一之瀬くんは人気者になりたい【R18版】

オヲノリ

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27.プールはハプニングだらけ

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 プールサイドで一之瀬を含め普通科の生徒全員が学校指定の水着姿で前に立っている先生の話を聞いている。
 只今の体育の授業はプールだ。我が高校の私立彩色学園は屋内温水プールが完備されて主に体育の授業や放課後に水泳部の部活で使用している。
 体育の授業は隣のクラスのA-2組との合同でするのが基本だ。体育は普段は男女で分かれるが、プールの授業は男女一緒で行う。

 ふぁぁ……。

佐山さやまの話なげーな。早く終わんねぇかな)

 プールサイドに二つのクラス全員集合して体育の先生男女二人が今日の授業などの話をしていた。が、男の先生である佐山が無駄に話が長い。話が飽きたのか余所見している奴や隣同士で話し始めた奴がいて時折欠伸をしている一之瀬も釣られて余所見をし始める。釘付けになったのは勿論、真剣に話を聞いていた間宮さんのスクール水着姿である。

(間宮さんのスク水最高じゃねーの。あのデカ過ぎないこの手にフィットする丁度いい大きさの胸と細すぎないくびれが尚いいっ)

 間宮さんの水着をまじまじと目にする。実にバランスがいい好みの身体つきでやらしい想像が脳内で浮かび上がる。駄目だ。身体を見過ぎたら、間宮さんに変態だと思われちまう。そう思っていると、隣から耳元で小さく声をかけられた。

「一之瀬は今どこ見てるのかな? 授業中なのに随分と楽しそうにしているね」
「い、いや……それは……」

 声の方に向くと春風がいつもの十倍増しに冷ややかな目をしている。後ろめたい気持ちがあって一之瀬は歯切れの悪い喋りになってしまった。春風に間宮さんの身体をじろじろ見てた事に気付かれたのかと動揺した。

「ごめんね、僕に胸がなくて。胸があれば一之瀬を喜ばせる事が出来たのにね」
「そこまでしなくていいって……」

 ていうかお前に胸あったらヤバいだろと心の中で突っ込んだ。それに胸があったら何をする気なんだと。
 しかし春風の身体はいつ見てもがっちりしていていい身体してる。胸の幅が広くて実に男らしい。比べて一之瀬は筋肉があまり付いてなくてお腹が少し出ててだらしない。その違いに男として悔しくて泣けてくる。

 一之瀬の様子に何を思ったのか春風は変な事を聞いてきた。

「触りたい? あ、でも毎週色々と身体を触り合ってるからいいのかな」
「おま……声がっ」
「一之瀬は痛がってる方がきっと気持ちいいよね。今度、一緒に実践しようか」
「お、おい。それやめろって」

 普通の声量での春風の声を制止させようとしたが、既に遅かったようだ。
 冷や汗をかいて周りを見たら、春風の隙を与えない微妙な発言でその瞬間に周りにいる奴らに強烈な視線を向けられる。
 主に隣りのクラスの奴らだ。マジなのか、あいつらはと思われてるかも知れない。同じクラスの奴らはあいつらだったら有り得るとか思ってるのか動じずに無反応だった。それはそれで困ると一之瀬は思った。

「優と何話してんだ? 俺も一之瀬の話聞きてぇな」
「花岡か。あんまくっつくなよ……」

 花岡に突然引き寄せるように肩を組まれる。花岡からは体温を感じたが、男同士で硬めの素肌をくっつかれても面白くも何ともない。
 花岡も余計な筋肉がついてなくて程良く筋肉が付いていい身体してるなとのんきに考えてた。

 春風は花岡に何かを耳打ちした。さっきの話を言ったのか。

「俺は一之瀬の身体にもっと触りたい。毎週だけ触り合うのは何か物足んねぇんだよな」
「お前まで何言ってんだよっ」
「僕も大佑もいつでも触れ合いたいんだ。でも一之瀬が許してくれないんだよね」
「おおいっ!」

 花岡と春風の言葉を聞いてさらに周りの視線がさらに鋭くなってひそひそ話が始まった。色々と誤解されてるんじゃないか……。だが、毎週のとある日にアレコレしてるから間違ってない解釈とごちゃごちゃと頭が大混乱して内心焦っている。

「あー、あれだよなぁ。お前らは毎週マッサージし合ってるんだよな? 仲良いのも大概にしろよー」

「そ……そう。俺って毎回肩と腰が凝ってるんだよな。やっぱ人にやって貰った方が断然にいいっ」

 間に入って霧谷がフォローしてくれたようだ。追加で一之瀬も流れに乗って誤魔化した。霧谷達の声に周りはあー、何だそういう事かと言ってるかのように興味が失せてこちらを見なくなった。

「俺らマッサージなんかして……むぐっ」

 お前は余計な事は言うなと毎度だが、花岡の口を手で塞ぐ。

「仲は良いのは事実だからな。一之瀬はどう思ってるかわからないけどね」

 一之瀬を見て春風は疑うような目をしていた。それ以上誤解を招く内容は喋るなという意味を込めて一之瀬は見つめ返す。

「春風もあんまいっちーに意地悪すんなよ。花岡は……もっと空気読めよ、もう」

 呆れた顔をした霧谷が一之瀬達だけに聞こえるような小声で注意した。春風は微笑んで視線を外さずに「そうかな?」とわざとらしく返す。花岡はよくわかってないような顔をして「そんな事ねぇよ」と否定する。無自覚って罪だよなと呆れながらに思う。
 話すのに夢中の佐山が声を一旦止めてこちらに視線を向ける。

「おーい。そこ、喋ってないで静かにしろっ! 先生の話を真面目に聞け。今日はな、特別に話は短くするから飽きずに最後まで聞くんだぞ」 
「すんませんっ」
「佐山先生、すみません」
……

 佐山に注意されて一之瀬、春風、花岡、霧谷は同時に一言謝ったが、佐山の今日の話は短いぞ詐欺はもう聞き飽きた。長いからみんな聞いてないんだと声を出して訴えたい。きっとみんなも同じ事を思ってる筈だ。

 そして先生達の長い話がやっと終わりプールサイドの端に並んで各々水泳を開始した。
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