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獣人編

逃亡者、家に住む

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僕は屋敷に戻ってきて、ミア達にミハイル様を紹介する

「お待たせ。ゲルダ様のと話は終わったよ。この人はこの屋敷の主人で領主のミハイル様だよ」

領主の登場に3人は慌てる

「りり、領主様、おお世話になってます」
ミアが緊張しながら挨拶をする

「やあ、ミハイルだよ。よろしくね」
ミハイル様は大分フランクに挨拶をする
領主様がこれでいいのかなぁ

「僕は獣人だからって差別しないから安心してね。……僕が不甲斐ないばかりに苦労をかけてごめんね」
ミハイル様はフィルとフェンを見て申し訳なさそうに言う

「い、いえ。領主様が気にする事ではありません」
フィルが慌てて答える

「いつか普通に暮らせるようにするから待っててほしい」
ミハイル様は自分に言い聞かせるように言う

「……おねがいします」

「あぁ、約束しよう」
ミハイル様は胸に手を当てて約束をする

「家を探しに来たんだよね?僕はこのままここに住んでくれても良いんだけど…」
ミハイル様はそんな事を言う

「そんなにお世話になるのはさすがに悪いですよ。家を紹介してくれるだけでありがたいです」
僕はミハイル様に家の紹介だけお願いする。
ミア達にはここでの生活は気を使いすぎて窮屈だろう

「そうかい?じゃあここの家を使うといいよ。タダでいいから」
ミハイル様が地図に指を差しながらとんでもない事をいう。
地図で見る限りかなり広そうなのに…

「それはいけません。お金はちゃんと払いますよ」

「別にいらないんだけどね。それじゃあ月に銀貨50枚貰おうか。これ以上は受け取らないからね」

「すごく安い気がしますけど、わかりました。お願いします」

「ああ、家賃は月末までに翌月分を私に持ってきてくれ。門兵には話を通しておくから。はい、これが鍵だよ」

定期的に会いに来るようにとのことだろう。
「ありがとうございます。これは今月と来月分です」
僕は鍵を受け取って、代わりに金貨1枚を渡す

「はい、たしかに」

「家を借りれたから行こうか」
僕は緊張したままの3人に声を掛けて屋敷を出る

「あー、緊張した」

「うん、私も」

「僕も」

フェンはずっとフィルの手を掴んでいる

「家はあっちの方だね。干し肉でも齧りながら行こうか」
僕は収納から干し肉を出して3人に配る

「なんかわたしの干し肉だけ食べかけだよ。別にいいけど」
フィルは不思議そうに干し肉を眺める

「フィル覚えてない?朝に寝ながら食べてたでしょ?」

「…そういえば起きた時に肉の味がした気がする」

「その時の干し肉だよ」

「……」
フィルは恥ずかしそうに俯く

「僕のイタズラだから気にしないでね」
僕は笑いながらフィルの頭を撫でる

そんな事をしながら歩いていくと目的の家に辿り着く

「おっき~い!」
フェンが目を輝かせる

「……あれは屋敷だね」
僕は少し顔がひきつる。
そこには20人くらいは軽く住めそうな屋敷があった。

「とりあえず中に入ろうか」
僕達は屋敷の中に入る

中に入るとメイドさんが出迎えてくれる

……?

「お帰りなさいませ、私はミハイル様よりハイト様達のお世話をする様に申しつけられました、メイドのサラです。これからよろしくお願いします」

「え…?聞いてないんだけど。…自分達の事は自分で出来るので大丈夫ですよ」
本当に聞いてないよ。あの人なに勝手にやってるの

「ミハイル様よりハイト様は遠慮するかもしれないけど、仕事を全うするように申しつかっております」

拒否は受け付けないらしい
「…うん、これからよろしくね。じゃあ、さっそくだけどこの屋敷の中を案内してもらってもいいかな?」

「かしこまりました」

僕達はサラさんの案内で屋敷の中を見て回る

「部屋の割り振りだけしちゃおうか」

僕とミアは1人で1部屋。フィルとフェンは2人で1部屋にした。
ミアが僕と同じ部屋が良いって言ってたけどなんとか説得した。

「そろそろ昼食にしようか」
屋敷を見て回った後、良い時間になってたので昼食にしようとする

とりあえず、収納から何か出せばいいか

「僕が用意するから座って待ってて」
僕がそう言うと

「昼食の準備は整っております」
とサラに言われる。さらに
「フェン様には消化の良いものを準備させていただきました」と

「サラさんは食事も作れるんですか?」

「簡単なものであれば作れます」

ダイニングルームに用意されていた料理はとても簡単に作れそうなものではなかった
この人、出来る人だ…

並べられた料理は4人分だった
「サラさんも一緒に食べましょう」
僕はサラさんも一緒に食べるように勧める

「いえ、私は後でいただきますので大丈夫です」

「僕が一緒に食べたいんです、これから一緒に生活するわけですから色々と話もしたいですし」

僕は有無を言わさずにサラさんを席に座らせてキッチンに向かう。

後で食べるって言ってたからもう1人分残ってると思ったんだけどな…
キッチンにはスープとパンはあったが他に出来てる料理はなかった。

僕はパンとスープそれから王国の朝食で置いてあったサラダやソーセージ、卵などをトレイに乗せて持っていく

「こんなものしか無くてごめんね」

「いえ、ありがとうございます」
サラさんは戸惑いながらお礼をする

「それじゃあ、みんなで食べようか」

サラさんは口をつけてもいいのか悩んでいるようだったので僕は声をかける

「サラさん、ミハイル様からどのように言われているかわかりませんが、僕はただの冒険者です。ここで一緒に生活するのであれば友達や家族に接するように僕達にも接してもらえませんか?もちろん、すぐにとは言いませんが、まずは形からでもお願いします」

「……ハイト様がそうおっしゃるならばそのようにします」
そう言ってサラさんはスープに口をつける

今はこれでいいかなと思いながらも一言だけ伝える
「様付けはしなくていいからね」

「それは……わかりました。……ハイトさんでよろしいですか?」

「もちろんだよ。言葉ももう少し崩してくれていいからね。メイドとしての仕事をお願いする時もあると思うけど、自分の家にいるつもりで過ごしてくれていいからね」

「わかりました。そうさせてもらいます」

まだ固いけど、今はこれで充分かな

「とりあえず、この後は少し休んでから買い物に行くよ。臨時収入もあるしお金の事は心配しないでね」

昨日までの僕とは違うのだ。

「お兄ちゃん、大丈夫なの?」
「え、そんな、悪いです」
「ホント!やったー!」

三者三様の返事が返ってくる

「ミア、これはミアが稼いだお金でもあるからね。遠慮しないように。フィルとフェンも遠慮しないで欲しいものは言うんだよ」

話を聞いてるサラさんに僕は言う
「サラさんも行くんだよ?」

「えっ?」

「欲しいものがあったら遠慮しないでね」

「買ってもらうわけにはいきません」
サラさんは拒否する

「なら街を案内してよ。僕とミアは昨日来たばかりだからね。そのお礼としてって事で欲しいものを買ってあげるよ」

「案内は構いませんが、お給金はミハイル様より頂いていますので大丈夫です。」

強情だな
「いいから、遠慮しないの!」

「……わかりました」
これはわかってないな。顔を見ればわかる。

昼食後少し部屋で休んだ後、僕達は街に繰り出すことにした

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