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第二章 忘れられた男
特別業務
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リンドホルム城の図書室。天井の高い、やや湿気たその部屋には、鍵のかかるガラスの書棚に美術古書がたくさんあって、俺は時間があると入り浸っていた。
窓の外の荒地を嵐が吹き抜けるその午後、エルシーは俺を捜して図書室にやってきた。
「リジー?」
木製の脚立に座って本を読んでいた俺は、エルシーの声を聴いて、書棚の向こうに声をかける。
「エルシー? 僕はここだよ」
「リジー、雷が……」
そう言ったとたん稲光が輝き、一瞬の後、窓ガラスを震わして轟音がとどろく。
「きゃあっ……」
「待って、今、そっちに行く」
俺は本を抱えて脚立を降り、エルシーのそばに駆け寄る。
「リジー、ご本を見てたの?」
「そう。絵の本だから、一緒に見よう。おいで」
俺は絨毯の上に直接腰を下ろすと、エルシーの細い体を膝の上に抱き上げ、大型本を床に置いて、広げる。
「エル・グラン、という昔の、偉い絵描きの絵だよ」
画面いっぱいに広がるのは、巨匠エル・グランの大作《最後の審判》。王都のワーズワース侯爵邸の、広間の天井画の、模写だ。
「これは僕は実物を見たことがある。……エルシーが王都に来たら、一緒に見に行こう」
「うん、約束ね――」
最初のデートはやっぱりあそこにしよう。
ワーズワース侯爵邸は王都の中心部にあるし、あそこの侯爵夫人は王妃のイトコで口うるさかったが、もう死んだ。侯爵も死んで、跡取りはどうしたっけ?
まあいい。王子の俺が天井画を見せろと言えば文句は言うまい。理由はなんでもでっちあげれば――。
そうと決めれば、俺はロベルトの姉でデザイナーのローリー・リーンのメゾンに行き、ドレスについて打ち合わせをする。「わざわざ下見に来なくても」なんてロベルトは言うが、エルシーの前でもたついたらかっこ悪い。
だいたい何事も、「作戦」というのは入念な準備があってこそだ。
敵の砦を奇襲で落とした時だって、俺は下見をして、周囲の地形を把握していた。だからこそ、悪天候を味方につけることができた。
俺はドレス・メーカーの高級メゾンで、デザイナーのミス・リーンと打ち合わせをして――。
なんと、ワーズワース邸が成金の資本家の所有になっていることを、初めて知った!
「なんなんだその、仮面舞踏会って」
「王都の若手の新興資本家が、交流のために開いている催しっすよ。ワーズワース侯爵邸の持ち主は前衛芸術家のパトロンを気取って、若手の芸術家を住まわせて、時々あそこでイベントをするんだそうですよ」
ロベルトの調べによれば、戦争の末期、ワーズワース侯爵家は借財が嵩んであの邸を売却し、購入した新興資本家が仮面舞踏会を開催するようになったとか。
――俺たちが戦場で死に目に遭ってる頃から、仮面舞踏会だと? 殺すぞ。
瞬間的に殺意が湧いたが、それを理性で抑え込み、なおもロベルトを促して報告を聞く。新興資本家の多くは投資家であるから、その催しで情報を交換し、今や、王都の若手投資家垂涎の社交場なんだと。
「チケットが一人――」
「チケット制なのか!」
そのチケットの価格を聞いて、俺は目を剥いた。出せない金額ではないが、ものすごくバカバカしい気がする。
「まあでも、そういう情報を得ておくのも悪くはないな」
「けっこう、ヤバイ取引も行われているっぽいっすね。先物、違法薬物、盗難美術品のオークションへの招待状――」
「なるほど」
俺はラルフ・シモンズに命じて特務と連携を取り、その仮面舞踏会に潜入することにした。
「ただし、だ今回はあくまで情報収集でとどめろ。検挙は証拠を固めてからだ」
「了解です」
ロベルトとラルフが応じ、俺は両手を握り締めて気合を入れる。
「……最大の目的は俺とエルシーのデートだ! いいな、邪魔するなよ!」
ロベルトとラルフにものすごく微妙な目で見られたけれど、俺の決意は固かった。
一番の難関は、エルシー本人をどうやって誘うかだ。
秘書官への就任は、エルシーは納得はいっていないようだったが、了承した。ついでに、ハートネル中尉とも付き合っていない、という言質も得た。
方向が同じだから付きまとわれて迷惑、という発言に、俺は安堵のあまり、ついつい大笑いしてしまった。
だが、仮面舞踏会への参加を了承させるのは難しい。
もちろん、事情を全部話して――俺がリジー・オーランドだということも――一緒に天井画を見ようと誘えば簡単だ。でも、そうなると、なぜアルバート王子が身分を隠し、リジーとしてリンドホルムで療養しなければならなかったのか、王妃の虐待やローズとの関係についてまで、洗いざらい話すことになるが、アルバート王子が実は庶子だなんて、打ち明けられてもかえって迷惑だ。
エルシーは現在、爵位を失って事務職員をしている。そうなった原因はもちろん、マックスが死んだせいだし、それは俺を庇ったからだ。その入り組んだ事情を、エルシーに説明するのはとても神経を使う。少なくとも、もうちょっと親しくなってからじゃないと、勇気がでない。
二人ででかけて、もっと二人の仲が進展してから、真実を説明しよう。――俺はそう、考えていた。
司令の執務室に呼び出されたエルシーは、背筋をまっすぐに伸ばし、臆することなく俺を見つめた。その視線に、俺の方がドキドキして、いったい何から話していいかわからなくなる。今日こそ、エルシーを連れて・リーンのメゾンに行き、ドレスの採寸をしないとさすがに間に合わないと、ロベルトに釘を刺されている。
「その……エル……じゃなくてお前は事務職員じゃなくて、秘書官になったわけだが――」
「はい」
「事務職員と違い、秘書官の業務は多岐にわたる。俸給が上がる以上、今まで以上にいろいろやってもらうことになるが……」
いや、俺はなんでこんな高圧的に喋っているんだよ、落ち着けと思うが、エルシーはあっさり頷く。
「もちろん、覚悟しております。できる限りのことは務めさせていただきますので、なんなりとお申し付けください」
澄ました表情で頭を下げられ、俺は妙な興奮すら覚える。
おいおい、上司にそんな簡単に、「なんでもやります」なんて言って、あんなことやこんなことや命じられたら、いったいどうするつもりだよ。俺はただ、旧ワーズワース邸での仮面舞踏会に誘いたいだけなのだが、俺の口は乗っ取られたように、意味不明な言辞を紡ぎ始める。
「女にしかこなせない、女特有の業務を言いつけることになると思うが……」
俺が女で、こんなこと言われた日には、上司を殴って逐電するところだが、エルシーは意味が理解できないらしく、首を傾げる。
「例えば、だ。俺が身分を隠して何かのパーティーに潜入するとき、パートナーとして伴うのは女しか無理だ」
旧ワーズワース邸には身分を隠して行くつもりだから、満更嘘でもないが、エルシーは露骨に眉を顰めた。
「潜入? 殿下ご自身で?」
エルシーは無表情のクセに、考えていることが顔に出る。「バッカじゃないのかしら、この人」と顔に書いてある。俺だってそう思う。でも他に誘う名目が思いつかないんだよ!
エルシーの冷たい視線にいたたまれなくなった俺は、誤魔化すために机の上のケースから紙巻煙草を取って、火をつける。落ち着け、俺。
が、これがさらによくなかった。エルシーがあからさまに眉を顰めたのだ!
「煙草は嫌いか?」
「ええ」
はっきりと言われて、しかし今さら引っ込みもつかなくて、俺は煙草を吸い続けるしかない。この、妙にスッパリしたところ、全く昔と変わらない。間諜の真似事なんてできません、と言うエルシーを必死に説得し、かなり強引に、仮面舞踏会への同行に同意させる。
……王子の俺に誘われているのに、もう少し愛想ってものはないかよ。さすが「氷漬けの処女」と感心する俺に、エルシーがさらなる爆弾を落とす。
俺がステファニーと相思相愛だなんてぬかしやがった。そういう噂があるのは知っているが、エルシー本人までが信じているのは耐えがたい。――エルシーはアルバート王子があの時のリジーだってことは知らない。それはわかっていても、とうしても頭に血が上って、拳で机を叩いてしまった。
ブルーグレーの瞳を見開いたエルシーの怯えた表情に、俺は違う、そうじゃなくてと思うが、制御が効かない。
「言っておくが、お前は第三王子付きの秘書官だから。……つまり、俺の言うこと聞かなかったら即刻クビってこと。ばあさんの身体の具合もあまりよくはないんだろう?」
俺の脅し文句に、エルシーが絶句して、さすがに言いすぎだと俺は慌てる。何とか懐柔しなければ! そうだ、ドレス! とにかくドレスの採寸に連れ出すんだ!
俺は戸惑うエルシーを強引に司令部から連れ出し、馬車にひきずり込むように乗せ、十番街に向かった。
窓の外の荒地を嵐が吹き抜けるその午後、エルシーは俺を捜して図書室にやってきた。
「リジー?」
木製の脚立に座って本を読んでいた俺は、エルシーの声を聴いて、書棚の向こうに声をかける。
「エルシー? 僕はここだよ」
「リジー、雷が……」
そう言ったとたん稲光が輝き、一瞬の後、窓ガラスを震わして轟音がとどろく。
「きゃあっ……」
「待って、今、そっちに行く」
俺は本を抱えて脚立を降り、エルシーのそばに駆け寄る。
「リジー、ご本を見てたの?」
「そう。絵の本だから、一緒に見よう。おいで」
俺は絨毯の上に直接腰を下ろすと、エルシーの細い体を膝の上に抱き上げ、大型本を床に置いて、広げる。
「エル・グラン、という昔の、偉い絵描きの絵だよ」
画面いっぱいに広がるのは、巨匠エル・グランの大作《最後の審判》。王都のワーズワース侯爵邸の、広間の天井画の、模写だ。
「これは僕は実物を見たことがある。……エルシーが王都に来たら、一緒に見に行こう」
「うん、約束ね――」
最初のデートはやっぱりあそこにしよう。
ワーズワース侯爵邸は王都の中心部にあるし、あそこの侯爵夫人は王妃のイトコで口うるさかったが、もう死んだ。侯爵も死んで、跡取りはどうしたっけ?
まあいい。王子の俺が天井画を見せろと言えば文句は言うまい。理由はなんでもでっちあげれば――。
そうと決めれば、俺はロベルトの姉でデザイナーのローリー・リーンのメゾンに行き、ドレスについて打ち合わせをする。「わざわざ下見に来なくても」なんてロベルトは言うが、エルシーの前でもたついたらかっこ悪い。
だいたい何事も、「作戦」というのは入念な準備があってこそだ。
敵の砦を奇襲で落とした時だって、俺は下見をして、周囲の地形を把握していた。だからこそ、悪天候を味方につけることができた。
俺はドレス・メーカーの高級メゾンで、デザイナーのミス・リーンと打ち合わせをして――。
なんと、ワーズワース邸が成金の資本家の所有になっていることを、初めて知った!
「なんなんだその、仮面舞踏会って」
「王都の若手の新興資本家が、交流のために開いている催しっすよ。ワーズワース侯爵邸の持ち主は前衛芸術家のパトロンを気取って、若手の芸術家を住まわせて、時々あそこでイベントをするんだそうですよ」
ロベルトの調べによれば、戦争の末期、ワーズワース侯爵家は借財が嵩んであの邸を売却し、購入した新興資本家が仮面舞踏会を開催するようになったとか。
――俺たちが戦場で死に目に遭ってる頃から、仮面舞踏会だと? 殺すぞ。
瞬間的に殺意が湧いたが、それを理性で抑え込み、なおもロベルトを促して報告を聞く。新興資本家の多くは投資家であるから、その催しで情報を交換し、今や、王都の若手投資家垂涎の社交場なんだと。
「チケットが一人――」
「チケット制なのか!」
そのチケットの価格を聞いて、俺は目を剥いた。出せない金額ではないが、ものすごくバカバカしい気がする。
「まあでも、そういう情報を得ておくのも悪くはないな」
「けっこう、ヤバイ取引も行われているっぽいっすね。先物、違法薬物、盗難美術品のオークションへの招待状――」
「なるほど」
俺はラルフ・シモンズに命じて特務と連携を取り、その仮面舞踏会に潜入することにした。
「ただし、だ今回はあくまで情報収集でとどめろ。検挙は証拠を固めてからだ」
「了解です」
ロベルトとラルフが応じ、俺は両手を握り締めて気合を入れる。
「……最大の目的は俺とエルシーのデートだ! いいな、邪魔するなよ!」
ロベルトとラルフにものすごく微妙な目で見られたけれど、俺の決意は固かった。
一番の難関は、エルシー本人をどうやって誘うかだ。
秘書官への就任は、エルシーは納得はいっていないようだったが、了承した。ついでに、ハートネル中尉とも付き合っていない、という言質も得た。
方向が同じだから付きまとわれて迷惑、という発言に、俺は安堵のあまり、ついつい大笑いしてしまった。
だが、仮面舞踏会への参加を了承させるのは難しい。
もちろん、事情を全部話して――俺がリジー・オーランドだということも――一緒に天井画を見ようと誘えば簡単だ。でも、そうなると、なぜアルバート王子が身分を隠し、リジーとしてリンドホルムで療養しなければならなかったのか、王妃の虐待やローズとの関係についてまで、洗いざらい話すことになるが、アルバート王子が実は庶子だなんて、打ち明けられてもかえって迷惑だ。
エルシーは現在、爵位を失って事務職員をしている。そうなった原因はもちろん、マックスが死んだせいだし、それは俺を庇ったからだ。その入り組んだ事情を、エルシーに説明するのはとても神経を使う。少なくとも、もうちょっと親しくなってからじゃないと、勇気がでない。
二人ででかけて、もっと二人の仲が進展してから、真実を説明しよう。――俺はそう、考えていた。
司令の執務室に呼び出されたエルシーは、背筋をまっすぐに伸ばし、臆することなく俺を見つめた。その視線に、俺の方がドキドキして、いったい何から話していいかわからなくなる。今日こそ、エルシーを連れて・リーンのメゾンに行き、ドレスの採寸をしないとさすがに間に合わないと、ロベルトに釘を刺されている。
「その……エル……じゃなくてお前は事務職員じゃなくて、秘書官になったわけだが――」
「はい」
「事務職員と違い、秘書官の業務は多岐にわたる。俸給が上がる以上、今まで以上にいろいろやってもらうことになるが……」
いや、俺はなんでこんな高圧的に喋っているんだよ、落ち着けと思うが、エルシーはあっさり頷く。
「もちろん、覚悟しております。できる限りのことは務めさせていただきますので、なんなりとお申し付けください」
澄ました表情で頭を下げられ、俺は妙な興奮すら覚える。
おいおい、上司にそんな簡単に、「なんでもやります」なんて言って、あんなことやこんなことや命じられたら、いったいどうするつもりだよ。俺はただ、旧ワーズワース邸での仮面舞踏会に誘いたいだけなのだが、俺の口は乗っ取られたように、意味不明な言辞を紡ぎ始める。
「女にしかこなせない、女特有の業務を言いつけることになると思うが……」
俺が女で、こんなこと言われた日には、上司を殴って逐電するところだが、エルシーは意味が理解できないらしく、首を傾げる。
「例えば、だ。俺が身分を隠して何かのパーティーに潜入するとき、パートナーとして伴うのは女しか無理だ」
旧ワーズワース邸には身分を隠して行くつもりだから、満更嘘でもないが、エルシーは露骨に眉を顰めた。
「潜入? 殿下ご自身で?」
エルシーは無表情のクセに、考えていることが顔に出る。「バッカじゃないのかしら、この人」と顔に書いてある。俺だってそう思う。でも他に誘う名目が思いつかないんだよ!
エルシーの冷たい視線にいたたまれなくなった俺は、誤魔化すために机の上のケースから紙巻煙草を取って、火をつける。落ち着け、俺。
が、これがさらによくなかった。エルシーがあからさまに眉を顰めたのだ!
「煙草は嫌いか?」
「ええ」
はっきりと言われて、しかし今さら引っ込みもつかなくて、俺は煙草を吸い続けるしかない。この、妙にスッパリしたところ、全く昔と変わらない。間諜の真似事なんてできません、と言うエルシーを必死に説得し、かなり強引に、仮面舞踏会への同行に同意させる。
……王子の俺に誘われているのに、もう少し愛想ってものはないかよ。さすが「氷漬けの処女」と感心する俺に、エルシーがさらなる爆弾を落とす。
俺がステファニーと相思相愛だなんてぬかしやがった。そういう噂があるのは知っているが、エルシー本人までが信じているのは耐えがたい。――エルシーはアルバート王子があの時のリジーだってことは知らない。それはわかっていても、とうしても頭に血が上って、拳で机を叩いてしまった。
ブルーグレーの瞳を見開いたエルシーの怯えた表情に、俺は違う、そうじゃなくてと思うが、制御が効かない。
「言っておくが、お前は第三王子付きの秘書官だから。……つまり、俺の言うこと聞かなかったら即刻クビってこと。ばあさんの身体の具合もあまりよくはないんだろう?」
俺の脅し文句に、エルシーが絶句して、さすがに言いすぎだと俺は慌てる。何とか懐柔しなければ! そうだ、ドレス! とにかくドレスの採寸に連れ出すんだ!
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