全力でBのLしたい攻め達 と ノンケすぎる悪役令息受け

せりもも

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1 悪役令息

7.泣き喚く泥の塊

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「来たか、サハル。でかしたぞ」
宮殿では、病気のはずの兄帝ダレイオが上機嫌だった。
「結婚式を取り止めたそうではないか。さすがわが弟! よくやった」
意味不明なことを口走っている。

俺は肩で息を切らせた。
ここまで全速力でやってきたのだ。息も切れようというものだ。

緑色の肌を持つ王位継承者は、白魔法の使い手だ。対して白い肌の俺は、土属性で、土魔法を使役する。
エメドラードは山岳国家だ。式場となった山からここまで、俺はトンネルを掘るように周囲の山の山腹をくりぬいて、宮殿まで帰って来た。それしか、ジョルジュ王子を撒く方法はなかったのだ。インゲレ国の王子だけあって、彼の馬は、素晴らしい駿馬だった。だが、今頃は、起伏の多いエメドラードの山道で息を切らせていることだろう。

「エルナは?」
肩でぜいぜいと息を切らせ、尋ねる。

ジョルジュ王子の出現で、驚いたエルナは結婚式の途中で姿を消してしまった。彼女の行く先は、ここしかない。辺境に実家のあるエルナには、王妃であるタビサしか、頼れる人はいないのだ。

「さあ?」
ダレイオが首を傾げる。とぼけているようにしか見えなかった。

「兄上、タビサはどこだ」

ダレイオがとぼけているからには、エルナはタビサの部屋にいるのは間違いない。理由はわからないが、夫婦で彼女を俺から隠しているのだ。
だが、やっと手に入れた掌中の珠エルナを、失うわけにはいかない。俺のせいで、あんなに辛い思いをさせたのだから、なおさらだ。

「王妃か? 私室におるのではないか?」

あいかわらずすっとぼけている。腹の底がしんと冷えた。やっぱりだ。やっぱり兄は、何か隠している。

「なぜ、俺からエルナを隠す?」
「隠してなどおらぬ。それよりどうしてそこまでエルナにこだわるのだ? お前は、彼女との結婚に異議を唱えたと聞いたぞ」
「はあ?」

いったいどういう伝言ゲームだ?

「本当は俺も、この結婚には反対だったのだ。だから、式には出席しなかった」
「兄上!」
「だが、愛する弟のことだ。好きにさせてやろうと決意したのだ。お前の目が覚めて、本当に良かった」
「何を言うんだ、ダレイオ!」
「破談は正しい判断だと思う。さすがわが弟だ」
「破談になんかしてない! 俺は彼女を決して手放さないぞ!」

我を忘れて叫ぶ。兄は哀れむように俺を見た。

「お前は、エルナの正体を知らぬのだ」
そこで急に、卑猥な顔になった。
「あの女は、淫乱だ。到底、お前には扱い切れまい」

俺は激怒した。

「いくら兄でもあっても、王であっても、エルナを侮辱する者は許さねえぞ!」
「事実を言っているまでだ。あれは猥雑で淫らな女よ」

全身がぶるぶると震え出した。ダレイオに殴り掛かりたくてたまらない。けれど、まずはエルナだ。ダレイオがここまで言うからには、彼女は、姉のタビサの部屋にいるのに間違いない。

無言でくるりと向きを変え、俺は、謁見室から出て行こうとした。

「待て、サハル。どこへ行く」
「決まってる。エルナのところだ。彼女はタビサの部屋にいるはずだ」
「ほほう。その泥まみれの格好で、王妃の部屋へ闖入すると?」

言われて俺は改めて、全身を眺め渡した。
確かに泥だらけだ。山々の山腹にトンネルを突貫で掘り抜いてきたのだから、無理もない。

「両足もひどいことになっているではないか」

その時、俺の両足から、泥の塊がぼろり、ぽろりと落ちた。怒りのあまり震えたからだろう。

「おじちゃま?」
「ちちうえ~」

「うへえ。泥がしゃべった」
さすがのダレイオも後じさった。

「泥ではない。一つは、お前の息子だ!」

言い置いて、くるりと向きを変えた。
泥の塊がふたつ、ついてこようとする。

「おじちゃま~~~」
「ちちうえ~~~」

泥がふたつ、両手(?)を広げて抱き着いてこようとする。

「女官長!」
大声で俺は呼ばわった。

「はいぃぃぃーーーっ!」
年配の女官がすっ飛んで来た。

「こいつらを風呂に入れろ。風呂が無理なら、井戸にでもつけておけ」

なおも俺を追って泣きわめく二つの泥の塊を見て、女官長は目を丸くした。






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