんがいないか知りたいんだもん‼』
当時6歳だったセラはどうしても両親について知りたかった。だがら、覚えたての瞬間移動魔法を使って、ロマリア城まで行ったのだ。
『待つんじゃ、セラ!』
ロージィには止められたけれど、どうしても知りたかった。今より大きな魔力を持つセラの元には連日魔物が襲い掛かってきていて、神殿から出ることがかなわない。歳の近い友達はおらず、セラは寂しかった。
(お城に行けば、きっとセラのお母さんについて知っている人がいるはずだもん!)
ロージィはセラの両親は病気で亡くなったと言っていたが、セラは信じなかった。きっと、どこかに両親は生きていて、ロージィが隠しているに違いない。ロマリア城についたセラは、あちこち歩き回り、城の人々に両親について尋ねて回った。
『わたしはセラ・スチュワート。わたしのお母さんとお父さんについて教えてほしいの。』
『まあ……お嬢ちゃんは、スチュワート家の子なのか……。えっと……私にはわからないな。』
『そうなの。誰が知っているかしら?』
『そうだねぇ、うーん……みんな知らないんじゃないかな。』
『諦めないもんっ。誰かは知ってるもん!』
そう言ってまた違う人に質問して回るセラを大人たちは同情を込めて見つめる。
『やめておいた方がいいのに……。』
まだスチュワート家の悲劇から7年しか経っていなかったので、多くの人がそのことを覚えている。だがスチュワート家の悲劇について幼い少女に教えてくれる者はなかなか現れなかった。幼子に伝えるにはあまりにも酷な内容だからだ。
『わたしのお母さんについて教えてほしいの……。誰か知らない……?』
それでも必死で聞きまわる中、ついにセラに真実を教えてくれる者が現れる。
『そんなに聞きたいなら教えてあげるよ。スチュワート家の悲劇についてね。』
『ありがとう、おじちゃん!』
セラに真実を教えた男が、親切心からではなかっただろう。
そこでセラはついに自分の出生の秘密を知る。6歳の少女が知るにはあまりにも残酷すぎる事実だった。
『そんなのヤダ……ヤダよ……。』
知りたかったのは、悲しい真実ではない。セラは絶望していた。
(なんでセラは生まれてきたのかな……?)
セラは泣きながら城を出て、森の中に入っていった。
『会いたいよ、お母さん!お父さん!』
木の陰で膝を丸めて、セラは泣いていた。長い間、泣いていたと思う。目は真っ赤になり、セラは少しずつ眠くなってきた。
あたりは真っ暗だ。
(お家に帰らなきゃ……。)
あまり遅くなると、師匠に心配をかけてしまう。涙をこすってセラが立ち上がった時。
『うわああああっ!』
森の中から誰かの悲鳴と魔物の動く音が聞こえた。
(どうして?)
ロマリア城の森の中は結界が張られているため、魔物が入ってくることができない。普段、神殿から一歩外に出ると、魔物に襲われてしまうセラが無事なのはそのためだ。だが、結界を突破して、魔物が入ってきたようだ。
(助けなきゃ!)
セラは走り出した。魔物に対する恐れはなかった。セラは死を恐れていない。
『ねえ!大丈夫?目を開けて‼』
悲鳴の先に歩いていくと、一人の少年が倒れていた。彼は魔物に襲われ、魔力を奪われて動かなくなっている。少年の魔力をうばって満足したのか、魔物はどこかにいなくなっていた。
”魔力が無くなったら、魔法使いは生きていけないのじゃ。他人が分け与えてあげることはできん。だから、魔力は大切にするんじゃぞ。”
小さい頃から、セラがロージィに何度も教えられていたことだ。
『ねえ、お兄さん。いなくならないで!セラが助けてあげるから!』
倒れている少年の姿が、見たことのない両親の姿に重なる。
(セラの魔力はなくなってもいいからこの人を助けたい……!)
『お願い!この人に……私の魔力を……‼』
セラは少年を抱きしめて、必死で祈った。
(ねえ、お願い。みんなを不幸にするわたしの魔力で……この人を助けたいの……!)
すると、繋いだ手がぽーっと明るく光った。
『うっ。』
少年の体がピクリと動き、少年の体に温かみが戻ってくる。
(お願い……!)
セラの祈りが届いたのだろうか。少年はゆっくりと目を覚ました。緑色の綺麗な瞳が、セラを見つめる。
『なぜ……?僕は魔物に全ての魔力を奪われて死んだはずじゃ……?』
『大丈夫なの!セラの魔力を分けてあげたの!』
セラは満面の笑みを浮かべて、少年を抱きしめる。両親を死に追いやったセラの魔力が、少年を救ったのだから。
『助かってくれて、ありがとう!』
と、セラは少年を強く抱きしめて言った。青い瞳からはぽろぽろと涙がこぼれていた。
『お礼を言うのは僕の方だ。』
『良いの!うれしいの!名前を教えて?』
『ユリウスだ。君の名前は?』
『私はセラ!ユリウスっていうのね!絶対に忘れないわ!』
『僕も、忘れられるわけないよ、セラ。』
ユリウスはセラの涙を優しく拭いた。
『なんて優しくて勇敢な子なんだろう。助けてくれてありがとう。次は僕が、セラを守れるようになりたいな。君が泣いている時は、いつでもそばにいたいんだ。』
それが、ユリウスとセラの出会いである。
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