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116.また増えてる
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「また増えてる……」
「わー?」
「わー!」
「わー!」
出てきたマンドラゴラの数は、二十七株にまで増殖していた。
樹人の幹内で繁殖しているのか、単にユキノが持つ魔力の量が増えた結果なのか、真偽は分からない。
「マンドラゴラたち、今日もお願いしますね。今回はデンゴラコンを多めにお願いします」
「わー!」
「わー!」
「わー!」
ユキノの言葉に飛び跳ねたマンドラゴラたちは、すぐに森の奥へと散らばっていった。
マンドラゴラたちが散策している間も、ノムルとユキノは森を進む。
肥沃な土の上は歩いているだけでも気持ちが良いようなので、今日は抱き上げずに手を繋いで歩いている。
「ふんふんふーん、ふんふんふーん。ふふっふふー、ふんふー」
相変わらず、よく分からない鼻歌を奏でながら、ユキノはぽてぽてと歩いている。いつもよりは子供らしく、明るいメロディのようだ。
しばらく歩いていると、一株めのマンドラゴラが戻ってきた。
「わー!」
案内されるまま、ノムルとユキノは行先を変えてマンドラゴラを追いかける。茂みを掻き分けた先には、白い毛に覆われ先端に蹄のある、ヤギの足らしきものが生えていた。
「おとーさん」
「なんだ?」
「バラバラ事件です」
ぎゅっとノムルのローブにしがみついてきたユキノが、怯えた声を出した。
「あれはタルタリカだな」
ノムルはしがみつくユキノは放置して、ヤギの足に近づき引っこ抜く。地上部分は動物っぽいが、地下は普通に根が張られていた。
それを見てユキノも植物だと認識したようで、ローブから手を離した。
「ほら」
「はい」
光の粒子となったタルタリカは、ユキノの幹に消えていく。
それから、地面に積み上げられた白い羊毛の塊から、小さな毛玉がぽこりと生えているプランタも見つける。
ぴょこぴょこと前後に動く毛玉に、ユキノの視線が釘付けになっていたが、ノムルは容赦なく引っこ抜き、吸収させた。
少しばかりユキノがしょんぼりしていたが、すぐに立ち直ったので、ノムルは然して気に留めることなく次へ向かう。
ところでこのヤギモドキがなんの薬になるのかと、気になって聞いたところ、
「包帯や脱脂綿が採れます」
との回答が返ってきた。
それは薬草なのだろうかと首を捻りつつ、ノムルはマンドラゴラに付いていく。
草を掻き分けて出た先には、三度目の白い毛皮があった。今度は先の二つよりは植物っぽい。花の代わりにヤギの顔が咲いていたが。
横長の瞳孔が、ノムルを捉える。
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーっ!!」
「――っ?!」
一キロ先にいても聞こえそうなほどの、大きなだみ声が発せられた。
即座に耳をふさいだにもかかわらず、キーンッと高い音が響いて、水の膜を張ったように音が聞こえ辛くなる。
「お前、自力で逃げることもできないのに、そんな目立つ声を出したら魔物に食われないか?」
思わず問いかけたが、植物は動物に蜜を吸われることで受粉を行い、実を食べられることで種を遠くまで運ばせる。
ならばこれは正しい行動なのだろうかと、ノムルは理解したような、できないような複雑な気持ちになった。
「立派なお角をお持ちですね。この辺りのバロメッツさんの、ボスさんでしょうか?」
ぐるぐると大きなバロメッツの角を、ユキノがしげしげと観察している。
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーっ!!」
まるで「お前、見る目があるな」とでも言いたそうに、バロメッツは誇らしげに鳴いた。あごを上げて目を細めて、まんざらでもなさそうだ。
「おひげも長くて艶々、真っ白で、素晴らしいです」
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーっ!!」
「そうだろう、そうだろう」とばかりに、バロメッツは鼻息も荒く美声を轟かせる。
「わー?」
「わー!」
「わー!」
出てきたマンドラゴラの数は、二十七株にまで増殖していた。
樹人の幹内で繁殖しているのか、単にユキノが持つ魔力の量が増えた結果なのか、真偽は分からない。
「マンドラゴラたち、今日もお願いしますね。今回はデンゴラコンを多めにお願いします」
「わー!」
「わー!」
「わー!」
ユキノの言葉に飛び跳ねたマンドラゴラたちは、すぐに森の奥へと散らばっていった。
マンドラゴラたちが散策している間も、ノムルとユキノは森を進む。
肥沃な土の上は歩いているだけでも気持ちが良いようなので、今日は抱き上げずに手を繋いで歩いている。
「ふんふんふーん、ふんふんふーん。ふふっふふー、ふんふー」
相変わらず、よく分からない鼻歌を奏でながら、ユキノはぽてぽてと歩いている。いつもよりは子供らしく、明るいメロディのようだ。
しばらく歩いていると、一株めのマンドラゴラが戻ってきた。
「わー!」
案内されるまま、ノムルとユキノは行先を変えてマンドラゴラを追いかける。茂みを掻き分けた先には、白い毛に覆われ先端に蹄のある、ヤギの足らしきものが生えていた。
「おとーさん」
「なんだ?」
「バラバラ事件です」
ぎゅっとノムルのローブにしがみついてきたユキノが、怯えた声を出した。
「あれはタルタリカだな」
ノムルはしがみつくユキノは放置して、ヤギの足に近づき引っこ抜く。地上部分は動物っぽいが、地下は普通に根が張られていた。
それを見てユキノも植物だと認識したようで、ローブから手を離した。
「ほら」
「はい」
光の粒子となったタルタリカは、ユキノの幹に消えていく。
それから、地面に積み上げられた白い羊毛の塊から、小さな毛玉がぽこりと生えているプランタも見つける。
ぴょこぴょこと前後に動く毛玉に、ユキノの視線が釘付けになっていたが、ノムルは容赦なく引っこ抜き、吸収させた。
少しばかりユキノがしょんぼりしていたが、すぐに立ち直ったので、ノムルは然して気に留めることなく次へ向かう。
ところでこのヤギモドキがなんの薬になるのかと、気になって聞いたところ、
「包帯や脱脂綿が採れます」
との回答が返ってきた。
それは薬草なのだろうかと首を捻りつつ、ノムルはマンドラゴラに付いていく。
草を掻き分けて出た先には、三度目の白い毛皮があった。今度は先の二つよりは植物っぽい。花の代わりにヤギの顔が咲いていたが。
横長の瞳孔が、ノムルを捉える。
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーっ!!」
「――っ?!」
一キロ先にいても聞こえそうなほどの、大きなだみ声が発せられた。
即座に耳をふさいだにもかかわらず、キーンッと高い音が響いて、水の膜を張ったように音が聞こえ辛くなる。
「お前、自力で逃げることもできないのに、そんな目立つ声を出したら魔物に食われないか?」
思わず問いかけたが、植物は動物に蜜を吸われることで受粉を行い、実を食べられることで種を遠くまで運ばせる。
ならばこれは正しい行動なのだろうかと、ノムルは理解したような、できないような複雑な気持ちになった。
「立派なお角をお持ちですね。この辺りのバロメッツさんの、ボスさんでしょうか?」
ぐるぐると大きなバロメッツの角を、ユキノがしげしげと観察している。
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーっ!!」
まるで「お前、見る目があるな」とでも言いたそうに、バロメッツは誇らしげに鳴いた。あごを上げて目を細めて、まんざらでもなさそうだ。
「おひげも長くて艶々、真っ白で、素晴らしいです」
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーっ!!」
「そうだろう、そうだろう」とばかりに、バロメッツは鼻息も荒く美声を轟かせる。
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