667 / 902
十三皿目 ラブリーキングに清き一票
18
しおりを挟む──半時後。
コンパクトに折りたたまれてはいるが、即バトルの引き金となった三対の純白の翼。
窓から降り注ぐ太陽光を受け、キラキラと輝く白銀の髪に、青空のように澄んだ瞳が良く似合う。
翼の為か、ゆったりとした上質な白の衣服に長身の身を包み、当然のような顔をして席に着く男。
黙っていれば温和な面立ちのおじ様である天王は、現在──俺の対面で勝手に麦茶を嗜んでいた。
視線で殺せそうなくらい自分を睨む俺とリューオなんて、気にもしていない。
むしろ大歓迎ムードだ。
リラックスしすぎである。
「──つまり天王は、アゼルが天界を半壊滅状態にしたから、停戦なんて生易しいものではなく、無条件降伏で実質絶対服従の契約を結ばれたと? 会合はなくなり、天王自らが天界を離れて報告に参じなければいけない程、完膚なきまでに負けたと?」
殺伐とした空気でどうしてここにいるのかを語られ、まとめると、天王はニコリと微笑んだ。
「そうだとも。しかし妃よ。グウェンちゃんと呼んでほしいと言ったじゃないか」
「俺はまだ、グウェンちゃんがアゼルを苦しめたことを、これっぽっちも許していないからな? 直接的に手を下したり、そもそもの内容を考えたのがメンリヴァーでも、言いだしっぺのクソ野郎はグウェンちゃんだろう」
魔界メンバーのような顔をして混ざってきたグウェンちゃんに睨みを利かせ、拒絶する。
あんなことがあったんだ。
流石の俺でも許せないぞ。
例え、知らない間にアゼルが不利な筈の天界に単身追い打ちをかけ、向かってくる城の兵士を塵にし、絶対服従を誓わせていても、許さない。
例え、その時に反発した天使はその瞬間少しずつ圧縮して殺し、見せしめにしたのだと、笑って教えられても、許さない。
例え、ライゼンさんが笑顔で〝服従なら平穏を。逆らえば生き地獄を〟な、死なないギリギリかつ、死に物狂いの反発や密かに力を蓄えての謀反もできない、エゲツない条件の条約を呑ませていたとしても、許さない。
例え、そんな肉体的、精神的の両方から物理的に誰も逆らえないモンスターにプレッシャーを容赦なくかけられても、許さない。
そう。
魔界の怒らせてはいけないツートップから、可哀想なくらいフルボッコにされていても──許してはいけないのである。
……うん。列挙するとこちら側が恐怖の侵略者でしかないのだが、それは結果論だ。
初めに手を出したのは天界だぞ。
とはいえ、かなり相手が悲惨ではある。
その……まぁ、俺はもう手を出されない限り、剣を振るうのはやめておこうか……。
アゼルを傷つけたことは絶対に許さないが、制裁は加えないでおこう。
弱体化する魔界に出向いてきたグウェンちゃんをダブル勇者で仕留めたら、夢に出そうだ。
よくよく考えて良心の呵責に苛まれた俺は、身体強化は解かないが剣をしまい、リューオに目配せした。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
2,585
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる