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*9・そしてまた今の話、理解。
しおりを挟む僕が目指していたのは『逆ざまぁ』だ。
ラシェに断罪されることを望んでいた。
なのに現状はどうだろうか。
「ぁっ、ぁっ、やっ! ぃやぁんっ!」
もうどれぐらいの時間こうしているだろう。
ラシェは僕を放さない。
ずっと僕とつながったまま、僕のお腹の中をかき回す。
そして何度でも尽きることなく、どくどくと僕の体の奥深くに、これでもかと魔力を注ぎ込むのである。
「ぁっ、ぁっ、ぁっ、も、もぉ、ぃやぁっ……! ぁあっ!」
ラシェの動きに合わせて声が上がって、僕はもうわけがわからない状態だった。
気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい、気持ちよすぎて怖いぐらい。
それだけでいっぱいだ。
体中が熱くてふわふわして、とりわけ少し前に子供を望まされたお腹の奥は、まるでそこだけ別の意志を持ってでもいるかのようだった。
おそらくは正しく、子供が成ってしまっているのだろう。
僕の赤ちゃん。
ラシェの赤ちゃん。
そこにラシェの魔力がぐんぐんと集まっているのがわかる。
まるで体の中心に、物凄く重い何かが埋まってでもいるかのようだ。
子供を成すというのは、こういう感覚がするものなのだろうか。
当然、これまで子供を成したことなどない僕に分かるはずがなく、それどころか、こんな風に誰かと触れ合ったこと自体が今、この時ラシェとが初めてで。
「ぁっ、やぁっ、ぃやっ、ぁあっ!」
体が熱くて熱くて堪らなくて、もう嫌だ、無理だ、堪えられないと泣き喚く。
だけどラシェは決して放してなどくれず、僕をひたすらに揺さぶり続けた。
「ぁつぃぃいいっ! あつぃよぉっ! もぉいやぁっ……!」
目の奥に星が散る。
びちゃびちゃ、ずちゅずちゅ、耳を塞ぎたくなるような水音と、パンパンとラシェの腰元が僕の尻を打つ音とが部屋中に高く響き渡っていた。
「ぁあぁぁぁあああぁああああっ……!」
ラシェが腰を揺するのに合わせて声が揺れ、掠れて。
だけどやっぱり放してもらえなくて。
「ユリィ様、ユリィっ、さまっ……! ああ、なんて素晴らしいっ! ぃい子ですね、私をどこまでも飲み込んで下さる。ほらっ! こんなにも奥にまで!」
「ひぎゃぁあああぁああっっ!!」
ぐぼっ、何度目か、体の奥深くを突き破られたような感覚に、頭の中が真っ白になって意識が途絶えた。
「ああ、ユリィ様、もっと、もっとですよ。もっとたくさん、注いで差し上げますからね。大丈夫、何も心配ございません。ユリィ様はただここで私に守られて、お腹の子供共々安らかに過ごして下さればよいのです。そうしたらきっとユリィ様も元気になれます。これまでユリィ様を苛まれた全てをやっと私が取り除いて差し上げられるのです。ユリィ様。私のかわいいユリィ様」
ラシェがそんな風に僕に縋る声が遠くに聞こえた。
僕を苛む全て?
ああ、そうか、そうだったのか。
僕はようやく理解する。
なるほど確かに、僕の頭は全く痛んでなどいない。
思考が眩んで、わけがわからなくて、怖いぐらいの気持ちよさに晒されているけれど、僕がこれまで感じ続けてきた気持ち悪さや全身の倦怠感が、今は不思議と全て遠ざかっているような心地がした。
もっとも、今はそれとはまったく違う、わけのわからない暴力のような魔力に飲みこまれていて、そういった不調とはまた別種の耐え難い何かを感じてはいるのだけれど。重い快感だとか熱さだとか。
それでも体の不快が遠ざかっているのは確かな話で。
それも考えてみれば当たり前の話なのかもしれないとちらと思った。
何せ僕の不調はつまり、単純に、魔力欠乏の症状だったのだから。
これほどまで過剰に魔力を注ぎ込まれたならば、それらの不調が緩和されるのも確かに当たり前の話だったのである。
とは言えそんなことと、今のこの状況が全く理解できないのは違う話。
「ユリィ様……」
どうしてラシェはこんな風に、縋るように僕の名を呼ぶのだろう。
誰がどう見ても愚かでしかなく、それ以前に初めから王子や王太子などと言う身分にまったく相応しくない存在だった僕を。
僕などよりもずっと完璧な存在だったラシェがどうして。
僕は僕からラシェを解放して上げたかったんだ。
僕から自由になって欲しかった。
なのに、なぜ。
「ぁっ、ぁっ、ぃやっ、ぃやぁんっ! もぉ、むりぃっ! やぁあっ!」
激しすぎる魔力に意識を引き戻され、それでもまだはなされず揺さぶられながら僕は、やはりどこまでもこの状況が理解できないままなのだった。
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