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213.土煙(前半スノーラ視点、後半エイデン視点)
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ディアブナスの攻撃に、ギリギリで保っていた結界は完全に消され、そして屋敷は潰されてしまった。
レン達を救いに部屋の中へ入ろうとしたが、ディアブナスの別の攻撃に邪魔をされ、結局レン達の元へ行くことは出来ず。奴の攻撃の隙間から最後に見えたものは、レンが我の名を叫びながら、崩れていく屋敷と共に、下へと落下していく姿だった。
我はどうにも出来ずに、崩壊に巻き込まれないよう、エンとユイゴ達と共に少しだけその場から離れると、土煙が収まるのを待ち、そしてようやく土煙が収まり見えた物は。
完全に潰れた屋敷と、そしてそれだけではなく、ディアブナスの攻撃が強かったために、屋敷がすっぽりと入ってしまうくらいの穴が空いており。まぁ所々、屋敷だった物が残っている場所もあったが、端の方は残っている部分は多かった。
『くそっ! レン! レン!! ルリ! アイス!!』
『おい! 今は行くな。我等が動けば、奴も動くぞ! それに奴も一緒に落ちていった。おそらくレン達は大丈夫だ! それよりもあっちに集中しろ!!』
そんな事は分かっている、だがそれでも。と、その時ふとエンを見た。そして静かにエンと同じ方向、ディアブナスの方を見て。エンは静かにただただディアブナスを見据えていた。が、その体にはかなりの魔力をまとっていて、魔力からは怒りを感じ。
そうだ、あそこにはドラもいたのだ。我がレン達をすぐに助けに行きたい気持ちと同じで、エンもすぐにドラを探しに行きたいだろうに。ただ今それをすれば、ディアブナス達から気がそれ、その状態で攻撃を受ける事になる。
それだけではない。我等がレン達を探すと言う事は、ディアブナス達も探すと言う事。ならば今は、ディアブナス達をしっかりとここに止め、レン達に近づけてないようにする事が大切だ。
エンが言った通り、レン達が落ちていった時、ブローがディアブナスの妨害を抜け、レン達の元へ辿り着くのが見えた。そしてもう1人、ハイエルフのアーティストがしっかりとレンを抱きしめたのが見えた。そうだ、落ち着け。今我にできる事をしなければ。
『少しは落ち着いたか?』
『ああ、すまん』
『良いか、しっかりと奴を、奴らを止めるぞ。ふん、できるならばあれが完成する前に、奴を消してしまえば良いだけの事。簡単だろう?』
『ふっ、そうだな』
我等の前にはディアブナスと、今のゴタゴタの中、ディアブナスに回復をしてもらったのだろうコレイションが。そして外の結界にも奴の攻撃が届いていたのだろう。一部が破られており、そこから魔獣が入ってきていた。
レン達の気配を感じる事ができない。が、ローレンスやセバスチャンの気配、他の使用人達などの気配は、何とかく感じる。なぜ、レン達の気配がまったくしないのか。相変わらずのディアブナスの影響なのか、それとも…。
大丈夫だ。必ずレン達は生きている。信じろ。我には我が今できる事を!
*********
「ほら、レオナルド、手を動かしてよ」
「分かってるよ。でもさ兄さん、おかしいと思わないか?」
「それはまぁ、ねぇ。でも時間がないんだし良いんじゃない?」
「エイデン、レオナルド、そちらはどうですか!」
「はい! もう終わります! ほらレオナルド」
「ほら、やっぱりおかしいじゃないか」
僕達は今、魔法陣を3分の2ほど描き終えていた。予定よりもだいぶ早く、短時間でかなりの範囲の魔法陣を描く事ができるなんて。だからレオナルドの言ってる事も分かるんだけどね。ただそれを見て、ボケっとしている暇なんか、僕達にはないんだから。
スレイブさんに魔法陣を描くために、4人ほどギルド職員来ると聞き、嬉しく思いながら魔法陣を描きながら彼らを待っていると、すぐに彼らは来てくれて。良かった、みんなが手伝ってくれて、さらにこれでまた時間が短縮できる。そう思ったんだけどね。
まさかここまで、時間が短縮できるなんて思っていなかったよ。冒険者ギルドの職員も商業ギルドの職員も、来てくれたのはただの職員じゃなくて、かなりの実力者で。僕とレオナルドが魔法陣の1部を描き終わる間に、彼らは自分の描く場所をささっと終わらせてしまって、僕達の方を手伝ってくれて。
そんな感じで魔法陣を描き進めていたら、予定の半分の時間もかからずに、3分の2を描き終えていたんだ。
彼らの魔法陣の描くスピードといったら。レン達じゃないけど、あんなに人の手は早く動くのかって、よくあのスピードで描けるなって思いながら、僕もちょっとだけ彼らを見ちゃったよ。
そしてその更に上を行くのがケビンとスレイブさんでね。あの2人の動きをレン達が見たら、ジャンプしたり走り回ったりしながら、とっても喜んだだろうな。レオナルドでもあれだからね。何度も手を止めて彼らを見ようとして。
完璧に見えない動きで魔法陣を描いていて、本人達が見えないのに、絵が完成するんだよ。不思議な光景だった。
「さぁ、あと少しです。今の所気づかれた様子はありませんからね、このまま気づかれる前に、完璧に仕上げますよ」
「はい!」
スレイブさんの言う通り、ここまでは何も問題は起こらず、順調に魔法陣を描く事ができている。このまま描き終わるまで何も起きなければ良い。そう願いながら場所を移動しようとした時だった。
ドンッ!!と、体に強い重さを感じ、そして地響きが。思わず手を止めて周りを確認すれば、今度は大きな土煙が見えて。あの土煙の方向…。
「兄さん!」
「分かってる!」
「兄さん俺、確認を…」
「ダメだ! レオナルドはここで最後まで魔法陣を」
「でも」
「僕だって確認しに行きたい、でも今はダメだ。僕達がやる事は魔法陣を描く事。あの土煙だ、何もなかったって事はないだろう。ただ、それでも、みんなが無事でいるのなら、僕達の魔法陣が必ず必要になる。だから今は父さん達を信じて、この魔法陣を完成させるんだ!」
「レオナルド様、エイデン様の言う通りです。あちらにはスノーラ達がいる。今はこちらに集中を」
「…分かった」
レオナルドがグッと拳を握り、そのあとキリッとした表情に変わり、すぐに次の場所への移動を始める。
あの土煙、一体何が。父さん達は無事なのか。そしてレン達は…。しっかりしろ。絶対にみんな無事のはずだ。レイモンドに言った事を自分にも言い聞かせて、僕もレオナルドに続く。あともう少し、みんなどうか無事で!
レン達を救いに部屋の中へ入ろうとしたが、ディアブナスの別の攻撃に邪魔をされ、結局レン達の元へ行くことは出来ず。奴の攻撃の隙間から最後に見えたものは、レンが我の名を叫びながら、崩れていく屋敷と共に、下へと落下していく姿だった。
我はどうにも出来ずに、崩壊に巻き込まれないよう、エンとユイゴ達と共に少しだけその場から離れると、土煙が収まるのを待ち、そしてようやく土煙が収まり見えた物は。
完全に潰れた屋敷と、そしてそれだけではなく、ディアブナスの攻撃が強かったために、屋敷がすっぽりと入ってしまうくらいの穴が空いており。まぁ所々、屋敷だった物が残っている場所もあったが、端の方は残っている部分は多かった。
『くそっ! レン! レン!! ルリ! アイス!!』
『おい! 今は行くな。我等が動けば、奴も動くぞ! それに奴も一緒に落ちていった。おそらくレン達は大丈夫だ! それよりもあっちに集中しろ!!』
そんな事は分かっている、だがそれでも。と、その時ふとエンを見た。そして静かにエンと同じ方向、ディアブナスの方を見て。エンは静かにただただディアブナスを見据えていた。が、その体にはかなりの魔力をまとっていて、魔力からは怒りを感じ。
そうだ、あそこにはドラもいたのだ。我がレン達をすぐに助けに行きたい気持ちと同じで、エンもすぐにドラを探しに行きたいだろうに。ただ今それをすれば、ディアブナス達から気がそれ、その状態で攻撃を受ける事になる。
それだけではない。我等がレン達を探すと言う事は、ディアブナス達も探すと言う事。ならば今は、ディアブナス達をしっかりとここに止め、レン達に近づけてないようにする事が大切だ。
エンが言った通り、レン達が落ちていった時、ブローがディアブナスの妨害を抜け、レン達の元へ辿り着くのが見えた。そしてもう1人、ハイエルフのアーティストがしっかりとレンを抱きしめたのが見えた。そうだ、落ち着け。今我にできる事をしなければ。
『少しは落ち着いたか?』
『ああ、すまん』
『良いか、しっかりと奴を、奴らを止めるぞ。ふん、できるならばあれが完成する前に、奴を消してしまえば良いだけの事。簡単だろう?』
『ふっ、そうだな』
我等の前にはディアブナスと、今のゴタゴタの中、ディアブナスに回復をしてもらったのだろうコレイションが。そして外の結界にも奴の攻撃が届いていたのだろう。一部が破られており、そこから魔獣が入ってきていた。
レン達の気配を感じる事ができない。が、ローレンスやセバスチャンの気配、他の使用人達などの気配は、何とかく感じる。なぜ、レン達の気配がまったくしないのか。相変わらずのディアブナスの影響なのか、それとも…。
大丈夫だ。必ずレン達は生きている。信じろ。我には我が今できる事を!
*********
「ほら、レオナルド、手を動かしてよ」
「分かってるよ。でもさ兄さん、おかしいと思わないか?」
「それはまぁ、ねぇ。でも時間がないんだし良いんじゃない?」
「エイデン、レオナルド、そちらはどうですか!」
「はい! もう終わります! ほらレオナルド」
「ほら、やっぱりおかしいじゃないか」
僕達は今、魔法陣を3分の2ほど描き終えていた。予定よりもだいぶ早く、短時間でかなりの範囲の魔法陣を描く事ができるなんて。だからレオナルドの言ってる事も分かるんだけどね。ただそれを見て、ボケっとしている暇なんか、僕達にはないんだから。
スレイブさんに魔法陣を描くために、4人ほどギルド職員来ると聞き、嬉しく思いながら魔法陣を描きながら彼らを待っていると、すぐに彼らは来てくれて。良かった、みんなが手伝ってくれて、さらにこれでまた時間が短縮できる。そう思ったんだけどね。
まさかここまで、時間が短縮できるなんて思っていなかったよ。冒険者ギルドの職員も商業ギルドの職員も、来てくれたのはただの職員じゃなくて、かなりの実力者で。僕とレオナルドが魔法陣の1部を描き終わる間に、彼らは自分の描く場所をささっと終わらせてしまって、僕達の方を手伝ってくれて。
そんな感じで魔法陣を描き進めていたら、予定の半分の時間もかからずに、3分の2を描き終えていたんだ。
彼らの魔法陣の描くスピードといったら。レン達じゃないけど、あんなに人の手は早く動くのかって、よくあのスピードで描けるなって思いながら、僕もちょっとだけ彼らを見ちゃったよ。
そしてその更に上を行くのがケビンとスレイブさんでね。あの2人の動きをレン達が見たら、ジャンプしたり走り回ったりしながら、とっても喜んだだろうな。レオナルドでもあれだからね。何度も手を止めて彼らを見ようとして。
完璧に見えない動きで魔法陣を描いていて、本人達が見えないのに、絵が完成するんだよ。不思議な光景だった。
「さぁ、あと少しです。今の所気づかれた様子はありませんからね、このまま気づかれる前に、完璧に仕上げますよ」
「はい!」
スレイブさんの言う通り、ここまでは何も問題は起こらず、順調に魔法陣を描く事ができている。このまま描き終わるまで何も起きなければ良い。そう願いながら場所を移動しようとした時だった。
ドンッ!!と、体に強い重さを感じ、そして地響きが。思わず手を止めて周りを確認すれば、今度は大きな土煙が見えて。あの土煙の方向…。
「兄さん!」
「分かってる!」
「兄さん俺、確認を…」
「ダメだ! レオナルドはここで最後まで魔法陣を」
「でも」
「僕だって確認しに行きたい、でも今はダメだ。僕達がやる事は魔法陣を描く事。あの土煙だ、何もなかったって事はないだろう。ただ、それでも、みんなが無事でいるのなら、僕達の魔法陣が必ず必要になる。だから今は父さん達を信じて、この魔法陣を完成させるんだ!」
「レオナルド様、エイデン様の言う通りです。あちらにはスノーラ達がいる。今はこちらに集中を」
「…分かった」
レオナルドがグッと拳を握り、そのあとキリッとした表情に変わり、すぐに次の場所への移動を始める。
あの土煙、一体何が。父さん達は無事なのか。そしてレン達は…。しっかりしろ。絶対にみんな無事のはずだ。レイモンドに言った事を自分にも言い聞かせて、僕もレオナルドに続く。あともう少し、みんなどうか無事で!
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