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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)
父と子と弟とサッワ…… ②
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『皆警戒せよ、あの純白の蛇輪に似た機体はル・ツー漆黒ノ天やル・ワン玻璃ノ宮と同じ、ル・シリーズ最後の一機、ル・スリー白鳥號じゃな。遥か昔にあれも此処クラウディア王国で建造され、セブンリーフのまおう軍の手に渡ったハズじゃが』
『何だって……アレが蛇輪のオリジナル機体??』
セレネはル・ツーに蹴りを入れた後に、上空に戻って漂うル・スリー白鳥號を見上げた。砂緒の前世の前世の話を半分ホラ話だと思っていたが、その蛇輪を等ウェキ玻璃音大王が制作する時に参考にした当のオリジナル機体が、女王選定会議の時まおう抱悶ちゃんを連れて来て、一瞬で消えた機体だとは気付いていなかった。
『何なんですか!? まおう軍が何の用なんですか? 攻撃しても良いのですかっ??』
フゥーが叫んだ。
『そんな事をしておる暇はあるまい、こちらは千岐大蛇で手一杯なのですぞ』
桃伝説に乗って絶対服従を掛け続ける夜叛モズが振り返って叫んだ。一瞬忘れていたが今まさに砂緒の突入を要請しようとしていた所であった。
そのル・スリー白鳥號内。
「何だ、何なんだこれは!? この巨大な蛇みたいなヤツは?? どうしてそれが仮宮殿に乗り上げているんだっ」
「スピネルさん!?」
いつも冷静なスピネルが、城らしき物に超巨大生物が乗り上げている場面を見て途端に冷静さを失っている様に思えた。
「……それにこの巨大な魔ローダーはもしかして、猫弐矢が自慢げにいつも言っていた"ヌ"か?? もしや中に乗っているのは猫弐矢なのか!?」
「ぬ?? ねこにゃ?? スピネルさんしっかりして下さい!!」
横で見ていて、サッワは完全にスピネルが錯乱したと思った。と思うのも束の間、スピネルはすぐに共通チャンネルで一団に呼び掛けた。
『これは一体なんだーーーっ!! 説明しろーーっ』
「いつものスピネルさんじゃない?」
突然共通チャンネルで怒鳴り出すスピネルを見て、サッワはビクッとした。
『一体何故攻撃して来たんだ!』
猫弐矢が問い返した。しかしこの一言の声で両者は相手が兄弟だとはっきりと認識した。
『もしかして猫弐矢か?』
『もしかして猫名兄さんなのか!?』
同時に問い返した。かつて昔に此処クラウディア元王国が神聖連邦帝国に服従して以降、初めての再会であった。
『何をやっている! これは一体何だ!?』
『兄さんこそ何をしている? 猫呼はずっと兄さんを探して、ずっと家を出たままなんだぞーーーっ!』
『何なんだ、猫弐矢キミの兄弟なのか!?』
『ホホホ、この忙しい時に涙の再会ですか?? 少しはこっちの身にもなって欲しい物ですなあ』
兄弟が叫びあっている最中も巨大なチマタノカガチは城の残骸をついばみ続けている。それをかろうじて制止している桃伝説のモズは迷惑千万という表情であった。
『……猫呼には陰ながら会った事はある。美しい娘になっていた……』
『名乗ったのかい?』
『いや、身分を隠していた』
残念ながら途中から出て来たセレネは黒猫仮面一世を知らず、チンプンカンプンであった。
『うっとおし~~~連中だなあ!? フゥーあれ叩き落とせよニセ蛇輪があああああ』
今まさに砂緒が天空から帰って来ると思っていた直後、妙な展開になってセレネのイライラは爆発しそうであった。しかし自分自身の手足とも言える蛇輪は手元には無く、もどかしさに悶えた。
『そうなんだ、今砂緒くんがこの怪物を倒そうとしてた所なんだ、だから黙って見ててくれ!』
一瞬ル・スリーからの返答が無かった。
『……砂緒だと? あの硬くなる目付きの悪いガキか? 貴様、アイツとつるんでいるのか!?』
その会話を聞いて、貴城乃シューネは砂緒が嫌いなヤツが此処にも居たと、一瞬頬がぴくっとした。
『良く知っているね。そうだよ僕と砂緒くんは義兄弟くらいに仲が良いよ……』
実は今会場破壊の件で砂緒からは嫌われていたが、多少盛って伝えた。
『ならば良い、猫弐矢貴様も此処にいる連中も全員敵だっ!!!』
「スピネルさん、そんな事まおう様に許可無く言っていいんですか!?」
サッワは彼の腰にすがり付いて小声で言った。
『そんな事はどうでも良いわっ!!』
『!?』
『?』
『え、何?』
『とえりゃああああああああっ!!』
「きゃーーーーっ!?」
誰もが彼は錯乱していると思った直後、突然カガチとヌッ様をピョンピョンと伝いながら飛び、最後に大ジャンプをした彼の父、大猫乃主が乗るル・ツーがクロアゲハの羽を全開にしながら飛び蹴りを仕掛けた。突然の事で操縦席の中でメランと兎幸は転げまわった。
ブーーーンッ
しかし背中に羽の生えたル・スリーはあっさりと攻撃を避け、くるりと反転するとそのままル・ツーの背中に飛び蹴りを食らわせた。
ドギャッ!!
蹴られたル・ツーは飛翔能力が無い為に、そのままビューーーンと真っ逆さまに墜落してしまった。
ドーーーーーーンッ!!
地面にめり込むル・ツーの頭と肩。
『父さーーーーーーん!?』
『メランさん! 兎幸先輩!?』
『父さんだと??』
「スピネルさん、父さん? 僕にも……解説して……」
猫弐矢の絶叫にスピネルこと猫名は愕然とした。サッワの疑問は完全に置いてけぼりだが、父大猫乃主こそ彼が猫弐矢以上に憎悪する相手であった……
バシュウッ!!
スピネルの怒りに反応する様に、背中の純白の金属の羽を覆う様に、無数の魔法陣や魔法文字で彩られたさらに長大な魔法の羽が発生した。
『いかにも、猫名よワシは此処におるぞ』
地面からめり込んだ頭を抜いたル・ツーが起き上がった。
『貴様がぁああああああ、神聖連邦に降ったあああああああ!!』
「スピネルさん!?」
猫名はサッワの言葉にも一切耳を貸さず、そのままクルクル回転しながらル・ツーに突進して来た。
「おじさん、わ、わ何か派手なのが来たよ!?」
『任せい』
ギューーーン!! ガコッ!
猫乃は一言言うと、するりと身を屈ませて攻撃を避け後ろに回り込んでル・スリーに掴み掛かった。
『ええい、離せっ!』
『もう離さんぞ!』
ル・スリー白鳥號はル・ツーに掴まれたまま飛び上がった。巨大な魔法の翼の推力でどんどんと上昇して行く。
『猫弐矢さま、ほっといて良いのでしょうか!? 加勢しましょうか??』
先程からあっけに取られていたフゥーが猫弐矢に聞いた。
『何なんだよ、カガチで大変な時に何人間同士で戦ってんだよ!?』
『あの皆の衆よ、私の絶対服従にも限界がありますぞ!? 城を食べ尽くせば恐らくカガチは移動を再開しますぞ』
モズも焦りまくった。
『父と兄の事で申し訳無い……あの二機は放置して、砂緒くんに突入要請しようか……』
『ふざけんな! 砂緒が命懸けて落ちてくるのに、下でゴチャゴチャ喧嘩してていいのかよ!?』
セレネが猫弐矢に食って掛かった。
『済まない、今はそうするしか。時間も無いんだ』
猫弐矢は焦って両手で頭を掻き、フゥーは心配してその姿を見つめた。
『ぎゃーーーーーー』
『わーーーーーっ』
『ちいいいいいい!!』
と、そんな会話をしている内にル・ツーが振り解かれて地面に向けて落下して行く。
『あっ危ない!!』
ヌのフゥーが手を差し伸べたが手遅れであった。
ドシャーーーーン!!
背中から地面に叩き付けられたル・ツーの操縦席内では、大猫乃主がメランと兎幸を同時に庇って頭をしこたま打っていた。
「猫乃大丈夫!? しっかりして……」
「ぐうう、う」
兎幸が大猫乃主を揺り動かすが、険しい顔をして起き上がらない。
『ふざけんな……止まれえええ、カガチも偽蛇輪もっ!!』
いち早く起き上がったメランは、近くに落ちていた魔砲ライフルを構えると、ル・スリー白鳥號とチマタノカガチに向けて乱射し始めた。
ドンドン、ドーーン! ドドーーーン!!
『何だって……アレが蛇輪のオリジナル機体??』
セレネはル・ツーに蹴りを入れた後に、上空に戻って漂うル・スリー白鳥號を見上げた。砂緒の前世の前世の話を半分ホラ話だと思っていたが、その蛇輪を等ウェキ玻璃音大王が制作する時に参考にした当のオリジナル機体が、女王選定会議の時まおう抱悶ちゃんを連れて来て、一瞬で消えた機体だとは気付いていなかった。
『何なんですか!? まおう軍が何の用なんですか? 攻撃しても良いのですかっ??』
フゥーが叫んだ。
『そんな事をしておる暇はあるまい、こちらは千岐大蛇で手一杯なのですぞ』
桃伝説に乗って絶対服従を掛け続ける夜叛モズが振り返って叫んだ。一瞬忘れていたが今まさに砂緒の突入を要請しようとしていた所であった。
そのル・スリー白鳥號内。
「何だ、何なんだこれは!? この巨大な蛇みたいなヤツは?? どうしてそれが仮宮殿に乗り上げているんだっ」
「スピネルさん!?」
いつも冷静なスピネルが、城らしき物に超巨大生物が乗り上げている場面を見て途端に冷静さを失っている様に思えた。
「……それにこの巨大な魔ローダーはもしかして、猫弐矢が自慢げにいつも言っていた"ヌ"か?? もしや中に乗っているのは猫弐矢なのか!?」
「ぬ?? ねこにゃ?? スピネルさんしっかりして下さい!!」
横で見ていて、サッワは完全にスピネルが錯乱したと思った。と思うのも束の間、スピネルはすぐに共通チャンネルで一団に呼び掛けた。
『これは一体なんだーーーっ!! 説明しろーーっ』
「いつものスピネルさんじゃない?」
突然共通チャンネルで怒鳴り出すスピネルを見て、サッワはビクッとした。
『一体何故攻撃して来たんだ!』
猫弐矢が問い返した。しかしこの一言の声で両者は相手が兄弟だとはっきりと認識した。
『もしかして猫弐矢か?』
『もしかして猫名兄さんなのか!?』
同時に問い返した。かつて昔に此処クラウディア元王国が神聖連邦帝国に服従して以降、初めての再会であった。
『何をやっている! これは一体何だ!?』
『兄さんこそ何をしている? 猫呼はずっと兄さんを探して、ずっと家を出たままなんだぞーーーっ!』
『何なんだ、猫弐矢キミの兄弟なのか!?』
『ホホホ、この忙しい時に涙の再会ですか?? 少しはこっちの身にもなって欲しい物ですなあ』
兄弟が叫びあっている最中も巨大なチマタノカガチは城の残骸をついばみ続けている。それをかろうじて制止している桃伝説のモズは迷惑千万という表情であった。
『……猫呼には陰ながら会った事はある。美しい娘になっていた……』
『名乗ったのかい?』
『いや、身分を隠していた』
残念ながら途中から出て来たセレネは黒猫仮面一世を知らず、チンプンカンプンであった。
『うっとおし~~~連中だなあ!? フゥーあれ叩き落とせよニセ蛇輪があああああ』
今まさに砂緒が天空から帰って来ると思っていた直後、妙な展開になってセレネのイライラは爆発しそうであった。しかし自分自身の手足とも言える蛇輪は手元には無く、もどかしさに悶えた。
『そうなんだ、今砂緒くんがこの怪物を倒そうとしてた所なんだ、だから黙って見ててくれ!』
一瞬ル・スリーからの返答が無かった。
『……砂緒だと? あの硬くなる目付きの悪いガキか? 貴様、アイツとつるんでいるのか!?』
その会話を聞いて、貴城乃シューネは砂緒が嫌いなヤツが此処にも居たと、一瞬頬がぴくっとした。
『良く知っているね。そうだよ僕と砂緒くんは義兄弟くらいに仲が良いよ……』
実は今会場破壊の件で砂緒からは嫌われていたが、多少盛って伝えた。
『ならば良い、猫弐矢貴様も此処にいる連中も全員敵だっ!!!』
「スピネルさん、そんな事まおう様に許可無く言っていいんですか!?」
サッワは彼の腰にすがり付いて小声で言った。
『そんな事はどうでも良いわっ!!』
『!?』
『?』
『え、何?』
『とえりゃああああああああっ!!』
「きゃーーーーっ!?」
誰もが彼は錯乱していると思った直後、突然カガチとヌッ様をピョンピョンと伝いながら飛び、最後に大ジャンプをした彼の父、大猫乃主が乗るル・ツーがクロアゲハの羽を全開にしながら飛び蹴りを仕掛けた。突然の事で操縦席の中でメランと兎幸は転げまわった。
ブーーーンッ
しかし背中に羽の生えたル・スリーはあっさりと攻撃を避け、くるりと反転するとそのままル・ツーの背中に飛び蹴りを食らわせた。
ドギャッ!!
蹴られたル・ツーは飛翔能力が無い為に、そのままビューーーンと真っ逆さまに墜落してしまった。
ドーーーーーーンッ!!
地面にめり込むル・ツーの頭と肩。
『父さーーーーーーん!?』
『メランさん! 兎幸先輩!?』
『父さんだと??』
「スピネルさん、父さん? 僕にも……解説して……」
猫弐矢の絶叫にスピネルこと猫名は愕然とした。サッワの疑問は完全に置いてけぼりだが、父大猫乃主こそ彼が猫弐矢以上に憎悪する相手であった……
バシュウッ!!
スピネルの怒りに反応する様に、背中の純白の金属の羽を覆う様に、無数の魔法陣や魔法文字で彩られたさらに長大な魔法の羽が発生した。
『いかにも、猫名よワシは此処におるぞ』
地面からめり込んだ頭を抜いたル・ツーが起き上がった。
『貴様がぁああああああ、神聖連邦に降ったあああああああ!!』
「スピネルさん!?」
猫名はサッワの言葉にも一切耳を貸さず、そのままクルクル回転しながらル・ツーに突進して来た。
「おじさん、わ、わ何か派手なのが来たよ!?」
『任せい』
ギューーーン!! ガコッ!
猫乃は一言言うと、するりと身を屈ませて攻撃を避け後ろに回り込んでル・スリーに掴み掛かった。
『ええい、離せっ!』
『もう離さんぞ!』
ル・スリー白鳥號はル・ツーに掴まれたまま飛び上がった。巨大な魔法の翼の推力でどんどんと上昇して行く。
『猫弐矢さま、ほっといて良いのでしょうか!? 加勢しましょうか??』
先程からあっけに取られていたフゥーが猫弐矢に聞いた。
『何なんだよ、カガチで大変な時に何人間同士で戦ってんだよ!?』
『あの皆の衆よ、私の絶対服従にも限界がありますぞ!? 城を食べ尽くせば恐らくカガチは移動を再開しますぞ』
モズも焦りまくった。
『父と兄の事で申し訳無い……あの二機は放置して、砂緒くんに突入要請しようか……』
『ふざけんな! 砂緒が命懸けて落ちてくるのに、下でゴチャゴチャ喧嘩してていいのかよ!?』
セレネが猫弐矢に食って掛かった。
『済まない、今はそうするしか。時間も無いんだ』
猫弐矢は焦って両手で頭を掻き、フゥーは心配してその姿を見つめた。
『ぎゃーーーーーー』
『わーーーーーっ』
『ちいいいいいい!!』
と、そんな会話をしている内にル・ツーが振り解かれて地面に向けて落下して行く。
『あっ危ない!!』
ヌのフゥーが手を差し伸べたが手遅れであった。
ドシャーーーーン!!
背中から地面に叩き付けられたル・ツーの操縦席内では、大猫乃主がメランと兎幸を同時に庇って頭をしこたま打っていた。
「猫乃大丈夫!? しっかりして……」
「ぐうう、う」
兎幸が大猫乃主を揺り動かすが、険しい顔をして起き上がらない。
『ふざけんな……止まれえええ、カガチも偽蛇輪もっ!!』
いち早く起き上がったメランは、近くに落ちていた魔砲ライフルを構えると、ル・スリー白鳥號とチマタノカガチに向けて乱射し始めた。
ドンドン、ドーーン! ドドーーーン!!
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