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2・学園でのこと
2-6・妹の初めての学園生活
しおりを挟むたとえ学園に入学したって、ルーファはルーファだった。
まだ十三歳。子供だ。だからと言って甘やかしすぎだと殿下は言うけれども。可愛いんだから、仕方ない。
ルーファは、学校での加減が、なかなかつかめないようだった。
多くの貴族は平民と違って、初等学校へは通わず、家庭教師を雇って知識をつけるので、同じ年ぐらいの子供たちとの交流など、ほとんど初めてだったから、余計にだろう。
今までルーファの世界は狭かったのだ。交流のある子どもと言えば、俺をはじめとした兄弟を抜かすと、アルフェスと殿下ぐらいで、他の子供とは会ったことすらないに等しい。
これは、この国の貴族の子供ではごく一般的な話で、俺もアルフェスも殿下も、同じようなものだ。
社交界へのデビューその物も、高等学校を卒業した後、18歳、あるいは19歳でが主流。それこそ、親同士の仲が非常に良かったり、身分差のある同年代の子供の遊び相手や婚約者でもない限り、それまでに子供を交えての付き合いなどは持たれないのが基本だ。
成人すると頻繁に行き来するようになるお茶会などにも、子供はほとんど参加しない。
だからこそ皆、学校に入学して、初めて会う状態が普通で、それでいて身分という下地は既に存在した。多くの生徒がしっかりと、事前に学んできているのだろう。
さて、そこで公爵令嬢というものがどういう扱いになるのか。
単純な話だ。腫れ物に触れるかのような扱いになる。それも、もちろん、本人の人柄や態度もあるのだろうけれど、少なくともルーファはそうだった。
無視をされるだとかいうわけではない。ただ、一線は引かれるし、親しく声をかけるだとかいうことにもならない。
はじめは皆、控えめに関わろうとしたはずだ。ルーファも決して愛想が悪いわけでも、初めの対応が厳しいわけでもない。しかし、ルーファには人の物を欲しがる癖があり、そういうような自分の希望を、まずは躊躇なく口に乗せる所があった。
例えば、話しかけてきた少女の髪飾りが、可愛らしくて、いいな、と思ったとする。ルーファは言うだろう。
「あら。その髪飾り、素敵ね。私にくださいな」
そんな風に。
言われた方は、敢えてルーファに話しかける程度には貴族社会を理解している、やはり貴族の子供である可能性が高い。そんなことを公爵令嬢に言われて、どうして断れるというのか。
それが、二度、三度と重なって、しかも相手を選ばないとなると、たちまちルーファは腫れもの扱いとなるのである。
ルーファは決して強引ではないし、命令しているわけでもない。おそらく断られたら、それで単純に引くだろう。否、理由ぐらいは聞くかもしれないが、駄々を捏ねたりはしないはずだ。ただしそれは、ルーファをよく知っている俺目線の話。
相手にとっては命令に聞こえるだろうし、断れるはずもないのだから、厄介だった。
他にも、例えば授業中によそ見をしていて、教師に注意されたりしたとして、ルーファは恐らく問い返す。
「どうして?」
と。
ルーファにしてみれば、ただ単純に疑問に思ったから、問い返しただけだろう。なぜ、授業中によそ見をしてはいけないのかがわからなくて。
ルーファはお世辞にも敏くはなく、周りの様子を察することが苦手で、同時に、幼い子供のように、自分の立場も理解せず、疑問に思ったら口に乗せるし、相手に迎合するということを一切しない。
だが、教師はあくまでも中等部の教師で、まさかそんな小さい子供のような理由で問い返されているだなんて思わない。よもや公爵令嬢ともあろう者が、そんな幼子のような質問をするとも思っていない。何せ、態度は年相応以上、淑女らしい様子は意図を含んででもいるかのように見えなくもなく、なまじ2年上に、俺という前例がいるため、余計にそのままなんて受け取らない。公爵家の教育は行き届いているはずだという先入観。
別に間違ってはいないのだ。ルーファだって、俺と同じ教育を受けてきているのは確かだ。それをどの程度呑み込めているかは別の話だが。
ルーファのそれは、おそらく、初等学校に通っていない弊害だろうと予測できた。それでも、他の皆は家庭教師の授業などで、その辺りも対応できるようになっている以上、ルーファの出来が少々よろしくないことは否めない。否、同じような生徒は他にもいるはずだが、平民や下級貴族などが同じことを言った場合には叱り飛ばせる教師も、ルーファにはそれができないようだった。腐ってもルーファは公爵令嬢だから。結局、教師も持て余す。
俺は勿論、そんな部分も可愛いと思っているが、そこはそれ。
一週間も経つ頃には教師生徒問わず、ルーファに関する苦情が、俺の元へと寄せられるようになっていた。
ま、ある意味予想通りだけれど。
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