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「そんなに欲求不満なんですか? 溜まってるんですか?」
「あぁ……、溜まってる」
「では、王族ご用達の娼館から娼婦を呼びましょう」

 彼の口の端がひくりと動いた。

「呼ばなくていい。お前がいるからな……」

 彼は、私の胸の先端に「ふっ」と息を吹きかけた。ざわりとした感覚が背中をびっと走り抜ける。

「私では、力不足です。ほら、勃つものも勃ちませんよ」
「お前……。いい加減、黙れ」

 そう言ったレインハルト殿下は、いきなり私に口づけた。

「んっ……ん、んっ……」

 喉の奥から声を出し反論しようとしたが、無駄な抵抗だった。
 彼は私のわずかな唇の隙間から、舌を押し込んでくる。

「?!……!!」

 あっという間に私の舌は絡めとられてしまった。ざらりとしたものが舌に触れる。もちろん、彼の舌である。
 たったそれだけのことであるのに、下腹部に熱がたまっていく感じがした。じんわりと温かいものが、足の間に生まれ始める。

「はぁ……、んっ……」

 空気を求めようとすると、変な声が出てしまう。
 心臓はバクバクと音を立て、ものすごい速度で動いている。
 私の息があがってきていることに気づいてくれたのか、レインハルト殿下はやっと唇を離してくれた。

「なんだよ……。そんな顔、できるんじゃないか」

 一体、どんな顔?

「どんな顔って聞きたそうだな」

 心の中を読んでいる?

「すげぇ、色っぽい顔。ここも、屹ってんじゃん」

 親指の腹で胸の先端をぐりぐりっとされた。

「ひゃん……」
「こっちも食べてよい?」

 返事をするより先に、私の左側の乳房は彼の口の中に含まれていた。

「やっ……ん」

 ぬるっと温かいものが乳房を覆い、先端は舌先でころころと撫でられる。そのたびに、じんじんとお腹の奥が疼く。

「やっ……、やめて……」

 胸から顔を上げて、彼はニタリと笑う。

「やめるわけないだろう? これからお前を抱くと、何度言ったらわかるんだ?」
「どうして……?」
「どうして? それを聞くのか?」

 レインハルト殿下は苦しそうに胸元を手で押さえていた。

「お前……。本当に気づかなかったのか? 僕が、ずっとお前のことを好いていたことを。お前のことを、愛しているんだ……」
「え……」

 嫌われてはいないだろうとは思っていた。なによりも十年も専属騎士として側にいたのだから。
 だからって愛されているとは思ってもいなかった。

「本気で言ってるんですか?」
「僕がただの性欲だけでお前にこんなことをしているとでも思っているのか? それだけであれば、娼婦プロに頼む」
「ですが、私は殿下よりも十歳も年上です」
「それがどうした? さすがに十年前では問題があったかもしれないが、僕だって成人した。アンリだってまだ二十八だろ?」
「まだ、じゃなくて、もう、です」
「そんなの、個人的感覚の違いだ。僕がまだと言ったらまだなんだよ。お前は僕の専属騎士なんだから、僕の言葉が絶対のはずだろう?」

 それを言われてしまったら、そうなのだ。彼の言葉は絶対に正しい。
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