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悪役令嬢への気持ち(4)

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 ウォルグの言葉もあり、リスティアはミエルについても調べ始める。エリーサの素行調査とミエルの調査。それがリスティアに与えられた任務といっても過言ではなかった。
「ウォルグ様。ミエルさんは、オスレム男爵から虐待されている可能性が高いです。ですが、ミエルさんはけしてそれを口にはしません」
 地下書庫で二人きりになると、リスティアは調査の内容をウォルグに報告していた。
「やはり、脅されているのだろうな」
 ミエルはオスレム男爵の養子となった人物であり、孤児院から引き取られた。そして、オスレム男爵は妻帯していない。
「どうにかして、ミエルさんを救う方法はありませんか? ミエルさんのお菓子から彼らを救ったように」
 ミエルはこの学園に中途半端な時期に転入してきた。そのときに「お近づきの印に……」と、オスレム男爵の手掛けている商会のお菓子を振舞った。
 その数日後、彼女からお菓子を受け取り食べた人物を彼女は侍らせるようになる。それがおかしいと思ったのはウォルグであり、彼はミエルが配っていたお菓子を分析していた。
 そして、興味のあった薬草学の知識がここで役立った。
 このお菓子は危険だ。それが、ウォルグの調べた結果でもあった。
 すぐさま王宮薬師に相談、解毒薬を準備し彼らにそれとなく飲ませておく。だが、ミエルの側にいて、彼女を監視するようにと指示を出し、ウォルグ自身もミエルの信望者として演じ始める。
 さらにミエルは、取り巻きの男たちを使ってアルヴィンにまで近づくようになった。むしろ、彼女とアルヴィンを会わせたのはウォルグである。そうでなければ、学園をとっくに卒業したアルヴィンとミエルが知り合える機会などない。
 アルヴィンは自分に近づいてきたミエルからそれとなく情報収集をし始めるが、学園の生徒ではない彼にとっても、入手できる情報は限られていた。
 そこでリスティアに調査を頼むこととした。
 リスティアが確認したところ、彼女は足元に力が入らないほどの虐待を受けているのではという疑いを持つ。
 リスティアもエリーサも、ミエルを救いたいと思っていた。
 その結果、卒業パーティーを利用することにしたのだ。ここまで長かったと、ウォルグはしみじみと思っていた。
 卒業パーティーといえば悪役令嬢の断罪がつきものである。
 そういった物語になぞらえ、アルヴィンはミエルをエスコートし、パーティー会場に現れた。
 エリーサなんかは緊張のあまりに倒れそうになっていたが、リスティアは堂々としたものだった。象牙色の髪を妖艶にまとめあげ、きりっとした意思の強そうな碧眼も、はっきりとした色めいた唇も、今までのリスティアとは一味違っていた。
 トクンと、心臓が大きく震えた。見れば見るほど、彼女に魅せられる。
 ウォルグが彼女と共に過ごした時間は、無駄ではなかった。半年前の彼女とは違う彼女がここにいる。その前向きさとひたむきさは、ウォルグの心をますます魅了し、捕らえて放さない。
 リスティアのおかげでオスレム男爵の悪事は明るみになり、すぐさま彼の屋敷に調査が入り、彼は爵位剥奪となった。
 養子であったミエルや他の子供たちは、孤児院へと戻る羽目になってしまったが、ミエルは学園で学んだ知識を生かして孤児院の運営側として働き、里親を希望する者たちの調査をしっかりと行いたいと口にしていた。
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