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魔法競技会

様々な問題

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 道中では様々なことが起きた。
 魔獣が襲ってきたことは当然だが、野営の時にペリナの愚痴を聞かされる羽目になったのだ。
 対応したのはアルであり、その間は他の面々が警戒と称してさっさと離れていった。

「それでね! アミルダ先輩はまるでバカンスに行くみたいな恰好で王都へ向かったのよ!」
「あぁ、そうですか」
「酷いと思わない! 私だって王都でゆっくりしたいのに! 彼氏を探したいのにー!」
「か、彼氏、ですか」
「そうよ! もういい年なんだし……私だって……私だって~!」
「……もう、解放してくれぇ」

 体を震わせながら泣き出してしまったペリナを見て、アルは溜息をつきながら下を向くのだった。

 ※※※※

 ユージュラッドとカーザリアのちょうど中間に馬車が差し掛かった時、問題が起きた。
 山岳部を向けるルートを進んでいたのだが、がけ崩れが起きて道を塞いでいたのだ。

「あー、少し前に大雨が降っていたからね。その影響かもしれないなー」

 頭を掻きながらそんなことを呟いたペリナだったが、その様子からは焦りなど感じられない。

「どうするんですか、スプラウスト先生?」
「迂回するしかないのでは?」

 アルとリリーナがそんなことを口にしたが、ペリナは口笛を吹きながら瓦礫の前に移動すると、おもむろに地面へ両手を置く。
 すると、ペリナの体内から魔力が放出されて瓦礫がひとりでに移動を開始した。

「……ペリナ先生って凄いのね」
「……今年から赴任したって聞いてたけど、さすがは学園長先生が推薦しただけはあるねー」

 フレイアとラーミアが感心したようにペリナの魔法を見つめている。
 瓦礫を動かすだけなら土属性に適性が可能だが、複数の大きな瓦礫を同時に動かすとなれば話は変わってくる。
 大量の魔力を消費するだけではなく、魔力操作にも長けてなければできない芸当だ。

「これを見ると、貴族派の教師が出来損ないだってことは明白ね」
「全く、その通りだねー」

 シエラとジャミールからはペリナを認める声と同時に、他の教師陣を貶す言葉が飛び出した。

「こらこら、あまり他の人のことを悪く言うもんじゃないわよー。でもまあ、私も同意見ではあるけどねー」

 瓦礫の排除が完了したペリナは、とても涼しい顔で戻って来ながらそう口にした。

「さーて、それじゃあ向かいましょうか!」
「……いえ、スプラウスト先生。今の足止めで囲まれたようです」

 アルの言葉に、全員が即座に臨戦態勢を取る。
 すると、崖の上からブラックウルフとホワイトウルフの群れ。さらに一際大きな個体がそれぞれ一匹ずつ現れた。

「あれが、両方の群れのボスみたいだな」
「も、もしかして、先ほどの瓦礫も魔獣が?」
「いや、あれは偶然じゃないかな。ただ、瓦礫を利用するだけの知識は持っていると思っていいだろう」
「その分、手ごわい相手だってことよね?」

 口にしながら前に出たのは、シエラだ。
 そして、その横には笑みを浮かべたジャミールが並んでいる。

「ボスは、僕とシエラちゃんで倒すよ」
「だから、アルたちには他の魔獣をお願いするわ」
「いいのか?」

 ダンジョンと野生の魔獣では動きが変わる。そのことをシエラもジャミールもスタンピードの時に経験しているだろう。
 それを知ってもなお、二人にはボスを倒せるという自信があるということだ。

「もちろんよ」
「というか、こっちの方が楽でいいからね」
「分かりました。では、お願いします」

 シエラの道をアルが、ジャミールの道をフレイアが切り開く。
 ペリナとラーミアは馬車の護衛。
 リリーナは護衛をしながら、危ないと思ったところへの援護を行う遊撃。

『『ウオオオオオオオオンッ!!』』
「いくぞっ!」

 群れのボスの咆哮と、アルの号令が重なった。
 一斉に動き出す魔獣を見たリリーナが初撃を放つ。
 範囲を絞ったツリースパイラルが、群れの動きを阻害し、さらに締め付けていく。
 そこへアルとフレイアが魔法を放ち生き残った魔獣を殲滅する。

「ナイスね、リリーナ!」
「それじゃあ、僕たちも行くよ!」

 道が開いた瞬間、シエラとジャミールが左右に分かれて駆け出した。
 一直線に走り抜けた先にいるのは、ブラックウルフとホワイトウルフのボス。
 それぞれが地面を踏み砕きながら加速する。
 視線が交わり、鋭い牙が口から覗き、爪が振り抜かれた。

「──遅いわ」
「──斬り捨てごめん」
『『──!?!?』』

 他の個体よりも明らかに速く、力強い攻撃。それ以上に威圧を放っていたボスだったが、シエラもジャミールも全く意に介さず鋭い剣筋を見せる。
 シエラのナイフが無数の斬撃を見舞い、ブラックウルフの四肢が吹き飛び、同時に首がずるりと落ちる。
 ジャミールの剣型魔法装具グラムが横薙ぎされると、ホワイトウルフを一撃で上下に断ち切った。

「雑魚ね」
「やっぱり、こっちの方が楽だったね」

 普段と変わらない声音でそう口にした二人。

「私たちは何もやることがありませんでしたね」
「まあ、楽ができるのはいいことよー」

 そして、馬車の護衛をしていたラーミアとペリナはあくびを堪えながら呟いていた。
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