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第二部 宰相閣下の謹慎事情
273 その鳥に人は探せますか
※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
エドヴァルドは、ヘリファルテ種のリファちゃんによる手紙の配達方法が、基本的には、特殊な魔道具に取り込まれた魔力の持ち主を目がけて飛ぶように仕込まれているのだと言う事を知らなかった。
「ギーレンでは〝青の中の青〟にあった私の魔力を辿って、ナリスヴァーラ城まで飛んだのか……」
いっそ感心したように頷いている。
私の場合は、単に「可愛がってくれる人」認識で飛んで来ているらしいと言うと、ちょっと苦笑いだったけど。
「ええっと、だから、フォルシアン公爵令息の魔力がこもっている何かがあれば、手紙の配達じゃなくても、人探しも出来ると思うんです」
「なるほどな……だがユセフとフォルシアン公の間は、日頃はほとんど没交渉だ。それならば邸宅か勤務先の高等法院に誰かを遣らないと――」
そこで、それまで黙って話を聞いていたトーカレヴァが、そっと片手をあげた。
「あの…レイナ様。ヘリファルテに誰かを探させたい、と?」
彼からエドヴァルドに直接何かを話しかけられる立場にはないため、ここは私を挟んで会話を成立させる恰好にならざるを得ない。
私はエドヴァルドに許可を得て、サレステーデから来ている王女が、強硬手段でフォルシアン公爵令息をどこかに連れ去っているらしい事と、それでも王宮からは出ていないだろう事を、他言無用で伝えた。
「………サレステーデの女性と言うのは、えらく積極的なんですね」
「いやいや。王女サマに告白されて嬉しいなぁ…なんて思うのは、絵本を読む年代のお子ちゃまだけだと思わない?政略結婚にしたって、せめてそれがいかに互いの家にとって利になるかを説明して、納得して貰ってからにしないと。これじゃただの犯罪だってば」
「国として、既成事実になっては困る…と」
コクコクと頷く私に、そう言う事でしたら…と、トーカレヴァがエドヴァルドに視線を投げた。
表向き、声をかける許可を求めた形になり、エドヴァルドもそれと悟ったのか、黙って頷いた。
「不躾な質問で恐縮なのですが、その公爵令息は、フォルシアン公の実子でしょうか」
「……ああ。養子をとって後継者に据えている訳ではない。正真正銘、当代フォルシアン公爵イェルムの実子だ」
「有難うございます。では、緊急性の高い話だとお見受けしましたので、どれが最も早く手に入るかを、閣下にご判断頂きたく――」
そう言ったトーカレヴァは、指を折るようにしながら、魔道具に注げる魔力を抽出しうる物として「直系血縁者の血液を一滴」「公爵邸あるいは勤務先にある、本人の衣服」「勤務先で本人が日常的に使用している、例えば羽根ペンなどの道具」の三つを挙げた。
本人の血なら分かるけど、血縁者の血の繋がりでも読み取れるとは、何て優秀な魔道具。
とてもオトモダチが趣味レベルで開発した物とは思えない。
トーカレヴァ曰く、まだ試験中で、しょっちゅう新たな機能が付随したと言っては、道具交換をさせられているらしいけど。
それでも、エドヴァルドですら「真面目に仕事を続ければ、次期管理部の長にだってなれるだろうな」と呆気にとられたくらいの実力はあると言う事だ。
「そう言う事なら、フォルシアン公の血を一滴貰うのが一番早いだろうな。邸宅にしろ高等法院にしろ、行って帰って来る時間が惜しい」
「承知致しました。出来ましたら、ヘリファルテで手紙のやり取りが可能な事は可能な限り秘しておきたいので、ご子息を探すのは魔道具であってヘリファルテではないと、上手くご説明をお願い出来ますでしょうか」
「そうだな。それが国でただ一羽、やってのけている事なのであれば、それ自体がおまえの強みでも弱みでもあるだろうからな。レイナを裏切らないと誓う限りは、秘匿案件としておこう」
「恐れ入ります。――では私は道具とヘリファルテを取りに、一度下がらせていただきます。扉の外にはノーイェルがおりますので、短時間であれば彼だけでも何とかなりましょう。それほどお待たせは致しませんので」
そう言って軽く頭を下げたトーカレヴァは、あっと言う間に宰相室から姿を消した。
さすが王宮護衛騎士――と言うか、元・特殊部隊の出だ。
「エドヴァルド様、フォルシアン公爵がどこに行かれたか分かるんですか?」
忠犬1号、もとい副官であるシモン・ローベルト青年は、ボードリエ伯爵の案内で席を外したままだ。
彼に探しに出て貰う訳にもいかないだろうに…とエドヴァルドを見やると、エドヴァルドは「多分だが」と前置きをしつつ、私に説明をしてくれた。
「転移装置の無断使用があった筈が、強制転移させられた先の『真判部屋』からは姿を消している。順当にいけば、その部屋に一番近い空き部屋から順に探していくだろう。私なら、地下の『真判部屋』周辺は自分で探しつつ、その階上の部屋周辺は護衛騎士たちに手分けして当たらせるだろうな」
「なるほど…じゃあ、まずはその『真判部屋』に向かってみるって事ですね」
「ああ。それでノーイェルをそのままここで待機させておけば、万一行き違いがあったとしても、護衛騎士同士、サタノフに連絡は付けられる筈だ」
きっと〝鷹の眼〟同士で謎のやりとりを行っているのと似たような「何か」が、王宮護衛騎士たちの間にもあるに違いない。
私は、そこは深く追求しない事にした。
案の定、戻って来たトーカレヴァに、エドヴァルドがそれを告げても「分かりました」と、何の疑問もなく彼は頷いている。
「チチッ」
「――リファちゃん!」
エドヴァルドとトーカレヴァの話は短い間だったにも関わらず、最初はトーカレヴァの肩に乗っていた筈のヘリファルテの〝リファ〟は、短い鳴き声と共に、私の頭の上にぽすっと飛び乗った。
かと言って、そこで立つ訳ではなく、丸まってうずくまるだけなので、頭に足の爪が引っかかったりはしない。
「んー…まぁ、フォルシアン公爵と合流するまでは、頭上で良いのかな」
「……せめて肩にしないか。無駄に目立つ」
何とも複雑な表情でエドヴァルドが言うので、私も大人しくそれに従う事にした。
リファちゃん的にも、多分一回頭に乗れれば満足な様にも見えるので、私はそっと、頭上から左の肩に乗り移らせた。
「では、すまないがもうしばらく付き合って貰えるか」
エドヴァルドがそう言って左手を差し出して来たので、私は「分かりました」と、右手をそこに乗せた。
…すぐにその手が、指と指をぎゅっと絡ませられたのには、ちょっと驚いたけど。
「あの、エドヴァルド様…これで廊下歩くんですか……?」
エスコートなら、社会通念上の作法とでも何でも言い訳は立つだろうけど、所謂〝恋人つなぎ〟は、そうもいかない。
前回、青色のドレスを着た状態でエスコートされながら歩いた時点で、フォルシアン公爵が面白がって駆けつけてくるくらいには騒ぎになったのだ。
確実に、それ以上のインパクトを王宮内にばら撒く事になると、私は慄いた。
――当然だ、とエドヴァルドは取り合ってくれなかったけど。
「どこかのバカ王子が何を言おうと一刀両断出来るし、かつ、ヘリファルテに視線を向ける人間も減る」
一見、とても、すごく、もっともらしい。
いずれにせよ、諦めて羞恥に耐えるしかなさそうだった。
エドヴァルドは、ヘリファルテ種のリファちゃんによる手紙の配達方法が、基本的には、特殊な魔道具に取り込まれた魔力の持ち主を目がけて飛ぶように仕込まれているのだと言う事を知らなかった。
「ギーレンでは〝青の中の青〟にあった私の魔力を辿って、ナリスヴァーラ城まで飛んだのか……」
いっそ感心したように頷いている。
私の場合は、単に「可愛がってくれる人」認識で飛んで来ているらしいと言うと、ちょっと苦笑いだったけど。
「ええっと、だから、フォルシアン公爵令息の魔力がこもっている何かがあれば、手紙の配達じゃなくても、人探しも出来ると思うんです」
「なるほどな……だがユセフとフォルシアン公の間は、日頃はほとんど没交渉だ。それならば邸宅か勤務先の高等法院に誰かを遣らないと――」
そこで、それまで黙って話を聞いていたトーカレヴァが、そっと片手をあげた。
「あの…レイナ様。ヘリファルテに誰かを探させたい、と?」
彼からエドヴァルドに直接何かを話しかけられる立場にはないため、ここは私を挟んで会話を成立させる恰好にならざるを得ない。
私はエドヴァルドに許可を得て、サレステーデから来ている王女が、強硬手段でフォルシアン公爵令息をどこかに連れ去っているらしい事と、それでも王宮からは出ていないだろう事を、他言無用で伝えた。
「………サレステーデの女性と言うのは、えらく積極的なんですね」
「いやいや。王女サマに告白されて嬉しいなぁ…なんて思うのは、絵本を読む年代のお子ちゃまだけだと思わない?政略結婚にしたって、せめてそれがいかに互いの家にとって利になるかを説明して、納得して貰ってからにしないと。これじゃただの犯罪だってば」
「国として、既成事実になっては困る…と」
コクコクと頷く私に、そう言う事でしたら…と、トーカレヴァがエドヴァルドに視線を投げた。
表向き、声をかける許可を求めた形になり、エドヴァルドもそれと悟ったのか、黙って頷いた。
「不躾な質問で恐縮なのですが、その公爵令息は、フォルシアン公の実子でしょうか」
「……ああ。養子をとって後継者に据えている訳ではない。正真正銘、当代フォルシアン公爵イェルムの実子だ」
「有難うございます。では、緊急性の高い話だとお見受けしましたので、どれが最も早く手に入るかを、閣下にご判断頂きたく――」
そう言ったトーカレヴァは、指を折るようにしながら、魔道具に注げる魔力を抽出しうる物として「直系血縁者の血液を一滴」「公爵邸あるいは勤務先にある、本人の衣服」「勤務先で本人が日常的に使用している、例えば羽根ペンなどの道具」の三つを挙げた。
本人の血なら分かるけど、血縁者の血の繋がりでも読み取れるとは、何て優秀な魔道具。
とてもオトモダチが趣味レベルで開発した物とは思えない。
トーカレヴァ曰く、まだ試験中で、しょっちゅう新たな機能が付随したと言っては、道具交換をさせられているらしいけど。
それでも、エドヴァルドですら「真面目に仕事を続ければ、次期管理部の長にだってなれるだろうな」と呆気にとられたくらいの実力はあると言う事だ。
「そう言う事なら、フォルシアン公の血を一滴貰うのが一番早いだろうな。邸宅にしろ高等法院にしろ、行って帰って来る時間が惜しい」
「承知致しました。出来ましたら、ヘリファルテで手紙のやり取りが可能な事は可能な限り秘しておきたいので、ご子息を探すのは魔道具であってヘリファルテではないと、上手くご説明をお願い出来ますでしょうか」
「そうだな。それが国でただ一羽、やってのけている事なのであれば、それ自体がおまえの強みでも弱みでもあるだろうからな。レイナを裏切らないと誓う限りは、秘匿案件としておこう」
「恐れ入ります。――では私は道具とヘリファルテを取りに、一度下がらせていただきます。扉の外にはノーイェルがおりますので、短時間であれば彼だけでも何とかなりましょう。それほどお待たせは致しませんので」
そう言って軽く頭を下げたトーカレヴァは、あっと言う間に宰相室から姿を消した。
さすが王宮護衛騎士――と言うか、元・特殊部隊の出だ。
「エドヴァルド様、フォルシアン公爵がどこに行かれたか分かるんですか?」
忠犬1号、もとい副官であるシモン・ローベルト青年は、ボードリエ伯爵の案内で席を外したままだ。
彼に探しに出て貰う訳にもいかないだろうに…とエドヴァルドを見やると、エドヴァルドは「多分だが」と前置きをしつつ、私に説明をしてくれた。
「転移装置の無断使用があった筈が、強制転移させられた先の『真判部屋』からは姿を消している。順当にいけば、その部屋に一番近い空き部屋から順に探していくだろう。私なら、地下の『真判部屋』周辺は自分で探しつつ、その階上の部屋周辺は護衛騎士たちに手分けして当たらせるだろうな」
「なるほど…じゃあ、まずはその『真判部屋』に向かってみるって事ですね」
「ああ。それでノーイェルをそのままここで待機させておけば、万一行き違いがあったとしても、護衛騎士同士、サタノフに連絡は付けられる筈だ」
きっと〝鷹の眼〟同士で謎のやりとりを行っているのと似たような「何か」が、王宮護衛騎士たちの間にもあるに違いない。
私は、そこは深く追求しない事にした。
案の定、戻って来たトーカレヴァに、エドヴァルドがそれを告げても「分かりました」と、何の疑問もなく彼は頷いている。
「チチッ」
「――リファちゃん!」
エドヴァルドとトーカレヴァの話は短い間だったにも関わらず、最初はトーカレヴァの肩に乗っていた筈のヘリファルテの〝リファ〟は、短い鳴き声と共に、私の頭の上にぽすっと飛び乗った。
かと言って、そこで立つ訳ではなく、丸まってうずくまるだけなので、頭に足の爪が引っかかったりはしない。
「んー…まぁ、フォルシアン公爵と合流するまでは、頭上で良いのかな」
「……せめて肩にしないか。無駄に目立つ」
何とも複雑な表情でエドヴァルドが言うので、私も大人しくそれに従う事にした。
リファちゃん的にも、多分一回頭に乗れれば満足な様にも見えるので、私はそっと、頭上から左の肩に乗り移らせた。
「では、すまないがもうしばらく付き合って貰えるか」
エドヴァルドがそう言って左手を差し出して来たので、私は「分かりました」と、右手をそこに乗せた。
…すぐにその手が、指と指をぎゅっと絡ませられたのには、ちょっと驚いたけど。
「あの、エドヴァルド様…これで廊下歩くんですか……?」
エスコートなら、社会通念上の作法とでも何でも言い訳は立つだろうけど、所謂〝恋人つなぎ〟は、そうもいかない。
前回、青色のドレスを着た状態でエスコートされながら歩いた時点で、フォルシアン公爵が面白がって駆けつけてくるくらいには騒ぎになったのだ。
確実に、それ以上のインパクトを王宮内にばら撒く事になると、私は慄いた。
――当然だ、とエドヴァルドは取り合ってくれなかったけど。
「どこかのバカ王子が何を言おうと一刀両断出来るし、かつ、ヘリファルテに視線を向ける人間も減る」
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