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訓練シリーズ
休日の柚木と桃瀬
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最後桃瀬が千隼に押し倒されるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
くすぐりのみ
攻→桃瀬
受→柚木/視点
◇ ◆
「柚木さんの匂いがして落ち着きますね」
恋人に言われたら嬉しい台詞上位に食い込むであろう言葉をかけてきたのは、Daisyの一員・桃瀬だった。
相変わらずアポなしで千隼に会いに来たのだが、渚達と出かけているので戻るまで俺の部屋で待ってると言い出したのだ。
「…それはどうも。ていうか、来る時は事前に千隼へ伝えててもらえると助かるんですけど」
「すみません~。いつも任務の帰りに寄ることが多いんですよー。約束してて来れなくなったら千隼くんに申し訳ないので、ついつい連絡入れそびれちゃうんですよね。必ずIrisには誰か居ますし、こうやってお話し出来るからまぁいいかと思って」
「塞原上司しか居なかったらどうするんですか」
「あー…その時は速攻で帰ります。それより、俺年下なので敬語じゃなくていいですよ~」
「…分かった。これ、良かったらどうぞ。たくさん買ってきたので」
桜花先輩のためにと、塞原上司がたくさん購入してきた豆大福を茶菓子として出すと、桃瀬は嬉しそうにしながら口へ運んだ。
「ん~…美味しいです。ありがとうございます~。大福久しぶりに食べました」
小さな口で嬉しそうに一生懸命食べてる姿は可愛らしくて、いつものドSの性格を忘れてしまいそうになる。
「ご馳走様でした。美味しかったです」
「良かった。たくさんあって困ってたから。千隼が戻るまでゆっくりしてて」
「ありがとうございまーす。せっかくのお休み邪魔しちゃってすみません。俺はスマホゲームで遊んでるので、柚木さんは好きなことして下さいね」
桃瀬はそう言うと、気を遣ってくれたのか本当にスマホを操作し始めた。
(じゃあ俺も読書の続きしようかな)
桜花先輩から借りた小説を手に取り、読書を再開させた。その間桃瀬はスマホを操作しながらお茶を飲んだりとまったりとくつろいでいる。
読書を始めて数分が経った頃、視界にうつる桃瀬がこちらへ近づいたのが見えた。
「それ、何読んでるんですか?」
「これはミステリー系の小説。桃瀬さんは本読むの?」
「組織に居るとゆっくりする時間があまりないので…って言ったら言い訳になっちゃいますが、あんまり読まないんですよね」
「あぁ。Daisyは小さな子が多いし、桃瀬さんは特に懐かれてるもんね」
「みんなと外で遊ぶことが多くて。また今度遊びにくるので、その時俺にもおすすめの本読ませて下さい」
「いいよ」
その言葉を最後に、桃瀬は再び静かになった。──と思ったのだが。
「柚木さんって細いですよね」
暫く沈黙の後、むにっと脇腹に刺激が走った。
「っ、」
軽く揉まれるだけでビクンと反応を示してしまうと、桃瀬はニヤリといつもの小生意気な表情を浮かべた。
「Irisはやっぱりもっと訓練が必要だと思うんですけど」
「いや…っ十分、だから。桃瀬さんだって、もっと必要なんじゃない?塞原上司がぜひ桃瀬さんと訓練したいって言ってたよ」
「げぇ…まじですか。どうしよう」
「まぁ…栗原さんが強く拒否してたので大丈夫だと思うけど、あんまり…調子に乗ってたら実施されるよ」
「栗原さんが断ってくれてたら平気です。それより今は自分の心配した方がいいですよ」
ドサリと床に押し倒してきては、何故か笑顔で指をわきわきと動かしてきた。
「…っ、ゲームに飽きたからって突っかかってくんなよ」
「えへへ。だって暇になったんですもん。遊んで下さい」
桃瀬の指が服の中へ侵入し、脇腹を優しくくすぐり出した。
「……っ」
読みかけの小説にしおりを挟み、服の中で動く手を掴んでみるも、変わらず指はさわさわと動き続けた。
「柚木さん肌綺麗ですね。すごいすべすべです」
「…っ、ん、ぅ……っ」
お前も同じような体してんだろと言い返したくても、口を開くと笑いが漏れる。必死に声が出ないように我慢しながら暴れてみても、馬乗りになった状態の桃瀬の体はびくともしない。
俺を見下ろす桃瀬の背景は、見慣れた自室の天井だからもあって緊張感が緩んでいるのか、ただ少しくすぐられただけできつい。
「ふふ。可愛い。手掴んできてますけど、全然効果ないですよ」
徐々に黒い笑みに変わってきている桃瀬に焦りを覚え、全力で暴れると桃瀬はバランスを崩した。
「うわっ、暴れないで下さい」
「もう千隼が帰ってくるよ。こんな所見られたら困るのは桃瀬さんでしょ」
バランスを崩した隙に桃瀬の下から抜け出して扉に向かって逃げようと背を向けた。
「逃げちゃだめです。千隼くんが帰ってくる前に終わらせるので、暇つぶしさせて下さい」
「俺で暇を潰すな…っ!」
背を向けて逃げようとすると、再び押し倒された。今度はうつ伏せ状態の時に俺の尻に腰掛けた桃瀬は、背後から脇腹をこちょこちょと激しくくすぐってきた。
「ふっ、はは!?ちょ…!退いてっ、んん、あははは!」
「後ろからくすぐられる方がくすぐったいって聞いたんですけど、どっちがくすぐったいですか?」
服の上から脇腹をくすぐられると、声が我慢出来なくて床に顔を伏せた。
「ねぇねぇ、柚木さーん。どっちがくすぐったいか言ってくれないとやめませんよー?」
脇腹から背中に指が移動すると、ビクッと激しく体が跳ねた。
「ひっ、あははははははは!!」
「あれー背中の方がくすぐったいんですか?声我慢出来なくて残念ですね~あはは」
楽しそうに笑う桃瀬の指は、背中全体をくすぐり出した。
「おい…っ、退け…!あっ、ははははっ!!ひゃはは!」
先程と同じように暴れてみても、今度はしっかりと体重をかけてきているので大した動きが出来ない。
背中や首筋、脇腹や脇の下等ランダムにくすぐられると笑い声が止まらなくなった。
「やははははははは!!も…!だめっ、だって…!ひゃははは!あははっっ」
時間的にそろそろ千隼が帰ってくる。こんな姿を見られたら千隼になんて思われるだろう。
俺の心配を気にもしていない桃瀬は、ただおもちゃを見つけた子供のように嬉しそうに俺をくすぐってくる。
「っくす、ぐったい!やめて…!ひゃははは!あはっ、やははは!」
ジタバタと足を動かしても、体を捩っても、桃瀬はしっかりを俺の体を固定しながら反応のいい場所ばかりをくすぐってきた。
(やばい…!)
手を掴もうとしても、上手く掴めないし、ガードしようとしても躱わされる。
ひたすら笑い転げていると、コンコンと控えめなノックが聞こえた。
「…あの、柚木先輩…?」
その声は千隼で、俺と桃瀬は顔を見合わせた。
「あ、千隼くん。今柚木さんとお話ししてたんだ」
千隼の声を聞いた瞬間、桃瀬は純粋な笑顔を浮かべて俺の上から退くと、すぐに扉を開けた。
「…」
床に倒れ込んだ俺を見つけては眉を下げてなんとも言えない表情をする千隼と目を合わせることが出来ず、反射的に逸らしてしまった。
「…何してたの?」
「んー?………えっとねぇ、ちょっと柚木さんのことくすぐってた。やっぱりIrisは面白い反応してくれるから」
最初こそは隠そうとしたようだが、俺が床に倒れて赤い顔をしていたことから誤魔化すことが出来ないと思ったのか、桃瀬は素直にそう言った。
「…へぇ」
明らかに不機嫌な千隼の声。顔を見ていなくても怒りが伝わってきて、とても居心地が悪い。
(やばい。千隼は一体誰に怒ってるんだろう…)
無様に押し倒された俺に対してか、誰これ構わずくすぐる桃瀬か。こんなことで千隼に嫌われたくないなと思っていると、ドスンと激しい音が聞こえた。
「…っ、ちょ、危ない危ない千隼くん!」
その音の正体は、桃瀬が床に押し倒された音だった。咄嗟のことでもきちんと受け身をとっていたのか、ダメージは入っていないようだが。
「危ない危ないじゃないよ。お前、柚木先輩に手出してんじゃねーよ」
よく渚と話している時は男らしい口調だが、桃瀬や俺の前では少し珍しい声色に俺も桃瀬も一瞬驚いた。
「柚木先輩。ごめんなさい…桃ちゃん、前は七彩先輩にちょっかいかけてたみたいで…」
「いや、俺こそ油断しちゃって…あの、気を悪くさせたならごめんね」
「柚木先輩が謝ることは一つもないです!悪いのは誰にでもちょっかいかける桃瀬なので!」
(あ、良かった。怒りの矛先は桃瀬だけだった…)
そう感じたのも束の間、千隼は桃瀬に向き直り、さっきの俺を見下ろしていた桃瀬と同じように、桃瀬のことを見下ろしていた。
「千隼くん。降りて?ここ柚木さんのお部屋だし、千隼くんの部屋行こう」
「うん。けどその前に、柚木先輩と一緒に桃ちゃんにお仕置きするね」
「…お仕置き?残念だけど俺くすぐられても何も思わないよ?」
「試してみないと分かんないじゃん。柚木先輩、桃ちゃんの腕押さえててもらえますか?」
「……え?う、うん…分かった…」
乱れた服を直して無抵抗な桃瀬の腕を万歳させた状態で押さえつけると、桃瀬はふふっと余裕たっぷりな表情で俺たちを見上げた。
「あはは。二人がかりかぁ。まぁ、千隼くんには悪いことしちゃったし、気の済むまでしていいよ」
(いや、俺にも悪いと思えよ)
この状態でもヘラヘラしている桃瀬を少しでも懲らしめてやりたい。
「──じゃあ覚悟してね、桃ちゃん」
千隼のその言葉を合図に、俺たちの攻撃が始まった。
end.
「桃瀬にお仕置き」に続きます。
くすぐりのみ
攻→桃瀬
受→柚木/視点
◇ ◆
「柚木さんの匂いがして落ち着きますね」
恋人に言われたら嬉しい台詞上位に食い込むであろう言葉をかけてきたのは、Daisyの一員・桃瀬だった。
相変わらずアポなしで千隼に会いに来たのだが、渚達と出かけているので戻るまで俺の部屋で待ってると言い出したのだ。
「…それはどうも。ていうか、来る時は事前に千隼へ伝えててもらえると助かるんですけど」
「すみません~。いつも任務の帰りに寄ることが多いんですよー。約束してて来れなくなったら千隼くんに申し訳ないので、ついつい連絡入れそびれちゃうんですよね。必ずIrisには誰か居ますし、こうやってお話し出来るからまぁいいかと思って」
「塞原上司しか居なかったらどうするんですか」
「あー…その時は速攻で帰ります。それより、俺年下なので敬語じゃなくていいですよ~」
「…分かった。これ、良かったらどうぞ。たくさん買ってきたので」
桜花先輩のためにと、塞原上司がたくさん購入してきた豆大福を茶菓子として出すと、桃瀬は嬉しそうにしながら口へ運んだ。
「ん~…美味しいです。ありがとうございます~。大福久しぶりに食べました」
小さな口で嬉しそうに一生懸命食べてる姿は可愛らしくて、いつものドSの性格を忘れてしまいそうになる。
「ご馳走様でした。美味しかったです」
「良かった。たくさんあって困ってたから。千隼が戻るまでゆっくりしてて」
「ありがとうございまーす。せっかくのお休み邪魔しちゃってすみません。俺はスマホゲームで遊んでるので、柚木さんは好きなことして下さいね」
桃瀬はそう言うと、気を遣ってくれたのか本当にスマホを操作し始めた。
(じゃあ俺も読書の続きしようかな)
桜花先輩から借りた小説を手に取り、読書を再開させた。その間桃瀬はスマホを操作しながらお茶を飲んだりとまったりとくつろいでいる。
読書を始めて数分が経った頃、視界にうつる桃瀬がこちらへ近づいたのが見えた。
「それ、何読んでるんですか?」
「これはミステリー系の小説。桃瀬さんは本読むの?」
「組織に居るとゆっくりする時間があまりないので…って言ったら言い訳になっちゃいますが、あんまり読まないんですよね」
「あぁ。Daisyは小さな子が多いし、桃瀬さんは特に懐かれてるもんね」
「みんなと外で遊ぶことが多くて。また今度遊びにくるので、その時俺にもおすすめの本読ませて下さい」
「いいよ」
その言葉を最後に、桃瀬は再び静かになった。──と思ったのだが。
「柚木さんって細いですよね」
暫く沈黙の後、むにっと脇腹に刺激が走った。
「っ、」
軽く揉まれるだけでビクンと反応を示してしまうと、桃瀬はニヤリといつもの小生意気な表情を浮かべた。
「Irisはやっぱりもっと訓練が必要だと思うんですけど」
「いや…っ十分、だから。桃瀬さんだって、もっと必要なんじゃない?塞原上司がぜひ桃瀬さんと訓練したいって言ってたよ」
「げぇ…まじですか。どうしよう」
「まぁ…栗原さんが強く拒否してたので大丈夫だと思うけど、あんまり…調子に乗ってたら実施されるよ」
「栗原さんが断ってくれてたら平気です。それより今は自分の心配した方がいいですよ」
ドサリと床に押し倒してきては、何故か笑顔で指をわきわきと動かしてきた。
「…っ、ゲームに飽きたからって突っかかってくんなよ」
「えへへ。だって暇になったんですもん。遊んで下さい」
桃瀬の指が服の中へ侵入し、脇腹を優しくくすぐり出した。
「……っ」
読みかけの小説にしおりを挟み、服の中で動く手を掴んでみるも、変わらず指はさわさわと動き続けた。
「柚木さん肌綺麗ですね。すごいすべすべです」
「…っ、ん、ぅ……っ」
お前も同じような体してんだろと言い返したくても、口を開くと笑いが漏れる。必死に声が出ないように我慢しながら暴れてみても、馬乗りになった状態の桃瀬の体はびくともしない。
俺を見下ろす桃瀬の背景は、見慣れた自室の天井だからもあって緊張感が緩んでいるのか、ただ少しくすぐられただけできつい。
「ふふ。可愛い。手掴んできてますけど、全然効果ないですよ」
徐々に黒い笑みに変わってきている桃瀬に焦りを覚え、全力で暴れると桃瀬はバランスを崩した。
「うわっ、暴れないで下さい」
「もう千隼が帰ってくるよ。こんな所見られたら困るのは桃瀬さんでしょ」
バランスを崩した隙に桃瀬の下から抜け出して扉に向かって逃げようと背を向けた。
「逃げちゃだめです。千隼くんが帰ってくる前に終わらせるので、暇つぶしさせて下さい」
「俺で暇を潰すな…っ!」
背を向けて逃げようとすると、再び押し倒された。今度はうつ伏せ状態の時に俺の尻に腰掛けた桃瀬は、背後から脇腹をこちょこちょと激しくくすぐってきた。
「ふっ、はは!?ちょ…!退いてっ、んん、あははは!」
「後ろからくすぐられる方がくすぐったいって聞いたんですけど、どっちがくすぐったいですか?」
服の上から脇腹をくすぐられると、声が我慢出来なくて床に顔を伏せた。
「ねぇねぇ、柚木さーん。どっちがくすぐったいか言ってくれないとやめませんよー?」
脇腹から背中に指が移動すると、ビクッと激しく体が跳ねた。
「ひっ、あははははははは!!」
「あれー背中の方がくすぐったいんですか?声我慢出来なくて残念ですね~あはは」
楽しそうに笑う桃瀬の指は、背中全体をくすぐり出した。
「おい…っ、退け…!あっ、ははははっ!!ひゃはは!」
先程と同じように暴れてみても、今度はしっかりと体重をかけてきているので大した動きが出来ない。
背中や首筋、脇腹や脇の下等ランダムにくすぐられると笑い声が止まらなくなった。
「やははははははは!!も…!だめっ、だって…!ひゃははは!あははっっ」
時間的にそろそろ千隼が帰ってくる。こんな姿を見られたら千隼になんて思われるだろう。
俺の心配を気にもしていない桃瀬は、ただおもちゃを見つけた子供のように嬉しそうに俺をくすぐってくる。
「っくす、ぐったい!やめて…!ひゃははは!あはっ、やははは!」
ジタバタと足を動かしても、体を捩っても、桃瀬はしっかりを俺の体を固定しながら反応のいい場所ばかりをくすぐってきた。
(やばい…!)
手を掴もうとしても、上手く掴めないし、ガードしようとしても躱わされる。
ひたすら笑い転げていると、コンコンと控えめなノックが聞こえた。
「…あの、柚木先輩…?」
その声は千隼で、俺と桃瀬は顔を見合わせた。
「あ、千隼くん。今柚木さんとお話ししてたんだ」
千隼の声を聞いた瞬間、桃瀬は純粋な笑顔を浮かべて俺の上から退くと、すぐに扉を開けた。
「…」
床に倒れ込んだ俺を見つけては眉を下げてなんとも言えない表情をする千隼と目を合わせることが出来ず、反射的に逸らしてしまった。
「…何してたの?」
「んー?………えっとねぇ、ちょっと柚木さんのことくすぐってた。やっぱりIrisは面白い反応してくれるから」
最初こそは隠そうとしたようだが、俺が床に倒れて赤い顔をしていたことから誤魔化すことが出来ないと思ったのか、桃瀬は素直にそう言った。
「…へぇ」
明らかに不機嫌な千隼の声。顔を見ていなくても怒りが伝わってきて、とても居心地が悪い。
(やばい。千隼は一体誰に怒ってるんだろう…)
無様に押し倒された俺に対してか、誰これ構わずくすぐる桃瀬か。こんなことで千隼に嫌われたくないなと思っていると、ドスンと激しい音が聞こえた。
「…っ、ちょ、危ない危ない千隼くん!」
その音の正体は、桃瀬が床に押し倒された音だった。咄嗟のことでもきちんと受け身をとっていたのか、ダメージは入っていないようだが。
「危ない危ないじゃないよ。お前、柚木先輩に手出してんじゃねーよ」
よく渚と話している時は男らしい口調だが、桃瀬や俺の前では少し珍しい声色に俺も桃瀬も一瞬驚いた。
「柚木先輩。ごめんなさい…桃ちゃん、前は七彩先輩にちょっかいかけてたみたいで…」
「いや、俺こそ油断しちゃって…あの、気を悪くさせたならごめんね」
「柚木先輩が謝ることは一つもないです!悪いのは誰にでもちょっかいかける桃瀬なので!」
(あ、良かった。怒りの矛先は桃瀬だけだった…)
そう感じたのも束の間、千隼は桃瀬に向き直り、さっきの俺を見下ろしていた桃瀬と同じように、桃瀬のことを見下ろしていた。
「千隼くん。降りて?ここ柚木さんのお部屋だし、千隼くんの部屋行こう」
「うん。けどその前に、柚木先輩と一緒に桃ちゃんにお仕置きするね」
「…お仕置き?残念だけど俺くすぐられても何も思わないよ?」
「試してみないと分かんないじゃん。柚木先輩、桃ちゃんの腕押さえててもらえますか?」
「……え?う、うん…分かった…」
乱れた服を直して無抵抗な桃瀬の腕を万歳させた状態で押さえつけると、桃瀬はふふっと余裕たっぷりな表情で俺たちを見上げた。
「あはは。二人がかりかぁ。まぁ、千隼くんには悪いことしちゃったし、気の済むまでしていいよ」
(いや、俺にも悪いと思えよ)
この状態でもヘラヘラしている桃瀬を少しでも懲らしめてやりたい。
「──じゃあ覚悟してね、桃ちゃん」
千隼のその言葉を合図に、俺たちの攻撃が始まった。
end.
「桃瀬にお仕置き」に続きます。
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