【完結】見ず知らずのイケメンが突然「すみません、この子の親になって下さい」と言ってきたのだが、見た目が好みだったので引き受けることにした。

愛早さくら

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 そしてそれはきっと、そう間違ってもいないのだ。
 案の定、頷いたジセスは、

「そうですね、ご挨拶は、むしろ私こそさせて頂きたい、そう思います。私達の婚姻の話もありますから。幸い我が家は侯爵家ですし、次代はこのソティが継ぐ予定ですが、それまでは私が中継ぎとして侯爵位を引き継ぐ予定です。王族の方を迎え入れるのに、何もご挨拶しないなどというわけにはいきません」

 などと、もはや断定口調でそのようなことを告げてきて、俺は思わず笑ってしまった。
 婚姻だとか迎え入れるだとか。
 俺自身そうだろうとは予想していたけれども、そんな話は実の所、一言たりとてジセスからは聞いていない。
 と、言うより先程までは会話さえなく、随分と長い時間、ただ体を交わし合っていた。
 名乗り合いさえしていなかったというのに、それ以外、何の会話を交わせていたというのだろう。
 にもかかわらず、ジセスの中ではすでに決定しているらしい。
 全く。プロポーズも何もない。当たり前の顔をして婚姻だなんて。
 俺はついには噴き出した。

「あっ、はは……はははっ、はは……! お、前……婚姻とか何とか……俺は今、初めて聞いたぞ……! ははは! 俺の了承も何もなく、お前の中では決まっていたのか?」

 笑う俺に、だがジセスはさぁーっと顔を青くして。

「あっ……そう、ですね、私、てっきりそうなると思い込んで……」

 それ以外など、思いつきもしなかったと言わんばかりの態度。
 思い込みが激しいどころではないし、言葉だって足りなさすぎる。
 魔術士団に所属していると言っていたが、これで仕事は大丈夫なのだろうか。
 そう心配になるほどだった。
 と、言うか、この男と夫婦になる。
 為人ひととなりも何もかもまだわからないが、ナウラティス我が国で高位貴族などしている存在がおかしな人柄をしているわけがない。
 ただ少しばかり問題があるのだろうことは間違いないだろう。
 なにせここまで、会話が足りなさすぎることだけは事実。
 男の顔をまじまじと眺めやる。
 青くなっていてもかっこいい。やはりどこまでも俺好みだ。
 ともすれば見惚れてしまいそう。
 俺はなんだかどんなことも、この顔の前では許せてしまいそうな気がしてきていた。
 これまでのことを思い出すと、俺はこの男と婚姻を結ぶと、もしかしたら色々と苦労するかもしれないとは思えてきてもいる。だがそれもまぁいいか、そんな風にも思うようになっていた。
 だってそれぐらい、男の見た目が好みなのだ。
 他はもう、なんかどうでもいい。
 ジセスはかっこいいし、近くにいられるだけで眼福だ。
 どうも少し暴走しがちなようだが、今こうして話していて、人の話を聞けないわけでもない。
 ならばこれから次第だろう。
 俺は笑った。

「ああ、いい、いい、構わないさ。そもそも初めに頷いたのは俺だ。何の覚悟もなく頷いたりしない。……たとえお前の顔に半ば以上、見惚れてしまってのことだったとしてもね」

 最後の言葉は、流石に小さな声となってしまったが、さてジセスに聞こえただろうか。
 戸惑うジセスを前に俺は笑う。
 親になってくれだなんて突然声をかけられて。
 だけど頷いたのは、声をかけてきたのが他でもないジセスだったから。
 それぐらいこの男の見た目は俺の好みだ。
 何もかもすっ飛ばして頷いてしまった。
 そうしたらやたら早急に此処へ連れ込まれ、押し倒されてしまったけれど、もういい。
 出来れば状況の説明やらを先にしてほしかったけれど、それはこの男との婚姻を忌避する理由にはならないことだろう。
 だから、とりあえず……――。

「……ところで、ソティ、というのはこの子の名前なのか?」

 それさえ聞いていなかったので、今更な確認を。

「え?」

 ジセスはまたしてもすっかり失念していたらしく。目を丸くして驚いていたのだった。
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