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魔法競技会

軽い祝勝会

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 ユージュラッド魔法学園が貸し切っている宿屋では、アルの個人部門優勝を祝しての軽い祝勝会が行われていた。
 何故軽いのかというと、当然ながらパーティ部門が残っているからだ。
 一日の休みを挟んだ後にパーティ部門が開始されるので多少羽目を外しても問題はない。だが、こうでもしなければ問題を起こす者が一人紛れていたのだ。

「いやー! スカッとしたわね! そうでしょ、ペリナ!」
「確かにそうですけど……程々にしておいてくださいね、アミルダ先輩」
「だから学園長だって……まあ、今日くらいは許してあげるわ! だって、気持ちがいいからね!」
「……はぁ」

 そう、その人物とは学園長のアミルダだった。
 一度タガが外れてしまうと人前に出せなくなるほどに酔ってしまう彼女は、ペリナの監視の下で軽い祝勝会に参加している。
 ただし、この軽い・・祝勝会ですら上機嫌に大声をあげているのだから、制限のないところで飲ませるとどうなることやら。

「……ヴォ、ヴォレスト先生のことは、スプラウスト先生に任せておこうか」

 遠くからその光景を眺めていたアルたちだが、この場には貴族派の生徒や教師はいない。大人はアミルダとペリナの二人だけ。
 彼らはどんちゃん騒ぎをしている宿屋の二階の部屋に引きこもっていた。

「それにしても、アルは本当に強いわよねー」
「優勝すると思っていましたが、最後の方は興奮してしまいました!」
「アルならこれくらい余裕よね」
「パーティ部門も、アル君がいてくれたら楽になりそうだな~」

 クルル、リリーナ、シエラ、ジャミールの順番で感想を口にする。
 ちなみに、ジャミール以外の先輩たちは別の席で語り合っている。
 主役のアルを差し置いて、というわけではない。すでに称え合っての自由時間というやつだ。

「ジャミール先輩には、パーティ部門でキリキリ働いてもらいますよ」
「え、えぇぇ~? それはちょっと、嫌かも」
「でも、ジャミール先輩でも、シエラでも優勝はできたんじゃないの? 二人とも、アルに次いで強いし」
「そうですね。二人とも剣術も用いますし、接近できれば勝機はありそうですから、個人部門の代表になれなかったのはもったいなかったですね」
「それはどうかしら」

 クルルとリリーナがそう口にすると、意外にも謙虚な答えが返ってきた。

「自信ないの、シエラ?」
「私では闇魔法への対策ができていなかったでしょうし、状態異常に陥ってからすぐにやられていたかもしれないわ」
「それは僕も同じかな~。闇属性が心の属性だけど、レベルは4だからレベル5には負けちゃうよ」
「でも、対抗はできますよね?」
「それはそうなんだけど……魔法装具を二本使ってただろう? あれで重複の状態異常を掛けられたら、レベル4とはいえ即効性の高い状態異常になってたと思うよ」

 当たり前のようにそう口にしたジャミールだったが、その視線はすぐにアルへと向かう。

「だからさ、一つ気になったんだよね~」
「……俺ですか?」
「そうそう。レベル4の闇属性を持っている僕でさえ、即効性の高い状態異常になっていたはずなのに、どうしてレベル1しかないアル君が耐えられたのかなって思ってさ~」

 闇属性に詳しい者であれば当然の疑問かもしれない。
 アミルダは別としても、ジャミールは試合の展開に非常に興味を抱いていた。

「……これは内緒だったんだが、スプラウスト先生から闇属性の特別授業を受けていたんです」
「それは……うん、内緒の話だね~」
「そうなのですか、ジャミール様?」
「犯罪者の多くが、闇属性を悪用していることが多いからね。普通、学園では闇属性の授業をやらない。やるにしても、一人の教師だけではなくて学園長の許可も必要になってくるんだよ」
「学園長だったら、簡単に許可を出しそうだけどねー」
「うん、それもあり得る話だね~。……でも、それだけでレベル5の闇属性へ対抗はできないはずだよ?」
「その通りです。なので、俺はこれを使いました。もう、ボロボロになってしまいましたけど」

 そう口にしてテーブルに置いたのは、砕けてしまった闇属性耐性が施された指輪だった。

「これ、闇属性を教えてもらった時にスプラウスト先生から頂いたんですよ」
「確かに闇属性への耐性は施されているけど……そこまで強力なものではないよ?」
「はい。なので、これに俺の魔力を上乗せして耐え抜き、その後に魔力で体を覆い尽くして対策を行ったんです」
「それを戦闘中のあの状況でやってしまうんだから、やっぱりアルは戦闘狂ね」
「それは僕も思うかな~。それだけできたらもう鬼畜だよ、鬼畜!」
「酷い言いようだな、おい!」
「全く、これで明後日からのパーティ部門は大丈夫なのかしら」
「大丈夫ですよ、クルル様。皆様がいますから」

 その後、大人組以外がもう一度集まって親睦を深めながら、軽い祝勝会は終わりを迎えたのだった。
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