563 / 821
第32.5話 俺のヴァスティナ帝国がこんなにイカれてるわけがない
21
しおりを挟む
「・・・・・・っていう事があって、私達は帝国メイド部隊になったわけなんです!」
「そう言う事なので、残念ながらこの馬鹿とは付き合い長いんです」
物語は過去から現在へと進む。
ヴァスティナ城内にある食堂のとある席で、ラフレシアとリンドウは、自分達の過去について語って聞かせていた。彼女の話を聞くために席に集まっていたのは、帝国軍の主要な面々である。レイナとクリスを始め、イヴ、シャランドラ、アングハルト、ミュセイラの姿があった。
「御二人の仲がそんなに長いとは驚きました」
「俺はそんな事より、この腐乱メイドが昔から腐ってた事に驚きだぜ」
偶然食堂に居合わせた者達。何気なく始まった会話の中で、ラフレシアがどうしてリンドウを好きなのかという話題が上がった。そこから二人の過去語りが始まったのである。
「僕的には、ラフレシアさんが前は傭兵だった事に驚きかな~」
「その腐った趣味、傭兵だった事と関係あるんか?」
「大ありですよ!傭兵として色んな戦場を渡り歩いてきたんですけど、軍隊って基本男所帯じゃないですか♪だから戦地でよく見ちゃってたんですよね、男同士の慰め合いを♡」
「もしかして、それを見てたせいで・・・・・?」
「気が付いたら好きになってたとか、まさかそんな話やないやろな・・・・・・?」
「イヴ様、シャランドラ様、大正解です!!禁じられた愛に燃える男同士の行為にすっごく興奮しちゃって、以来私は同性愛を全力で応援する婦女子へと生まれ変わったんです!」
男同士の同性愛を応援し、愛でて、観賞して楽しむのが、彼女の言う婦女子である。つまり腐女子だ。
ラフレシアは帝国メイド部隊の腐女子代表であり、一番の戦闘狂でもある。そんな彼女と一番付き合いが長く、彼女の良き相棒であるのがリンドウだ。
お調子者のラフレシアと違い、リンドウは真面目な優等生タイプである。性格は真逆であり、腐女子仲間でもない。では何故、ラフレシアはリンドウが好きで、普段から行動を共にしている事が多いのか?肝心のその疑問が、まだ語られていない。
「それで、どうして貴女はリンドウさんの事が好きなんですの?前置きが長過ぎですわ」
「私もそれが気になっていました」
「ミュセイラ様もアングハルト様もそれ気になります~?教えるのやっぱり恥ずかしいな~」
ご機嫌な様子のラフレシアは、本題を語るのを照れながら、一度リンドウに視線を移す。視線に気付いた彼女は、大きな溜め息を吐いてラフレシアから顔を背けた。その理由は、これからラフレシアが語る内容を知っているからだ。
嫌がりはせず、もう諦めていた。リンドウの反応を見たラフレシアは、皆の疑問に答えるべく、満面の笑みを浮かべて口を開く。
「リンを好きな理由はですね~・・・・・、私が本気で殺そうとしても死なないからです♡」
「「「「「「えっ・・・・・・・?」」」」」」
「こう見えても私、傭兵時代は歩く戦場の狂気って呼ばれてて、色んな所で大暴れしてたんですよ。でも、その頃の私は雑魚の相手に飽き飽きしてて、もっと強い相手と戦いたかったんです」
「その強い相手というのは、もしかして・・・・・」
「流石レイナ様、察しが良い!陛下に名前を頂く前、リンと私は仕事中に大喧嘩したんです。お互い熱くなっちゃってたから、本気の勝負で決着つける事になって、ガチの殺し合いしたんですよ♡」
「マジかこいつら・・・・・・、イカレ過ぎだぜ」
「一日中殺し合って、結果は私の負けでした。私が本気で全力出して初めて負けた相手は、リンだったんです。負けたのは悔しかったけど、それ以上になんか嬉しくなっちゃって・・・・・・。だから私は、リンが大好き♡」
狂気に満ちた愛というのは、まさにこの事であろう。だからリンドウは溜め息を吐いたのだ。
ラフレシアの衝撃的告白に、誰もが絶句してしまっていた。まさかそんな危険な愛を向けていると、一体誰に想像できただろう?絶句するのも当然だった。
「はあ・・・・・、何度聞いてもあんたの愛は重いわ」
「リンったら、照れちゃって可愛いんだから~♡」
「これのどこが照れてるように見えるのよ?」
「大丈夫!素っ気なくたって、リンの気持ちはちゃんと理解してるわよ♪♪」
「絶対理解してない・・・・・」
「ええ~!まさかリン、ほんとは私のこと嫌い・・・・・!?」
ラフレシアの語った馴れ初めの後、彼女はリンドウにべったりとなった。当時から二人は寝室が同じであり、その理由は、リンドウと同じ部屋に住むと言って、ラフレシアが大いに駄々をこねたからだ。
その後、恋をしたせいなのか、それともユリーシアのお陰か、もしくは両方ともなのか、以降の彼女は乱暴さが薄まっていき、現在の明るい女性になった。
対してリンドウは、その日以降ラフレシアのお陰で、頭を悩ませる苦労ばかりする事になってしまった。しかしリンドウは、お陰でよく笑えるようになったのである。
(こんな奴だけど・・・・・、傍にいてくれるのは嬉しい・・・・・)
リンドウ達がメイドになってから、いくつもの年が流れていった。
今やフラワー部隊は、アマリリスやノイチゴやラベンダーが加わり、メイドの人数も増えた。たった三人だけの部隊であった頃からすれば、とても信じられない光景だ。
これも全て、ラフレシアとの出会いが生んだ光景である。面倒くさい腐女子で、イカレた戦闘狂であっても、嫌いになるはずがない。何故なら彼女は、リンドウが初めて心を許せた、かけがえのない存在なのだから・・・・・。
「嫌いなわけないじゃない。でなきゃ、一緒の部屋で寝たりしないわよ・・・・・・」
「リン・・・・!!私、リンのそういうところほんと大好き♡」
ヴァスティナ帝国女王を守る、女王守護の最後の砦。帝国メイド部隊、フラワー部隊。
今日も彼女達は、忙しそうに、大変そうに、そして楽しそうに、忠誠を誓った主君のために働いている。
これは、花の名と花言葉を胸に主君へ忠を尽くす、強く気高い侍従達の、大切な記録・・・・・・。
~終~
「そう言う事なので、残念ながらこの馬鹿とは付き合い長いんです」
物語は過去から現在へと進む。
ヴァスティナ城内にある食堂のとある席で、ラフレシアとリンドウは、自分達の過去について語って聞かせていた。彼女の話を聞くために席に集まっていたのは、帝国軍の主要な面々である。レイナとクリスを始め、イヴ、シャランドラ、アングハルト、ミュセイラの姿があった。
「御二人の仲がそんなに長いとは驚きました」
「俺はそんな事より、この腐乱メイドが昔から腐ってた事に驚きだぜ」
偶然食堂に居合わせた者達。何気なく始まった会話の中で、ラフレシアがどうしてリンドウを好きなのかという話題が上がった。そこから二人の過去語りが始まったのである。
「僕的には、ラフレシアさんが前は傭兵だった事に驚きかな~」
「その腐った趣味、傭兵だった事と関係あるんか?」
「大ありですよ!傭兵として色んな戦場を渡り歩いてきたんですけど、軍隊って基本男所帯じゃないですか♪だから戦地でよく見ちゃってたんですよね、男同士の慰め合いを♡」
「もしかして、それを見てたせいで・・・・・?」
「気が付いたら好きになってたとか、まさかそんな話やないやろな・・・・・・?」
「イヴ様、シャランドラ様、大正解です!!禁じられた愛に燃える男同士の行為にすっごく興奮しちゃって、以来私は同性愛を全力で応援する婦女子へと生まれ変わったんです!」
男同士の同性愛を応援し、愛でて、観賞して楽しむのが、彼女の言う婦女子である。つまり腐女子だ。
ラフレシアは帝国メイド部隊の腐女子代表であり、一番の戦闘狂でもある。そんな彼女と一番付き合いが長く、彼女の良き相棒であるのがリンドウだ。
お調子者のラフレシアと違い、リンドウは真面目な優等生タイプである。性格は真逆であり、腐女子仲間でもない。では何故、ラフレシアはリンドウが好きで、普段から行動を共にしている事が多いのか?肝心のその疑問が、まだ語られていない。
「それで、どうして貴女はリンドウさんの事が好きなんですの?前置きが長過ぎですわ」
「私もそれが気になっていました」
「ミュセイラ様もアングハルト様もそれ気になります~?教えるのやっぱり恥ずかしいな~」
ご機嫌な様子のラフレシアは、本題を語るのを照れながら、一度リンドウに視線を移す。視線に気付いた彼女は、大きな溜め息を吐いてラフレシアから顔を背けた。その理由は、これからラフレシアが語る内容を知っているからだ。
嫌がりはせず、もう諦めていた。リンドウの反応を見たラフレシアは、皆の疑問に答えるべく、満面の笑みを浮かべて口を開く。
「リンを好きな理由はですね~・・・・・、私が本気で殺そうとしても死なないからです♡」
「「「「「「えっ・・・・・・・?」」」」」」
「こう見えても私、傭兵時代は歩く戦場の狂気って呼ばれてて、色んな所で大暴れしてたんですよ。でも、その頃の私は雑魚の相手に飽き飽きしてて、もっと強い相手と戦いたかったんです」
「その強い相手というのは、もしかして・・・・・」
「流石レイナ様、察しが良い!陛下に名前を頂く前、リンと私は仕事中に大喧嘩したんです。お互い熱くなっちゃってたから、本気の勝負で決着つける事になって、ガチの殺し合いしたんですよ♡」
「マジかこいつら・・・・・・、イカレ過ぎだぜ」
「一日中殺し合って、結果は私の負けでした。私が本気で全力出して初めて負けた相手は、リンだったんです。負けたのは悔しかったけど、それ以上になんか嬉しくなっちゃって・・・・・・。だから私は、リンが大好き♡」
狂気に満ちた愛というのは、まさにこの事であろう。だからリンドウは溜め息を吐いたのだ。
ラフレシアの衝撃的告白に、誰もが絶句してしまっていた。まさかそんな危険な愛を向けていると、一体誰に想像できただろう?絶句するのも当然だった。
「はあ・・・・・、何度聞いてもあんたの愛は重いわ」
「リンったら、照れちゃって可愛いんだから~♡」
「これのどこが照れてるように見えるのよ?」
「大丈夫!素っ気なくたって、リンの気持ちはちゃんと理解してるわよ♪♪」
「絶対理解してない・・・・・」
「ええ~!まさかリン、ほんとは私のこと嫌い・・・・・!?」
ラフレシアの語った馴れ初めの後、彼女はリンドウにべったりとなった。当時から二人は寝室が同じであり、その理由は、リンドウと同じ部屋に住むと言って、ラフレシアが大いに駄々をこねたからだ。
その後、恋をしたせいなのか、それともユリーシアのお陰か、もしくは両方ともなのか、以降の彼女は乱暴さが薄まっていき、現在の明るい女性になった。
対してリンドウは、その日以降ラフレシアのお陰で、頭を悩ませる苦労ばかりする事になってしまった。しかしリンドウは、お陰でよく笑えるようになったのである。
(こんな奴だけど・・・・・、傍にいてくれるのは嬉しい・・・・・)
リンドウ達がメイドになってから、いくつもの年が流れていった。
今やフラワー部隊は、アマリリスやノイチゴやラベンダーが加わり、メイドの人数も増えた。たった三人だけの部隊であった頃からすれば、とても信じられない光景だ。
これも全て、ラフレシアとの出会いが生んだ光景である。面倒くさい腐女子で、イカレた戦闘狂であっても、嫌いになるはずがない。何故なら彼女は、リンドウが初めて心を許せた、かけがえのない存在なのだから・・・・・。
「嫌いなわけないじゃない。でなきゃ、一緒の部屋で寝たりしないわよ・・・・・・」
「リン・・・・!!私、リンのそういうところほんと大好き♡」
ヴァスティナ帝国女王を守る、女王守護の最後の砦。帝国メイド部隊、フラワー部隊。
今日も彼女達は、忙しそうに、大変そうに、そして楽しそうに、忠誠を誓った主君のために働いている。
これは、花の名と花言葉を胸に主君へ忠を尽くす、強く気高い侍従達の、大切な記録・・・・・・。
~終~
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
278
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる