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訓練シリーズ
大好きな人と
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「夢物語」の桃瀬&千隼ver.です。旅行する2人のお話し。千隼視点でエロ無
◇ ◆
「綺麗…!」
部屋の窓からの景色を見ると、そこには一面海が広がっていた。
「本当だ。流石花宮さん、素晴らしい部屋を手配してくれたね~」
俺の隣で同じように景色を眺めているのは、想い人でもある桃瀬。
うちの組織のリーダーでもある花宮さんが、桃瀬(と栗原)にお礼も兼ねて一泊二日の旅行チケットをプレゼントしたのだが、栗原があまり旅行には興味がないということだったので俺を誘ってくれたのだ。
「荷物置いたら早速散歩しに行こうか」
「うん!」
貴重品だけを小さな鞄に入れてすぐに外へ出ると、桃ちゃんはきゅっと手を握ってくれた。
今日は私服のため雰囲気が違うので、なんだかとてもドキドキする。普段以上にキラキラしている桃ちゃんはとても格好良くて、つい見惚れてしまう。
「そんなに見つめられたら恥ずかしいんだけど」
「…か、格好良いな、と思って…」
「嬉しいありがとう。千隼くんはいつでも可愛い」
他の人が聞いたらとんだバカップルみたいな会話だが、いつもと違うからか素直な気持ちを伝えることが出来た。
「わー。風が気持ち良い。あっちにフォトスポットのブランコがあるみたいだけど撮る?」
ホテルを出てすぐのところに小さな公園があり、海を背景に映える写真が撮れると大人気の場所。
ずっと桃ちゃんと写真を撮ってみたいと思っていたので撮ってくれる人を探そうとすると、桃ちゃんの驚いた声が聞こえた。
「あれ、未南さんと篠田さん。コンペ振りですね」
そこに居たのは、組織の一員でもある二人。一緒に居るところを見られるのが恥ずかしくて後ろに隠れると、茶化すことなく柔らかい表情を向けてくれた。
旅行のチケットは桃ちゃんと栗原、そして未南さんと篠田さんに渡していたらしく、偶然にも日にちが被ったようだ。
その後、篠田さんの希望で桃ちゃんが二人の写真を撮った後、俺たちも撮ってもらえることになった。
桃ちゃんとの初めてのツーショットで変な顔は出来ない。篠田さん達には申し訳ないが、何度も自分の顔を確認して少しでも目を閉じていたりしたら撮り直してもらった。(桃ちゃんはどの瞬間も可愛かった)
「千隼くん可愛く撮れたよ~」
「何枚もごめんなさい…」
「全然いいよ~そんな千隼くんが見れて僕も嬉しいよ」
と、時間をたくさん取らせてしまったのに嫌な顔せず接してくれる篠田さんにぺこりと頭を下げた。
(さっきの写真なら、桃ちゃんが見返した時も可愛い俺で居れるかな)
Daisyには可愛い子がたくさん居るし、普段会えない分不安も大きい。少しでも良い自分を思い出してほしいなと考えていると、桃ちゃんは俺の手を引いて砂浜の方へ歩いていった。
「海、綺麗だね」
「…うん」
「俺、任務以外で泊まりとか初めてでさ。これからもずっと、二人で色んなところに行こうね」
その言葉は、俺の小さな不安を吹き飛ばしてくれた。
「…俺も、旅行とか初めて。桃ちゃんと来れて良かった」
「うん」
暫く二人で手を繋いだまま、波の音と潮の香りを堪能した。
◇ ◆
「いただきまーす」
散歩から帰った後、時間がなかったので軽く部屋についているシャワーだけを浴びてから夕食バイキングへと向かった。
どの料理もとても美味しそうで、お皿のバランスに気を遣いながら一生懸命盛り付けた。
(よし。綺麗に盛り付け出来た。渚だったら好きなだけ好きなモン取るんだろうな)
桃ちゃんにとって恥ずかしいと思わせる存在で居たくない。渚みたいな生き方をしたいけど、俺は上手く出来ない。
「千隼くん、お皿とっても綺麗だね。プロみたい」
そう言って褒めてもらえると、頑張って良かったと思えた。
「俺は恥ずかしいけど盛り付け下手になっちゃった」
たくさんお寿司とお肉をとっている桃ちゃんは可愛らしくて、意外にも食べるんだと知れて嬉しかった。
「桃ちゃん、美味しい」
「うん。ステーキ取ってないの?凄く美味しいよ」
「次、取ろうかな」
自分の取ってきた料理をお上品に食べながら微笑むと、桃ちゃんは少しだけ心配そうな顔をしていた。
「ねぇ、千隼くん。俺と居る時、凄い気を遣ってない?」
「…」
「どのお料理も美味しいから、千隼くんが取ってきたものも食べたいからとってきてるんだろうけど、それ以上にバランス気にしてるようにしか思えなくて」
「…桃ちゃんに、少しでもよく見られたくて」
確かに食べたくてとったものばかりだけど、本当はもっと盛り付けも適当にして欲しいものを好きなだけ取ってみたい。バイキングなんて初めてで、どれもこれも、全部食べてみたい。けど、なんとなく恥ずかしいと思って取れなかった。
「今更気にしなくていいのに~俺は千隼くんの情けないところも全部知ってるんだよ?」
「…そ、うだけど」
「俺、盛り付けとか下手でお世辞にも綺麗とは言えないじゃん。それ見て千隼くんはどう思った?盛り付け下手だなぁ。ちょっと幻滅したなぁ。とか思った?」
「…桃ちゃんって、この食べ物が好きなんだ。可愛いなぁって、思った。散々お前の鬼畜度は見てきたから、今更幻滅したりしない」
「俺も全く同じ意見なんだけどな。写真撮ってた時も、不意打ちでこっそり撮ってたこの写真が一番自然で可愛いと思ったんだよねー。もちろん篠田さんに撮ってもらった写真の千隼くんはどれも可愛かったけど」
見せてくれた写真には、自分でも分かるほどに自然な笑顔を見せた自分が居た。
「……桃ちゃんに、少しでもよく思われたくて、頑張ってた。好きな人の前では可愛くいたいし」
「もちろん俺も好きな人の前では格好良く思われたいから頑張っちゃうけど、それって持続しないよね。疲れたって少しでも思わせる関係性はあんまり好きじゃないから、俺の前では無理しすぎないで欲しい。千隼くんの性格上、難しいだろうけど、俺の隣に居ると幸せで、唯一心が落ち着ける──そんな居場所でありたいと思ってるよ」
楽しい食事タイムには似合わない雰囲気の会話だが、その言葉でスッと心が軽くなった気がした。
「……ステーキ、食べたい。お寿司もいっぱい食べたい」
「じゃあそのお料理食べたら、好きなもの取りに行こう。一緒に」
「……うん」
一口目、口に含んだ時はあまり味のしなかったものが、もう一度食べたら口内に幸せな味が広がった気がする。
お皿に盛り付けていた料理が全てなくなると、桃ちゃんは新しいお皿を渡してくれた。
「好きなもの、気にせず取っておいで。千隼くんは何が好きなのか知りたい」
「うん……」
さっき並ばなかったステーキをお皿の中央に置き、すぐそばにあった美味しそうなポテトを取り、自分が食べたいものを適当に盛り付けた。
(わぁ…!美味しそう!早く食べたい…!)
さっきはバランスよく取れたかな、なんて言われるかな、なんて気にしていたのに、今はただお皿にのっているお料理が食べたくて仕方ない。
ステーキも熱い内に食べたいので席に戻ると、さっきよりもたくさんとってきている桃ちゃんが待っていた。
「千隼くんお帰り。どれも美味しそうだね。あったかい内に食べようか」
「うん!」
席について一番に口に入れたのはステーキ。一口食べた瞬間にとろけるくらいの美味しさが広がった。
「んー…っ!美味しい!」
「ステーキ美味しいよね。俺ももう一回取っちゃった」
「桃ちゃん、意外と食べるんだね」
「普段はあんまりなんだけど、初めて大好きな人との旅行だし、全力で楽しみたいなと思って」
「……ん、嬉しい」
「けど流石に全然良いところ見せれなかったから、デザートを取る時は俺もちゃんと綺麗に盛り付けれるんだよって披露するからね」
「えー?絶対俺の方が綺麗だと思うけどなぁ」
「じゃあどっちが綺麗に出来るか勝負しよっか。ただし自分が食べたいものだけをとること」
「はーい!」
その後はしんみりするような会話は一切なく、これ美味しいね、とか、お腹いっぱいだけどこれも食べたいから半分しよう、とか。日常を忘れて"今"を全力で楽しむことが出来た。
最後のデザートの勝負は、自分が欲しいものを欲しいだけとって、気を使うだけだった盛り付けとは違って楽しむことが出来た。
「はぁーっ美味しかったぁ」
「小さい体によくあれだけ入るね…」
「いや、千隼くんこそ。食べ過ぎー」
「いやいや、桃ちゃんの方が食べ過ぎ」
「まぁ太った時はダイエット手伝ってもらうしいいよ。俺もたっぷり手伝うから安心してね?」
「……変態」
「えー?なんか変なダイエット想像したのー?やらしいー」
「黙れ」
「あらあら、口悪くなっちゃって。さて、お腹落ち着いたら部屋についてる露天風呂に入ろうか」
バイキング会場から部屋へ戻り、窓を眺めると海は月明かりでキラキラと輝いていた。
「…夜の海も綺麗」
「そうだね。自然って本当にいいね。次はフェリーとか乗ってみたいなー」
「フェリー楽しそう。船酔いしないといいけど」
窓の近くに置かれている椅子へ腰掛け、ゆっくりと会話を楽しんだ後は初めての桃ちゃんとのお風呂タイム。
初めて二人で入ったお風呂は、綺麗な景色の中本当に最高で。俺はきっとこの日を一生忘れないだろうなと思った。
end.
おまけ
千隼「あ、栗原。凄い旅行楽しかった。ありがとう。何で旅行好きじゃないの?」
栗原「(あいつ……俺を旅行嫌いにしやがったな……。けど千隼はそれ知ったら気にするだろうし、本当のことは言わない方がいいのか……けど今後旅行誘ってもらえなくなるのは辛い。くっっそ桃瀬…!)」
帰宅後も悩まされる栗原さん。
◇ ◆
「綺麗…!」
部屋の窓からの景色を見ると、そこには一面海が広がっていた。
「本当だ。流石花宮さん、素晴らしい部屋を手配してくれたね~」
俺の隣で同じように景色を眺めているのは、想い人でもある桃瀬。
うちの組織のリーダーでもある花宮さんが、桃瀬(と栗原)にお礼も兼ねて一泊二日の旅行チケットをプレゼントしたのだが、栗原があまり旅行には興味がないということだったので俺を誘ってくれたのだ。
「荷物置いたら早速散歩しに行こうか」
「うん!」
貴重品だけを小さな鞄に入れてすぐに外へ出ると、桃ちゃんはきゅっと手を握ってくれた。
今日は私服のため雰囲気が違うので、なんだかとてもドキドキする。普段以上にキラキラしている桃ちゃんはとても格好良くて、つい見惚れてしまう。
「そんなに見つめられたら恥ずかしいんだけど」
「…か、格好良いな、と思って…」
「嬉しいありがとう。千隼くんはいつでも可愛い」
他の人が聞いたらとんだバカップルみたいな会話だが、いつもと違うからか素直な気持ちを伝えることが出来た。
「わー。風が気持ち良い。あっちにフォトスポットのブランコがあるみたいだけど撮る?」
ホテルを出てすぐのところに小さな公園があり、海を背景に映える写真が撮れると大人気の場所。
ずっと桃ちゃんと写真を撮ってみたいと思っていたので撮ってくれる人を探そうとすると、桃ちゃんの驚いた声が聞こえた。
「あれ、未南さんと篠田さん。コンペ振りですね」
そこに居たのは、組織の一員でもある二人。一緒に居るところを見られるのが恥ずかしくて後ろに隠れると、茶化すことなく柔らかい表情を向けてくれた。
旅行のチケットは桃ちゃんと栗原、そして未南さんと篠田さんに渡していたらしく、偶然にも日にちが被ったようだ。
その後、篠田さんの希望で桃ちゃんが二人の写真を撮った後、俺たちも撮ってもらえることになった。
桃ちゃんとの初めてのツーショットで変な顔は出来ない。篠田さん達には申し訳ないが、何度も自分の顔を確認して少しでも目を閉じていたりしたら撮り直してもらった。(桃ちゃんはどの瞬間も可愛かった)
「千隼くん可愛く撮れたよ~」
「何枚もごめんなさい…」
「全然いいよ~そんな千隼くんが見れて僕も嬉しいよ」
と、時間をたくさん取らせてしまったのに嫌な顔せず接してくれる篠田さんにぺこりと頭を下げた。
(さっきの写真なら、桃ちゃんが見返した時も可愛い俺で居れるかな)
Daisyには可愛い子がたくさん居るし、普段会えない分不安も大きい。少しでも良い自分を思い出してほしいなと考えていると、桃ちゃんは俺の手を引いて砂浜の方へ歩いていった。
「海、綺麗だね」
「…うん」
「俺、任務以外で泊まりとか初めてでさ。これからもずっと、二人で色んなところに行こうね」
その言葉は、俺の小さな不安を吹き飛ばしてくれた。
「…俺も、旅行とか初めて。桃ちゃんと来れて良かった」
「うん」
暫く二人で手を繋いだまま、波の音と潮の香りを堪能した。
◇ ◆
「いただきまーす」
散歩から帰った後、時間がなかったので軽く部屋についているシャワーだけを浴びてから夕食バイキングへと向かった。
どの料理もとても美味しそうで、お皿のバランスに気を遣いながら一生懸命盛り付けた。
(よし。綺麗に盛り付け出来た。渚だったら好きなだけ好きなモン取るんだろうな)
桃ちゃんにとって恥ずかしいと思わせる存在で居たくない。渚みたいな生き方をしたいけど、俺は上手く出来ない。
「千隼くん、お皿とっても綺麗だね。プロみたい」
そう言って褒めてもらえると、頑張って良かったと思えた。
「俺は恥ずかしいけど盛り付け下手になっちゃった」
たくさんお寿司とお肉をとっている桃ちゃんは可愛らしくて、意外にも食べるんだと知れて嬉しかった。
「桃ちゃん、美味しい」
「うん。ステーキ取ってないの?凄く美味しいよ」
「次、取ろうかな」
自分の取ってきた料理をお上品に食べながら微笑むと、桃ちゃんは少しだけ心配そうな顔をしていた。
「ねぇ、千隼くん。俺と居る時、凄い気を遣ってない?」
「…」
「どのお料理も美味しいから、千隼くんが取ってきたものも食べたいからとってきてるんだろうけど、それ以上にバランス気にしてるようにしか思えなくて」
「…桃ちゃんに、少しでもよく見られたくて」
確かに食べたくてとったものばかりだけど、本当はもっと盛り付けも適当にして欲しいものを好きなだけ取ってみたい。バイキングなんて初めてで、どれもこれも、全部食べてみたい。けど、なんとなく恥ずかしいと思って取れなかった。
「今更気にしなくていいのに~俺は千隼くんの情けないところも全部知ってるんだよ?」
「…そ、うだけど」
「俺、盛り付けとか下手でお世辞にも綺麗とは言えないじゃん。それ見て千隼くんはどう思った?盛り付け下手だなぁ。ちょっと幻滅したなぁ。とか思った?」
「…桃ちゃんって、この食べ物が好きなんだ。可愛いなぁって、思った。散々お前の鬼畜度は見てきたから、今更幻滅したりしない」
「俺も全く同じ意見なんだけどな。写真撮ってた時も、不意打ちでこっそり撮ってたこの写真が一番自然で可愛いと思ったんだよねー。もちろん篠田さんに撮ってもらった写真の千隼くんはどれも可愛かったけど」
見せてくれた写真には、自分でも分かるほどに自然な笑顔を見せた自分が居た。
「……桃ちゃんに、少しでもよく思われたくて、頑張ってた。好きな人の前では可愛くいたいし」
「もちろん俺も好きな人の前では格好良く思われたいから頑張っちゃうけど、それって持続しないよね。疲れたって少しでも思わせる関係性はあんまり好きじゃないから、俺の前では無理しすぎないで欲しい。千隼くんの性格上、難しいだろうけど、俺の隣に居ると幸せで、唯一心が落ち着ける──そんな居場所でありたいと思ってるよ」
楽しい食事タイムには似合わない雰囲気の会話だが、その言葉でスッと心が軽くなった気がした。
「……ステーキ、食べたい。お寿司もいっぱい食べたい」
「じゃあそのお料理食べたら、好きなもの取りに行こう。一緒に」
「……うん」
一口目、口に含んだ時はあまり味のしなかったものが、もう一度食べたら口内に幸せな味が広がった気がする。
お皿に盛り付けていた料理が全てなくなると、桃ちゃんは新しいお皿を渡してくれた。
「好きなもの、気にせず取っておいで。千隼くんは何が好きなのか知りたい」
「うん……」
さっき並ばなかったステーキをお皿の中央に置き、すぐそばにあった美味しそうなポテトを取り、自分が食べたいものを適当に盛り付けた。
(わぁ…!美味しそう!早く食べたい…!)
さっきはバランスよく取れたかな、なんて言われるかな、なんて気にしていたのに、今はただお皿にのっているお料理が食べたくて仕方ない。
ステーキも熱い内に食べたいので席に戻ると、さっきよりもたくさんとってきている桃ちゃんが待っていた。
「千隼くんお帰り。どれも美味しそうだね。あったかい内に食べようか」
「うん!」
席について一番に口に入れたのはステーキ。一口食べた瞬間にとろけるくらいの美味しさが広がった。
「んー…っ!美味しい!」
「ステーキ美味しいよね。俺ももう一回取っちゃった」
「桃ちゃん、意外と食べるんだね」
「普段はあんまりなんだけど、初めて大好きな人との旅行だし、全力で楽しみたいなと思って」
「……ん、嬉しい」
「けど流石に全然良いところ見せれなかったから、デザートを取る時は俺もちゃんと綺麗に盛り付けれるんだよって披露するからね」
「えー?絶対俺の方が綺麗だと思うけどなぁ」
「じゃあどっちが綺麗に出来るか勝負しよっか。ただし自分が食べたいものだけをとること」
「はーい!」
その後はしんみりするような会話は一切なく、これ美味しいね、とか、お腹いっぱいだけどこれも食べたいから半分しよう、とか。日常を忘れて"今"を全力で楽しむことが出来た。
最後のデザートの勝負は、自分が欲しいものを欲しいだけとって、気を使うだけだった盛り付けとは違って楽しむことが出来た。
「はぁーっ美味しかったぁ」
「小さい体によくあれだけ入るね…」
「いや、千隼くんこそ。食べ過ぎー」
「いやいや、桃ちゃんの方が食べ過ぎ」
「まぁ太った時はダイエット手伝ってもらうしいいよ。俺もたっぷり手伝うから安心してね?」
「……変態」
「えー?なんか変なダイエット想像したのー?やらしいー」
「黙れ」
「あらあら、口悪くなっちゃって。さて、お腹落ち着いたら部屋についてる露天風呂に入ろうか」
バイキング会場から部屋へ戻り、窓を眺めると海は月明かりでキラキラと輝いていた。
「…夜の海も綺麗」
「そうだね。自然って本当にいいね。次はフェリーとか乗ってみたいなー」
「フェリー楽しそう。船酔いしないといいけど」
窓の近くに置かれている椅子へ腰掛け、ゆっくりと会話を楽しんだ後は初めての桃ちゃんとのお風呂タイム。
初めて二人で入ったお風呂は、綺麗な景色の中本当に最高で。俺はきっとこの日を一生忘れないだろうなと思った。
end.
おまけ
千隼「あ、栗原。凄い旅行楽しかった。ありがとう。何で旅行好きじゃないの?」
栗原「(あいつ……俺を旅行嫌いにしやがったな……。けど千隼はそれ知ったら気にするだろうし、本当のことは言わない方がいいのか……けど今後旅行誘ってもらえなくなるのは辛い。くっっそ桃瀬…!)」
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