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第188話 さてと、実戦訓練です。

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前回のあらすじ:凄腕の老剣士を迎え入れることに成功した。若い2人? 知らん。


 フライドさんの家で一緒に昼食を摂り、お腹も落ち着いたところで、この後は魔物退治といきましょうかね。この国での主目的である2人のスカウトも済んだため、後は武術大会当日までこの国を堪能することだけである。

 若い方の2人? 正直どうでもいい。友人(笑)への嫉妬で王様を殺し、その罪をなすりつけるようなひがみ根性丸出しの魔術師や、自分の親を殺されたにも関わらず、訳の分からない理屈を繰り出す王女や、そんなカスを未だに思い続ける剣士とか、まあ好きにやっててくださいな。

 で、魔物討伐ということで、2人は戦闘用の装備に着替えたが、なんとも見事な出で立ちであった。ウラーさんはいつもの、のほほんとした感じの格好ではなく神職らしい装備で、フライドさんは、鎧姿も見事な熟練の戦士の姿であった。アンジェリカさん達戦姫は、冒険者の格好だから特にいつも通りだったけど。それは私達にも言えるか、、、。

「フロスト侯爵、いや、これからはご領主か。普段通りの格好のようだが、それで大丈夫か?」

「ご心配なく。私は基本的にはこの格好ですので。」

「・・・王女殿下、ご領主はいつもこの出で立ちで魔物討伐なさるのか?」

「アンジェリカで結構ですわ。ええ、アイスさんはドラゴンが相手でもこの格好ですわよ。」

「え? ドラゴンが相手でもか!?」

「ええ、基本的には。たまに装備をなさるときもありますが。まあ、一緒に戦ってみればそれも理解できると思いますわ。」

「そうですね。装備するにしても、マーブルちゃん達とお揃いのものを身につける程度ですしね。」

「・・・でも、問題ないから大丈夫、、、。」

「そ、そうか。ま、まあ、当人達が大丈夫と言っているのなら問題ないか、、、。」

 いや、だってさ、暑いじゃん、、、。基本ダメージ喰らわないように戦っているんだし、別に万が一が起こっても別に良いと思っているしね。

 それでは出発しますか。最初はこの周辺を探索して回ることにした。とはいえ、国王からは歩き回ることは許可されているけど、採集などは不許可となっているため、魔物を探すくらいしかできないので、楽しさは少し半減の状態だけど、その国にはその国のルールというものがある。そのルールの範囲内で楽しみを見つけることも一つの楽しさではないだろうか?

 マーブル達があちこちを動き回っているのを見て楽しみながら、そこら辺を歩いていると、いきなり魔物の気配を感じた。いきなり範囲内に現れると言うことは、やはりここはダンジョンで間違いないと確信する。野生であれば、範囲の外から範囲内に入ってくる感覚であるが、今回は気配探知をかけているにも関わらず、いきなり範囲内にスポーンしてきたからだ。数は、と、20体!? まじか、、、。ということは、雑魚を全滅させてからボスを倒す感じのタイプかな。

「皆さん、魔物を探知しました。数は20。恐らくボスのいるパターンのやつです。」

「ご領主、そういったタイプの魔物はボスを倒すと残りが消えるタイプの敵だ。ここは私達に任せてくれないか?」

「ああ、フライドさん。それについては何度か戦闘をしており理解しております。ただ、こういったタイプは、雑魚を全部倒してからボスを倒すと、素材が沢山手に入るので、その方法で行こうと思っています。」

「ほう、ご領主は知っておったのか。流石じゃな。まあ、メンバーも揃っとることじゃし、その方法でもいいのではないかのう。」

「そうだな。承知した。ご領主の言った通りにしよう。では、こういったタイプの魔物達については今後もボスを最後に倒す、ということでよろしいか?」

「ええ、それでお願いします。ボスから倒す場合は、改めて皆さんに伝えますので。」

「わかったぞい。」

「承知した。」

 2人は、このタイプの敵の対処法を知っていることに驚いていたようだったが、その上で雑魚を全部倒してからボスを倒すという方針には賛成してくれた。マーブル達だけでなく、戦姫の3人もそのつもりであったのでただ頷くだけだった。

「あ、それと、雑魚+ボスの組み合わせでの戦闘は、範囲攻撃を禁止としますので、それぞれ個別にしっかりと倒してくださいね。」

 ということで、20の魔物の集団が襲いかかってきましたよ。どれ、内訳は、と。ふむ、デカいイノシシとウリボー達ですか。鑑定は、と、「ヒュージボア」に「プチボア」か、そのまんまだねぇ。とはいえ、ビッグボアとは少し違うみたいなので楽しみなのは間違いないかな。

「では初戦闘です。みなさん張り切っていきましょう!」

「「「おー!」」」

「「お、おう?」」

 いつものノリで右腕を挙げて応えるいつものメンバーと初めてのノリで戸惑っている熟練の2人のギャップがまた面白かった。

「では、プチボアですが、ウラーさんとフライドさんが3体、他のメンバーは2体ずつね。ビッグボアですが、今回はアンジェリカさんがいきましょうか。」

「ワシらは3体ずつじゃな、承知した。」

「お任せ下さいませ!」

「了解したよ!」

「・・・わかった。」

「ミャア!」「キュウ!」「「ピー!」」

 それぞれ了解の敬礼で応えた。お、ライムとオニキスは見事にハモっているね! で、初めての2人はやはり多少戸惑っていたけど、その内慣れるでしょう。では、戦闘開始です。

 私はいつものオニジョロウに水術で氷の矢を生成してそれを瓜坊、じゃなかった、プチボアに放つ。急所ではなかったけど、命中すると、プチボアはボンって消滅した。あ、これダメージ量でも倒れるんだねぇ、流石はダンジョン、謎だらけだね。

 マーブルはいつもの風魔法で瞬殺。ジェミニは後ろ足で攻撃してこれも瞬殺。ライムとオニキスは硬質化しての体当たりでそれぞれノルマを達成していた。

 アンジェリカさんは見事な突きでこれまたプチボア2体を瞬殺、セイラさんは弓矢ではなく短剣で応戦したけど、問題なく瞬殺。ルカさんは火魔法でピンポイントに丸焼きして完了。こちらもお見事ですな。

 フライドさんは剣を使ってプチボアを斬りつけていた。病み上がりということもあり体調は万全ではなかっただろうけど、動きは見事の一言であった。ウラーさんはどうやって倒すのか興味があったが、ウラーさんは杖に補助術をかけて殴ったりしていた。その杖裁きは某時代劇のご老公を彷彿とさせる見事なものであった。

 こんな感じであっという間に雑魚は倒され、残るはボスだけとなった。ヒュージボアだけど、これがまた巨大で、下手な民家よりもでかいサイズではあったけど、私達はそれ以上にデカい魔物を倒しているので、あまり脅威ではなかった。アンジェリカさんも同様に思っていたらしく、いつも通り魔物の正面に立って迎え撃つ構えを見せた。

 ヒュージボアはアンジェリカさん目がけて一直線に突進してきたが、アンジェリカさんは先程と同じように突きを繰り出し、ヒュージボアはもの凄い勢いでひっくり返ってしまった。そのときのヒュージボアだけど、突きを喰らった部分が思いっきりえぐれていたのは見なかったことにしよう。それほど時間を置かずにボンッと消えて戦闘終了。そこには大量のお肉(ブタさん)と、毛皮と牙が残されていた。なかなか美味しそうなお肉だったので、マーブル達も嬉しそうだった。

「ミャア!!」「キュウ!!」「「ピー!!」」

「アイスさん! 夕食、期待しておりますわよ!!」

 と、こんな感じだった。その一方でウラーさんとフライドさんは唖然としていた。

「・・・ウラーよ、ヒュージボアってあんなに簡単に倒せるものだったか?」

「・・・ワシら、かなり苦労して倒したよな、、、。」

 そんな驚いている2人にアンジェリカさんは事も無げに話した。

「お2人とも、この程度の魔物でしたら、フロストの町の住人なら誰でも簡単に倒せますわよ。」

 アンジェリカさんの言ったことに、セイラさんもルカさんも頷いている。これを見て2人は(俺(ワシ)ら必要ないんじゃね?)と思ったとか思わなかったとか。

 こんな感じで魔物の集団を倒していったところ、最初こそ驚いていた2人だったが、次第に慣れていき、当人達も戦闘の勘が戻ってきたようで、すんなりと倒していた。流石は熟練の2人だった。

 この辺りにはかなりの種類の魔物がいるようで、それはアリとかモグラとかアルマジロとかサルとか非常にバラエティに溢れていた。その中で、ネコとかイヌとかも出てきたときには流石に私も攻撃できなかったけど、マーブル達は躊躇いもなく倒していたので、そこは助かった。まあ、攻撃はできなかったけど、魔物の攻撃は全て回避してきたけどね。そのときにはあの2人だけでなく、戦姫の3人も驚いていたけどね。

「・・・アイスさんって、攻撃の回避にも優れていらしたのですね、、、。」

 いや、一応格闘術極ですから、、、。

 魔物を沢山倒した、ということは、ドロップも沢山あったということで。特に、モグラとアルマジロについては、ボスがレアキャラだったようで、あの2人も驚いていた。ドロップアイテムについても、モグラとアルマジロについては、モグラであれば通常は鉱石各種しか手に入らないようだが、柄の付いたシャベルが一緒に落ちており、アルマジロの場合は、通常だと防具の素材に使えそうな皮のみのはずが、青い胸当てが一緒に落ちていたのである。非常に気になるので、もちろん鑑定しますよ、最初はシャベルにしましょうかね。では、アマさんよろ。

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『スノウウォーカー YKP-80』・・・ふむ、これは武器、いや工作道具じゃな。これを使って穴掘りを行うともの凄い効率で掘れるぞい。場所によってはダンジョンの固い壁すら掘れるのう、、、。しかし不思議とイヌ型の魔物の前では能力が激減するぞい。
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 なるほど、まんまシャベルだね。穴掘りが効率よくできるか。これで開発も少しは効率よくできるかな。できればもう少し数が欲しいところだけど、レアキャラみたいだからなぁ、、、。あまり期待しすぎると物欲センサーさんがバッチリ仕事しそうだし、これ以上は期待しないでおこうかね。ではでは、次は胸当てなんだけど、これが非常に気になるところ。

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『フェブラリー CHY-72』・・・!! な、何じゃこれは!? おっと、少し取り乱してしまったわぃ、スマンのぅ。これは胸当てじゃの、しかも恐ろしいほど高性能な。この胸当ては破壊どころか、傷つけることすら不可能じゃろう、、、。これを身につけられれば、どんな攻撃も防いでしまうぞぃ。ただ、これについては装備できる者が限られるようじゃな、女性専用じゃ。ただ、不思議なのは戦姫の嬢ちゃん達なら装備できそうなのじゃが、何故か装備できんみたいじゃぞ。何か条件でもあるのかのぅ。
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 ・・・訳が分からん、、、。女性専用か、どうみても女物ではあるよね。しかし、どんな攻撃も防ぐ胸当てか、戦姫の誰も装備ができないのであれば、これは封印だね。・・・また封印コレクションが増えるか。もうどれだけあるのか全く把握してないからなぁ、、、。

 しかし、この鉄壁の防御力を誇る胸当てが使えないのは少し残念かな。ん? 鉄壁? まさか、ね。この防具ってフェブラリー、、、。フェブラリーとは2月、2月といえば、如月、しかも青、で、極めつけはその後の部分であるCHY-72、、、。って、ヲイ!! ネタ装備じゃねぇかよ!! そりゃ、戦姫の3人は装備できないわな!! 

 ってことは、先程のシャベルも? あのシャベル、スノウウォーカー、スノウ、雪、ウォーカー、歩く、なるほどね、で、YKPって最後が「ぽ」かよ!! 普通に「ほ」じゃねぇのかよ!! ああ、頭痛くなってきた。しかも、よく見たらこのシャベル全部真っ白じゃねぇかよ、、、。

 と軽いめまいを覚えていた私にアンジェリカさんが話しかけてきた。

「あ、あの、アイスさん、大丈夫ですの?」

「ええ、何とか、、、。」

「あの、ところで、アイスさん。その変わった道具と胸当てっぽい防具ですが、何かわかりましたか?」

「おっと、そうでした。これらはですね、、、。」

 ゆき、じゃなかった、スノウウォーカーYKP-80と、ちは、じゃなかった、フェブラリーCHY-72について説明した。

「穴掘りの効率が上がるんですの? 洞穴族の方達に渡すと喜ばれるのでは? ただ、ワンちゃんが一緒だと効率が悪くなるというのはどうにも不思議ですわね。」

「ですね、豆柴のワンちゃん達とは一緒にいるときには使えませんね。」

「確か、洞穴族のみなさんは、ワンちゃん達と非常に仲がよかったはず、、、。」

「ということは、渡してもあまり効果がなさそうですね、、、。とりあえずしまっておきますか。」

「ですわね。それで、その青い胸当てが非常に気になるのですが、、、。」

「私達は装備できないんですよね?」

「とはアマさんが言っておりましたが、試しに装備してみます?」

 そう言って、ちは、じゃなかった、胸当てを戦姫に渡して装備できるか試したが、やはり誰も装備することはできなかった、というか、胸当てに意志があるみたいで、着させてすらくれなかった。

「何か、装備しようとする度に『クッ』とか声が聞こえて、それ以上装備できないのですわ。」

「王女殿下もそうでしたか。私の時もそうでした。」

「私も、拒否された、、、。」

 ・・・一応言っておくと、戦姫の3人は全員メリハリの利いたスタイルをしている。以前いた世界にいるという条件で本人達が志望すれば、一流のグラビアアイドルとしてもやっていけるほどだ。ということで、戦姫の3人はちは、いや、フェブラリーCHY-72に拒否された形となった。

「・・・悪用されると何かやばそうだから、アマさんに献上しますかね?」

「それが良さそうですわね、、、。」

 はい、封印決定ですね。ということで、一旦空間収納へとしまうことにした。マーブル達は不思議そうに見ていて、ウラーさんとフライドさんは、唖然とした感じでそのやりとりを見ていた。

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トリトン陛下「!!」
リトン宰相「陛下、どうなさいました?」
トリトン陛下「いや、何か美味いもんの予感がしたが、、、。」
リトン宰相「・・・食事よりも、今は仕事です。終わるまでは解放しませんよ。」
トリトン陛下「か、勘弁してくれ、、、。」

アマデウス教会での執務室にドナドナされていく陛下であった。
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