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第104話 さてと、出迎える前にお土産の準備です。

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前回のあらすじ:本当にヤバイ存在がいそうだったが、無視してその他を踏破した。





 ダンジョンから戻って次の日、はい、暇です。というのも、今日明日に戻ってくるウルヴ達を出迎え、次の日にはフロスト領に戻るから。いつ戻ってくるかわからない状況では、流石にダンジョンには行けないので、こうして何かすることはないのかと、考えておるわけですよ。暇だと言いながらも、ローテーションさながら、マーブル達が膝の上に乗ってきては、しばらくなで回されてから、降りて、別の猫達が乗っては、またなで回されて、降りて、といった感じでモフモフプヨプヨを堪能しているのですよ。


 私が砦内にいるときは、朝食から夕食までの時間ではあるが、守備兵から一人ずつ時間毎に交代しては、身の回りの世話をする人がいたりする。その人達は、モフプヨを堪能している私を見て、羨ましそうにしているのですよ。どうだ、いいだろう? と思いつつも、マーブル達は心得ているとばかりに、待機している状態の時には、守備兵さんの所へ飛び乗ってはモフプヨを強要するのです。そんな行動に守備兵さんたちはメロメロです。まあ、可愛い我が猫達だから当然といえば当然です。


 しばらく撫で回しを堪能しつつ予定を考えていると、カムイちゃんがこちらにやってきた。マーブル達はターゲットを私からカムイちゃんに切り替える。ああ、私のモフプヨが、、、。って、何か報告事項があるのだろう、早速聞くことにする。


「アイスさん、ウルヴさん達は明日の昼頃にこっちに到着する感じかな。」


「なるほど、ありがとう。となると、今日は1日スカスカになるかな。」


「なるかも知れないけど、町のみんなへのお土産の準備は?」


「一応用意してあるけど、数が足りないかな。調達しに行きますかね。」


「じゃあ、私もついてく。」


 ということで、急遽、お土産のさらなる確保のため、あのダンジョンへと行くことに決定。とはいえ、地下3階を周回する感じになるかな。流石にまだ地下4階へはカムイちゃんには厳しい、いや、地下4階ならば何とかなるかな。とはいえ、記憶上だとあそこは魔物こそ強いけど、宝箱の中身はショボかった気がするな。罠解除の練習もあるけど、質が保証されている地下3階の方がいいかな。領民へのお土産だから、できるだけいいものを渡したい。ということで、地下3階へと行きますか。


「守備兵さん、そういうわけで、少し狩りに出かけますので、通常の任務に戻って下さい。任務ご苦労様。」


「ハッ、では失礼致します。くれぐれもお気を付けて!!」


 担当の守備兵さんにお礼を言って、そのままダンジョンへと向かうべく砦を出ようとすると、別の守備兵さんに止められた。


「ん? 何かあったの?」


「足をお止めして申し訳ありません。狩りに出かけるのであれば、スレイプニルを連れて行って欲しいのです。今日は何やら動きたくてウズウズしているらしく、少し手を付けられない状態になっておりまして。」


「なるほど、そういうことね。了解。アウグストも連れて行くよ。」


 ということで、アウグストも急遽参戦決定。砦を出る前に厩舎へと立ち寄る。アウグストは私達を見るなり跳ね飛ばさん勢いでこちらに駆け寄ってきた。結構な速さで駆け寄ってきたにも関わらず、しっかりと目の前で止まるあたりは、流石スレイプニルといったところか。鼻面や首の部分を一通り撫でてから、砦をでるべく進むと、マーブル達は揃って、アウグストの背に飛び移った。馬に乗る猫とウサギとスライム、なかなかいい絵面である。それを見ていた守備兵達もホッコリしていた。


 守備兵さん達の見送りを受けて、砦の外へと出発し、人目がなくなったところで、マーブルの転送魔法を発動、ダンジョンの入り口へと到着した。ダンジョンへと入り、地下3階へと移動。まずは守衛室へと転送していつも通りオーク肉を手に入れつつ、地下3階の最終階層へと向かう。


 本音を言うと、アウグストはこのダンジョンには入れないと思っていたが、普通に入ることができたのは少し驚いた。最悪、私達がダンジョンへと行っている間は、フロスト領に迷惑をかけない程度に好き勝手に動いていてもらおうかとも考えていたが、それは杞憂に終わったのだ。


 という感じなので、狭い室内で魔物と遭遇しても、アウグストでも問題なく暴れ回ることができていた。強さ的には地下3階での最終階層だと少し荷が重く、最初の数戦で傷を負ってしまったが、ライムが光魔法で治癒し、その後はライムがアウグストの護衛をし、その後は問題なく探索できた。終わりの方ではある程度まともに戦えるようになっていた。


 全員無事でダンジョンから砦へと戻り、夕食を頂いて部屋で手に入れた品物の確認をする。


 今回の目当てであるお土産用のお宝についてだが、なかなか満足のいく内容となった。領民達への武器防具はもちろんのこと、特に我が領のアイドルである、クレオ君とパトラちゃん用の装飾品が手に入れられたのは大きかった。あの子達は強くなっているとはいえ、接近戦がメインというか、ほぼ接近戦しかしないため、細かな傷を負うことが多いので、生命力を回復する装飾品が欲しかったところ、都合良く2つ手に入れることができた。


 魔物の素材品で意外なことがわかった。素材は大量に手に入ったので、もちろん冒険者ギルドへと卸せば大金が手に入るが、少しはこちらで確保して何かに使えないか考えていると、ジェミニが私に言ってきたのがきっかけだった。


「アイスさん、いくつかもらえるんでしたら、ファーラビットや一角ウサギたちの装備にしてあげるのはどうです?」


「へ? あの子達、こういったもの装備できるの?」


「通常であれば無理なんですけどね。あの子達も以前と比べてかなり成長してますから、使い方なども理解できるようになっているです。」


「なるほど。確かにあの子達って、今は私達が言っていること理解できているようだしね。で、具体的にどんな素材がいいのかな?」


「そうですね、、、。今のあの子達でしたら、ワイバーンクラスまでならいけますよ。」


「ほう、それほどなのかい?」


「はい! 贅沢を言いますと、ドラゴンクラスがいいと思うですが、まだあの子達には無理です。」


「正直、ドラゴン素材はあまり出す予定はないから、使えるようになったら言ってくれれば用意するよ。」


「ありがとうです! って、アイスさん、何か気になることでも?」


「うん、あの子達に装備品を渡してしまうと、あの可愛らしい外見が、、、。」


「ああ、なるほどです! そこは解決出来ると思うですよ。戦闘時だけ装備出来るようにすればいいです。」


「可能なの?」


「・・・実際に試してみないことにはわからないですが、恐らく、マーブル殿とラヒラス殿の協力があれば可能になると思うです。」


「ミャー!」


「お、マーブルは乗り気だね。ラヒラスも恐らく大丈夫だろうね。」


「じゃあ、みなさんが戻ってきたら早速相談するです。」


「じゃあ、ボクがみんなにつたえるー!」


「うん、ライムも頼むね。」


「うんっ、ボクがんばるよー!」


 マーブルだけでなく、ライムもやる気になっている。それとは別に、ジェミニは何か心配そうな表情だ。


「ただ、もう一つ気になることが、、、。」


「気になること?」


「はい、ワイバーンの素材を加工できるかどうか、ですね。」


「ああ、そっちは問題ないよ。ゴブリンの職人なら問題なく加工できるはず。」


「いえ、腕の方は全く心配していないですが、ワイバーンの皮をあっさりと切れる刃物があるかどうかで。」


「ジェミニ忘れてない? ゴブリンの職人が使っている刃物の素材が何で出来ているのか?」


「あっ、そういえばそうでした! ゴブリンの皆さんはドラゴンの上位素材で加工用の刃物を作ったのでした!」


「そういうこと。彼らは武器にではなく、職人用の道具に惜しげも無くドラゴンの素材を利用したからね。」


「流石はカムドさんが率いているゴブリンさん達ですね。」


 ジェミニは心配事がなくなったのか、嬉しそうな表情だった。ゴブリンのムラでドラゴンの素材が手に入ったのは去年の話である。1度目の転生時にゴブリンのムラでお世話になっていたときに襲ってきたドラゴンを倒して手に入れた素材だ。(詳しくは、「とある中年男性の転生冒険記」以下略。)


「あ、それと、アイスさん。角なんかも、一角ウサギだけではなく、他のウサギ達にも装着可能です!」


「そうなの!?」


「はい! ウサギ達はどれも一角ウサギほどではないにしても、角のような出っ張りを持っているです。その部分に角をかぶせて魔力を込めると、普通に武器として使えるですよ! もちろん、ワタシにもその出っ張りはあるです。まあ、ワタシ達野ウサギ族には必要ないんですけどね、、、。」


「野ウサギ族は強いからねえ。まあ、野ウサギ族はともかく、他のウサギ達には用意しておいても無駄にはならないかな。壊れても問題ないしね。」


 と、こんな感じである程度の用途が決まったところで、ねぐらに転送していつもの風呂と洗濯を済ませて砦に戻って今日は寝ることにした。


 次の日の朝、今日もマーブル達のテシテシポンで起こしてもらったが、いつもよりかなり早い時間帯だったことに驚いた。最初はまだ暗かったので、まさか、ここでも皆既日食? って、体験したことないからわからないけど、、、。そんな感じに思ってしまっていたら違っていた。ただ早いだけだったというオチ。


 起きて、顔を洗って眠気とともにスッキリしてから、何で早いんだろうと原因を考えていたら、原因となる存在である、守備兵長さんがこちらにやってきた。その表情は少し青ざめている感じだった。


「フロスト伯爵、こんな朝早く申し訳ありません!」


「いえいえ、任務ご苦労様です。一体どうしたのですか?」


「ハッ、フロスト伯爵のスレイプニルが厩舎を破壊して脱走してしまいました!!」


「ありゃ、アウグストが? 理由はわかっているから心配しなくても良いよ。それよりも、守備兵のみなさんに怪我とかはない? 正直、そっちが心配だよ。それと破損状況はどうなっているの?」


「お気遣いありがとうございます!! 入り口の扉が破壊されてしまったほかには特に。」


「ありゃ、入り口壊しちゃったか、、、。それで厩舎にいる馬たちはどうなっているの?」


「あ、はい、他の馬たちは大人しくいつも通りに過ごしております。」


「なるほどね、ありがとう。心配しなくてもいいよ。アウグストはみんなを迎えにいったと思う。」


「迎えに、ですか? スレイプニルはそんなこともわかるんですか?」


「正直、スレイプニルについてはわからないかな。私もアウグストしか知らないからね。ただ、アウグストの全力疾走を平気で御せるのがウルヴだけなんだよね。恐らく、ウルヴを乗せて早く全力疾走がしたいんじゃないかな。」


「なるほど。そう言われてみると、何か心当たりがあります。スレイプニルが訓練に参加すると、スレイプニルは先頭に行ったり、最後尾に行ったりといろいろ動き回っておりましたからな。」


「ということで、アウグストについては心配ないから安心して。それよりも厩舎の入り口を壊してしまい申し訳ない。後で直すからそれで勘弁して。」


「いえ、それこそ問題ありません。破壊されたとはいえ、かなり綺麗な状態なので、修復に関しては問題ありません。」


「そう、まあ、折角だから、修復素材はこちらで用意するよ。お詫びを兼ねて。」


「有り難くお受けします。日が昇る前に押しかけたこと、誠に失礼致しました。」


「いえいえ、それが任務ですからね。報告ご苦労様です。戻ってお休み下さい。」


「ハハッ! それでは失礼致します。」


 そう言って、守備兵長は戻っていった。・・・アウグスト、そんなに思いっきり走りたかったのか、、、。こりゃ、アウグスト、ガマンできずにウルヴだけ先に戻ってきそうだな。更に往復しそうな勢いだな、こりゃあ。


 私が予想したとおり、朝食が済んで少ししてからウルヴを背にアウグストが到着した。ウルヴは報告するため降りようとしたのだが、アウグストが体の向きを瞬時に変えたりして降ろそうとしない。ってか、そんな動きされたら普通は振り落とされるぞ、、、。平然と「降ろしてくれよ」とか言っているウルヴも大概だぞ。


 結局、全員が到着するまで、アウグストは3往復したのだった。って、何故戦姫の3人も一緒なの? 君達タンバラの街にとどまるんじゃなかったの?

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