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第9章 王都の冬
第239話 精霊の森へようこそ ②
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「え、ええっ・・・、こちらこそお招きいただき有り難うございます。
何といえばいいのか、声も出ないわ…。」
わたしの歓迎の言葉にエルフリーデちゃんは声を絞り出すようにそう答えたの。
本当にビックリしているみたい。
エルフリーデちゃんが呆然としている間にも、次々とグループの子達が精霊の森にやってくる。
そして、最後にフェイさんに連れられてミーナちゃんとハンナちゃんがやってきて全員揃った。
「エルフリーデちゃん、みんな揃ったよ。
そろそろ、屋敷の方へ移動するから帰ってきて。」
わたしは、放心したままのエルフリーデちゃんの覚醒を促す。
「ええ、ごめんなさい。
あまりに予想外の光景だったもので見惚れてしまいましたわ。
本当に春の景色なのですね…。」
わたしの呼びかけに応えたものの、まだ心ここにあらずの雰囲気だね…。
泉から屋敷に向かって前庭の中を進む、途中の花壇に咲きほこる花々がみんなの目を楽しませている。
みんなも精霊の森の到着したときはビックリしていたけどすぐに順応して、雪からから開放されたことを素直に喜んでいた。唯一人を除いて…。
「不思議ですわ…。
空を見上げるとどんより曇っているのに、なんでここは春の陽だまりのようなんですか?」
エルフリーデちゃんは目の前の景色を素直に飲み込むことが出来なくて、まだ戸惑っているみたいだね。
きっと、普段真面目な人ほど理屈にあわないことをすんなり受け入れるのが難しいのだろう。
そう考えていると、
「エルフリーデさん、それはおそらく私達には解らないことだと思います。
私もここに着いてすぐは色々と理屈にあわないことを不思議に思いましたが、考えるだけ無駄だと思うことにしました。
だって、目の前にこんな素敵な光景が広がっているのですよ、楽しまないと損です。
見てください、ルーナさんのあの能天気なはしゃぎよう。
あそこまでなれとは言いませんが、雪に閉じ込められて溜まったストレスをここで解消させていただくことにしましょう。」
と、グループの中でエルフリーデちゃんと並んで真面目なマイヤーちゃんが言う。
意外だった、今までの印象ではマイヤーちゃんの方が理屈に拘りそうに思えたのだけど、今回は精霊の森の常識外の光景をすんなりと受け入れたみたい。
よくよく話を聞いてみると、マイヤーちゃんは年明け以降のどんよりとした雪景色にかなり精神的苦痛を感じていたそうだ。
雪から開放されて、明るい陽ざしの下で過ごせるなら多少のことには拘らないと言う。
さっきエルフリーデちゃんに掛けた言葉通り、限られた時間しかここに留まれないのだから楽しまなければ損だと考えることにしたらしい。
マイヤーちゃんの言葉はある種の説得力を持っていたみたいで、エルフリーデちゃんも難しいことを考えるのは止めて精霊の森を楽しむことに頭を切り替えたようだ。
いつの間にかエルフリーデちゃんの表情から考えに耽っているような気色はなくなっていたよ。
**********
精霊の森で散策を楽しむ前に、一旦屋敷のリビングで一休みすることにする。
まあ、来たばかりだし休むのが目的ではなく、ルーナちゃんを最初に招いたときに約束させたルールを説明するのが本当の目的なの。
なんで、先にしておかなかったかって?
だって、ルーナちゃんと違って言わなくても、勝手に草木を手折ったり、 動物を狩ったりする子達じゃないもの。招いてから説明しても大丈夫だと思ったの。
もちろん、ルーナちゃんが悪い子だと言う訳ではないよ、そんな子なら最初から招かない。
ただ、普段ルーナちゃんから話を聞いていると、ウサギを狩って食材にしたり、森から果実を取っておやつにしたりしているみたいだから。
事前に約束させておかなければ、極自然に精霊の機嫌を損ねることをするような気がしたの。
だって、人の倫理観からすれば、食材にするために動物を狩るのも、果実を採るのも悪いことではないから。ただし、それが許されている場所であればね。
思ったとおり、ルーナちゃんに示した物と同じルールを説明したら、誰からも不満の声は無かった。というよりも、みんなは何故そんな当たり前のことを説明するのかという顔をしていた。
「ええ、もちろん、ターニャちゃんが決めたルールですもの。異存はありませんわ。
ただ、そんな事を心配する必要があるのはルーナさんくらいですわよ。
普通貴族の娘は動物を狩ったりしませんし、泉に入ったりもしませんわ。」
みんなを代表するようにエルフリーデちゃんが答えた。
あ、やっぱり…、普通の貴族のお嬢様は森には行ってウサギを狩ったりしないんだ。
すると、珍しくルーナちゃんが抗議の声を上げた。
「あ、いくらエルフリーデちゃんでもさすがにそれは失礼だと思うよ。
ボクだって人様の森で勝手に動物を狩ったりしないよ!
ちゃんと親父に教えてもらったんだ、狩りや採取をするには権利が要るんだって。
ボクがウサギを狩ったり、ベリーを採ったりしているのはボクの家の森だけだよ。」
へえ、狩りや採取をするには権利がいるんだ、狩猟が許可されている森なら誰がしてもいいのかと思っていたよ。
ルーナちゃんはちゃんとそれが分かっていたんだ、ルーナちゃんの行動を信用していないようで悪いことしちゃった。
でも、エルフリーデちゃんも同じように思っていたみたいだしね…。
何といえばいいのか、声も出ないわ…。」
わたしの歓迎の言葉にエルフリーデちゃんは声を絞り出すようにそう答えたの。
本当にビックリしているみたい。
エルフリーデちゃんが呆然としている間にも、次々とグループの子達が精霊の森にやってくる。
そして、最後にフェイさんに連れられてミーナちゃんとハンナちゃんがやってきて全員揃った。
「エルフリーデちゃん、みんな揃ったよ。
そろそろ、屋敷の方へ移動するから帰ってきて。」
わたしは、放心したままのエルフリーデちゃんの覚醒を促す。
「ええ、ごめんなさい。
あまりに予想外の光景だったもので見惚れてしまいましたわ。
本当に春の景色なのですね…。」
わたしの呼びかけに応えたものの、まだ心ここにあらずの雰囲気だね…。
泉から屋敷に向かって前庭の中を進む、途中の花壇に咲きほこる花々がみんなの目を楽しませている。
みんなも精霊の森の到着したときはビックリしていたけどすぐに順応して、雪からから開放されたことを素直に喜んでいた。唯一人を除いて…。
「不思議ですわ…。
空を見上げるとどんより曇っているのに、なんでここは春の陽だまりのようなんですか?」
エルフリーデちゃんは目の前の景色を素直に飲み込むことが出来なくて、まだ戸惑っているみたいだね。
きっと、普段真面目な人ほど理屈にあわないことをすんなり受け入れるのが難しいのだろう。
そう考えていると、
「エルフリーデさん、それはおそらく私達には解らないことだと思います。
私もここに着いてすぐは色々と理屈にあわないことを不思議に思いましたが、考えるだけ無駄だと思うことにしました。
だって、目の前にこんな素敵な光景が広がっているのですよ、楽しまないと損です。
見てください、ルーナさんのあの能天気なはしゃぎよう。
あそこまでなれとは言いませんが、雪に閉じ込められて溜まったストレスをここで解消させていただくことにしましょう。」
と、グループの中でエルフリーデちゃんと並んで真面目なマイヤーちゃんが言う。
意外だった、今までの印象ではマイヤーちゃんの方が理屈に拘りそうに思えたのだけど、今回は精霊の森の常識外の光景をすんなりと受け入れたみたい。
よくよく話を聞いてみると、マイヤーちゃんは年明け以降のどんよりとした雪景色にかなり精神的苦痛を感じていたそうだ。
雪から開放されて、明るい陽ざしの下で過ごせるなら多少のことには拘らないと言う。
さっきエルフリーデちゃんに掛けた言葉通り、限られた時間しかここに留まれないのだから楽しまなければ損だと考えることにしたらしい。
マイヤーちゃんの言葉はある種の説得力を持っていたみたいで、エルフリーデちゃんも難しいことを考えるのは止めて精霊の森を楽しむことに頭を切り替えたようだ。
いつの間にかエルフリーデちゃんの表情から考えに耽っているような気色はなくなっていたよ。
**********
精霊の森で散策を楽しむ前に、一旦屋敷のリビングで一休みすることにする。
まあ、来たばかりだし休むのが目的ではなく、ルーナちゃんを最初に招いたときに約束させたルールを説明するのが本当の目的なの。
なんで、先にしておかなかったかって?
だって、ルーナちゃんと違って言わなくても、勝手に草木を手折ったり、 動物を狩ったりする子達じゃないもの。招いてから説明しても大丈夫だと思ったの。
もちろん、ルーナちゃんが悪い子だと言う訳ではないよ、そんな子なら最初から招かない。
ただ、普段ルーナちゃんから話を聞いていると、ウサギを狩って食材にしたり、森から果実を取っておやつにしたりしているみたいだから。
事前に約束させておかなければ、極自然に精霊の機嫌を損ねることをするような気がしたの。
だって、人の倫理観からすれば、食材にするために動物を狩るのも、果実を採るのも悪いことではないから。ただし、それが許されている場所であればね。
思ったとおり、ルーナちゃんに示した物と同じルールを説明したら、誰からも不満の声は無かった。というよりも、みんなは何故そんな当たり前のことを説明するのかという顔をしていた。
「ええ、もちろん、ターニャちゃんが決めたルールですもの。異存はありませんわ。
ただ、そんな事を心配する必要があるのはルーナさんくらいですわよ。
普通貴族の娘は動物を狩ったりしませんし、泉に入ったりもしませんわ。」
みんなを代表するようにエルフリーデちゃんが答えた。
あ、やっぱり…、普通の貴族のお嬢様は森には行ってウサギを狩ったりしないんだ。
すると、珍しくルーナちゃんが抗議の声を上げた。
「あ、いくらエルフリーデちゃんでもさすがにそれは失礼だと思うよ。
ボクだって人様の森で勝手に動物を狩ったりしないよ!
ちゃんと親父に教えてもらったんだ、狩りや採取をするには権利が要るんだって。
ボクがウサギを狩ったり、ベリーを採ったりしているのはボクの家の森だけだよ。」
へえ、狩りや採取をするには権利がいるんだ、狩猟が許可されている森なら誰がしてもいいのかと思っていたよ。
ルーナちゃんはちゃんとそれが分かっていたんだ、ルーナちゃんの行動を信用していないようで悪いことしちゃった。
でも、エルフリーデちゃんも同じように思っていたみたいだしね…。
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