ブバルディアのために

橘五月

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再会の姉妹

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 私は家を出てから母さんの悲願達成のため、各国を旅して回った。
 そのお陰で、魔女狩りの事がかなり分かってきた。

 奴らは魔力を持たない種族らしい。それ自体は珍しいわけでなく、むしろ魔力を持たない種族が大半だ。でも奴らが他の種族と違って特殊なのは、魔力が生命維持に必要である事だ。
 魔力が生命維持に必要なのは私たちと同じだが、魔力を持つ種族は皆、体内で魔力を作る事ができる。まあ魔女狩りは、欠陥種族なわけだ。

 で、その欠陥を補うために、私たち魔女の血から魔力を摂取するんだって。酷い。
 魔女は数少ない魔力を持つ種族の中でも、ケタ違いに多くの魔力を有している。
 奴らからすれば魔女は、垂涎の獲物ってわけね。

 他にも発達した犬歯や、青い瞳、世にも珍しい氷魔法を使う、といった特徴があるわ。どれも派手で分かりやすいわね。
 私が2年で得た情報はこの程度。
 この国にはもっと詳しい情報があるといいな。

「都市国家キュレネ……!」


 ○


 キュレネへ入国。一歩二歩と足を踏み入れると、前方に人集りが見えた。何やらトラブルが発生した模様。あまり治安は良くないと聞いていたが、まさか入国から3秒でこんなものを見るとは思わなかった。

「ま、私には関係ないわ」

 あまり変なものに巻き込まれたくなかったので、静かに通り過ぎようとしたその時。

「このままでは死んでしまうぞ!医者はまだこんのか!」

 なるほど、そういうことか。無関係とはいえ、死にそうな人を放っておく私ではない。
 私は野次馬どもを押し退け、倒れている男性のそばに屈む。
 彼のそばには、さっきまで声を張り上げていたおじさんと、放心状態の小柄な女性が。

「腹を切り裂かれている。あんた、医者……じゃなさそうだけど、できるなら早く手当してやってくれ!」

 うわあ、痛そう。かなり血が出てる。でも、幸い致命傷は避けられている。これなら私でも治せそう。大丈夫ですよ、とだけ言って私は杖を取り出す。
 慈しみの心を込め、杖を振るう。杖から淡い光が迸り、傷口を癒す。

「もう心配は要りません。当分は安静にしてあげてください。それでは」

 面倒事はごめんだったし、辺りも暗くなってきたので、早々に引き上げて宿をとりたい。
 しかし、呼び止められてしまった。さっき男性のそばにいた、小柄な女性に。

「あの、夫を救っていただいてありがとうございます。彼、追いかけられている女の子を守ろうとして……」

「そうですか、ご立派な旦那さんなんですね。でもあんまり無茶をしないように、きつーく言っておいてください。では」

「待って。あなた、魔女様ですよね。あの……その……」

「そうですが、どうかしましたか?」

「あの……すぐに出国された方がよろしいかと……」

 ……どうして?こんな時間から外に出ろと?入国から10分足らずで出国勧告を出されるとは。聞くまでもなく理由を教えてくれた。それは私にとっては朗報だった。

「女の子を追いかけてた人、青い目で牙が……」


 ○


「まさかこんなすぐにチャンスが来るとはね」

 ありがたい忠告を受けた私は、女の子が逃げて行った方へと走った。
 風魔法を足に纏わせ、猛スピードであいつを追いかける。

「絶対に逃さない!」

 通りを4つ抜けて角を曲がると、女の子の嘆願する声が聞こえてきた。

「魔女が…………仲良くし………………のに……!」

「ちょっと、この声ってもしかして……!」

 さらにスピードを上げ、声の方へ向かうと、氷槍を構える魔女狩りの男。そしてその先には、

「ススキ!」
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