贖罪の救世主

水野アヤト

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第20.5話 みんな愉快な?ヴァスティナ帝国

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 これは私が、帝国軍参謀長リックに助けられ、私の戻りたかった故郷、ヴァスティナ帝国の土を踏んだ頃の話である。

「貴様、名前は?」
「・・・・・・」

 ヴァスティナ城に連れて来られた私は、あの男によって帝国メイド長のもとに預けられた。
 ここは、帝国メイド部隊作戦会議室という部屋らしい。何故、メイド達専用の作戦会議室なるものが存在しているのか、その理由は全く分からない。
 どうやらこのメイド長、普通ではないらしい。
 先程から凄まじい眼力を向けてくる。とてもメイドには見えないぞ、この表情鉄仮面。正直怖い。

「名前がないのか?」
「・・・・・・」

 名前か・・・・・・、どうしたらいいだろう。
 このメイド長も、城内のメイド達も、恐らく私の事など知らない。大人しくアンジェリカと答えても良いかもしれないが、姉様の耳に私の名前が届くのは避けたい。
 私は、ユリーシア姉様に会うわけにはいかない。となれば、何か別の名前を考えなくてはならない。
 さてどうする。この怖ろしいメイド長が、私に疑いの眼を向けてきている。ここで怪しまれては、後々厄介な事になるかもしれない。しかし、急に偽名など・・・・・・。

「仕方ない。今から貴女をメイファと名付けましょう」
「!?」
「どう言うつもりで黙っているのか知りませんが、この先名前がないのは不便です。勝手に名付けさせて貰います」

 メイファとは何だ?私はアンジェリカだ、そんな名前などではない。
 まあ確かに、黙秘を続けていた私が悪いのだが、だからと言って勝手に名前を付けるのはどうかと思う。

「ではメイファ、私の後に付いて来なさい。まずは浴場で体を洗って貰います。その後は着替えを済ませ、貴女用の部屋に案内します」

 この後私は、表情鉄仮面のメイド長に連れられ、まず浴場で彼女に体を洗って貰った。丁寧かつ綺麗に、隅々まで洗って貰った私は、服を渡され、それに着替えさせられた。その後は言われた通り、とある一室に案内され、ここを寝室として使って良いと言われた。
 簡単に城内の説明を受け、明日から仕事を始めて貰うと彼女に言われ、その後今日は寝室で眠った。色々あって疲れ切ってしまっていたからだ。
 とても眠かったあの時、意識が遠退いていく中、「しまったな」と思ったのは、メイド長である彼女の名前を聞きそびれた事だった。
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