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004★召喚した神官の呟き
しおりを挟む魔王の復活が近づいている為に、日々瘴気や魔物は増えるし、作物の実なりも悪くなっている。
魔素は動植物や大地に必要不可欠なものだが、瘴気は動植物や大地を蝕むものだ。
それが、日々増えているなら、動植物も大地も病んでしまう。
勿論、人間達も弱って、病気や怪我になりやすくなるし、病気や怪我は治りにくくなる。
結果、弱い者(老人や子供)は、死にやすくなる。
人口が減れば、村や町が維持できる限界を超えて消えていき、結果として国力は落ちていき、いずれは国が滅びる。
天候だって、晴れなければならない時期に雨が降り、水が必要な時に照るというコトが多くなってきている。
今は、例年より収穫高が少ないけど、不作じゃないという状態が続いている。
それでも、十数年前は有った豊作といえる収穫高は無くなった。
このままでは、不作になり凶作に……。
そして、魔王が出現していた頃と同じように、飢餓に陥る年がやってくるだろう。
せめて、瘴気を浄化できる聖女がいたなら……。
この大陸に存在する国々で、聖女の才能を持つ娘を探したが……。
そんなものは存在していなかった。
聖女とは、我等の住む世界より上の階層にある……。
神々に近い人々が、存在する世界の中に居る者らしい。
清く正しく優しく力のある娘のコト。
聖女とは、この世界の娘を、指す言葉ではない。
また、勇者とは、我等の中から生まれる存在ではない。
勇者もまた、異世界の高い階層に居るものなのだ。
だから、いくら探してもこの世界では見つからない。
この世界は、何度も生まれる魔王の為に、脆く儚い。
その為に、この世界を作った神の力も、おろすことが出来ないのだ。
だから、この世界を創造した神々は、世界を救う勇者と聖女をおろす召喚魔法を創造した。
それを、人々に与えた。
人間達の力で、この世界を守るようにと……。
それ以降、人間達は、魔王が復活するときに合わせて、勇者と聖女を召喚するようになった……と、代々の神官達は綴った。
それは歴史となった。
神官学校に入学した者は、全員このコトを習った。
勿論、私も習った。
まさか、その召喚魔法を、実際に使うコトになるとは思っていなかったが……。
それでも、世界を救う為に、力を使った。
その結果、勇者と聖女がここに居るはずだった。
が、そこには……。
2組の勇者と聖女が居た。
どちらの勇者と聖女が正しいものなのか?
違いは、聖女の数と美しさだった。
だが、美しいからと言って正しいとは限らない。
魔物でも、吸血鬼や淫魔などは、とても美しいから……。
どちらも、魔物と違って瘴気を纏ってはいない。
綺麗に隠しているだけかも知れないが……。
どちらも、魔力と神力を感じる。
数が少ない方が、魔力も神力に溢れているように感じた。
だが、今は、魔力や神力が少なくても、修行をすれば桁違いに増える可能性は否定できない。
もしかしたら、どちらも、勇者と聖女なのかも知れないし、どちらかが偽者なのかもしれないし、どちらも偽者かもしれない。
疑っても、信じても、イイとしたら……。
私には、判断する勇気も自信も無い。
この難しい判断は、この国を支配している王族にゆだねよう。
神官は、世俗の政治に参加してはいけないのだから……。
★★★★★★
なまじ魔力と神力を感じ取れる神官達なので……。
アリア達とアルス達率いる美少女達の大きな違い(アリアの容姿)を判断材料にいれませんでした。
だから、何の発言もしないで黙っていたんです。
アリアにとって、神官達は、味方でも敵でもありません。
とりあえず、中立という立場の人達です。
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