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番外編・未来の話

x2-8・アーディの話⑧

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 アーディになす術などなかった。
 何故なら、黒騎士のないに等しい魔力では本当にどうにもならないのだ。厳しいかもしれないが、俺はアーディに選択を迫った。

「子供を諦めるか、他の者に頼むか、俺の魔力で妥協するか、どれにする」

 俺の言葉に、黒騎士がまたしてもぎょっと目を見開いて驚く。
 アーディは長く何も答えなかった。だけど、やがて。

「……母様に、お願いしたい、です……」

 子供を諦めたくはないのだろう。
 そもそもおそらくは何年もかけて、ないに等しい黒騎士の魔力を自分の腹に留めて、溜めて、溜めて、溜めて、ようやく子供にしたはずだ。諦められるはずがない。
 だけど必要な魔力は足りず、誰かから分けてもらう必要があることぐらい、アーディもわかっているのだあろう。
 では、誰の魔力で育てるのか。
 そこで俺を選択したのは、ただ単純に、他よりはましだったからだ。
 俺はアーディの母親で、だからアーディはせめてと判断した。
 全くの赤の他人や弟妹達、父親ではなく俺を。
 俺は溜め息を吐くことしかできない。
 アーディと黒騎士のいたこの場所は、冒険者として旅を続けているという黒騎士にアーディが引っ付いて行っていた為なのだろう、当たり前にナウラティスではなく、それどころかナウラティスと直接行き来できるポータルのある国としては一番離れている場所で。だが、まだポータルのある国で良かったと言わざるを得なかった。
 そうでなければ多分俺は、間に合うようにはここまで辿り着けなかっただろう。
 当然、俺がアーディに協力することになった以上、このままアーディを此処に置いておけるはずがなく。今度は黒騎士に訊ねることになる。

「それで、君はどうする。俺の都合もある。アーディに子供を育てさせるとなれば、当然このまま此処にいさせることなんて出来ない。そもそもここは宿屋で、そう長く泊まっていられないだろう? いずれにせよ落ち着ける所に移動しなければ。出来ればこのまま、今俺が住んでいる所まで運んでしまおうと思うのだけれど。……――一緒に着いてくるかい? 着いてくるのなら、少しの間、今までのような旅は出来なくなるよ。少なくとも、子供が生まれて1年は。一所に落ち着いている方がいいだろうね。勿論、別に来なくてもいい。好きにしなさい」

 俺は何も強制しなかった。
 真実、どっちでもよかったからだ。
 なにせ黒騎士は、こと子供に関しては全くと言っていいほど役に立たず、着いてきたとして、それはアーディの慰めにはなるのだろうけど、それ以外だとどう考えても意味などない。
 アーディは縋るように黒騎士を見ていた。
 俺の言葉に驚くばかりだった黒騎士もまた、アーディを見て、そして。
 とは言え、初めから。彼の答えなど、決まっているようなものだった。
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