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第二十話【衝撃】

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王子は深いため息をつき、重々しい表情で語り始めた。

「初代のペルシカは記憶よりも、容姿をそのままにしたい…そう望んだようです。私は初代からの記憶をピアスを通じて知る事ができます。ハイドシュバルツ公爵家の家系図を辿れば幾度もペルシカという名が記載されていたはずです。王家もまたプレイヤードという名が幾度も記載され、その隣には必ずペルシカの名が記載されております。」

ペルシカは動揺した声で続けた。

「何よそれ…じゃあ私の運命は決まってるって事?」

王子は静かに頷きながら答えた。

「そうですね。私が望む限り永遠と決まり続けるでしょう。」

ペルシカは疑問を抱えながら王子に問いかけた。

「アナタは私の事をどう思ってるの?ヤードの態度は露骨だったけれど、貴方とヤードは別人でしょ?」

王子は穏やかな表情で答えた。

「ペルシカが生まれたその時から私はペルシカを愛しています。ですから、自ら、私はあなたとの婚約を取り付けたのです。」

ペルシカは驚きの表情で言葉を続けた。

「待って、意味が分からない。」

「でしょうね。今回は少し複雑な事情ができてしまったのです。私は今の人生を回帰しております。」

ペルシカは驚きを隠せず、王子に向かって叫んだ。

「回帰ですって!?」

「この国が滅びると、それを未然に防げる対象者にのみ記憶が残り、回帰するという仕組みになっているようでして、色々あって国は滅び、回帰したのです。ですから、ヤードの力を使い、その原因を全て排除させていただきました。」

「国が滅ぶって…。私の知ってる物語の通りなら、セリナの暴走を止められなかったって事?」

「はい。そういう事になりますね。」

(どういう事?私は物語の内容を知っているから、絶対にそれを止めてみせるはず。それなのに暴走を許した?何か、ストーリー通りでない事が起きたのは確かだわ。で、残された道はヤードか王子ってわけね。ヤードの事だから国外へ出ても追いかけてくるでしょうし、王子とここにいる方が幸せってわけでもなさそうなのよね。)

王子はスラリと腰にかけていた剣を抜き、その美しい刃を静かに見つめた。王子の眼差しは剣に集中し、何かを考えているようだった。

「私って、この部屋から外へ出られるの?」

「出すわけがないでしょう?やっと手に入ったのですから。」

王子の目は真剣なままでありながら、その中には狂気の光も混じっているように見えた。その瞳は鋭く、冷たい光を放ち、まるで何かに囚われたような深い闇を秘めているかのようだった。

「そうよね…。」

「私も手荒な真似はしたくはないのですが、ヤードのような失態はしたくありません。」

王子がパチンと指を鳴らすと、突如としてメイドが数人部屋に入ってきて、ペルシカの腕を掴んで身動きをとれなくさせた。彼女たちの手は強く、ペルシカの自由を奪うようにしっかりと掌握していた。ペルシカは驚きと恐怖の感情に支配され、無力感が心を支配した。

「なっ!離しなさい!!」

「注射を。」

王子が注射を要求すると、白衣を着た老紳士が静かに部屋に入ってきた。彼は慎重にペルシカに近づき、注射器を手に取ってペルシカの腕に注射を行った。その後、お爺さんは静かに退室し、部屋には再び静寂が戻った。ペルシカは注射の液体が体内に流れる感覚を感じ、不安と疑問に満ちた心で王子を見つめた。

「何を打ったの?」
「ご安心ください。麻酔です。」
「…私の足を切る気?」
「切り落としはしません。」

次第に睡魔が襲ってきて、ペルシカの意識は徐々に遠のいていった。彼女のまぶたは重くなり、周囲の光景がぼやけて見え始めた。最後の意識の糸が切れ、彼女は眠りの中へと沈んでいった。

(…終わった。何が正しかったのかしら。ヤードもだめ。王子もだめ。…けれど、ヤードは絶対に私を傷つけようとはしなかった。ただ気持ち悪いだけで。でも魂は一緒なんだっけ。結局はどっちもどっちって事?なんか良い方法なかったのかなー。別に王子とヤードが嫌いなわけじゃない。顔だって良いし、お金だって持っている。それからなんでもできそう。別に苦労せずぐうたらできるし、前世のように働かなくても良いし、これで良かったのかもしれない。でも…ヤードは?ずっと檻の中なの?ずっと一緒にいたのに?もう一生会えないのかな…。)

ペルシカは眠りの中で、回帰前の記憶を夢の中で再び体験した。セリナとクインシールの策略によって国外に追放されたペルシカとプレイヤードの姿が、夢の中で明るく浮かび上がった。

彼女の夢は長く、遠くの場所へと導かれるような感覚があった。時には困難に直面し、時には喜びを分かち合いながら、ペルシカとプレイヤードは互いに支え合いながら旅を続けた。

(あぁ…王子と私の間にも、こんなにも長い思い出が沢山あったんだ。そっか、彼は…彼の魂はここに縛られ続けているから、私もアナタも消える必要があったのね。辛かったね。ずっとその手で私を抱きしめたかったのね。)

ペルシカがゆっくりと目を覚ますと、ますず不安に思ったのは足の感覚だった。確かめてみると、足首に変な感覚があった。何かがおかしい。

「ペルシカ!目覚めが遅いから心配しました。もう三日も眠っていたのですよ。」

王子が心配そうな表情でペルシカに近づき、彼女を抱きしめる。彼の声は心配そうで、愛情に満ちている。

「三日…ね。」

ペルシカは回帰前の記憶が戻ったことを隠すことに決めた。王子にはその事実を知らせない方が安全だと感じたのだ。

ペルシカはしばらくの間、王子との日々を過ごしてみました。彼女は足が立たないため、全てを王子にゆだねることになり、それにより自らの羞恥心も通り越していた。

王子はペルシカの身の回りの世話を献身的に行い、ペルシカは自分の身の回りのことを自分でできないことへの苦悩を感じ始めていた。

同時に、ペルシカはヤードと王子が同じ人物であることを理解していましたが、日に日に、ヤードが恋しくなってしまうことに気づきました。子は公務をこなしながらも彼女につきっきりで、その結果、王子自身にも疲れが現れ、目の下にクマができ始め、彼女はこれ以上は王子に頼りきることができないと思った。

この状況が続くことがペルシカにとってより良い未来を切り開く手助けにはならないと感じ、彼女はヤードのとこへ戻ることを決意した。

「ねぇ。プレイヤード。」
「どうされましか?」
「今日は良い天気だから、窓から外の空気を吸いたいの。抱っこしてくれない?」
「はい。喜んで。」

王子がペルシカを抱きかかえ、窓に近づきました。窓を開けると、風が優しく部屋に入ってきました。ペルシカは王子の腕に支えられながら、自分の決断を信じ、勇気を振り絞りました。窓際で王子の腕から離れ、窓の外に身を乗り出すと、彼女は一気に窓から身を投げ出して落下した。

「ペルシカっ!!」

王子は驚いて声を上げ、自分も窓から飛び降りることを決意しました。手を伸ばし、ペルシカを捕まえようと必死になりますが、手が届く前に突然王子の姿が変わり、その手はヤードの手になった。

ヤードは一瞬驚いた表情を見せましたが、そのまま落下するペルシカを追い、巧みな動きで彼女を抱きかかえました。窓から遠ざかる風景を見ながら、ヤードは深い溜息をついた。

「全く。無茶を致しますね。お嬢様?」

ヤードはペルシカを優雅に抱きかかえ、突然の出来事にも冷静さを保ちつつ、着地した。ペルシカはそのまま彼の腕の中で安心感に包まれ、ニッコリと笑った。
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