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番外編・未来の話
x2-9・アーディの話⑨
しおりを挟む黒騎士はアーディを放さなかった。
ぐったりと力なく、苦しそうに臥せるアーディを大切に腕に抱き、俺の後へ続いて、俺が今過ごしているナウラティス国内の離宮へと大人しく着いてくる。
以前アーディに聞いたのだけれど、黒騎士はナウラティスという国にいること自体、居心地悪く感じるのだそうだ。
だが、そんな不快を押してでもアーディと離れたくはないらしい。
俺は溜め息を吐いて、彼ら二人を迎え入れ、手を握ることで流せる魔力程度では、なかなかベッドから起き上がれるようにさえならないアーディをそれでも可能な限り支え続けた。
黒騎士は随分献身的にアーディに尽くしていたと思う。
アーディの一方的な関心から続いている関係だと認識していたので、俺は正直意外に思った。
だからこそ気の毒で。
黒騎士に魔力がほとんどないのは黒騎士本人の所為ではない。当然、それはアーディにもどうにか覆せるようなものでもなく、子供を成すのだって、精々、今回のように何年も溜め込んでやっとな有様で、でもそれも誰が悪いというものでもないのである。
もっとも、今回のことに関しては、アーディの見通しが甘かったのも確かなのだけれど。
俺はそうして手元で二人の面倒を引き受けながら、黒騎士にこっそりと魔石を渡した。
魔力を溜める為の物だ。
身に着けているだけで肌を通して、少量ずつとは言え自分の持つ魔力を吸っていってくれる。
元々生きるのに必要最低限しか魔力を持たない黒騎士では、こんな用途の魔石は諸刃の剣。下手をすればまともに動けなくなるだろう。
わかっていて俺は、あえて彼にそれを渡したのだった。
何故なら、アーディが今回のことで懲りて、同じことを二度としない、だなんて、そんなわけがないことがわかっていたからだ。
おそらくアーディは何年後かにまた、黒騎士の魔力を溜め、同じようなことを試みるだろう。
今度こそとそう意気込んで。
好奇心旺盛と言えばいいのか、探究心が豊かだと言えばいいのか。アーディは小さい頃からそういうところがあった。
加えて往生際も諦めも悪い。
だからきっと俺の予想は当たることだろう。
渡した魔石は、その際に役立つはずの物、ないに等しい黒騎士の魔力を、少しでもためておくためのそれ。今回と同じような状態に陥った時に、少しでもアーディの状態が保たれるようにと、魔石の力を借りれば、今回ほどのことにはならないのではないかと、そう考えてのことだった。
勿論、黒騎士には事前にきちんと説明して、それを持つことで陥るだろう不調を理解させた。その上で魔石を持つと決めたのは黒騎士自身。
アーディの性質はどうやら黒騎士もよく分かっていたらしい。
案の定、黒騎士はその魔石を持ち始めて程なく度々伏せるようになって。だけど次第にその状態にも慣れていったようだった。
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