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第103話 さてと、地下6階か。

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前回のあらすじ:地下5階は巨大な魔物の宝庫でした。




「うーむ、これら、どうしようかね?」


 今日手に入れた、ティラノちゃんの爪や牙、デュラハンナイトの落とした変な顔の模様の盾などを眺めていると、思わず口に出してしまった。


「アイスさん、どうしたです?」


「ん? ああ、これらのアイテムって何か使い途があるのかなあ、と思ってね。」


「これって、さっきワタシ達が倒した魔物が落としたものですか?」


「うん。魔石もそうだけど、これらをどうしようかと考えていてね。」


「なるほど。あのでっかいトカゲの牙と爪ですね。それと、変な動くものに乗っていた魔物が落とした板ですか? トカゲの牙と爪は硬すぎて加工できなさそうですね。あと、この板かなり重そうなんですけど。」


「うん、そうなんだよね。この盾は私が重量軽減のスキルがあるから持てるけど、普通に盾としては使いづらいかな、大きさ的にも重さ的にも、あと、デザインが怪しすぎる、、、。」


「アイン殿なら持てそうですけど、この模様だと使いたくないでしょうね。」


「そうなんだよね。幸いにも盾は1つしか落とさなかったからよかったものの、倒すたびにこれが手に入るのは正直迷惑かなあ、、、。しばらくは報告用には出すけど、ねぐらにしまっておきますかね。」


「それがいいかも知れないです。」


 ジェミニだけでなく、マーブルとライムも賛成したようだ。ということで、ティラノちゃんの爪と牙は1つずつは冒険者ギルドへと出して、デュラハンナイトの盾は見せた後はティラノちゃんの爪と牙の残りと一緒にねぐらに保管かな。今度ねぐらの倉庫も少し拡張しますか。あっててよかった、我がねぐら。


「それでは、これらをねぐらの倉庫に保管して、明日に備えて寝るとしますかね。」


 そう言って、ねぐらに転移してもらい、風呂と洗濯を済ませつつ、これらを倉庫にしまい、また砦に戻って床に就いた。


 いつも通りマーブル達に起こしてもらって、支度を済ませつつ朝食を待つ。守備兵さんが朝食の用意ができたからと知らせてくれたため、一緒に朝食を頂く。ここの守備兵さん達は、香草を煮る時間を種類毎にある程度差をつけたりすることで、味の違いがはっきりと出てくることに気付いたようで、それを意識するようになると、食事の味が更に良くなっていた。それを素直に伝えると、今日の食事担当の守備兵さんは照れるように笑っていた。


 美味しい食事を頂いたので、今日も差し入れとしてお肉を提供した。今回差し入れたものはドラゴンの肉である。もちろん、地下5階の魔物から手に入れたものである。地下5階のドラゴンは結構種類が多かったが、落とした肉はどれも「ドラゴン肉」としか鑑定結果に出なかった、ということは、肉質はどれも一緒なのだろう。解体が必要だった種類のドラゴンはレッドドラゴンとブラックドラゴンなど、色の名前が付いているものに限っており、それらのドラゴンには、「レッドドラゴンの肉」と区別して表記されていた。「ドラゴン肉」となった種類のドラゴンは、レッドドラゴンやブラックドラゴンよりも強い存在だったため、ひょっとしたらこれ以上肉質は上がらないから「ドラゴン肉」と一緒くたにされているのかも知れない。もしそうだとしたら、彼ら、他の肉食べられなくなるんじゃないかと少し心配。まあ、人によって好みは様々である、ということを期待するしかないかな。


 そんなこんなで、到着しましたよ、地下6階に。今回はダンマスの部屋には行かずに直接地下6階へと移動した。ダンマスの部屋には帰りに寄るつもりである。今日を最後にしばらく顔は出せなくなりそうだからね。


 地下6階も迷路のような配置となっており、ここもやはり部屋以外では魔物に遭遇しないようだ。ということは、巨大な魔物がいるということでもあるのか。しばらくは鍛錬も兼ねているから普通に倒すけど、面倒になったら合体攻撃で殲滅して回りましょうかね。その旨を伝えると、マーブル達も賛成してくれた。やはり、マーブル達も大きすぎる魔物は倒すのが面倒なようだ。合体攻撃については、私も一緒に参加したい、というのが一番大きな気持ちであったりもする。


 地形こそ異なるが、ここも地下5階と同様に、部屋を通らないと地図が埋まらない構造のようだ。とりあえず、行けるところは全て行ってから部屋の前へと行く。戦闘準備を整えて、扉を蹴り開け部屋の中に入ると、そこには超巨大な木が1本とオークエンペラーの集団が待ち構えていた。このデカい木も魔物だよな、と鑑定をかける。鑑定結果は『エイシャントオーク』と出ていた。・・・オークつながりかよ、、、。名前が一緒なだけで関連性皆無じゃねぇか、、、。と呆れていると、マーブル達はテンションが高かった。まあ、そりゃあ、これだけの上質なお肉がそろい踏みしていれば、テンションも上がるか。さてと、戦闘開始といきますか。


 戦闘についてだけど、これが結構大変だった。エイシャントオークから放たれる枝攻撃と、オークエンペラーの集団の連携が実に見事だった。この連携は戦姫の3人に勝るとも劣らない位のレベルである。


 戦闘当初は私が木を、マーブル達がお肉を狩るつもりだったが、マーブル達が枝を切り払いつつ、私がオークエンペラーを射貫く作戦に切り替えた。ちなみにライムは、私が射撃しやすいように体当たりを駆使して距離を取れるようにしてくれていた。エイシャントオークの枝は、どれだけ切り払ってもすぐに復活してしまいマーブル達も手こずっていたが、オークエンペラーの集団を殲滅した後に私も参戦してからはあっという間だった。この部屋の魔物達を殲滅した後、死体が消えて超上質なオーク肉がタップリと、おびただしい量の木材があった。木を鑑定すると、「エイシャントオークの木材」と出ており、木としては世界樹にならぶ幻と言われるランクの木材らしい。これは領民達も喜ぶと思い、全て空間収納へと格納した。そういえば、いつの間にか空間収納スキルが上限に達していたらしく、容量が無制限となっていた。ちなみに、一緒に宝箱があったけど、罠解除ができないからスルーした。


 他にもないか、部屋を探ってみると、光っている場所がいくつか見つかった。恐らく採掘ポイントなのだろう。折角だから採掘してみると、アクアマリンやら宝石類が多かったけど、1カ所だけミスリル鉱石が見つかった。とはいえ、量は大して獲れなかった、、、。恐らく、魔物のいる部屋に採掘ポイントがあるのだろう。どちらにせよ、地図を完成させたいので、いろいろ見て回りましょうかね。


 と、思っていたけど、部屋には扉が1つしか存在しなかった。ひょっとするとこの部屋だけかな? とは一瞬思ったけど、それだったらわざわざ地下6階なんて存在しないだろうと思い、よく調べてみると、部屋の隅にお情け程度に光っている場所を見つけた。採掘ポイントの光が強すぎて気付かなかった。その場所に足を踏み入れると、いきなり飛ばされた。


 飛ばされた先は、やはり迷路状になっており、同じように探索して回る必要がありそうだ。それにしても、転送されてしまうと地図の作成が面倒なんだよね。地下3階もそうだったけど、あれって、一通り作成してつなげないとならないから。つながってないかもしれないけど、つなげた方が見やすいしね。あ、地下3階で思い出した! あの地下3階の3階層目って、通路によっては無限ループするんだよね、でも、あの時は転送された感覚は全く無かったけど、ここでは転送された感覚が思いっきりあったし、一体どうなっているんだろうか?


 扉の前に到着して、戦闘準備を整えてから部屋に突入。今回の魔物は獣系だった。構成は巨大な獣1体と大きめなモフモフ8体。どうやら、この階層は巨大な魔物1体と強めの取り巻き多数の構成なんだろう。地下5階では巨大な魔物が数体いたから、こちらの方がラクに見えるかもしれないけど、個体差では1体といえども地下6階の魔物の方が強力である。部位破壊がしにくく正直1体といえども面倒なのは否めない。それで、今回の魔物はというと、「フェンリル」1体と「レッサーフェンリル」8体のようだ。まあ、モフモフとはいえ、これだけデカいと可愛げがないな。しかも毛も硬そうだし、、、。


 フェンリルは動きがかなり速かったが、結局はこちらを攻撃してくるので、そこを狙えばいい、ということでカウンター気味に零距離射撃で仕留める。レッサーフェンリルについては、残念ながらマーブル達が相手では荷が重かったらしく、あっさりと殲滅。ちなみにドロップ品は無し! もう一度言うけど、何も落とさなかった、、、。せめて魔石くらいは落として欲しかった、、、。宝箱? 当然無視ですよ、無視。


 途方に暮れながら、採掘ポイントの光がいくつか見つかったので、気晴らしと言うほどではないけど、採掘をする。今回はミスリルが数キログラムほど採れたので、それでよしとしますか。これでモフ櫛が作れる。黒鉱石でも作ってもらうけど、本命はこのミスリル製である。問題は加工できるかどうかだけどね、、、。


 採掘も済み、次の場所へ移動するべく転送ポイントを探すと、ここは部屋の隅ではなくど真ん中に近いところにあった。これってヘマすると、何も採掘できないまま別の所へ移動しちゃうってことだよね? まあ、地図の作成でそれはわかるようになるから、ヘマしたら次来れば良いか。


 次の場所は少し変わっていて、扉が2カ所あった。とりあえず部屋に入る前に行けるところは全て行き、地図の作成を進めた。意を決して入った最初の部屋には魔物はいなかった。それどころか、何か台座みたいなもの以外には何もなかった。台座に近づいて調べてみると、上側に何やら窪みがあり、そこに道具を設置するようにできているのだろう。これに合う置物みたいなものって何かあったかな? と、何か置けるものはないか確認してみると、地下3階でゴーレムを倒したときに手に入れた龍人の像が該当しそうだ。


 よし、早速置いてみますか、と思い、像を取り出した時点でふと思い出した。ゲーム内の記憶だと、アイテムこそ違えども、ここにアイテムを置いてしまうと、ドラゴンの洞窟で出てくる敵ですらも雑魚扱いでしかないレベルの魔物が出現してしまうことを。恐らく、ここでも同じようなことが起こるだろう。出てくる魔物は全部で4体。マーブルやジェミニはともかくライムでは荷が重い、つまり面子が足りないのだ。私やマーブルやジェミニでも1体を相手にするのが精一杯のレベルのはず。以前にも言ったと思うが、私は強敵と戦いたいのでは無いのだ。ということで、ここは機会があったら後日にしよう。念のため、この部屋の前で転送ポイントを設置してもらって、もう1つの扉へと移動する。


 もう1つの扉の方は普通に魔物が現れた。今度の相手は悪魔系であったが、普通に倒した。いや、タフな相手だったから大変だったよ。でも、倒し方はほぼ同じだから省略。


 その後は地図を作りながら、扉を蹴り開けて部屋に入り込んでは、出てきた魔物を倒してくのを繰り返すだけ。基本的には悪魔系が多かったのが印象的だ。落としたアイテムや素材だが、魔石が少々、たまに魔力のこもった角が手に入ったくらいで、倒した数の割にはショボい結果となってしまった。ただ、経験値がとんでもないことになっているのは間違いないだろう。私もそうだけど、マーブルやジェミニはもちろん、特にライムがどうなっているか、、、。


 とりあえず、1カ所除いて一通りは探索できたので、ダンマスの部屋へと行きますかね。何故わかったかと言うと、最後の部屋から転送した先が、地下6階の上り階段だったからである。おっと、その前に地図を完成させないとね。ジグソーパズルさながら地図をああでもないこうでもないと考えながら組み合わせていき、ようやく上手くはまってくれたので、これで完成ということでいいだろう。では、行きますか。


「おお、いらっしゃい、また来たんだね。」


「一応、挨拶をかねて報告をね。」


「報告? もの凄い量の魔素がこちらに来ているから、大体わかるよ。ありがとうね。これでしばらくはどうにかなりそうだよ。」


「どうにかなりそう? ひょっとしてかなりヤバイ状態だった?」


「実はね。ただ、倒して欲しい魔物が魔物だっただけに、期待はできなかったんだよね、、、。」


「まあ、あのクラスなら仕方ないかな。それで、このダンジョンは地下6階で終了?」


「うん、地下6階で終わり。厳密には地下3階までなんだけどね、、、。」


「ああ、、、。確かにいきなりアレだとそうなるよね、、、。」


「大変そうに言ってるけど、君達普通じゃありえないからね、その辺は自覚してる?」


「いや、大変だったよ。1撃で倒せないのがほとんどだったし。大きすぎて部位破壊大変だったし。」


「今更だけど、メチャクチャだね、、、。」


「じゃあ、報告は以上かな。それで、明日からはたまにしか来られないんだけど、、、。」


「それは大丈夫かな。君達がある程度倒してくれたから、1年に1回来てくれればどうにかなりそうだね。」


「いや、もう少しこまめに顔は出すけどね。」


「まあ、無理をしなくてもいいからね。一番ヤバイ状況は乗り越えたから。」


「じゃあ、これで。」


 そう言ってこの場を後にして砦へと戻った。最上級オーク肉が今回のお土産となりそうだね。それ以外お土産にできそうなものがないからね、、、。


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