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犬族?

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 息も絶え絶えに飛び出した私は、本部を出た勢いのまま空に飛び立った。

 本部が見えなくなるまで全速力で飛んだ。

 怖い!怖すぎるよ!
 話してる時は優しいのかもと思ってたけど、やっぱり怖いよ~!

 慣れない全速力であっという間に体力が尽き、近くの木へ不時着する。
 荒くなった呼吸を整えながら、配達物である指輪を眺める。

 キラリと光を反射するシンプルなシルバーのリングだ。アクセントに、縦に黒のラインが入っているが、それだけだ。

 見せるだけでいいって言ってらしたけど、何が分かるんだろ。
 黒いとこに何か書いてあるのかなぁ……

 右手の薬指に嵌った指輪をじーっと見てみたり、光に透かしてみたり。
 するとある事に気付いた。

 ……ん?あれ?この指輪、こんなにピッタリだったっけ?

 確か……と、渡された時の事を思い出そうとして、ぶるりと震えた。

 ややややめやめ!ピッタリなら落とす心配もないもないし!見せて、お返事もらって、報告するだけだもんね!報告……ほうこく……またギース局長に会うんだよね……う~~~~っ

 もやもやを振り払う様に枝を蹴り空へ舞う。
 夕方までに戻るには、そろそろ動き始めなければいけない。
 着く頃にはお腹も減っているだろう、早めに配達が終われば町で何か食べようかな、と思考を無理矢理切り替え目的地を目指した。



「赤い屋根に白い壁……うん、あれだ!」

 隣町に着いてすぐ目的の家は見つかった。
 隣町へ来る度に、かわいいお家だなと思いよく眺めていた家だった。
 ふわりと門の前に降り立つと、空で見るよりも大きく見える。

 ちょっと緊張してきた……

 少しでも良い印象を持ってもらえるように身嗜みを整える。
 せめて羽がもう少し黒かったらな……と思うが、今更考えても仕方ない。

 ドキドキする胸を押さえながらドアベルを鳴らす。

 はーい!という女性の声と共にパタパタと足音が聞こえ、ドアが開かれる。
 シンプルなエプロンドレスに身を包んだメイドさんが現れた。きっちりと纏めた明るい茶の頭には、もふもふの耳がぴょこんと立っている。

 わ、わ!
 犬族さんだ!

「あらあら!なんて可愛らしいお客様でしょう!」
「へぁっ!?」

 言われ慣れない言葉に変な声が出る。
 自分の事かと理解してみるみる顔が熱くなった。

「うふふっ。こんにちは、白いカラスちゃん。ご用件はなんでしょう?」

 ハッ!と本来の目的を思い出す。

「こ、こんにちはっ!あの、ギース郵便局長からのお届け物ですっ!」
「まぁ、ギース様から……それならご主人様宛ね。中へどうぞ」

 持ち上げかけた右手をぴたりと止める。

 えっ、あれっ?
 玄関で見せて終わりじゃないのっ!?

 行き場を失った右手をうろうろと彷徨わせ、メイドさんに促さられるまま、かわいいお家へ足を踏み入れた。

 数時間後には、この家から飛び出す事になるとも知らずに。
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