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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

095★寝る前に、もうひと作業ありました

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 リビングに入った和輝は、思わず言ってしまう。

 「桜ぁ…眠いんじゃ
  なかったのかぁ?」

 ソファーでふて腐れたようにして〈レイ〉を抱えている桜を見付け、脱力する。
 〈サラ〉は反対側から桜に寄りかかっていた。

 「遅いっ
  桜は待っていたのにぃ」

 その発言から、どうやら自分を待っていたらしい桜に、和輝は素直に謝る。

 「ああ、悪かった
  洗濯のセットをしていたんだ

  汗かいたモンで、時間が経つと
  臭くなるんでな
  お前のも一緒に入れてきたぞ
  別に、良いよな」

 和輝の確認に、そういうコトは無頓着な桜は頷く。

 「別にかまわないわ
  それより早く寝よう」

 誤解を招きかねないコトを平気で口にする桜に、和輝は言い返す気力が尽きて、頷く。

 「そうだな、んじゃあ
  さっさと寝室に行って
  身体を伸ばそうか

  横になって休むのが
  疲れた身体には1番
  休養になって良いからな」

 そう言った和輝に、桜は両手を伸ばす。
 どうやら、言外に待っていたんだから、抱っこしてくれと言っているらしいコトを見て取り、和輝は素直に桜を抱き上げた。

 「和輝、桜は《気》が欲しい
  まだ身体が気怠(けだる)い

  いったい、桜の身体はどう
  なってしまったのだろう?

  今まで、こんなに《気》が
  足りない、足りないって
  状態になったコトないのに

  やっぱり、怪我をしたセイ
  なのだろうか?」

 腕の中で項垂れる桜に、和輝は優しい声で答える。

 「それは当然だろう
  細胞再生に、生体エネルギーを
  使いまくったんだから

  桜の身体が本来保有している
  生命エネルギーは使い切って
  ほとんど枯渇しているんだろうさ

  たぶん、俺が《光珠》で足してる
  《気》で、生命活動に足りない
  分を補っている状態なんだろうさ

  ソレを使っちまうと、動くのに
  必要なポテンシャルが保てなくて
  機能低下するんだよ

  ベッドに行ったら、また丹田で
  練り上げた《気》を分けてやるから
  ちょっと待っていろ

  あまりやりたくはないけど、どうせ
  あとはもう寝るだけだからな
  限界まで《気》を集約して
  《光珠》を練り上げてやるよ

  〈レイ〉〈サラ〉…カモンッ……」

 そう言う和輝に縋りつき、桜は頷く。

 「うん……なんか…意識が
  クラクラするから………
  ベッドいったら欲しい」

 和輝は桜を腕に、スタスタとリビングから見て右側の桜の部屋へと入り奥の寝室へと入った。
 勿論、呼ばれた2頭は、尻尾を嬉しそうに振りながら、一緒に寝室へと入った。

 寝室の室内にある椅子に桜を降ろし、和輝はベッドを確認する。

 「桜、新しいシーツあるか?
  なんとなく湿っぽい気がする」

 和輝の言葉に、桜は部屋の方を指差して言う。

 「確か洋服ダンスの隣りの
  タンスに入っていたと思う

  どうせなら、ピンク色の
  子犬模様のヤツを敷いて
  欲しいの

  ソレが、桜のお気に入りなの」

 「オッケー」

 和輝は頷いて、部屋へと戻り、桜が好みそうな愛らしい模様のシーツを手に戻って来た。

 「これか、桜?」

 「うん、ソレ」

 確認した和輝は、ベッドのシーツを剥がし、新しい、今持って来たシーツを敷きなおした。
 そして、椅子に座らせた桜をベッドへと移した。













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